表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
限界オタクが悪役令嬢に生まれ変わって最推しに出逢えて尊い!ので、推しの闇落ちルートを全力回避します  作者: 睦月のにこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/81

第二部・絢爛豪華な仮面舞踏会は陰謀の匂いがしました。

 仮面舞踏会が開かれる日の早朝。

 廊下からなんだか話し声がするわね?と、私はこっそりと様子見に行ったわ。


 すると、廊下の薄暗い隅の方で、メアリーがカメリアを詰めていた。


「ねぇカメリア。

 アレクセイ様とは、どういうご関係なの?


 どうして貴方が選ばれたの……?

 まさか、今日の仮面舞踏会もアレクセイ将軍とご一緒するんじゃないでしょうね?


 事によっては、メイド長に言いつけなきゃならないわ……!」


「ちょっとメアリー、落ち着いて。

 アレクセイ様とは何もないわ。


 あのお方のただの気まぐれよ。


 それにリヤって呼んでって何度言ったら……!」


 ああ、異世界と言えど、女の友情とは脆いものですわね。好きな人が一緒なら、余計に……。


 ……などと、物陰からカメリアとメアリーの仲に亀裂が入った瞬間を目撃してしまった私ですわ。

 元・悪役令嬢は見た!じゃないんだから。


「……ロジーから、アレクセイ様の事情をお聞きしたわ。


 婚約者の初恋の君と、生き別れだなんて!



 なんてお可哀想で……ロマンティックなの?

 仮面舞踏会で恋焦がれた元婚約者との奇跡の再会があったりしたら、どうしましょう!


 でもカメリアとはどうなるの?

 メイドとの身分差の恋も素敵……!

 カメリアとアレクセイ様、初恋の君で三角関係になってしまうの?


 ああもう……詩にしたためてもいい!?

 いっその事、小説にしたらどうかしら?

 昔の文芸のお友達や、メイドの皆、喜ぶかなぁ?」

 

 メアリー、嫉妬してるんじゃなくてそっちかい!


 メアリーってお貴族産まれの割に、人付き合いもそつないけれど、恋に恋するお嬢さんなのよね。


 ただ、メアリーってスキャンダルやゴシップを他人にバラしてる時があるのよね……。


 それでメイド仲間に入れてもらっているフシがあるけれど。

 大丈夫かしら?その内、トラブルに発展しない?


「メアリー、お話中失礼だけれど。


 カメリアがアレクセイ様と出かける事になったのは、私のお目付け役としてよ?


 それに現実の人間や三次元、生モノをそのまま主題にした創作はイカンのですよ。

 下手すると商標権に触れたり、名誉毀損になりかねないわ。

 他の人に嫌がられて炎上騒ぎにもなりかねないのよ?

 お気を付けなさいね」


 雇い主の娘と雇い入れのメイドという関係なのに、老婆心ながら忠告する私であった。


「それと、今日はサンデーローストよ。

 ロジーのお母様が凄く良い出来ですって」


「 お嬢様、本当ですか?

 旦那様の大盤振る舞いですね!」


 よし、上手く注意を逸らせたわ。

 話題もサンデーローストになったわね。



 魔物の下町襲来で、マリー・ルイーズの家が焼けてしまったけれど。


 あの日、ロジーのお母様はたまたまお祭りの祝いの席だからと、教会騎士団の方で調理のお手伝いに駆り出されていたのよね。ロジーのお父様も無事よ。


 それで今現在は、ウチの屋敷で下働きをしてもらっているのです。


 そのおかげで教会のミサの後や、学園がお休みの日に、ロジーのお母様が腕によりをかけてサンデーローストを焼いてくれるようになったのよね。


 ウチのマリヤカトレアお母様が大絶賛するほどこの

サンデーロースト、美味しいのよ。



 この騒ぎを聞きつけて、ウチのロベルトお父様が早足でこちらに来られたわ。


「こらこら、何の騒ぎだい?

 メアリー、カメリアそんな所で言い争うのはやめなさい。

 それよりサンデーローストが焼きあがったよ。

 早く食堂に行きなさい。


 それと、アレクセイ将軍とはあまり接触しないように。


 あの方は仮にも敵国ドルンゲンの将軍だ。

 屋敷の……特に私の書斎や図書室などの戸締まりはしっかりね。


 それに……言葉が悪いかも知れないが、アレクセイ将軍も家庭環境が複雑だからね」


 お父様が珍しく意味深な事を仰る。

 どうしたのかしら?


