第77話:心地よい朝/激しい風
タカはこの気持ちの良い朝を存分に楽しむことにした。
「ねえ、ベリル! 散歩に行かない?」
「ふん――なんで私があいつと散歩なんて――」
「もういい、忘れて。」彼は一人でドアに向かって歩き出し、アーサーの方へ「またね」と手を振った。あれでコーヒーは4杯目だったか?
背後から聞こえた予期せぬ声に、彼は足を止めた。
「俺… 君と一緒に行かないなんて言ってないよ」と、彼はぶつぶつと呟いた。タカが彼の目を見つめると、ベリルは視線をそらし、髪をいじり始めた。
「……わかった」タカは少し間を置いて、まばたきをした。「じゃあ、行こう。さあ、行こう」
二人はドアの外へ出た。静かな道を歩いていく。しばらくの間、まるでこの世に二人しかいないかのようだった――とはいえ、まだ朝早く、ほとんどの人は今まさに目を覚ましたところだったのだが。
穏やかな風がタカとベリルの周りを吹き抜けた――朝の空気は、心地よく清々しかった。丸三日間も屋内に閉じこもっていたせいで、太陽の光がこれほど心地よいものだったことを、タカはすっかり忘れていた! 残念ながら、ベリルは最高の会話相手とは言えなかったが、少なくともタカに「息をするな」とか「地獄へ落ちろ」とか、そんなことを言い放ったりはしなかった。彼はただ……黙っていた。物思いにふけっているのか?
タカがチェスやトランプ、あるいはクルルの振る舞いについて話題を振ってみても、ベリルはただぶつぶつと呟くだけで、何一つはっきりとした返事をしなかった。やがてタカは諦めて空を見上げた――そうして間もなく、二人は同じ道をぐるりと回り、2時間後には宿に戻っていた。
「おかえり!」 宿に入ると、弾けるような声が響いた。クルルだった――満面の笑みを浮かべ、目を輝かせ、上機嫌そうだった。
「やあ、クルル」タカは手を振った。「楽しそうだな」
「確かに、少し気分が軽くなった気がするよ。へえ、たぶん僕に必要なのは太陽の光だけだったのかも!」彼は笑ったが、タカにはそれがどうして面白いのか分からなかった。でもまあ、クルルが気分が良くなったのなら……まあ、あまり深く考えなくてもいいかもしれない。
「まあ、気分が良くなってよかったね」
「うん!」
「そう、みんな最高に気分がいいよ!」エイライアは笑いながら、クルルの背中を激しく叩いた。エキルは、クルルの様子に安堵しつつも、エイライアの尽きることのないふざけぶりに完全に疲れ果てているようだった。
「さあ! これからトランプの準備をするだけだよ! そのあとはチェスをするんだ!」
ああ、そうだ。最近、エイライアもチェスに夢中になっていた。とはいえ、一度も勝ったことはなかった。というのも、彼はたいてい、普通の人みたいに駒を前に動かす代わりに、駒を空中に放り投げ始めてしまうせいで、対局がそこで終わってしまうからだ。
タカは、アーサーがいつかついに介入して、あの「 」という、冗談を許さない口調で「いや、今日は仕事をこなさなきゃ」なんて言い出すのではないかと、ずっと気がかりに思っていたのだが……驚いたことに、そんなことは起こらなかった――むしろ、彼もゲームに参加してくれたのだ。
昼食には、サンドイッチ専門の素敵なオープンエアのレストランへ全員で行った。食事は美味しかった――とはいえ、ある意味で、その後タカの懸念は現実のものとなってしまった。
「ここ二週間、何もしないでいた」と、アーサーは厳しい表情で切り出した。「冒険者としての鋭さを失うわけにはいかない。今日は休みだ――模擬戦をしよう」
「模擬戦?!」エイライアは椅子から飛び上がり、大げさなほど嬉しそうに体をひねりながら地面に着地した。「軍隊みたいに?!」
「そうだ、エイライア。軍隊みたいにね」エシルはため息をついた。
「ああ、俺たち、ちょっと……錆びついてきてる気がするな」タカは自分の考えを言葉にしようとしたが、惨めに失敗した。
アーサーはうなずいた。「そう。そして、二人には繰り返し言ってきた通り」――彼の視線は二人の少年を行き来した。「スキルを維持することは重要だ。スキルは筋肉のようなもの。鍛えなければ、衰えてしまう。」
「練習は完璧を生む!」エイライアは手を叩いた。
「その通りだ」
「俺が正解だ!」彼は笑った。
「少なくとも俺としては、それに何の問題もないと思うよ」と、エシルは彼の言葉を遮るように言った。「何か具体的なことを考えているのか?」
「ああ。一対一の対戦だ」
その言葉に、タカの注意が引きつけられた。今日、スパーリングをするつもりなのか? つまり……つまり、またベリルと対戦することになるかもしれない。その考えだけで、心臓がドキドキし、胸が締め付けられるような感覚に襲われた――ベリルは最近明らかに強くなっていたが、それに対して自分は一体どうなってしまったのか? 彼は停滞し、皆の足を引っ張るばかりだった。この状況で、果たして彼に太刀打ちできるだろうか……?
タカは首を横に振った。以前、彼に勝ったことがある。何度も勝った。負けたこともある。だが、あれは過去の話だ。今は今だ。そして今、彼は悪循環に陥り、同じ過ちを繰り返している……黙れ!
あの日、ベリルが自分より多くのことを成し遂げたとしても、それがどうした? だから何だ?
「とにかく、ベストを尽くすしかない。」
そう――他に何ができるというんだ?
「そうか……」
「何が『そう』なんだ?」エイライアは地面から彼を見上げ、首を奇妙な角度に傾けていた。
「わああっ――!」タカの椅子が後ろに倒れ、世界がぐるぐると回り、そして……柔らかな腕。羽毛。彼はエシルを見上げていた。エシルは優しい眼差しで彼を見つめていた。一体全体……
「気をつけてね、タカ」
「えっと……」
しかし、彼が答える間もなく、エシルは苛立ったように横目を向けた。その声には苛立ちがにじんでいた。
「エイラール、床から起き上がれ。」
「でも――」
「今すぐ」と彼はきっぱりと繰り返した。
「……わかったよ」
エシルはタカを立ち上がらせると、エイライアが落ち込んだ様子で席へと引き返していくのを冷ややかに見送った。
「席にいなさい。わかったか?」
「はい。私は――」エイライアの険しかった表情が、明るい笑顔に変わった。「――すみません!」
「よし」とエシルは鼻を鳴らした。
「さて」とクルルは軽快に言った。「僕もエシルに賛成だ! やろうぜ!」
一瞬のパニックや、心に刺さるような自己不信はあったものの、状況は好転しつつあった。エイライアは知らず知らずのうちに、自分の心が暗い場所へ迷い込むのを防いでくれていた。クルルは、少し奇妙ではあるものの、いつものように陽気だった。そして、彼らは久しぶりに何かアクティブなことをしようとしていた。
これこそ、自分が成長したことを自分自身に証明する絶好の機会だった。だって、もしベリルに勝てたら……それこそが、彼にとって最高の証拠になるはずだ。そうじゃないか?
ああ。朝飯前だ。もし彼と戦えるなら、の話だが。
彼は勝つつもりだった。




