第72話:君はもっと強くなる
洞窟の入り口に差し掛かり、中へと進むにつれて、薄暗かった光が明るくなっていった。
洞窟の入口から数フィート先には、数人の町民、町長、そして4人の冒険者が待っていた。彼らは緊張した面持ちで入口をじっと見つめていたが、タカたちが現れるのを見ると、表情が和らぎ、武器を構えていた者たちはそれを下ろした。
とはいえ、エシル、クルル、アーサーが死体を横たえるのを見て、群衆の中には表情を曇らせる者もいた。
太陽と空の下に戻れたことに言葉にできないほどの安堵を覚え、タカは地面に崩れ落ち、膝を抱えながら疲れ切った息をついた。
「もう、本当に限界だ……」
四人の冒険者のうち、タカが顔見知りだったのは一人だけだった――記憶が正しければ、その名はフランクだ。タカの視線を感じると、そのウルフフォークは手を挙げ、歯を見せてウインクして挨拶した。「よっ!」
残りの三人……まあ、一人は人間、もう一人はウサギ族、そして最後の一人は昆虫族だった。彼が一番際立っていた。腰には激しく湾曲した鎌を下げ、奇妙な模様のローブを身にまとっていた。
その時、一人の老婆が人混みから前に押し出されてきた。その顔は、長年のストレスと心配が織りなす、古びたタペストリーのようだった。タカは彼女を一目見てすぐに見分けがついた。
「あ、あの子はどこ? エドワードはどこ? 私の孫はどこ?」
クルルが前に進み出て、沈痛な表情で彼女に近づいた。「エクレールさん?」
彼女は彼を見上げ、希望の光がちらつく中、心配で目を大きく見開いていた。絶望的な信頼を込めて、彼の息遣いや微かな動きの一つひとつに固くしがみついていた。
「は、はい?お願い、彼が無事だと教えて!もうすぐ出てくるでしょう?彼はどこにいるの?」
彼の隣で、彼女はとても小さく見えた。一瞬、クルルは躊躇したが――やがて息を吸い込み、悲しげな瞳で静かに口を開いた。
「彼……彼は助からなかった。」クルルは、曲がったネックレスを彼女に手渡した――その先端には、エドワードの冒険者タグがぶら下がっていた。それはぐしゃぐしゃに潰れ、壊れていた。「彼はあそこにいる。だが、君が見に行くのはお勧めできない――」
彼女はもう耳を貸していなかった。ふらつく足を引きずり、叫び、泣きながら、彼女は四人の死んだ冒険者たちが横たわっている場所へとよろめきながら向かった。
タカは、彼女が血に染まった布の覆いを必死に引き剥がし始めるまで見守っていた――その瞬間、彼は顔を背け、目を閉じた。毛布が投げ捨てられる音だけで十分だった。彼女がエドワードを見つけたとき、純粋な苦悩に満ちた胸が張り裂けるような悲鳴が空気を満たし、やがてすすり泣きへと変わった。
「ああ、ああ……ああ、神々よ、エドワード……」
ベリルは少年の遺体を目の当たりにして、明らかに吐き気を催した。
明らかに疲れ切った様子の若い男が近づき、敬意を込めてエドワードの遺体に毛布をそっとかけ直した。再び覆いがかけられると、彼はその女性の肩に手を置いた。
「さあ、エクレールさん。」
エイライアがタカをツンツンと突くまで、タカは目を開けようとしなかった。「おい!タカ、もう大丈夫だよ!見ていいよ!また隠れたから!」
今が自分の出番だと判断したのか、12歳にも満たない少年が、ためらいがちに群衆の中から一歩踏み出した。
「え、えっと……無事だったようでよかった、その……助けてくれてありがとう!」
「ああ……ありがとう。」もう一人、肩に斧を掛けた背の高い男が付け加えた。「ちょうど君たちを捜索隊を送り出そうとしていたところだったんだ。まさか君たちが捜索隊だったなんて……」
それは、笑いを取ろうとしたものの、見事に失敗した冗談だった。誰も笑わなかった。アーサーはその男をじっと見つめ、それからうなずいた。
「えーっと……」
この気まずいやり取りの直後、見覚えのあるハーフリングが近づいてきた。それは市長本人――デュリー・ベッテンコートだった。
「レルンを代表して、私は――」
