第二部・狩りの最中の誘拐犯を追い詰めました。
ここの誘拐イベントシーンは、好感度を稼いだ攻略対象がヒロインを助けに駆けつけてくれる激アツシーンなのよ。
「カメリア、無事だったかい?」
「アレクセイ様!なんて無茶を……!」
「愛する君を傷付ける者など許しはしない!」
……なのに、どうしてこうなるのかしら?
「アレクセイ隊、整列!
突撃する。
門を壊せ!」
アレクセイ様の部隊、怒涛の正門突撃が始まったわ。
砲台持ってきて大砲撃ち込むのかしら?と思ったら。
まさかの、先を尖らせた丸太で正門を破壊しようとしてるわ。そんな、原始的な?!
「大砲?魔法?駄目だ!
人質に傷を付けるな!
丸太は構えたな?
突撃!突撃ー!」
アレクセイ隊を振り切って単騎突入するシルバーナ様の護衛騎士グラン。
競うように続く白獅子将軍アレクセイ様。
って、指揮官自ら先頭に立つのは不味いのでは……?
それを止めようとするも結局フォローする不憫なヨハネスである。
いや、これ乙女ゲーでしょ?
もっとキラキラした救出劇にしてくれないと困りますよ?
「これで詰みね、エドワルト」
カメリアが動く。
しかし。
「ははっ私が無策だと思ったか?トルナード!」
「強風?!」
思わずナイフを落としてしまうカメリア。
私の青薔薇の拘束をも風の魔法で切り裂いていく!
「ご無事ですか?シルバーナ様!
貴様!よくも……!」
「グラン?!どうして、来てはダメ!」
シルバーナ様を助けるために真っ先に斬りかかるグラン。
……おかしいな?
カメリアが好感度稼いだ攻略対象が来るはずなのに。
これじゃあまるでシルバーナ様がヒロインじゃない?
「ふん、ルクス家の落ちこぼれめが!
ヴズルィーフ!」
エドワルトの魔法が炸裂する!
ちょっと、余波でドレスの裾が千切れてしまったんですけど?!
「闇よ!」
グランの魔法が肉薄するが、わずかに届かない!
「くそ、届かないだと?!」
ジリジリと追い詰められるグラン。
捨て身の攻撃でもう一度斬りかかるが。
グランの剣を弾かれてしまった!
「しまった……!」
絶体絶命のピンチじゃない?
仕方ない、私が動くか……?!
でも青薔薇の魔力が素直に応じてくれるかしら?
それに、風の魔法と青薔薇の魔法って相性最悪じゃない?
その刹那。グランが作ったわずかな隙に割って入ったのは。
「よくやった、グロム!」
美味しい所を持って行くアレクセイ様の雷撃。
雷に怯むエドワルト。
「ひっ!アレクセイだと?
モスリンドレスでも着たお嬢さんの様に皇帝の手のひらの上で踊っていればいいものを!
アルヴェイン帝に目をかけられたからといって、見せびらかす様に威張って!」
モスリンドレスのお嬢さんって……凄い罵倒ね。
深層のご令嬢、特に俗世では生きていけない浮世離れした貴族のひ弱なお嬢さまって意味らしいわ。
そこまで言わなくても……私、モスリンドレスお気に入りなのに!
「エドワルト!貴様黙れ!」
「アレクセイ閣下お止め下さい!」
「止めてくれるな、ヨハネス!
カメリアに何をする気だった!?
天の怒りよ!ケラウノス!」
激しい雷撃が敵を蹂躙する!
その隙に体制を戻したカメリアとグランは、エドワルトにナイフを喉元に突き付けて。
「終わりだ」
「読み通りね。これでチェックメイトよ。
エンチャント、オンディーヌ……」
アレクセイ様も、手にした剣をエドワルトの喉元に突きつける。
「カメリア駄目だ。
彼を詰問しなければならないから。
シャフ・イ・マトだよ。
降参するといい、エドワルト。
……これ以上、家名に傷を付けるな」
「クソ!お前みたいな簒奪者の犬風情に……!」
「その簒奪者の犬に喉元を食い破られる心地はどうだ?
