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限界オタクが悪役令嬢に生まれ変わって最推しに出逢えて尊い!ので、推しの闇落ちルートを全力回避します  作者: 睦月のにこ


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第二部・ドルンゲン帝国で狐狩りが行われました。

 ドルンゲンの厳寒の冬が終わり、短い夏が来た。

 帝都の近くの山林で、宮殿主催の狐狩りが始まったわ。


 元は貴族の娯楽のハンティングだったそうよ。

 対象の動物に旗をつけて追い囲む、猟犬のボルゾイに追いかけさせるといった感じだったらしいわ。


 軍閥出身のアルヴェイン帝になってからは、繁殖期を迎える魔物の定期討伐も兼ねているそうよ。



 アレクセイ様が難しい顔をして、仰るには。


「あそこに見えている大河があるでしょう?


 あの川を過ぎると、かつてこの地を征服した遊牧民の地となり、貨幣経済が行き届かなくなるのです」


 前世の歴史の授業で習った、いわゆるタタールの軛のようなものかしら?


「とは言え、異民族の黒貂の毛皮で、我が帝国の経営が成り立っているのです。

 しかし、業者の買い叩きが横行していましてね。

 これがまた取り締まるのも難しくて」


 一方、カメリアは全く気にしておらず。


「遊牧民の食べ物って美味しいんてすよ。

 ラムのステーキや、チョブレギとか。


 うちの領地に定住した人のレストランがあって、おじいちゃんとよく食べにいったなぁ。

 オマケもらったりしてしました」



 アルヴェイン帝率いる貴族のお偉いさん達や軍の有力幹部で、我先にと冬眠しているモンスターの巣穴があろう山に向かっていったわ。



 一方、私とカメリアは、麓の針葉樹の森で呑気にキノコ狩りである。

 たまに白樺の木が生えているわ。


 前世の母方のおじいちゃん家の裏山を思い出すわね。

 あそこは梅と杉しか生えてなかったけど。


「このキノコって、ナメイグチ?」


 私が尋ねると、カメリアはニコニコして。


「ええ、そうです。

 焼いて塩で味をつけるだけで美味しいんてすよ。


 お、やった!ポルチーニ茸発見!

 山菜も採れるし、いい森ね!


 ああ、そうだ。エリーゼ様、松の実食べます?

 狩り用にって炒ったものです」


 ロジーもニコニコして野いちごを一杯摘んできたわ。


「エリーゼ様!野いちごありましたよ!

 あっちには食べられる木の実が!」


 ヨハネスは渋い顔をして忠告してくるわ。


「エリーゼ様?ロジーにカメリア?

 今は狩りの最中ですよ?

 早くアルヴェイン陛下に追いつかないと」


 カメリアは全然気にせず。


「なら、狐でも魔物でも一匹でも捕まえれば良くない?

 ……あ、いた!狐!」


 すぐさま、弓であっという間に狐を射抜くカメリア。


 カメリアは満面の笑顔よ。


「よし!捕まえた。

 ウサギも捕まえてあるし、これでいいでしょ」


 ロジーはキラキラした尊敬の眼差しでカメリアを見つめるわ。


「カメリア凄い!」


「こんなの楽な方よ。雁に比べたら……。


 狐にウサギも取れたんだから、シチーにキノコを入れて食べましょう。

 ボルシチに入れてもいいかな。


 前にアルヴェインおじ様がウチに来られた時、絶賛していたわ」


 ヨハネスは呆気にとられたのか、毒気のない事を口にしたわ。


「割と素朴な料理が好きなんだな、アルヴェイン帝って」


 カメリアは頷いて。


「うちのおじいちゃん曰く、アルヴェインおじ様は極北の没落貴族だったか、貧乏騎士の家だったかの出身でね?