「状況はどうなっている?」
ベッテンコートは、アーサーの唐突な割り込みに目を瞬かせた。
「えっと……はい。」彼はモノクルを押し上げた。
「街からゴブリンの死体をすべて撤去し、焼却するために、レルンの警備隊を相当数動員しました。あの忌々しいツイストワイヤーのような不届きな連中の手に渡るわけにはいきません……ネクロマンサーがゴブリンの骸骨を蘇らせて、暴れ回らせるような事態だけは避けなければなりません。 まあ、あの男はあれこれと問題を抱えているが、彼が……とは到底思えない。ともあれ、えっと……今日戦死した者たちには、きちんとした埋葬を施すつもりだ。」
彼は首を横に振り、怒りを込めてアーサーを指さした。
「もし他に用事があったら、そっちに行ってると思うか? 町がまだ攻撃を受けていて、住民が殺されているなら、ここで君と話なんてしていないだろう!」 彼は高慢に鼻を鳴らして、こう付け加えた。「断言するが――今は完全に事態を掌握している。」
「なるほど。」
「ともあれ!」市長は咳払いをした。「貴方たちの行動には実に驚かされました――もちろん、遺体を回収してくださったことについてです。通常、こうした事案は町警備隊が対応するものであり、私や他の役人が冒険者パーティーに期待する範囲をはるかに超えたことでした。」彼は真剣な表情で微笑んだ。 「そのせいで……私は言葉に詰まってしまいました。君たちは私を救ってくれただけでなく、今やレルンそのものを救ったと言っても過言ではないでしょう。さて! 今日、君たちが成し遂げたことを踏まえて……」ベッテンコートは軽くお辞儀をした。「この町を代表して、君たちの模範的な功績に対し、正式に感謝の意を表さなければなりません。」そして彼は付け加えた。「もっと多くの冒険者が、君たちの手本に学ぶことを願っています。」
アーサーはただうなずくと、ある漆黒の髪をしたハーフエルフ――ベリル――に視線を移した。彼の無頓着な振る舞いは明らかに町長を苛立たせていたようで、ベッテンコートは彼の背後で鼻を鳴らし、首を横に振った。
「よくやった、ベリル」
ベリルの顔に、得意げな笑みが浮かんだ。
「そりゃあ、当然だろ!ふん、何しろ俺はベリル・エドマンド・シフレ・フォン・アシュワズだ!俺がいなかったら、お前たちはどうするつもりだったんだ?」
『……そりゃあ、俺に感謝なんてしないだろうな。感謝されるようなことなんて何もしなかったんだし。ああ、俺のせいでみんな死にかけたんだから……なんで驚いてるんだ? 黙ってろよ、タカ……役立たずの、無能なバカめ。』
クルルは、彼がますますこのネガティブな思考の渦に飲み込まれていくのを感じ取ったのだろう。彼はタカの肩に手を置き、優しく言った。「大丈夫だよ、タカ」
タカは顔を上げ、再び涙をこらえきれない様子で彼を見上げた。
「本当に? 俺は何もしてない、俺は……」
彼はため息をつき、再び顔を膝に埋めた。小声で悪態をつきながら、泣かないように必死だった。たった一度だけでも。
「泣くのは後でいい。自分の部屋で泣けばいい。泣くのは後でいい。もうやめて。もうやめて。」
「君は生きているし、僕も生きている」とクルルは呟いた。「それで十分じゃないか? 生きている限り、学び続け、成長し続けられる。君はもっと強くなる。心配するな。」
再び彼の視線と交わしたとき、クルルは普段とは違って沈んだ表情を浮かべていた。その瞳には自己不信の影がちらついていた――まるで、自分自身に聞かせたい言葉を口にしているかのようだった。クルルはきっとツイストワイヤーのことを考えているに違いない、とタカは気づいた。彼がその件についてどう感じているのか、タカには想像もつかなかった。それでも、彼はその言葉を胸に刻んだ。少なくとも、そうしようと努めた。
タカは、誰も自分に怒っていない時でさえ、いつも自分に厳しすぎることを自覚していた。今回は自分自身に腹を立てていたが、それは別問題だった。怒りが爆発するのではないかと心配してデインに相談しに行ったことが何度あったことか。そのたびに、デインは笑って、どんなことでも助けてくれたではないか。
