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『異世界の記録:3人のパーティー』  作者: Hikaru Taka
第6章: 暗い不確実性

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第64話:デュリー・ベッテンコート市長

ブルジョワ地区へと続くアーチの下を通り過ぎた瞬間、甲高い悲鳴が空気を震わせた。アーサーは即座に全速力で走り出し、「だめだ!」と叫んだ。

タカとベリルは追いつこうと走ったが、アーサーのスピードには到底及ばなかった。もう少し距離が長ければ、彼らは取り返しのつかないほど置き去りにされていただろう。エシルとクルルが上空を旋回しながら、彼らと周囲を見守ってくれていたのは、神々に感謝すべきことだった。

アーサーは角を曲がって姿を消した。二人は後を追った。血の飛沫が弧を描いて空を飛び、近くの壁を染め上げた。

荒い息を切らしながら、彼らはその光景のすべてを目撃した。首のないゴブリンの死体、剣を収めるアーサー、そして……スーツを着たずんぐりしたハーフリングの男。彼は劇的な身振りで手を振り、死んだゴブリンを蹴り飛ばすと、ぽっちゃりした顔をしかめた。 彼の背後で、建物がパチパチと音を立てて、巨大な暖炉のように燃え上がっていた。その炎の中から、濃い黒煙が渦を巻いて立ち上り、空を覆い隠していた。「デュリー・ベッテンコート市長室」と書かれた看板は、タカがそれを読み終えたまさにその瞬間に、燃え尽きてしまった。

彼らが声の届く距離まで近づくと、ハーフリングがアーサーに礼を述べ、少し残念そうにこう付け加えるのが聞こえた。「うーん……やっぱり、護衛を連れてくるべきだったかもしれないな……」

この一帯のすべては……まあ、町の裕福な地区にふさわしいものだった。豪華で広々とした住宅や店舗が立ち並んでいる。中には、 の「マナー」という言葉にふさわしいものさえあった。各家の隙間には防火のために巨大な石板が埋め込まれていたが、それにもかかわらず、数軒が燃えていた。

「こんな美しい建物が燃えてしまうなんて、悲しいな……」

タカは、死んだ怪物を直視しないよう、視線を下げた。彼はすぐに目をそらした。単に、火事がどうやって起こったのか気になっていただけだったが、今となっては、答えがこれほど明白なことを疑問に思った自分自身が馬鹿らしく思えた。松明だ。当然だ。

そこに立ち尽くしている暇はなかった――アーサーが瞬く間に彼らに迫ってきたのだ。

「ベリル、火を消せ!」と彼は怒鳴った。

ベリルは、珍しく二度言われる必要はなかった。彼は両手を広げ、集中した。タカが見ていると、崩れ落ちようとしているオフィスビルの上空に水の球が現れ、大きさを増し、そして……「水を創れ!」という叫び声と共に、その建物へと激突した。 彼にとって、位置を調整し、炎に包まれた建物の一つひとつに同じ呪文を繰り返し唱えることは、さほど苦労ではないようだった。やがて、火災による被害よりも水害の方が現実味を帯びてきた。

燃え尽きた自分のオフィスを疲れ切った様子で見つめながら、ハーフリングは深いため息をつき、 monocle を直した。

「まあ、そろそろ正式に新しいオフィスに移ってもいいだろうな……」と彼はつぶやいた。「明日には完成する……問題ないはずだ。幸い、ファイルはすでにコピーして新しいオフィスに移しておいたから……失ったものはほとんどないだろう。」彼は廃墟に一歩近づき、黒く焦げた木材にそっと手を当てた。 「こんなふうに消えていくのを見るのは嫌だな……寂しくなるだろう。とはいえ、これで解体費用は節約できるし、それに……」彼ははっと気づき、くるりと振り返った。「あっ! なんて失礼な!」彼は口ひげを手で撫でた。「こんな場所で、こんな時にそんなことを考えている場合ではないが、まあ、よく言われるように、観察力のある心こそが立派な市長を作るのだ!」 ハーフリングは深く、礼儀正しいお辞儀をした。「お会いできて光栄です。私はこの町の町長、デュリー・ベッテンコートです!」彼は背筋を伸ばし、外の方を指さした。「そして、お四人は……?」

「アーサー。」

「えっと……僕はタカです。」

「私はベリル・エドマンド・シフレ・フォン・アシュワズです!」

「そして僕はエイライア!」彼らしく、彼はまるで何の危険もなかったかのように、熱意あふれる(そして満面の笑みを浮かべた)様子で自己紹介をした。

「ああ、そうか、なかなかいい。君たちは冒険者だろう? それに、ここにいるアーサーがあのモンスターをあれほど手際よく倒した様子を見る限り、かなりのランクだろう? えーと、Bランクくらいか?」彼は返事を待たずに話を続けた。 「もうお気づきでしょうが、我々は攻撃を受けています。レルンがゴブリンに襲われているのです。約1時間前、北の森で発見された洞窟へEランクとDランクの部隊を派遣しましたが……彼らは寄せ集めの連中だったので、かなり心配しています。なんだか、すべてが……不吉な予感に満ちていたんです。市長の直感とでも言いましょうか。 以前にも同じような事態を目にしてきたんだ。正直なところ、広場の衛兵たちに、奴らが命を落とさないよう、外に出ないように指示したかったのだが……まあ、冒険者たちは自分のやりたいことをやるものだ。たとえ試みたとしても、彼らを止められなかっただろう。ともあれ、君のランクは……?」

