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限界オタクが悪役令嬢に生まれ変わって最推しに出逢えて尊い!ので、推しの闇落ちルートを全力回避します  作者: 睦月のにこ


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第二部・元悪役令嬢がドルンゲン帝国の紅宮殿へ入りました。

 ローズベルの港からドルンゲンの帝都行きの船が出て、何日が過ぎただろうか?

 アレクセイ将軍とは別室だからこそ、カメリアはこんなことも口に出来る。


「今は青薔薇の聖女様の侍女だけれど。


 一時はクルティザンヌになり損ない。

 裏家業と落ちぶれた私が、悪逆非道の皇帝陛下への貢ぎ物……か。

 ねぇ、どう思う?ヨハネス」


「ははっ三文芝居だとしても滑稽だな。

 そんなお前を探し求める皇帝陛下は、なかなかいい趣味をしていらっしゃる」


 ヨハネスの皮肉に、カメリアは苦笑する。


 かつて、クルティザンヌとしてそう言ったサロンに何度か顔を出したことがあった。

 しかし、有望株の男性は叔母や他の姐さん達に持って行かれ、パトロンが付かず苦戦した。


 そこでベルフェッティ氏に見つかり、身請けと言う名で保護されたのだ。


 貴族としてそれなりの教養を身に付けていたため、当初はベルフェッティ氏の病弱な婚約者の影武者として、容姿の似ていたカメリアが雇われたようなものだった。


 だが、剣の才覚……殊の外、始末屋に向いていると分かってからは一転。

 かつてヴェネティアを奪ったドルンゲンの軍の要人達の始末に駆り出される事になったのだ。


「アレクセイ様は……

 私と貴方の関係に気づいているの?」


「ただの相棒ではないとは勘付いているようだが。

 まぁ、気づくわけがないだろう。


 大方、愛人として同行させたつもりじゃないか?

 貴族なんてそんなものだからな」


「愛人か。随分と安っぽい話ね。

 まあ、対外的にはしばらくはそれで通そうかな」


「……ほら、カメリア見ろ。

 あれが例のドルンゲンの紅宮殿だ」


「わたし、昔おじいちゃんに一度連れられてきただけだからあんまり覚えていないな。

 ねぇ、懐かしいの?ヨハネス・ペイルライダー」


「……ああ、腹の底から煮えくり返るほどにな」


※※※


 一方、隣の部屋で私は壁に聞き耳を立てて、カメリアとヨハネスの会話を盗み聞きしていますわ。

 端から見て、すっごい不審者でしてよ。


「……うふふ。ヨハネスルートかもしれないけどイベント回収、フラグ回収しなきゃ……

 ……って、何故アレクセイ様もこの部屋にいるんですか?」


 その隣でアレクセイ様も、コップを壁に押し当ててそれを耳にして、隣の部屋の会話と様子を伺っているわ。


 絵的にも法的にもヤバい二人である。自覚はしているからね?

 大貴族の産まれなのに、ご覧の有り様だよ!


「……この部屋が一番カメリアの部屋に近いので。


 ……僕のカメリアが、僕以外の男と一緒にいるだなんて……!


 ……いえ。皇帝陛下へ召し上げる方に何かあったら事ですので、監視を」


 こんな事してますが、先程までアレクセイ様は仕事していらしたのよ。

 仕事の指示を部下の方達にテキパキ出していて判断が速かったわ。


「……だったら直接カメリアの部屋に行きませんこと?」


「……そんな事してカメリア嫌われたらどうするのです……!?