 元々そんなに恵まれた環境で育った人じゃないって、口癖の様に言ってたわ。


 好物はキャベツ沢山入れたシチーだって」


「そんな、あの狂帝がウチの死んだおふくろみたいな事を……?」


 頭を抱えるヨハネスだわ。

 カメリアってば、完全に田舎娘に戻っているわね。


 アレクセイ様は拍手をしながら、談笑するヨハネスとカメリアの間に割って入ったわ。


「流石、僕のカメリア。お見事だね。

 皇帝陛下に見せに行こう」



 まあ、本当に恐るべきは……。


「ところでメアリーは?」


「その……パンプキンパイが上手く焼けたからってアルヴェイン帝へお裾分けに行きました」


 メアリー、思っていた以上に社交力おばけだったわ。

 元々男爵令嬢だし、こっちにもご友人がいるとは聞いてきたけれど。


 まさかの、アルヴェイン帝とちょくちょく談笑しているのよね。やり手の外交官かな?



「貴方達、こんな所で何をしていらっしゃるの?」


 アルヴェイン帝の寵妃にして、宮殿の毒婦と呼ばれるシルバーナ様が、馬に乗ってやって来たわ。

 白馬かぁ、カッコいいなぁ。


「ご機嫌麗しゅう、シルバーナ様。

 キノコや木の実を採っていましたの。


 今日フローリア嬢はいらっしゃらないのですか?」


「フローリアなら追い返したのよ。

 あの子身体弱いのにすぐ無理するから……」


「あら、残念。せめてこれをお土産に……」


 と、収穫物を見せようとすると。

 そこに割って入る女性が現れたわ。


 金髪碧眼の、美人な方だわ。

 何度かお見かけした事があるわね。


「シルバーナ様、あんな下賤な者と口を聞いてはなりません!


 貴方様こそ、ドルンゲンの旧王国時代からの正当な血を引くドルンゲン帝国の真の後継者なのです。


 ローズベルなんて田舎の国の娘が偉大なるドルンゲン帝国の皇后候補だなんて相応しくありませんよ。

 それに、取るに足らない没落したバートン家の娘まで!」


「お止めなさい、ログネダ女官長」


 ログネダ女官長。出身は確か、シルバーナ様の御親戚の侯爵家だったかしら?

 シルバーナにべったりの様ね。


「ふん!異端派の国出身なのに、聖女気取って!

 侍女なんか送ってやるものですか!

 サッサとお国に帰りなさいな!」


 そういえば、青薔薇の聖女とローズベルの青薔薇派は大陸では異端扱いだったかしらね。


 やはり、ドルンゲン側から侍女が来ないのは嫌がらせだったのね。

 うーん、実に分かりやすいなぁ。


 普通、こういうのは上手く隠して、他の人のせいにすると思うんだけどなぁ。

 例えば、それこそ皇帝陛下やシルバーナ様の指示で……と嘘ついて、とかね。


 王妃や皇后の地位なんて、前世の感覚で言えば……


「皇后なんて肩身の狭い思いばかりで、面倒事が多いと思いますけれど」


「……貴方、なんて事を言うの!?」


 いけない、言っちゃいけない本音を口走ってしまったわ。


 流石に、皇后の位なんて肩身狭っ苦しくて正直面倒くさいと思うんだけれどな。

 漫画やラノベやアニメを、深夜までダラダラ読める見れる生活サイコー!なオタクとしては……なんて口が裂けても言えなかったけれどね。

 駄目なオタクの典型である。



 そこに、現れたのは。


「シルバーナ様、こんな所に。

 勝手に移動しないで下さい。


 御身に何かあったらどうするのです?


 ログネダ女官長、何を騒いでいる?」


 ブラックダイヤモンドの様な黒い髪に、碧い翡翠色の瞳。

 整った顔立ちなのに鋭い目付きで表情が乏しく、真顔ばかりだからか結構迫力あるのよね。


 グラン・ルクス。

 宮殿の毒婦シルバーナ様の護衛騎士だわ。

 そして、攻略対象の一人でもあるわ。


「だってこの女は、ドルンゲン皇后の位を軽視した問題発言を!」


「控えろ、ログネダ女官長。口が過ぎる」


「何を仰るのか、護衛騎士如きが!

 名家の出だからと言って、偉そうに!」


「父の実家が?片田舎のしがない家だが……

 こっちではそんなに有名なのか?


