第74話:出会い
席に着くと――エイライアは壁にもたれかかることを選んだ――エシルは、彼らがこれまで経験してきたことすべてについて、徹底的に説明を始めた。彼は、レルンの洞窟が(おそらく)短期間のうちにこれほど危険になった理由についての自身の説について、長々と論じることによって、その話を締めくくった。
「今後、ゴブリンの駆除に派遣される者たちには、もっと注意深く目を光らせてほしい。証拠から判断すると、一匹が逃げ出したようだ――それが今回の巣の始まりとなった。ひいては、今回の襲撃につながったのだ。二度とこのようなことがあってはならない。」
市長は目を細め、苛立ちを露わに息を吐きながら、信じられないというように首を横に振った。
「一体、そのことをどうやって知ったというのだ?」
エシルは羽毛の生えた両腕を組んだ。「洞窟には魔法使いとオーガの両方がいた。同時に、そのようなことが自然に起こり得るほど、その場所は住み着かれた形跡が全く見られなかった。
「通常の条件下で、この二つの現象が自然に現れるまでに要する時間は……言葉では言い表せないほど途方もないものです。私には想像すらできません。したがって……以前の巣の生存者が運んできたエネルギーによって促進された指数関数的な増殖――それが、今日私たちが目にした事態を招いたのです。
「それだけでなく、洞窟内には数え切れないほどのゴブリンがいた――もし我々が支援に駆けつけず、彼らが大軍を率いて町へ押し寄せたとしたら? すでに引き起こされた悲劇よりも、はるかに悲惨な事態になっていたことは間違いない。」
市長は口をぽかんと開けたまま、その表情はまさに呆然としているようだった。しかし、エキルはそこで話を止めなかった。
「結論として、誰かが職務を怠ったのです。ベッテンコート市長、あなたを非難しているわけではありません。ただ言いたいのは、これほど重要な任務を担う者たちに対して、より厳格な措置を講じるのが賢明だということです。」
そう言うと、エシルはようやく肩の力を抜き、椅子に深く腰掛けた。一瞬後、彼は独り言のようにうなずき、再び口を開こうとしたその時、エイライアが満面の笑みを浮かべて壁から飛び降りてきた。
「おぉ! 君が何を考えているか分かるよ! そうさ! 運は確かに我々に味方しているようだな!」エイライアは笑った。
エシルはため息をつき、くちばしの付け根を摘んだ。
机の向こうで怒りを抑えきれない様子だった市長は、鼻を鳴らして、あしらうように手を振った。
「ああ、そうだな……報酬については、時が来れば必ず支払う。約束するよ……」
まあ、彼がエシルが言ったことを一言も理解していなかったことは、それしか聞き取れなかったという事実からして、明らかだった。
「ともあれ」とベッテンコートは咳払いをした。「あの男、ツイストワイヤーの件だが。さっさと消えてくれてよかった!正直言って、あいつは自業自得だったと思うよ。起きたことについて、あまり気にするな。」
クルルは身震いし、顔は怒りで紅潮した。彼は勢いよく立ち上がったため、椅子を倒しそうになった。
「自業自得だと――!?」
「待、待ってくれ! えっと、誤解しないでくれ。あ、あいつは有名な詐欺師で、犯罪者だったんだ、わかるか? お前たちが、あいつが故意に二重予約した最初の相手だと思うか? あるいは、クエストの内容を偽って説明した最初の相手か? 支払いを拒否された最初の相手か?」ベッテンコートは顎ひげをいじりながら、言い逃れを試みた。
「あいつのもっとひどい手口も見てきたんだ。この町の市長になって六十年余りになるが、ここ十年はトラブルばかりだ!この五年間、なぜあいつを刑務所に放り込まなかったのか、と何度も思ったよ!残念ながら、犯罪を犯していない者を刑務所に放り込むわけにはいかない。あいつのやったことはギルドの規則には反していたが、法律には反していない……