 あっカメリアがそろそろこっちに来そうですね。

 僕らもソファに移動しましょう」


 つくづく残念な恋愛ポンコツだな、このアレクセイ様は。



 ローズベルの港町から北の海を経由し、ドルンゲンの帝都を流れるレーヴァ河を遡上する航路の船旅。

 それも終わり、私はドルンゲン帝国の地を初めて踏む。


「こういうのって全裸で馬に乗ったり、お金撒いたりして、パフォーマンスしなくて良いの?」


「セルシアナエリーゼ嬢。それはやり過ぎの一例ですよ」


 ドルンゲンの帝都サンクトピーテルブルッフの港から、すぐさま豪華な馬車に乗り込み、ドルンゲンの心臓部である紅宮殿へ。

 衣装やローズベルからの調度品も持って来ているから結構な馬車の数になるわね。


「それにしても、帝都の街並みは美しいわ。

 まるでヴェネティアの様ね……」


「なかなか察しがいいですね。


 元々この帝都サンクトピーテルブルッフは湿地帯に建っています。

 昔の王の開拓により、アドリアーノ海の浅瀬に建てられたヴェネティアを参考にして街が作られたのです」


 街並みは荘厳で重厚な建物が多いけれど、カラフルで可愛らしい色合いのものが多い。


「ああ、あの古い宮殿は当時の女帝の趣味ですね」

 と、アレクセイ様は苦笑するわ。


 カメリアは落ち着いている様に見せかけて、ちょくちょく馬車の外を眺めている。おのぼりさんみたいだわ。

 対してヨハネスはすました顔をしていたから、実は帝都に詳しいのかしら?



 パレードの様な馬車の一団を、ドルンゲン帝国民は食い入る様に見ていた。

 歓声を上げるもの、眉をひそめるもの。ブーイングもあったわね。



 金細工と大理石、赤い絨毯のドルンゲン宮殿に到着するなり、身なりを整えて私達ローズベル一行は謁見の間に入る。


 調度品しろ、飾られている絵画にしろ、ローズベルより宮殿の造りが豪華じゃない?


 中にはドルンゲン帝国の上等兵の赤い軍服を来た貴族のお偉方。

 サラファンを模したベルベット生地の宮廷衣装ドレスに、ココシュニクの大貴族の貴婦人達が整列して待ち受けていたわ。


 ……ローズベルよりドレスが贅沢な作りじゃない?



 玉座には、あの白髪交じりのブラックパールの髪をオールバックに撫でつけ、軍服を着込んだギラギラとした銀の瞳のおじ様が鎮座していた。


 あの仮面舞踏会で、アルヴィと名乗った男。

 あれこそ悪帝、狂帝と名高いアルヴェイン帝だわ。


「ローズベルからまかり越しました。

 セルシアナエリーゼ・フォン・キャルロットです」


「ふむ、ロースベルの青薔薇の聖女か。

 遠方からご苦労」


 ざわざわと騒ぐ廷臣たち。


「皇帝陛下の皇后候補?あんな小娘が?」


「片田舎のローズベルの青薔薇の聖女が何だと言うのだ?」


「蕾のうちに摘み取ってしまえば、大輪の花を咲かせる事もあるまい」

 

「アルヴェイン帝もなかなか酷な事をする……」


 散々な言いようね。

 私は内心で嘆息しながらも、平然とした表情を浮かべるわ。

 この国では、愛想笑いが逆に失礼に当たるらしいからね。


 カメリアとアレクセイ様の姿を目で追いながら、心の中で推しカプの動向を観察しているわ。


 カメリアは私の斜め後ろにいる。

 アレクセイはチラチラとカメリアの方を確認している。

 カメリアの手を握りたいのに、少し距離もあるし、何も出来ずアレクセイ様は若干モヤモヤしている様子よ。


「ローズベルからの遠路、はるばるご苦労様であった。

 ところでキャルロット公爵令嬢は青薔薇の聖女だとか。

 何、余興だと思って、青薔薇の秘術の一つでも見せい」


 言うに事欠いて、余興って何よ?

 敵国だからとはいえ、青薔薇の魔法を軽く見ているわね。


「申し訳有りません。

 ローズベルの青薔薇派教会からは、聖女の御業はおいそれと他人の見世物にするべきものではない。

 ……と、教えられています」


「……ふん。つまらんなぁ」


 そう告げると、皇帝アルヴェインは私への興味を無くしたようだったわ。

 まあ、こんなものよね。


 多分ではあるけれど、ゲームではカメリアと一緒に輿入れしてきたライバルのモブ令嬢がいたはず。

 私はその立ち位置よね。あとは基本的に大人しくしていればいいだけ。



 白獅子将軍アレクセイ様が高らかに告げるわ。


「アルヴェイン皇帝陛下。

 かねてよりお探ししていました、カメリア・バートンが見つかりました。

 カメリア、こちらに」


「カメリア・バートンでございます」


「あのバートン家の?