「……カメリア、本当にいいのかい?」


 お父様はカメリアの瞳を覗く様に問いかけるわ。


「……ええ、公爵閣下。お気遣いありがとうございました」


 カメリアは何故か過去形で答えたわ。

 何かしらのただならぬ雰囲気で、私は声もかけられなかったわ。



 メアリーとカメリア、二人が食堂に行ってから。


 お父様がポツリと本音をもらしたわ。


「……セルシアナエリーゼも、アレクセイ将軍にあまり深入りしないように。ましてや恋仲なんて。


 君ドルンゲンの辺境の重鎮であった先代のベルツ公爵を覚えているかい?

 ……黒髪に鷲鼻が特徴的な方だったよね。


 まさか、ああも似ても似つかないとは……」


「似つかないって、じゃあアレクセイ様は一体……?」



 ふと口にしようとした瞬間。



 そこに不意にアレクセイ様が現れたわ。

 足音が、一切聞こえなかった。


 まさか、気配隠してたの?


「おや、皆さんご機嫌ですね。

 おはようございます。何の騒ぎですか?」


 お父様はアレクセイ様に向き直って、会釈する。


「アレクセイ様、おはようございます。

 今日はご馳走、サンデーローストですよ。


 是非お召し上がりくださいませ」


 お父様、肝が太いわね。

 まるで何事も無かったかのように振る舞っていますわ。


 それにしても、お父様ったら酷いわ。


 あの、香草と肉汁の滴るお肉に、グレイビーソースとホースラディッシュの味……!


 私もサンデーローストが大好物なのに、仮面舞踏会の準備で少ししか食べられないなんて!





 その日の夜は月が上がらない暗い夜だった。

 その代わり夜空を満天の星が彩るわ。


 ヴェネティアの元首の家だったという亡命貴族、ベルフェッティ氏が催した仮面舞踏会。

 紹介制、VIPのためのって銘打っているだけあってチケット取るの大変だそうよ。


 ……流石に前世のチケット戦争とは違うかぁ。


 ヴェネティアのパーティーだけあってドレスも豪勢だわ。

 贅沢な生地に、金糸や銀糸の刺繍がふんだんに施されているもの。


 下手するとローズベルのドレスよりも豪華かも。


 当然重いし、身動きも取りづらいのだけれどね。



 チケットは蝶々の形をしているのよね。


 会場内に入ると、まずは大きな目の形をした月のモニュメントが出迎えてくれました。

 月夜の星空をイメージした、大掛かりで幻想的な映画のセットの様よ。


 いくつかフロアに分かれていて、室内に噴水まで設置されているわ。

 ビオラやポピー、パンジーなどの花びらを浮かべてあって、とても綺麗だわ。


 スタッフの衣装もとても凝っていて、身のこなしはまるでサーカス団の様。


 猫のマスクをしたパフォーマーが宙返りをすると皆揃って拍手をしたわ。


 元はと言えば、これがドルシュキーのお屋敷とはとても思えないわね……。



 仮面舞踏会って、仮面を付けて素顔を隠す事によって、身分を気にせず人々が交流しやすいようにって配慮もあるんですって。


 ……まあ、男女の密会場所という噂もあるけれど、ローズベルではなるべくしない、という方針なので安心よね。



 晩餐会も兼ねてるから、参加者のほとんどがバウタという口元が突出してる仮面や、ハーフマスクのコロンビアーナで来ているわね。


 それはそれとして、参加者の香水なのかしら?

 会場特有のフレグランス?

 妙に甘ったるい匂いが漂っているわ。


 それに。


「このチケットの蝶、まるで標本みたいじゃない?」

「確かにこの羽根の開き方は標本そのものだな」


 なんて下世話な会話も聞こえてくる。


 

 晩餐会の会場に入ると、いくつものテーブルの上には幾つもの金の燭台、季節外れだけれど大振りの薔薇のフラワーアレンジメントが飾られていた。


 この為に冬薔薇を準備したのかしら?それとも温室で育てたもの?


 食器も一流のもの、ヴェネティアングラスやゴブレットも置かれているわ。


 天井を見ればいくつものシャンデリアが、燭台のロウソクの火をキラキラと乱反射している。


 私とリオが席につくと、そこにはアレクセイ様もいらっしゃったわ。


「そういえば、フレイ様は今宵の仮面舞踏会不参加なの?

