第二部・誘拐されて何処かの貴族の別荘に連れ込まれました。
馬車から降ろされ、何処かの別荘?に連れ込まれる私達。
庭先のバラの香りが妙に鼻腔をくすぐる。
他の草花や、ハーブの香りが一切しないのよね。
……これってローズガーデンよね。貴族の邸宅かしら?
そう疑問に思う暇もなく、屋敷のある部屋に通され、目隠しが外されるわ。
「皆、怪我はないみたいね。良かった」
私は安心して呟く。
「まだ安心は出来ません」
とある少女が連れてこられる。
シルバーナの病弱な妹、フローリア嬢だったわ。
「フローリア?!
怪我はない?妙な事をされなかった?」
「シルバーナお姉様?
宮殿ではなくて、どうしてこんな所にいらっしゃるの?
ここはどこなの?
ワタクシ、さっきまでお義兄様といたのに……」
「お義兄様って……ああ、なるほど」
シルバーナは頭を抱える。
フローリアのお兄様という人物に心当たりがあるのだろうか?
乱暴に部屋のドアが開かれたわ。
すると、ウェーブがかった銀髪の青年貴族が一人。
その右手には宝石や彫刻で彩られた豪奢なナイフが握られているわね。
「酷いじゃないか、シルバーナ。
婚約者の私を差し置いて、アルヴェイン帝に召し上げられるなんて。
君は清純に振る舞っていたが、とんだ食わせ物の毒婦だったのだな」
「通りで手抜かりが多かった訳ですのね、エドワルト。
貴方は……養子として公爵家に入ったものの。
勉学も剣術も真面目にこなさず、公爵家の傘を着て威張ってばかり。
それに我がユーリエフスカヤ公爵家の継承にしか興味なかったじゃないの。
残念ながら、次の公爵家当主は妹のフローリアでしてよ。あれであの子は努力家だから。
エドワルト、貴方ではないのです」
「ふん、アルヴェイン帝に気に入られたからといって偉そうに!
昔からお前のことが気に入らなかったんだ!
あれだけ忌み嫌っていたアルヴェインにすり寄って、その息子にも……!」
エドワルト様が、反アルヴェイン帝派なのはよく分かったわ。
ならばアレクセイ様や、ヴェネティアの影などといった勢力と手を組まないのは何故かしら?
それに気になる点が幾つかあるわ……。
「息子?
アルヴェイン帝には、子どもはいないはずではないの?」
「ははっ!
公然の秘密とはいえ、流石に外国の聖女は知らないか。
……アルヴェイン帝には子がいるのさ。一人はローズベルの故リリー妃。
ご落胤の、特にアルヴェイン帝お気に入りのあの御方……」
あの御方って誰かしら?私の知っている人なの?
「あの御方さえ居なくなれば、皇位継承が我が公爵家にも転がってくる。
そう、私にも皇帝になれるチャンスがあるはずなのだ」
「エドワルト!お止めなさい!」
「……本当に邪魔しかしないな、シルバーナは。
私は公爵家が継げない?
ならばフローリアを人質に、お義父様を脅せばよいだろう?」
「なっ……!フローリアに何をする気なのです?!」
「または、青薔薇の聖女に……!」
ひぇっ何をする気……?!
その瞬間、私の目の前で闇が瞬いた。
「ひっ!何だこれは?
……ぐわぁ?!」
エドワルト様の前で、闇の瞬きが派手に爆ぜたわ!
あ、これ闇魔法だ。かなりの使い手の。
「彼女に触れるな。俺の婚約者だ」
懐かしいリオの声。
微かにリオの匂いがした。
……あ、いけない。涙が出てしまうなんて。
「……貴様、何をした?!」
次に、青薔薇の蔓が伸びてゆく。
私の意思とは関係無しにね。
まるで自動追撃システムだわ。
カメリアは、エドワルトが手放したナイフをすかさず蹴り上げた。
落ちてくるナイフで自分を捕縛している縄を切り、すぐさまナイフを利き手に持つわ。
「少しでも私達を害してみなさい。
次は息の根を止めるわ」
何処からともなく、光る小鳥が飛んできたわ。
それは、パタパタと忙しなく羽を動かして、ロジーの肩に止まった。
「……ご苦労さま、シメオン。
もう大丈夫です。そろそろかな」
その時、表から怒声が聞こえた。
「アレクセイ隊、整列!
突撃する。門を壊せ!」