ふむ、そしてこれ聞いてくれ! 3年前、ギルドが彼を正式にブラックリストに載せ、二度とギルドのサービスを利用できないようにしたって知ってたか? それで彼が止まったか? いや! アドベントの月になると、まるで時計仕掛けのように、彼はこっそりギルドに忍び込み、契約を1、2件結び、できるだけ多くの人を動員して、彼の『コネ』――彼はそれを『恩』と呼んでいたが――のために汚い仕事をさせさせていたんだ。 彼のせいで二度と戻ってこなかった依頼主が何組いたか知ってるか? 二組だ! その依頼のうち、どれだけが二重予約になってしまったと思う? なんてことだ! 善き女神エリスの神聖なる御加護に感謝する。あいつが死んで本当に良かった!」
この怒りの演説の途中で、市長の怒りは次第に高まり、一文ごとに声のボリュームも上がっていった。しかし、彼の怒りはまだ収まる気配などなかった。
「あの野郎のせいで、私がどれだけの書類仕事をこなさなきゃいけなかったか知ってる? あの……うっ! あの馬鹿げた仕業のせいで、ギルドはあのネズミ野郎 が仕掛けた詐欺事件に関連する書類をすべて、私に回すようになったんだ! 彼は公式のルートを通れなかったし、典型的なツイストワイヤーらしく、戻ってきた冒険者たちへの報酬を一切支払おうとしなかったから、私は彼の活動に関する報告書を絶えず作成し、あらゆる記録を確実に残さなければならなかったんだ! あいつは、あのパーティーたちに一度たりとも報酬を支払わなかった!支払ったのは私だ!毎回、毎回、毎回!町の公金から!私――」
町長は言葉を切った。深呼吸をすると、無理やり引きつった笑みを浮かべた。「申し訳ない。少し熱くなってしまったようだ」
タカは椅子に居心地悪そうに座っていた。疲労が骨の髄まで染み込み、不安が胸を蝕んでいた。まるで自分が怒鳴られているかのような気分だった。残酷な「巻き添え被害」という形で、実際そうなのかもしれない、と彼は思った。
アーサーは終始無表情で座っていた――エシルは明らかに苛立っており、クルルはただ……悲しそうな表情で、両手を脇に固く握りしめて立っていた。エイライアは場違いな小さな子供のようで、親指を噛んでいた。ベリルは腕を組んでいた。タカには、彼の頭の中で何が起きているのか、正直よくわからなかった。 タカの知る限り、ベリルは完全に現実から逃避していたのかもしれない。彼はベリルを責めはしなかった――自分もそうできればいいのに、とさえ思った。この一連の出来事はどれも特に興味深いものではなく、ただ、すでに抱えているストレスにさらに追い打ちをかけるだけだった。
「えーっと……いずれにせよ、ご安心ください。彼の死については、この町の他の住民と同様に扱います。その人物の強靭な精神力にかかわらず。」
「どうでもいいさ」と、クルルはようやく呟いた。「ちょっと外で空気を吸ってくるよ」
ドアがカチッと開いた――そして、少しばかり勢いよく閉まった。マホガニーの机の後ろにいた町長は、思わず身をすくめた。
「あ、ドアには気をつけてください……もう出て行ってしまいました……」彼の小さな肩が、敗北感に打ちひしがれるように垂れ下がった。
ベリルは、続く沈黙を、自分が話す番だと受け取った。彼が口を開いたとき、鼻を高く上げ、貴族らしい傲慢な姿勢でそう言った。
「報酬の話でしたよね? それは何ですか?」
市長は残りの5人を一瞥すると、疲れたようにため息をつきながら椅子にどさりと腰を下ろした。
