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限界オタクが悪役令嬢に生まれ変わって最推しに出逢えて尊い!ので、推しの闇落ちルートを全力回避します  作者: 睦月のにこ


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第二部・ドルンゲン宮殿にロジー達が来ました。

 あの夜が明けてから数日。


「それで、新しい侍女の手配はまだなの?カメリア」


 ドルンゲン宮殿の一角に、皇后候補の私の私室があてがわれたわ。


 豪華絢爛な部屋で、珍しい事にバスルームまでついている。

 給湯器も最新の魔導技術のもので、暖かいお風呂に入れるのはありがたいわ。

 良いホテルのちょっとしたスイートルームみたい。


 カメリアの部屋は、私の部屋に隣接する侍女の部屋よ。


「いえ、もうすぐ信頼のおける者が来る手筈です。

 それまではわたしとヨハネスで回してみせます」


 ドルンゲンに用意してもらっていた侍女達が、急に来なくなってしまったのよね。


 ……どうしたのかしら、もしかしてボイコット?



 カメリアとヨハネスがヒソヒソと内緒話をしている。

 ちょっと遠くて聞こえづらいわね。


「……どうする?ヨハネス。

 ドルンゲンの宮廷に新しい侍女の派遣について問い合わせても音沙汰無しって、異常じゃない?」


「……仕方ないだろう。

 あの侍女達は、常に懐に何か忍ばせていた。

 おそらく盗聴器や暗器の部類だろう。


 それに、セルシアナエリーゼ様の私物を勝手にチェックするなど不審な動きが多かったのだから、解雇するしかない」


「……わたしが刺客に襲われたのも、セルシアナエリーゼ様には秘密にしておいた方がいいかな」


「……そうだな。

 あのお嬢さんが今後、刺客に怯えて暮らすのは忍びない」


「いやいや、それぐらい承知の上、覚悟ガン決まりでドルンゲンまで来ているから、気にしなくてもいいのだけれど」


「って、セルシアナエリーゼお嬢様!

 いつの間に俺達の話を?」


 それにしても、アルヴェイン帝は本当に青薔薇の聖女である私の事を放置するおつもりだわ。


 レオニード皇太子の動向はまだ分からない。


 暇ね……本でも読もうかしら。

 それとも、これを機に創作でもするかな?

 刺繍や、ぬいぐるみを作るという手もあるわね。


「そういえば、カメリア。貴方も魔法使えるの?」


 そう問いかけると。


「お嬢様、そういった話は控えて下さいませ。

 盗聴される恐れが……」


「……盗聴などの器具、術式は俺が一通り解いたから大丈夫でしょう。

 カメリア、話を続けて」


「……先程のご無礼をお許し下さい。セルシアナエリーゼ様。


 わたしは……魔法を使えるは使えるのですが。

 その効果は非常に限定的で……剣や武具などに属性付与、つまりエンチャントする魔法しか使えなくて」


「付与の魔法?珍しいわね」


「それも一番相性がいいのが、東方の軟鉄で……」


「ひょっとして玉鋼?日本刀?」


「何でご存じなんですか?

 ですが、軟鉄はドルンゲンの厳冬には耐えられないんですよね」


 聞いた事あるわ。だから満鉄刀などは古来の製鉄技術には寄っていないのよね。


「ドルンゲンの剣を打ち直して、刀っぽくはしてもらっていますが……

 魔法効果は思ったほどではありません。おそらく半減……

 どなたか来られますね」


 ふと、ドアからノックの音が聞こえ、控えめに開かれたわ。


「失礼します。

 セルシアナエリーゼ様はご機嫌いかがですか?


 ……カメリアとヨハネスが身の回りの世話をしているのか。他の侍女は?」


 アレクセイ様が現れたわ。


「アレクセイ様!