とにかく。
クルルは正しかった。彼は学び、成長するだろう。変わっていくだろう。努力は必要だが、もっと強くなれるはずだ。アーサーのようになれる。いや、ベリルのようにさえなれるかもしれない。
…
よく考えてみると、ベリルのような人間にはなりたくないと思った。ベリルはうっとうしくて、わがままで、そして……
だが、いざという時には、ベリルこそがアーサーの計画の要だった。実質的に言えば、彼がいなければ、今こうして皆が生きていることなどなかったのだ。
「やっぱりベリルみたいにはなりたくない……でも、アーサーのようにはなりたい。有能になりたい。そう……デインに誇りに思ってもらいたい。そして、自分自身も誇りに思いたいんだ」
タカは息を整え、相反する感情を押し殺して、無理やり口を開いた。それについては後で考えればいい。彼はいつも、何でも考えすぎてしまうのだ。
「ああ……その通りだ、クルル」
たとえその言葉を心から信じていなくても、いずれは信じられるようにするつもりだった。そうせざるを得なかったのだ。
ベッテンコートは、アーサーが何度も話題を他の人へと移すのを快く思っていないようだった。そこで、彼は大きな声で咳払いをした。「エッヘム!」
「はい?」アーサーはそう言うと、振り返って市長を見下ろした。
「ここでそんな話をしている場合ではありません。私の執務室までお付き合いください。あなたの功績に対する報奨について話し合いたいと思います。」
エシルが前に出た。「私たちにも、お伝えしたいことがあります」
「それならなおさら、場所を変えるべきですね! 皆さん、どうぞこちらへ……」そう言うと、市長は驚くほど速い足取りで歩き出した。
クルルは立ち上がり、タカも一緒に引き起こした。
「さあ、タカ」と彼は言い、素早い動きのハーフリングの方へちらりと目を向けた。「ああ、ベッテンコート市長? 遺体はどうなったんですか?」
デュリーは一瞬ためらうと、彼を見上げて口元を引き締めた笑みを浮かべた。「一時間以内に衛兵に回収させるよう手配する。心配するな」
この頃には、群衆のほとんどは散り散りになっていた。残っていたのは、老婆と、おそらく彼女の世話役であろう若い男だけだった。ああ、それから冒険者たちもまだここにいた。まあ、フランクと、もう一人の少年がいた、というべきか。
彼らが通り過ぎる際、クルルはエクレールさんの肩に優しく手を置き、囁いた。「お悔やみ申し上げます。」
その言葉に、彼女はさらに激しく泣き出した。
タカはそれを見るに耐えられず、目を背けた。最後の瞬間、彼は通りすがりに慌ただしくお悔やみの言葉を述べた。
しかし、エイライアは、いつものエイライアらしく、最も場違いなタイミングでエネルギーが溢れ出そうになっていた。最後に口を開いた彼は、まるでゲームでもしているかのような、場違いなほど明るい口調で「ごめん!」と叫んだ。そのせいで、彼には奇妙な視線が何本も向けられ、さらに女性の世話役からは睨みつけられた。それに対し、彼はふくれっ面をして目をそらした。
まるで子供のようだ。
タカは物思いにふけって後れを取っていたが、その時、ある声が聞こえてきた。その声はどこか聞き覚えがあるように感じた……ああ、そうだ。森に入る前に、封鎖線で警備員と口論していたのが、この少年だったのだ。タカは少年の名札をちらりと見た――Eランク。タカと同じくらいの年齢に見えた。十五歳か、あるいは十六歳くらいだろうか。
「君たち、あの中に入れるなんて本当にラッキーだね!僕も入りたかったのに――」
タカはそれに対して返す言葉がなかった。すれ違う際、彼は空虚な微笑みを浮かべるだけで少年の視線を受け止めた――すると少年は黙り込み、困惑した表情を浮かべた。おそらく、なぜタカがそんな目つきで自分を見たのかと尋ねようとしたのだろうが、タカは振り返らなかった。
「いや、お前は違う」と、彼は小声で呟いた。