「ああ、ああ。ちょうどその話をするところだったんだ。今日、君たちが町のためにしてくれたことを考えれば、ツイストワイヤーが支払うはずだった額の倍は払えると思うよ。」彼は机の上に腕を置き、両手を組んだ。 「ところで、君たち6人は2つのグループに分かれているんだね? 各グループ3人ずつ? それとも――」
「うんうん!」エイライアは壁に背を預けてニヤリと笑った。
「そうです」とアーサーが答えた。「私は『ラッキー・セブン』のリーダーです」
市長は、以前にも聞いたことがあるかのようにうなずいた。「ああ、そうだ。それに付け加えるなら、ギルドの記録によると、君たちのグループは本当にブロンズランクのパーティーだったとは、驚きだ!」彼の目は、エシルの方を向け、漠然とした好奇心を宿していた。 「しかし、君たちの所属については存じ上げない。エルフのことは知っているが、君のこと――あるいは、その白い羽根の友人のことは知らない。」
「……私は『ツイン・フェザーズ』のリーダー、エシルだ」エシルは声を潜め、身を乗り出してそう言った。エイライアの耳がピンと立ったが、それ以外の反応は見せなかった。「私の相棒はクルルだ」
「ああ、『ツイン・フェザーズ』か。ええ、その名は読んだことがある。鳥族が二人いるパーティーだなんて! なかなか珍しいな。で――これだけの時間が経っても、まだ銅ランクか、ふむ? これ以上降格されるつもりはないだろうな? へっ! あ、あ、それは……冗談だよ」
エシルの鋭い視線に少し萎縮したベッテンコートは、すぐにその話題を打ち切った。
『ああ、そうだった。彼らは俺たちよりランクが一つ上だ……』
タカはわずかな嫉妬を覚えた。まあ、ランクの差は、自分のパーティーが全体的に仕事をあまり受けてこなかったせいだろう。
『待てよ、降格? それっておかしいな。あいつらはそんなタイプには見えないのに……』
彼は後でエシルにその件を尋ねることに決めた。
「冗談だよ」とベッテンコートは小さな声でささやいた。「……まあいい。双方に補償金を支払うことにする。それを二人で分け合ってもいいし、分け合わなくてもいい。好きなようにすればいい。私にはどうでもいいことだ。さて、いわゆる『本題』に入ろうか……
「彼は君たちにいくら約束したんだ?」
「金額については合意していなかった」とエシルは淡々と答えた。「彼は具体的に言わなかった。私たちが彼と話した時も、依頼書自体にも、何も明記されていなかった。」彼は背中のポーチから、擦り切れてボロボロになった紙片を取り出し、市長の机の上へ滑らせた――紛れもなく、契約書だった。
市長はしばらくそれをじっと見つめた。
「おやまあ」
しばらく考え込み、小声でぶつぶつと呟いた後、ベッテンコートは金貨三十枚を取り出した。
「一組につき十五ゴールドだ。この町への君たちの貢献を考えれば、これは十分すぎるほどの報酬だと思う――あの忌々しいドワーフから受け取れた額よりは、間違いなく多いはずだ」
「15……15?」タカは息を切らして繰り返した――とはいえ、彼の比較的静かな声は、エイライアがその金額を金切り声で叫んだことで、劇的にかき消されてしまった。
「受けよう。」アーサーはきっぱりと席から立ち上がった。「一人五枚だ。俺の分は要らない……」彼は二人のパーティーメンバーに視線を向けた。「二人でどう分けるか決めてくれ。」
『またか?』
この時点で、タカは彼のことを心配し始めていた。なぜアーサーはいつも自分の取り分を犠牲にするのか?彼は……まあ、いいや。疲れすぎて、こんな頭の中での無駄な考えに構っている余裕などなかった。
「……アーサー、マジか?」
「ああ。」
「もしタカ、その5ゴールドが要らないなら、俺が喜んで――」
「ああ、いいよ、どうでもいいさ、ベリル。どうでもいいんだ。」
何の意味があるんだ? この件で彼と争っても、ただ口論になるだけだ。そんな気分にはなれなかった。今日、あれほど大変なことを経験した後に、ベリルにそんな振る舞いをする気力さえ残っていることに、タカは心から驚いていた。
