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限界オタクが悪役令嬢に生まれ変わって最推しに出逢えて尊い!ので、推しの闇落ちルートを全力回避します  作者: 睦月のにこ


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第二部・ドルンゲン行きの準備をしました。

 ドルンゲン帝国行きへの準備中、私はふと疑問を口にする。


「そうだわ、アルヴェイン帝の好みの女性って何ですか?」


 アレクセイ様は少し考えて。


「……うん?そうですね。

 アルヴェイン帝は高貴で清らかな乙女も、艶やかな夜の蝶も好みですよ?」


 ベルフェッティ様は苦笑いを浮かべておっしゃるわ。


「アルヴェイン皇帝陛下は、女性に対しては恐るべきオールラウンダーであらせられます」


 ベルフェッティ様、一体アルヴェイン帝と何があったの?


 カメリアは軽蔑した目つきで吐き捨てたわ。


「……つまり節操なしか。ケダモノめ」


「カメリア、もう少し言い方を」


 私も内心「けっハーレム厨かよ!」なんて思っていませんからね。


 しばらく気まずい沈黙がその場に降りた。



 沈黙を破って、アレクセイ様はおっしゃる。


「何はともあれ。

 セルシアナエリーゼ嬢、何かあったらちゃんと報告して下さいね。

 いざとなればすぐさま武装蜂起して狂帝をシメますので。

 もちろん、カメリアもだよ?」


 心強いわね。それにしても。


「だったらいっその事、結婚に偽装したカチコミにしません?この作戦」


 カメリアは思わず吹いてしまったわ。

 アレクセイ様は不思議そうに小首を傾げて。


「カチコミ……って何ですか?

 あぁ!もしかして、兵は神速を尊ぶという話でしょうか?

 ローズベルではその様な新しい軍事用語が……?」


「アレクセイ様、おやめください

 品位が疑われます。


 セルシアナエリーゼお嬢様?

 青薔薇の聖女がそんなあるまじき言葉を使わないでくださいませ」


 カメリアが必死で嗜めるわ。


「いくらドルンゲンでピンチになったからといって、ドスを構えて『タマァ取ったらぁ!』と鉄砲玉の如く特攻かけたり、ヤケクソになって青薔薇の聖女の秘術でドンパチ戦争しないで下さいよ?」


「ドス?鉄砲玉?は分からないけれど。

 セルシアナエリーゼ嬢ならやりそうですね!」


「そんな事やらないわよ!」


 何処の任侠映画の抗争シーンなのよ!

 せっかくの異世界ぐらいキラキラした恋愛ぐらいさせなさいよ!


 ヨハネスが部屋の外で警備をしているんだけれど。

 ドアの隙間から見えのは、ヨハネスが肩を震わせて笑いを堪えていた姿だったわ。



「カメリア、貴方のドレスはどうするの?」


 私の輿入れ用のドレスはお母様が泣く泣く注文していたけれど……。


 カメリアは少し考え込んで。


「ドルンゲン本国に嫁入りするなら、サラファンとヴェネツ着込まないとでは?」


 サラファンとヴェネツとはロシアの衣装よ。


 アレクセイ様は。


「多分だけれどアルヴェイン陛下は、異国の聖女、高貴なご令嬢を手に入れたいだけだから、ローズベルのドレスのままで良いと思いますね」


「では、私は青薔薇の聖女相応しい格好をするのが良いのかしら?」


「かもしれませんね」


 聖女っぽい格好か。難しいわね。


「とは言え、わたしのドレスと言っても。

 お給金は貯めてありますが。

 そんなに高いものを何着も買えません」


 カメリアはしょんぼりする。


 するとアレクセイ様は自慢げに胸を張るわ。


「ふふふ。

 実は僕の方で、カメリアの為にドレスを揃えたんだ。

 どうかな?」


 そう言って、ウチのメイドや執事たちにカメリア用のドレスを持ってこさせるアレクセイ様だった。

 まるで搬入作業だわ。


 カメリアは一着手に取り、慎重に身体に当ててみる。

 しかし、カメリアは深いため息をついて首を横に振る。


「ありがたいのですが……あの、申し訳ありません。アレクセイ様。

 多分、わたしのサイズ感には合わないかと」


 アレクセイ様は悲鳴を上げる。


「そんな馬鹿な!

 だって僕のカメリアは、細身で清楚なはず……?!」


 カメリアに無理やり試着させようとするアレクセイ様だった。


「アレクセイ?落ち着いて下さいまし」


 流石に二人を引き離して、目隠し用の衝立をメイドに用意させ、カメリアの試着をさせた。


「試着終わりました、ギリギリ着れているのかなぁ……?」


 するとオフショルダーのドレスを着たものの、胸をサラシで隠したカメリアが現れたわ。


「サラシ?!何でサラシ巻いてるの?」


 困惑する私でしたわ。

 ため息をついてカメリアは白状したわ。


「サラシ巻くほうが、下着を特注で作るより安上がりなんですよ」


「カメリアが、僕の知らない内に大人の女性に……?!」


「……アレクセイ様?

 何年前の話をしてるんですか?

 私はもう立派な成人女性ですよ?!


 それに、クルチザンヌを始める前に『相応しい体型に!』って叔母様が言うから……

 一旦体重を増やして、胸以外を痩せる様にダイエットして……」


 その瞬間、ビリッ!という不吉な音がした。


「嘘。サラシがまた駄目になった?