「ブロンズです」とアーサーは淡々と言った。

「ブロンズ?」デュリーはまばたきをした。「おや。つまり……ああ。」彼の表情が曇った。「まさか……? 冗談でしょう。この町の市長として、私は多くの冒険者を見てきたが、Eランクの者が君のような振る舞いをするなんて――」

「私は嘘つきではありません」

「なるほど……」市長は、まるで顕微鏡下の標本を見るかのようにアーサーをしばらく観察してから、こう切り出した。「それなら、もしかして君には何らかの軍事的な――」

「もういい。命が危険にさらされているなら、我々は助けに行くつもりだ。その洞窟はどこにある?」

またしてもゴブリンの巣窟に入らなければならないと思うと、タカの胸は不安で張り詰めた。本当に、本当にそうしたくなかった。しかしその時、ある手が彼の肩に置かれた――エイライアの手だった。

「大丈夫だよ、タカ! 行かなくてもいいんだ! 市長と一緒にここに残ってていいんだよ! ベリルもね!」

「えっ――」ベリルは言葉を詰まらせた。「いや、絶対に、行くぞ!」

「えっ……?」

タカは唇を噛みしめ、言葉を飲み込んだ。しかし、ふと考えた……エイライアのような人が進んでやるというのなら、自分にどんな言い訳があるというのか? アーサーが行くというのなら? 彼らは自分のパーティーメンバーじゃないか? 友達になりたいと思っている人たちじゃないか? それに、自分は冒険者だ。行かなければならない。それだけで、十分な正当化と納得の理由だった。これ以上、頭の中で考えを巡らせる時間は与えないことにした。

「僕も!」

その時、市長は自らもほほえみを浮かべながら周囲の顔ぶれを見渡し、ようやくアーサーの質問に答えた。

「えーっと。北へ進み、ウィステリア・ミステリアを通り過ぎると――見ればすぐわかる場所だ。 本当に、あの娘にはいつも店を移転しろって言ってるんだ。でも、今回に限っては、あの場所にあるおかげで良いことが起きたのかもしれないな! 正直、どこに行ってもトラブルメーカーばかりだ! あの忌々しいドワーフも、あの娘も、それに……はあ、もし店が燃え落ちたら、ようやく私の言うことを聞いてくれるかもしれないな!」 彼の口調は和らいだ。「うーん、そういえば。ヘラルダは元気でいるといいな……会いに行こうかな……」

デュリーの頬が赤くなり、髭をいじり始めた。そして、咳払いをして、自分が今この……「ひととき」をどこで過ごしているのかに気づいた。

「あ、ともかく! ゴブリンの巣の探し方なんて、お前らに教える必要はないだろう! あの獣どもは、汚らわしいクズどもだ……さて、失礼するぞ。」彼は胸ポケットから、タカにはよく見覚えのあるもの――「遠距離通話石」を取り出した。デインは自分の船であれをよく使っていた。あれがこんなに高価でなければ、自分でも一つ持っていて、今でも彼と話せたのに。

『……いや、よく考えてみれば、俺も一つ持っているんだ。でも、記録・再生の石と一緒に家に置いてきてしまった……』

「もしもし? ヘンリック? ええ、私は大丈夫です……ここの火事は収束しましたので……いえ、私のオフィスは大丈夫ではありません。ええ、こちらへ向かっているチームを迂回させてください。彼らが対応できる別の場所で火事が起きています。ありがとうございます。それと、私を広場まで護衛してくれる人をオフィスに送っていただけませんか? できればCランク以上の人を。わかりました。ありがとう、ヘンリック。

「なるほど……先ほどのパーティーはまだ洞窟から戻ってきていないのか? 確か、あれはエドワードのグループだったよね? ええ、そう……実は、それが私が連絡した理由なんだ――そう、別のグループが向かっているから、警備員に彼らを通すよう伝えてほしい。 えっと、名前は? ええ、調べていただければ……その際、ランクも教えていただけると助かります。彼らはEランクだと主張していますが、私は信じていません……ええ、名前は――」

