第二部・アレクセイ様のカナリア嬢被害について
「元聖職者ヨハネスよ、告白します。
僕はカナリア嬢は大の苦手でした」
ある日の午後、ふらりと私の部屋にやって来たアレクセイ様は。
少しやつれた様子で、何故か私の護衛騎士ヨハネスに告白し始めるのでした。
「アレクセイ様?何故護衛騎士の俺に……」
「だってヨハネスは元聖職者だろう?
告解室をやった経験があるだろう?アレと同じだよ。
……カナリアはね。
カメリアがいなくなって、僕は大きなショック受けてるのにもかかわらず。
無理やりカナリアに初めて会わされた日に。
『アタクシの運命の人だわ!』と言って、他人のパーソナルスペース無視して、いきなり抱きついてくるし……キスをせがまれるし……」
「だいぶキツイですね」
「僕が勉強や、剣や馬の稽古しているのに、無理やり割り込んで邪魔ばかりしてくるし」
「厄介ですね」
「お父様との狩りや、帝都でのオペラにも、約束も話もしていないのに無理やりついてくるし。
しまいには『狩りなんて野蛮』『オペラがつまらない』と言って、自分の自慢話や不幸話ばかりをして感心や同情を誘ってこようとするしで……
僕の大好きな演目だったのに……!」
「それって……ちょっとおかしくないです?」
「そのくせ『アレクセイ様の話はつまらない!』『男性としての魅力がない!』と嫌味を言ってきて」
「……お、おう。それは辛かったですね」
ヨハネスがドン引きしているわ。
「耐えかねた僕が『カメリアはそんな事決して言わなかった!』と言い返したんだ。
そうしたらカナリアは『アレクセイ様が不貞を働いた!』と嘘をついて被害者ぶって……」
アレクセイ様は、それはそれは深ーいため息をつくわ。
「……まあ、拒否するよね。
しまいには、カナリアが女遊びで有名な騎士と一緒に駆け落ちして……」
カナリア嬢、だいぶアレクセイ様に付けた傷口が深いな?
「ひょっとしてアレクセイ様が女性苦手になったのって、カナリア嬢が原因では?」
「いや、他にも原因はあるんだけれどね……侍女の悪口とか、セラフィーナお母様の事とか……」
「従姉妹のカナリアが大変申し訳ありませんでした、アレクセイ様」
カメリアはおずおずと頭を下げるわ。
「いいんだ、カメリアは何も悪くないよ」
その時、向こうの回廊から足音が聞こえた。
アレクセイ様は何故か周囲を警戒するわ。
「ただ、またカナリアにつきまとわれるのが怖いのでね。
しばらくヨハネスを借りてもいいかな?」
「だから何で俺なんですか?!」
「君ならカナリアを何とか教化してくれそうだし!
カッコいいからカナリアもなびくかなって」
「俺をカナリア嬢の囮にしないで下さいよ!
俺だって嫌ですよ、あんな……!」
ヨハネスは飛び出しそうになる言葉を飲み込んで。
「いいえ、その……ふくよか過ぎるのは……」
ヨハネス、言っちゃおうとして踏みとどまったよ……。
「……ヨハネス、実は君って随分と口悪いな?」
「あのですね。
俺、元はおふくろと下町暮らし庶民育ち、おふくろが亡くなってからは孤児院育ちですよ?!
貴方達みたいにお育ちが良いわけじゃないんですからね?
……失礼しました。出過ぎた口を」
「いいえ。
カナリアが不摂生かつ貴族としての自己管理を怠り、他人に迷惑をかけてしまっているのは誰の目から見ても明らかよ。
それぐらい言われても当然ですわ」
さらに、カメリアの容赦ない一言。
「だって豊満なウチの母さんのドレスしか着れなかったって事だもの」
ヨハネス、アレクセイ様。ここは吹いてはいけませんわよ?
吹いたら負け……だから吹くなってば。
「皆、あのね?
太るのにも特別な才能や体質というものが必要であってね?
体質が合わなければ糖尿病になるし、100キロ超え出来ない人も多いのよ……
ヨハネスあのね?笑わないでくれる?
アレクセイ様も!」
前世の私が聞いたら確実に凹んでいるわ。
実家暮らしだと、親が心配するから食事制限や仕事後の夜に運動するとか出来なくて……まぁうん。察してね?
それに、病気や薬の影響で太りやすくなってしまったり、怪我で運動出来なくなってしまったりするパターンもあるからね。
あまり身体付きについてからかうのはやめたほうがいいのよ。
ロジーとメアリーがお茶を持ってきてくれたけれど、お茶請けは気を利かせてナッツにしてくれたわ。
何故か私もダメージを受けてしまったわ……ダイエット頑張ろ……。