「ああ、それなら最高だ!」ベリルは落ち着いて喜び、自画自賛するように「フン」と鼻を鳴らした。
金銭の問題はさておき、タカの頭の中に一つの疑問が浮かんだ。
「あ、あの。ベッテンコート……市長さん……?」
「はい?」
「正直、えっと、そもそもどうしてこんなことになったのか、よく分からないんです。おっしゃった通り、彼はギルドの利用を禁止されていたはずですが、それなのにどうやって仕事を掲載していたんですか? そ、その……つまり、僕たちは彼の紙をギルドの職員の一人に渡して、彼女がそれを確認した上でクエストを受けさせてくれたじゃないですか。でも、もし彼が利用禁止だったなら、なぜそれが違法な掲載だと気づかなかったんですか?」
ベッテンコートは「うーん」と唸った。思案する様子のその声に、満足げな表情が重なった。
「まあ、いい質問をしているね、坊や! ギルドの目をすり抜けることは時々あるんだ。普段は、 のような状況にはもっとうまく対処しているんだけど、アドベントの月になると、殺到する客の対応に追われて手一杯になってしまう傾向があるんだ。それに、この月だけのために従業員の給料を安くして過剰に採用しているのも、事態を悪化させていると思うよ。だから、いわゆる『手っ取り早く小銭を稼ごう』という人ばかりが働いているんだ。」
「ああ。なるほど……それは納得できるな。」
エシルは敬意を表して頭を下げた。「以上です」と彼は言い、立ち上がった。「それでは、ベッテンコート市長、失礼いたします。」
「は、はい、もちろん、それで結構です。今日はお時間を割いてお会いいただき、ありがとうございました。えっと……失礼ですが、お名前をもう一度教えていただけますか?」
「エシルです。」
「エシル」と彼は指をパチンと鳴らした。「ツイン・フェザーズの。どうもありがとう、そして……?」彼はアーサーに問い掛けるような視線を向けた。アーサーはためらうことなく自分の名前を名乗った。
「ああ、立派な名前だ!『ラッキー・セブン』のアーサー! つまり、エシル、エイラール、そしてクルル……『ツイン・フェザーズ』の皆さんですね。タカ、ベリル、アーサー……『ラッキー・セブン』! 皆さんにお会いできて本当に光栄です。どうかお気をつけて。改めて感謝します。良い一日を、いや、良い夜を……神々よ、今何時だ?」
ベッテンコートは目を細めて、壁にかかった大きな時計をじっと見つめた。「ああ、まったく……彼らに私のためにセットしておくよう言ったはずなのに。本当に私が……?」
ぶつぶつと文句を言いながら、彼は壁まで重々しく歩み寄り、時計をいじり始めた。「もう帰っていいぞ。良い一日を!」
5人は、かすかにペンキの匂いがするオフィスを後にし、外でクルルと合流した。彼が噴水をぼんやりと見つめているのを見つけると、エイライアは友人の仕草を真似ながら口を開いた。
「ねえ、エシル?」
「うん?」
「あの、俺がリーダーじゃないってことは分かってるよね? もうそんなのどうでもいいんだ!」
「……いや、知らなかったよ、エイライア。あの時、君が泣きながら懇願していた様子を見たら、俺にどうして――」
「冗談だって分かるはず? ハハ! もしかしたら冗談じゃないかも!」そう言うと、エイライアは嬉しそうに跳ねるように走り去り、エシルはただ信じられないというように首を振るしかなかった。くるくると回るエイライアの周りに人だかりができ始めると、クルルは呆気にとられていた状態から抜け出し、困惑したような息を漏らすような笑い声を上げた。
その光景を、タカは微笑みながら見守っていた。
こうして、ツイストワイヤーの冒険は幕を閉じた。




