第62話:脅威評価
全員がアーサーに追いつくと、エシルが計画を伝えた。彼らの目標は、まず直面している脅威の規模を把握することだった。ゴブリンはどれくらいいるのか? 犠牲者は何人か? 魔法使いはいるのか? そういったことだ。彼らは空を飛べるため、エシルとクルルが先遣隊として偵察を行い、調査結果を報告することになった。
標準的なパーティー編成で6人一組として行動し、地上組はゴブリンの殲滅と、発生しうる火災の消火を優先する――救える人は誰であれ救うのは当然のことだった。広場に到着したら、 他の冒険者や町の警備隊と連携し、何をするべきかを確認するつもりだった。 最後に、状況次第では(エシルも認めるように、その可能性は極めて低いものの)、攻撃の元凶である巣を見つけ出し、殲滅しなければならない可能性もあった。その可能性の高低にかかわらず、全員がその事態に備えておかなければならなかった。
タカは熱心に耳を傾け、歩きながらその言葉を不安げに頭の中で反芻した。
運が良ければ、1時間以内に広場に着けるはずだ。ツイストワイヤーの鍛冶屋はかなり人里離れた場所にあるから、神々の御加護があれば……
それほど遠くまで進んでいないうちに、エシルはクルルにうなずいた。「よし。俺と君は、約200フィート上空から先遣隊として偵察する……アーサー、話し合った通り、何か見つけたら着陸して君に知らせるよ」
アーサーはうなずいて応じたが、それ以上の反応は見せなかった。
「よし、あとは……」エシルが呟くと、エイライアの視線が鷹のように彼に釘付けになった。「あの件について――」
「俺だ! 俺の件か?」
「ああ」とエシルはため息混じいに答えた。すると、クルルが口を挟んだ。
「エイライア、君は――」
「彼らと一緒にいてくれる?」エイライアの声は蜜のように甘く、見事なほど無邪気だった。しかし、唇の端に浮かんだ微笑みは、彼が自分のしていることをよく理解していることを示していた。
「……そうだな」
エイライアは、その状況には全く不釣り合いなニヤリとした笑みを浮かべ、興奮気味に親指を立てた。
「わかった! 任せて!」
彼は自分のテレパシーをとても誇りに思っていたに違いない。
それに対し、エシルは大きく、そして疲れたようなため息をつくと、翼を大きく広げ、他の全員の方を最後に一瞥した。
「もし何か問題が起きたら、私たちの名前を呼んでくれ。すぐに戻ってくるから」
「みんな、気をつけて」クルルは、無理に作り出した笑顔の奥に、恐ろしいほど真剣な表情を浮かべていた――普段あれほど陽気な人物がそんな表情を見せるのは、見る者に恐怖さえ覚える光景だった。
そう言うと、二人は翼を羽ばたかせて空へと飛び立った。残されたのは、空中で舞い、並んで地上へと落ちていく一対の散らばった羽根だった。
『気をつけて……』
二人が去った後、皆は素早く隊列を整えた。先頭はアーサー、その背後にエイライア、続いてベリル、そして最後にタカ。アーサーが肩越しに一瞥を投げかけるだけで、皆は今がその時だと悟った。
タカは短剣をしっかりと握りしめたが、どんなに必死に握りしめても、今にも落としてしまいそうな気がした。
あれこれ考えはさておき、この――彼らの隊形――はそれほど珍しいものではなかった。実際、唯一の違いといえば、メンバーが四人いるということだけだった。
「集中しろ」と彼は自分に言い聞かせた。
…
彼らは安定したペースで進み続けた。針が落ちる音さえ聞こえるほど静かで、ゴブリンの襲撃が今まさに起きている、あるいは起きたことを示唆するものは何一つなかった。空気を震わせる悲鳴もなく、空に立ち上る煙もなかった。確かに、町のこの場所からはレルンの様子があまりよく見えなかった。主に、建物の屋上があまりにも高かったからだ。
時折、彼らの慌ただしい様子に戸惑って首を傾げる人や、アーサーの態度に不安を覚える人に出くわすこともあった。そんな時、アーサーは「家に入って、ドアをバリケードで塞いで、隠れていろ」といった趣旨の言葉を叫んでから、歩き続けた。やがて、彼らは町の人里離れた一角にたどり着き、タカは考える時間を得た。
正直なところ、何もおかしいところはないように感じられた。ただ、ついさっきまではなかったはずの、空に遠く立ち上る黒い煙の柱を除けば……そして……ツイストワイヤーに何が起きたのか……。死と苦痛の恐ろしい光景が脳裏をよぎった。吐き気が込み上げてくるのを感じ、タカは近くの建物によろめき寄り、手のひらで壁に体を支えながら、前かがみになって道路脇に吐き出した。
ドワーフの遺体を見ていなかったことなど、どうでもよかった。矢が彼の喉に突き刺さるのを見届けてしまったのだ。壁に激突し、体を折り曲げて床に倒れ込む姿も見てしまった。血の海も見てしまったし――
彼は二度目の嘔吐をした。誰かが彼を慰めてくれるのにこれ以上ない絶好の瞬間だったはずなのに……しかし、誰もそうはしなかった。彼はクフルを願わずにはいられなかった。あの呪文で、この吐き気とトラウマ、そしてあの忌々しい記憶をすべて消し去ってほしいと。
ただの願望に過ぎない。彼は、クルルがその呪文で記憶のようなものを消し去れるなどと本気で信じるほど、世間知らずでも愚かでもなかった。
……優しい手が彼の背中に置かれた。見なくても、それがベリルの手だと分かった。
実に気まずい沈黙が訪れ、30秒ほど続いた後、アーサーは彼らに歩き続けるよう命じた。
当分の間、ベリルは彼のそばに寄り添っていたが、一度も目線を合わせようとはしなかった。彼の顔には、ひどく葛藤に満ちた表情が浮かび始めていた。
タカには、かすれた声で「ありがとう」と言うのが精一杯だった――返事が返ってくるなんて期待していなかったし、実際、返事もなかった。
この頃には、街中の警備体制が強化されていた。とはいえ、それが彼の不安を和らげることはほとんどなかった。