 申し訳ありません、今侍女の数が足りず……」


 アレクセイ様の方も頭を下げる。


「こちらこそ申し訳ありません。

 何故か新しい侍女や護衛の手配が滞ってしまって……

 今、こちらでもベルツ領の信頼出来る者を探しています」


「いえ、アレクセイ様が謝る事では……


 あと、あの夜の件ですが。

 助けていただいて大変ありがたいのですが、今後諜報活動できなくなる可能性もありますので……」


 ピンチに駆けつけるアレクセイ様はかっこよかったわ。うっかりすると惚れてしまうわよね。

 いや、私にはリオがいるから……ね?


「ところで、アレクセイ様は最近こちらに良くいらっしゃいますよね?……お仕事は?」


「……実はですね。

 往年の将軍に、上手く行っていた東方戦線の指揮権を奪われてしまったのです……。

 おそらく手柄が欲しかったのでしょう。


 それで帝都の要塞勤務になったのですが。

 練兵場担当に回された上、干され気味に……」


「ご愁傷さまです、アレクセイ様……」


 かなりお労しいアレクセイ様だったわ。

 アレクセイ様がレオニード皇太子に歯向かった趣向返しだったりするのかな?


「もう疲れた……カメリア。お茶を」


 拗ねた顔で、私の私室のソファに寝そべり、不貞腐れるアレクセイ様だったわ。


「茶葉はアッサムで、濃いめのミルクティーでよろしいですか?ハチミツは多めでしたよね」


「ああ。お願いするよ。

 ついでに膝枕してくれないか?カメリア」


「お断りしますわ。

 アルヴェイン帝にバレたらどうするおつもりです?」


「昔はしてくれたじゃないか」


「それはまだ幼かった婚約者だった頃の話でしょう?

 今は将軍と、セルシアナエリーゼ様付き侍女。

 あまりにも身分が違います」


「ならば、雇い主として命令する。膝枕せよ」


「そんな無茶苦茶な……」


 そして唐突の推しカプのイチャつきである。


「こら!仮にも皇后候補の前でそんな事を……!」


 と、慌てて注意するヨハネスだったわ。


 私も追従しようと思ったのに。


「膝枕!最高!ファンサありがとうございますー!」


 本心が先に口から出ましたわ。


「セルシアナエリーゼお嬢様?

 何で他人の膝枕に喜んでいるんですか?

 モラルは何処行ったんです?」


 推しカプ善きに計らえ。あぁ〜しみ入るわ……。



 そして、新しくやって来た侍女とは。

 赤い髪の、よく知っている顔の娘でした。


「エリーゼ様!大丈夫ですか?!」


「ちょっと嘘でしょ!何で来ちゃったの、ロジー!?」


 ローズベル王国の光の聖女こと、ローズティアである。

 本気でどうしてこうなった?!


「えへへ~!教会抜け出して来ちゃいました!」


 満面の笑顔のロジーに、頭を抱える私だった。


「エルレン様は?

 フィオナ国王陛下にもどう申し開きをすればいいのよ?」


「あぁ、大丈夫です!

 その二人に『行って来い』って見逃してもらいましたから」


 エルレン様にもフィオナ新国王陛下にも見逃してもらった、じゃなくて公認かな?

 あの二人、何やらかすか分からん人物だな。


「お久しぶりです、セルシアナエリーゼお嬢様、カメリア!

 アレクセイ将軍も、ヨハネスも元気そうで何よりです。


 ロジーがどうしても来たいって言うから、連れてきちゃいました!」


 サラッと恐ろしい事をのたまうメアリーだったわ。


「ちょっと、メアリー?アニータさんは来てないの?

 ……よりによってメアリー、貴方なの……」


 カメリアは困惑しながら問いかけるも。

 メアリーは少し困った笑顔で答える。


「アニータさんは王立学園の医学部に進学する為に、一旦屋敷を辞めるとの事だったんですけど」


「ああ、そんな気はしていたのよ。

 アニータがいなくなるなんて寂しいわ……」


 私は結構アニータを頼りにしていたのに。

 仕方ないわよね。


「それが……


 ロベルト旦那様曰く『どうせウチの公爵家専属の医者になるのだから』と仰って。

 マリヤカトレア奥様の話し相手として雇い入れたままにして、お給金もそのまま出すつもりだそうです。


 部屋も勉強するのだからと、空いている客室を一人で使っていいと」


「……破格の待遇じゃない!?