アーサーは、タカ、ベリル、エイライアと共に市長の耳に届かない場所へ退き、それからエシルとクルルを呼び止めた。二人は驚くほど素早く着地した。

アーサーは、市長との会話から得た情報をすべて二人に伝えた。その直後、計画が立てられた。まず、市長をここに置き去りにすることは明らかにできないため、彼を広場まで護送することになった。 その後、北へ向かい、新たに設置された警備隊の封鎖線を通り抜けて森に入り、そこでゴブリンの巣を探し出し、発見して殲滅する。もし先に侵入したグループがまだ生きていれば、彼らを救出する。

それについては決まった……まずは手近なことから。

「あの、ベッテン……コート市長さんでしたっけ?」クルルは微笑んだ。「よろしければ、広場までお送りしましょうか」

ベッテンコートは、モノクルをかけた目で不思議そうに彼を見上げた――まるで、この一連の出来事における自分の役割を把握しようとしているかのように――そして、あしらうように肩をすくめて手を振った。

「いや、いや……その必要はない。実のところ、私の護衛が今にも到着するはずだ! ああ、話している最中に現れるとは――ほら、来たぞ。」

屈強そうなウルフフォークが、石で研ぎ澄まされた巨大な鉤状のブロードソードを肩に担いで、約二十フィートほど離れたところで立ち止まり、威圧的な佇まいを見せた。刃の全長に沿ってギザギザの歯が突き出ていた。タカが剣を不思議そうに見つめていると、首からぶら下がっている名札が目に飛び込んだ――その男は冒険者だった。残念ながら、距離が遠すぎてそれ以上のことは判別できなかった。

「来てくれてありがとう、フランク」

「とんでもない! 市長ご本人から呼び出されるなんて光栄です。」

ベッテンコートは振り返り、六人を最後にもう一度見渡した。

「皆さんの協力に、改めて感謝申し上げたい。必ず、適切な時期に報酬をお支払いすることをお約束する。さようなら!」

そう言うと、彼はフランクにうなずき、二人はその場を立ち去った。

慰めを求めてタカは空を見上げたが、そこには空の美しさを覆い隠し、息を詰まらせるような黒い煙の雲しかなかった。

いつものように、アーサーは市長の去り際を合図に先頭に立った。行き先が明らかであれば言葉など必要なかった――しかし、6人がそれほど遠くへ進む前に、彼らを呼ぶ声が響いた。

「あ、あの、すみません、お嬢さん!」

誰に話しかけられたのか分からず、皆が一斉に振り返った。中でもエイライアが最も熱心に振り返った。

「はい?!」と彼は叫んだ。声を上げたのは、ぼさぼさの白髪をした老婆で、彼女ははっと身を引いた。叫び声を浴びせられるとは思ってもみなかったようだが、その驚きが過ぎ去ると、彼女の顔には再び、優しくも疲れ切った表情が戻った。彼女は周囲の人々をざっと見回し、その容貌を観察してから、その視線を他ならぬベリルに留めた。

「あ、あの……火を消したのはあなたよね?」

「……私は女の子じゃないけど、どういたしまして。」

彼女は無害そうな微笑みを浮かべた。「あ、あ、ごめんなさいね、お嬢さん……あなたの髪がすごく綺麗で、目も、あ、それに爪も……」と、自分の長々とした独り言に気づいたのか、彼女は背筋を伸ばした。「まあ、ただ、あなたがしてくれたことに感謝したくて来たの。あの恐ろしい化け物を見た時、私はただ…… ただ、固まってしまって! それから家が火事になって、本当に怖かったの。でも、あなたが……もしあなたが現れてくれなかったら、私、どうなっていたか分からないわ、お嬢さん。だって、亡くなった夫の遺品がまだ家にあるの――彼はもうこの世にはいないし、彼から残されたわずかなものを失うなんて考えられないの……だから、ありがとう。」

「……」ベリルは居心地悪そうに身じろぎし、視線をそらした。

その隙に、クルルが一歩前に進み出て、そっとその女性の肩に手を置いた。

「外は危険ですよ、お嬢さん……お名前は?」

「エクレール。ええ、旧姓はエクレールで、名前はスザンヌ……」

彼は微笑んだ。「わかりました、エクレールさん。衛兵たちが外に出ても安全だと言うまで、家の中に隠れていてください。いいですか? 心配しないで。僕たちは冒険者ですから! レルンが安全であることを確かめてきます。」

「あ、冒険者?」彼女の声は震えていた。「あ、ああ、どうか気をつけてくださいね。私の孫のエドワードもあなたたち冒険者の一人なんです。さっき、スピーキング・ストーンで、近くの洞窟に入っていくって言ってきて……彼が無事でありますように……」

「たとえ彼がいなくても、私たちが連れ戻してきますよ!」エイライアは笑った。

「エイライア!」エシルが鋭く言い放った。

「何?」

「そんなこと言っちゃダメだ!」

エイライアは肩をすくめた。「わかった。ごめん……」

老婆が無事に自宅まで送り届けられたことを確認すると、一行はすぐに出発した。

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