 まさかドレスも?」


「ドレスの方は縫い目の糸が切れただけね。

 ドレスってリメイクが多いし、絹の生地をを傷めないように、荒く大雑把に縫われているのよ。

 大丈夫、気にしないで」


 

 アレクセイは顔を真っ赤にしながら。


「あぁカメリアが、僕の清楚で可憐なカメリアが妖艶になっていく……?!」


 私はとっさにアレクセイ様の目を必死に塞ぐわ。


「アレクセイ様。見てはなりません。

 それは紳士の振る舞いではありませんわ」


 アレクセイ様の焦燥に、カメリアはむくれて。


「まさかアレクセイ様。

 私が太ったって言いたいんですか?


 もう面倒!着膨れするし重心はブレるし、走ると痛いし!」


 アレクセイ様にキレて八つ当たりしちゃったよ、カメリア。


「駄目だ!カメリア、君の身体を大切にして?」


「この身体のせいで、既製品の可愛い服や可愛い下着が着れないのよ!サラシ巻けばいけるけど。 

 わざわざ大きいサイズや、特注で高い値段出さなきゃいけないのが辛い……

 周りに凄い顔、妙な噂されるのも辛い……!」


 うん、カメリア。それは……生き辛いね。


 私もドレスを一着手に取ってみる。

 カメリアがこれを着れるの?ってぐらい細い作りのドレスだわ。


 私は近くにいたメイドを呼びつけて。


「誰かセリーヌさん呼んできて。

 デカいシノギが来たって伝えればいいから」


「あ、なら下着も!最近キツくなってきて」


「僕の可憐なカメリアがさらに妖艶に?!」


「アレクセイ様、しっかりなさって」


 ぶっ倒れるアレクセイ様である。


 ……この人の情緒、忙しいな?




 取り敢えず、お茶で小休憩を取ったわ。


 今日のスイーツはプチシュークリームのチョコレートソースがけよ。食後のデザートにも出るのよね。

 こっちだとシュークリームをフォークとナイフで食べるのには、驚いたわ。


 好物の甘いものを食べて、調子を取り戻したアレクセイ様は、また突拍子のない事を言い出したわ。


「あぁ、そうだ。カメリア。

 きっとアルヴェイン帝を誘惑する場面もあるだろう。


 クルチザンヌの手腕、僕で試してくれないかな?」


 アレクセイ様の突然の提案。

 カメリアは困惑して。


「はい……ええと?

 と言っても、わたしは叔母様や姐さんたちにお客を盗られ……

 いえ、ただの引き立て役に過ぎませんでしたが。

 それでも構わないのなら……」


 なんですと?

 私がいるのに?目の前でなんて役得!


「ええと。

 わたしが結婚しているという想定でお願いしますね。


 ……ああ、麗しいアレクセイ様。

 わたしはなんて罪深い女なのでしょう。


 夫に結婚して三日飽きられてしまってから、貞淑な乙女の様に過ごしてきたと言うのに。


 貴方の情熱に、身を焦がされてしまいそうだわ……!」


 そんな昔のロマンス文芸か、三文芝居の様に歯が浮く台詞を言って、アレクセイ様の胸に飛び込むカメリア。


 アレクセイ様は顔を真っ赤にしてフリーズしてしまうわ。


「……そんな、嘘だ。悪夢だ。

 僕だけのカメリアが……

 僕というものがありながら結婚していたなんて!」


「……あぁ、いいえ。

 エスメラルダス叔母様がこうやってお客様に言い寄っていたのです。

 それを真似しているだけで」


 私もすかさずフォローを入れるわ。


「アレクセイ様!想定、設定でしてよ!」


 ど修羅場美味しいです。

 と、目をキラキラして見つめる限界オタク丸出しの私である。


 カメリアは熱っぽい眼差しと、ため息一つ。


「貴方の愛と情熱のためなら、わたしは罪を犯してもいいわ……

 不貞という、真実の愛の罪を」


 そして、ゆっくりとアレクセイの唇に指を這わせる。


 アレクセイ様、陥落。

 その場で膝から崩れ落ちた。


「そんな……僕の清らかなカメリアが大胆に……?!」


 そんな、世迷い言の様な悲鳴を上げながらである。

 アレクセイ様、いくらなんでも恋愛ポンコツ過ぎない?


 騒ぎを聞きつけて、ヨハネスが踏み込んで来たわ。


「大丈夫か?カメリア!

 アレクセイ様はどうされたんだ?」


 オロオロしながらも、カメリアはアレクセイ様を介抱しながら。


「ヨハネス……どうしよう。


 アレクセイ様に命令されて。

 軽くアレクセイ様をクルチザンヌ風に挑発したら、気絶しちゃった……」


 ベルフェット伯爵は、重い口を開いて仰ったわ。


「あー……刺激が強かったんだよ。

 アレクセイ閣下、実は女性経験無いんだよね……」


「つまり……どう、てい……だと!その顔で?」


 ベルフェット伯爵はおもむろに頷く。

 そこはアレクセイ様の面子のために否定してあげてよ。


「将軍閣下はね、シャイなんだよ……その形に合わないけれど。

 なんでも昔、愛を誓い合った婚約者に純潔と貞操を誓ってるんだとさ」


 そう、アレクセイはカメリアに純潔と貞操を誓っているのだった。愛が重い。


 私は神に感謝を祈りながら、無言で推しカプ大勝利を噛み締めていましたとさ。


 ヨハネスは呟く。

「この計画本当に大丈夫か?

 ……あとプチシューを一つもらっても?」


 カメリアは頭を抱えて。

「……不安だわ」



 一方、蚊の鳴くような声でアレクセイ様は呟く。


「……カメリア、駆け落ちしよ」


 どうしても言葉に出来なかったアレクセイ様でした。


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