 貴方の侯爵家の方が余程大きいだろ?


 それよりも任された仕事をこなさないと、そろそろ皇帝陛下直々に苦情来る」


「……ふん!」


 と、女官長は鼻を鳴らして行ってしまったわ。


「申し訳ありませんでした。

 ログネダ女官長が出過ぎた真似を」


 と言って、グラン様は頭を下げて、シルバーナ様と向こうに行ってしまったわ。



「……何だ?あの女官長、失礼にも程がある!


 異国の出身とは言え、青薔薇の聖女セルシアナエリーゼ様にあんな態度を取るだなんて!

 僕が直々に皇帝陛下に報告する!」


「まあまあ、アレクセイ様。落ち着いて」


「それに僕のカメリアを何だと思っているんだ!」


 そうプンスコ怒って、アルヴェイン帝の陣地の方に走り出すアレクセイ様だったわ。


「だからアレクセイ様!?

 皇妃候補、アルヴェイン帝のお気に入りの女性との関係が疑われるような発言は口に出さないで下さいね?


 アンタ、カメリア様が関わると途端にアホの子になるんですから!」


 ヨハネスの忠言という名のツッコミが冴え渡るわ。


「……ああ、ヨハネス。

 アレクセイ様についていってあげて。

 今のアレクセイ様が皇帝陛下に何を言い出すか、分からないから」


「承知しました。俺も同意見です」



 それにしても……

 森の中なのに、虫や鳥の鳴き声が聞こえないわ。

 風も少なく、葉や木立の擦れる音も聞こえて来ない様な。


 あまりにも不自然な無音状態。

 たまに山の中でもそういう地点あるけれど……違和感が凄いのよね。



 カメリアは周囲を警戒して。


「それにしても、変ね?

 狩の最中にしては森が静か過ぎない?

 もっとこう……


 張り詰めた殺気?!」


 突然大声でいななき、暴れ出すシルバーナ様の馬。


「……痛っ?!」


 シルバーナ様は落馬するも怪我はなかったみたい。


 カメリアが咄嗟に暴れ馬に乗り、鞍と鐙を取って落ち着かせる。


 カメリアはクンッと鼻を利かせる。


「この匂い!

 その鞍と鐙を回収して!

 毒針が仕込まれているわ!」


「なんでそんなモノ!?分かった!」


 慌ててロジーが鞍と鐙を回収したわ。



 刹那、森の影から矢が放たれた。


 それを、グラン様が反射的に盾となって、受け止めたわ。


 カーンッ!


 金属を穿つ音。彼の甲冑を鉄の矢が貫いたわ。


 それを目撃したシルバーナ様は、取り乱して。


「嘘……グラン!嫌、いやぁー?!」


 シルバーナの悲鳴。初めて聞いたかもしれないわ。


 急襲は、一矢では終わらなかった。

 森の奥から二人目、三人目の刺客が接近してきたわ。


 しかも狐狩りの真っ最中、狩りの騒音に紛れてしまい、誰もこちらの異変に気づかないなんて!


「そこ!人影!」


 私が叫ぶと、カメリアは。


「承知!」


 カメリアが懐から取り出した短剣を投げ放つわ。

 刺客の一人の腕を貫き、矢を逸らしたわ。


 カメリアは一瞥して呟くわ。


「あなたが皇帝の寵妾でなければ、私は助けたりしないのにね」


「……言ってくれるわね」


 シルバーナ様も皮肉っぽく言うが、その手は震えていた。


 その時、馬車が現れ、シルバーナ様を馬車に引き込もうとする人影が!


「シルバーナ様?!貴方達何をするの!」


 叫んで慌てて追いかけるも、カメリアも引きずり込まれる!



 流石にロジーも、護身用のナイフを手にして。


「貴方達、エリーゼ様に何をするの!」


 と、牽制するも。



 私も何者かに、背後からナイフを突きつけられたわ。


「お静かに、青薔薇の聖女様。


 ただ、我々に大人しく従ってついてきてくださればいい」

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