 ロジーは来たがっていたのに、残念だわ。


 フィオナ国王陛下も遅れるそうですわ」


「何でも、王宮騎士団の仕事で抜けられないそうだ。

 アイツの事だから、舞踏会なんて肩身が狭いのだろう」


「フレイ様、お金に関しては妙にシビアな時ありますから……

 それはそうと今朝届いたフレイ様の手紙、意味深でしたわね」


「北方の帽子の男に気を付けて……か。

 ドルンゲンか、その周辺諸国のスパイでも潜り込んでいるのかもな」


 つい、リオと小声で話し込んでいると。


「……こら、お二人とも。ここはパーティーの会場ですよ?お静かに」


 アレクセイ様にたしなめられてしまいました。反省。


 しばらくして、中世の豪華な衣装にミステリアスな仮面に身を包んだ男性が挨拶に来られた。


 これがヴェネティア元首だった亡命貴族、ベルフェッティ氏ね。


「お二人とも、ようこそおいで下さいました……

 今宵は現実を忘れて、是非夢幻の世界を楽しみ下さいませ!」


 ベルフェッティ氏がそう仰ると同時に、オープニングセレモニーが始まったわ。まるで魔法みたいね。


 まずは様々なショーを観ながら、コース料理を食べる事に。


 手長エビのムースソース添えや、仔羊のソテーなどが振る舞われたわ。


 目の前の舞台で、歌謡、オペラ、大道芸などが披露されるわ……どれも一流のプロの方だそうよ。



 晩餐会が終わると、一瞬にして舞踏会へ様変わりする。


 ヴェネティアのダンスなんて踊れるかしらと身構えていたら、ワルツだったわ。

 ちょっと拍子抜けしちゃったかな。


 一曲目はリオと踊ったわ。

 相変わらず手厳しい指導を受けました。


 次の、二曲目のダンスのお相手を探さないとよね。

 フィオナ新国王陛下がいらしてるはずだから、お願いしようかな……と、周りを見回していると。


 リオが私の手を離さないわ。

 それどころかさらに力を込めて握りしめてくる。


 焦り?不安を感じているのかしら?

 リオの何かおかしい。


「エリーゼ、一旦外の空気を吸いに行こう」


 リオがしきりに周りを見渡す。

 なにか警戒しているのかしら?

 

 


 幾つかの人影が私の手を取ったリオについてきているわ。

 まさか、リオが誰かに追われている?


「……エリーゼ、少し離れていてくれ。

 すぐに合流するから」


「……分かったわ。あとで中庭で合流しましょ」


 そう言ってリオは名残惜しそうに、私の手にキスを落とす。

 手を離すと、すぐに舞踏会の人混みの中に消えてしまったわ。


 何となくリオの後を追ってみるわ。すると。


「……いたか?」

「……レオ……皇子はあそこに……」


 小声で話し合うタキシードの男性達。スタッフではなさそう。

 かといって、ただの来賓客ではなさそうね。

 それにしても皇子?何処の方かしら?


「あら、どなたか探しておいでですか?

 あちらに行かれましたよ」


 と、リオが逃げた先と真逆の方向を伝える。

 すると、すぐに行ってしまったわ。

 よし。これで、一安心ね。


 さてと、雲行きが怪しくなってきたわ。

 リオを探して、さっさと切り上げた方が良さそうね。




 中庭の庭園の奥。


 流石ドルシュキー家の庭園ね。

 珍しい花や見知らぬ果樹ばかりだわ。 


 奥から物音がするので、そちらに行ってみる。


「リオ?そこにいるの?」


 何かしら?

 この暗くて冷たい、張り詰めた雰囲気……まさか殺気?


 と身構えたところ、視界が開けた。



 黒いタイトなドレスを着た、ヴォルト……ラルヴァという亡霊とも呼ばれる仮面を付けた女性がいたわ。


「……エンチャント、カンタレラ」


 細いナイフ……いえ刃だわ。

 それを一閃。


「……家族のかた……!」

「……がう!あの内戦は貴様の……!」


 相手は、北方の人かしら?

 大柄の軍人が、声も上げずに事切れてしまった。


 女性の、鋭い紅の瞳で気が付いてしまった。

 ……嘘でしょ。


 ウチの侍女の、カメリアだわ。



 賑やかな舞踏会の雑踏と音楽が遠のいていく。


 その場から一刻も早く立ち去りたいのに、足が竦んでしまって動かない。


 ……フレイ様に、気をつけろと言われていたけれど、この事なの?




 月の光の無い夜に星は静かにまたたく。


 カメリアは紅い唇に、左手の人差し指を当てて、シーッのポーズを取る。


 右手には魔力を帯び、赤く染まった刃。



 その様子があまりにも妖艶で、怖いはずなのに私は思わず魅入ってしまった。


 カメリアは優しく甘く、でも何処か冷たく無機質に私にささやく。


「どうか静かに。

 この事はくれぐれもご内密に。お嬢様。


 でなければ、貴方を口封じしなくてはなりません故」


 その微笑みは、その瞳は、まるで凍った仮面のようだった……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