 奨学金のつもりかしら。そんな事ある?」


「ウチのお母さんも珍しがっていました。


 一時期は、教会に入った光の聖女の侍女に……って話もあったんですけどね。


 お父さんとウィル兄は、アニータさんのことを侍女として雇っていたけど、公爵夫妻は養女のつもりで長年接していたのかもって」



 ……思い当たる節があるわぁ。

 うちのお父様お母様、妙にアニータやメイド達と仲良かったものね。


 ローズベルでは、貴族階級と労働者階級で話もしないなんてザラなのよね。


 なのに、メイドとケラケラ話すお父様に一度「階級差気にしないの?」と問うたら。

 ウチのお父様とお母様はケロッとこうおっしゃったわ。


「だって、ウチに働きに来ている彼女達から庶民の実情聞き出さないと、仕事にならないじゃないか」


「メイドや庭師達とのおしゃべりぐらいお目溢しして欲しいものだわ。

 身分を気にして誰とも話さないなんて、気が滅入るじゃない。

 その内、喋り方すら忘れてしまうわよ」



「……思い返せばお父様とお母様、大貴族なのにフランクだったわね」


「キャルロット公爵夫妻は、本当にお優しすぎるわ」


 言って、カメリアはため息をつく。



 メアリーはちゃっちゃとメイド服に着替えて。


「ロジー、それじゃお掃除から始めるわよ。

 その後はお嬢様のクローゼットの整理にベッドメイキング……

 ああ、洗濯は宮殿の専属の方に任せてしまっていいのですよね?


 まあ!アレクセイ将軍もいらっしゃるの?嬉しい!

 けれど、お掃除の邪魔なので少し避けてくださいまし」


「……はい、承知しました……」


 すごすごと引き下がるアレクセイ様。


 案外、推しにも容赦のないメアリーだったわ。



「ロジー!なんで来たんだ?

 何かあったら君を真っ先に教会へ送り返すからな!」


「ヨハネスさん冷たいー!


 ねぇ、メアリーさん。

 一旦クリームティーにしません?お腹空いちゃって。


 セシリーさんのフォレスティエ商会から、餞別で茶葉や、スコーンや焼菓子をいっぱいもらって来たんですよ!」



「……ほう、青薔薇の聖女に新しい侍女がついたか」


 冷ややかな視線、冷たい声に緊張が走る。

 アルヴェイン帝?!いつの間に来たの?


「あ!アルヴィおじ様!


 帝都ではご親切に道案内をしていただき、どうもありがとうございました!

 お礼にローズベルのお茶はいかがです?」


 ロジーがのん気に話しかけるわ。

 って、ロジーとメアリーに帝都の道案内したのか、この狂帝は。


「もらっておこう。

 ワシも仕事が忙しいのでな、すぐに席を立つようだが」


「アルヴィおじ様ってここの宮殿勤めなんですか?

 こんな大きな宮殿じゃ、管理大変そうですね!

 それにドルンゲンって、こんな寒くて冬は日照不足もあるなんて、作物もそんなに育たなくて大変じゃないですか?」


「むう……まあ、そんな所かの」


 アルヴィおじ様の正体を何も知らされていないロジーが、アルヴェイン帝をやり込めているわ。

 あのアルヴェイン帝がタジタジになっているなんて。


「ああ、スコーンはクリームたっぷりで、ストロベリージャムとマーマレードも多めに頼もう」


 サクサクとスコーンを食べて、紅茶を一気に煽り。


「それではな。

 青薔薇の聖女と光の聖女よ。


 カメリア嬢ちゃん。

 せいぜい壊さないようにな?」


 そう言って立ち去って行ってしまったわ。



「あれ?アルヴィおじ様、アタシは光の聖女なんて一言も……」


「ローズティア様、メアリー嬢。

 実はあの方はですね……」


 アレクセイ様に説明されて、悲鳴を上げるロジーとメアリーだったわ。

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