今すぐ捕縛、連行しろ」
逮捕され捕縛、連行されるエドワルト。
「ご無事で何よりです、シルバーナ様」
「グラン……わざわざ助けに来てくれたの?
全く、骨折り損でしたのに。
でも、ありがとう……貴方が来てくれて、嬉しかったわ」
……うむ、善き善きですね。
この二人のカップル、ファンの間で密かに人気だったのよね。
前世では、グランルートや全ルート攻略の為に二人の仲を引き裂くのがキツかったと悲しい感想を言うオタク友だちがいたわね。
「ところで、グラン。
申し訳ないのだけれど、フローリアを運んでもらえるかしら?
あの子、魔法の応酬で気絶しちゃって……
お父様になんと報告すれば良いのでしょう?
後妻のお義母さまに顔向け出来ないわ。
グレネダ女官長の実母だからすぐ話が行くと思うけれど」
「ご苦労、光の聖女ローズティア殿」
「はい!アレクセイ将軍閣下。
エルレン様直伝、魔法の伝書鳩作戦上手く行きました!」
エルレン様直伝って何事?
あの方何を教えてくれちゃってんの?
「あれぇ!教会騎士団学校の同期のロズワルドか?!」
「げぇ、ベンジャミン?!」
前作ヒロインが出してはいけない凄い声出してますわよ。
「お前、教会騎士団学校首席だったのに、名前と性別偽って入学したのがバレて退学処分になったロズワルドじゃないか。
お前、光の聖女ってなんだ?その肩書きはよ?」
「ちょっと、それ喋らないって約束……!」
ロジーってば、お転婆が過ぎるわよ?!
「流石に疲れたわ。
作りたて熱々のボルシチとピロシキが食べたい……
あと、バーニャに入りたい……」
疲労困憊のカメリアは呟く。
「ならばこちらで用意しよう!」
アレクセイ様、よく分からない張り切り方をしていますわね。
「それにしてもグランさんカッコよかった!
姫を守る騎士って素敵ね。
是非手合わせをお願いしたいわ!」
「……はい?」
「シルバーナ様との関係も良い……」
「ええ?!
ねぇ、僕は?僕凄く活躍しただろう?」
「ご無事ですか?セルシアナエリーゼ様」
「ええ、ヨハネス。なんと言うべきかしら。
……あの二人のフォロー、お疲れ様?
私の判断ミスのせいで、大変な事になってしまってごめんなさいね」
「いえ、俺の判断ミスですよ。
安易にアレクセイ様について行くべきではなかったのですから」
去り際。
何故かアレクセイ様にではなく、ヨハネスの顔を見て驚くエドワルトがいたわ。
「何故、貴様は死んだはずでは……!」
「人違いではありませんか?
以前この国にいた時の俺はただの……修道士でしたので」
別荘から出ると、そこにはアルヴェイン帝が待ち構えていたわ。
「セルシアナエリーゼ様!ご無事でしたか?!」
「皆、無事よ。
貴方こそ怪我がなくて良かったわ、メアリー」
メアリーが一目散に駆けつけてくれたわ。
「おお、誘拐の主謀者を捕まえたか。
流石アレクセイ将軍、ご苦労」
「アルヴェイン帝?……何故こんな所にまで!」
「確かエドワルトだったか。
いかな名家の出身とは言え。
我が狩りを邪魔した罪、高く付くが……分かっておいでかな?」
「ひっ……!」
アルヴェイン帝に睨まれ、悲鳴を上げるエドワルト。
蛇に睨まれたカエルじゃあるまいし。
そういえばグレネダ女官長は何処かしら?
何故か見当たらないわね。
それにしても、アレクセイ様が簒奪者の犬と言われるとは。
それに何故エドワルトは、ヨハネスの顔を見て驚いていたのかしら?
そして、あのリオの瞬く闇の魔法。
何処からか、私を守ってくれているの?