 辺境の騎士上がりの娘ですって?」

「しかも一時はメイドにまで落ちぶれていたとか!」


 ざわめく廷臣たちの声を背に、カメリアは堂々と歩み出る。


 紅の絨毯を進み、玉座の前で見事なカーテシーを披露した。

 私と船の中で散々練習したものね。


「皇帝陛下、お久しゅうございます。

 カメリア・バートンでございます」


「貴様がカメリア・バートンか。

 マーク・バートンの孫娘だな」


 皇帝は目を細めて笑う。

 だが、表情筋は動いていても、肝心の目が笑っていないのよ。

 はたして歴戦の猛者故なのか、苛烈な気性なのか。


「貴様がまだ小さかった頃。

 マークに連れられて宮殿に来たことがあったのを、覚えておるか?」


「まあ、私と祖父マークのことを、覚えていてくださったなんて!大変光栄ですわ」


 確かここで、モブのライバル令嬢が声を上げるはずよね。これは私の役割かな?


 大きく息を吸って、私は大声で叫ぶわ。


「貴方!侍女のくせにしゃしゃり出て来ないで!」


 すると、アルヴェイン帝は険しい顔をして、台詞通りに怒鳴りつけるわ。


「黙れ!小娘が!

 マーク、あやつはワシの大恩人じゃ。

 ワシが皇帝の座に就けたのも、アヤツの密告のおかげよ!」


 皇帝は愉快そうに笑った。


 だが、その言葉に周囲の表情が引きつったわ。

 動揺とざわめきが一瞬で広がってゆく。


「ええ、祖父が前国王の暗殺と、その実行者を陛下に密告したこと。

 それが、貴方様が帝位に上られるきっかけとなったのですものね」


 廷臣達の反応が見て取れるわ。


 若い者は驚愕、恐れの表情。

 そして重鎮、古株の者からは、軽蔑と嘲笑。


「なのにあやつときたら……爵位などいらぬ、元の領地だけで良いと、謙遜しおって!」


「あら。

 陛下同様、田舎の軍人上がりの祖父には、男爵位すらもったいないほどでしたわ。

 人の上に立つより、以前からの土の上に立つ生活が余程性に合っていたのでしょう」


 カメリアの優雅な笑みと台詞に、皮肉が隠れていることを、皇帝は気付いたかしら。


「よし。カメリアのお披露目のためにも、早速今宵晩餐会を開くとしようぞ!」


「まあ、アルヴェインおじ様ったら!

 嬉しゅうございますわ。

 ですが……」


 カメリアは申し訳なさそうに一礼をして。


「わたし、長旅の疲れが抜けず……

 誠に申し訳ありませんが、辞退させていただきたく存じます。

 また改めて、晴れの場を楽しみにしておりますわ」


 皇帝の顔がほんの一瞬だけ、凍りついたように見えた。


 私は胸を撫で下ろす。


 よし。カメリアは、無事に舞台から降りられたわ。

 アレクセイ様もホッとしているわね……このまま無事に事を運べそうね。



 その時、アルヴェイン帝の後ろから若い声がした。


「アルヴェインお父様」


「ああ、すまない。こちらも皆に紹介しようと思っていた者がいるのだ。


 出て来なさい。レオニード」


 年格好はリオと同じぐらいの、仮面をつけた青年がそこにいた。


「ワシとアデレード姫の孫に当たる、レオニードだ!

 今後立太子させる予定である!」


「何ですって?どういう事だ……」


 将軍職であるはずのアレクセイ様が慌てふためく。


 ドルンゲン帝国のアデレード姫……カミーユ神父の調査報告書にあった名前だわ。


 それも、リオの祖母マダム・アルディの本当の名前だと。


「アルヴェインお父様」


 その声に、廷臣や、貴族、軍人達がざわめく。

 私も仮面の君に強烈な違和感を感じているわ。だってこの声は……!


「美しい彼女を……」


 彼女?カメリアかしら?

 流石今作のヒロインはモテるわね。と、私は高を括っていたら。


「あの美しい、青薔薇の聖女を私に下さい」


 青薔薇の聖女って私!?何故私なの?


 どうして次作ヒロイン枠に、前作悪役令嬢で今はモブキャラの私が入り込まなければならないの?

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