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『異世界の記録:3人のパーティー』  作者: Hikaru Taka
第6章: 暗い不確実性

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第61話:石に染み込んだ血

ドスン。アーサーは小袋をツイストワイアの石の机に叩きつけた。その勢いは、ドワーフをびくつかせたほどだった。

「耳だ」と彼はぶっきらぼうに言い放った。カウンターの後ろにいた男は、手元を慌てふためかせながら、アーサーの鋭い視線にさらされ、顔色を失い、震え上がった。

「え、えっと、はい! 私……お二人、えっと……はい……」彼は言葉を濁し、明らかに罪悪感に満ちた表情を浮かべ、両グループの間を視線を泳がせた。ようやく目線を合わせたとしても、それはほんの一瞬のことだった――まるで窓から飛び出して逃げ出そうとしているかのように、彼は絶えず窓の外をちらちらと見ていた。 沈黙と睨み合いが場を張り詰めた空気で満たしていたが、やがてエイライアの劇的な泣き声がその静寂を打ち破った。

「私たちを騙したのね!」

タカは顔をしかめた。その声のボリュームは、この質素な建物の空間には一オクターブ高すぎた。

「そうだ、彼は騙したんだ、エイライア」クルルはそう言い、慰めるように彼の肩をポンと叩いた。そのエルフは、その触れ方に微笑んだ。彼の感情の切り替えは、実に不気味なほど速い……

それに、彼がそう言ったのはこれで二度目だった。彼らが最初にドアを突き破って突入したとき、エイライアはドワーフを真っ直ぐ指差して、「悪巧みや茶番」だの、「俺たち全員を嘲笑った」だのと言いながら、怒鳴り散らしていた。タカには、彼がどこでそんな言葉遣いを覚えたのかさっぱりわからなかったが、状況がこれほど緊迫していなければ、実に滑稽だっただろう。

その流れで、ベリルもエシルも笑みのない表情を浮かべ、明らかに苛立っている様子だった。とりわけベリルは、エイライアールのそばにいるのが恥ずかしいかのように、彼を睨み続けていた。

「まあ、これで彼も、時々『あの人』と一緒にいるのがどんな気分か分かったかもしれないな」とタカは思った。

「そ、それで……」ツイストワイヤーは咳払いをした。「トーテムを……いや、耳を手に入れたんだな? これらは……?」彼は慎重にリネンの袋を指さした。アーサーは腕を組んだままうなずいた。

「仕事は完了した。クリア・タグを渡してくれ」

ツイストワイヤーは必死に頷いた。「もちろん!」

「今すぐだ」

「す、すぐにお渡しします!」 しかし、ドワーフが振り返ったまさにその瞬間、エシルが前に踏み出した。

「ちょっと待ってくれ。」

「は、はい?」彼は、まるで怪物をじっと見つめる子供のように、恐怖に満ちた大きな瞳で彼を見上げながら、かろうじてそう答えた。

エシルの声は、アーサーのものとは異なり、脅威とは程遠かった。タカには、なぜツイストワイヤーが彼を恐れているのかさっぱり分からなかったが……ああ。まあ、エシルは部屋の隅に佇み、威圧的に彼を見下ろしている姿は、確かにかなり不気味だった。もし自分が のツイストワイヤーの立場だったら、おそらく自分も怖がるだろう、と彼は思った。少なくとも、不安になるだろう。

「少なくとも俺としては、なぜこんなことをしたのか知りたいな。さあ、話してくれ。」

「な、何をしたって? エリス様よ、何のことかさ、さ、さあ、さっぱり分からない!」ドワーフは叫んだ。明らかに作り物のセールスマン風の笑顔を貼り付け、状況を立て直そうと必死に両手を組んでいた。

「愛の女神の名を口にするつもりか?」

ツイストワイヤーは青ざめた。「い、いいえ、私は――」

エシルは首を傾げ、目を細めた。「コモディアンの愛の女神のことか? ドワーフたちは自分たちの神々を信仰しないのか?」

「あの、私は――」

「……一体、なぜそんなに緊張しているんだ? なぜ私たちをそんなに急いで追い払おうとした? なぜ同じ仕事に二組も送り込んだ? 教えてくれ、オーモンド・ツイストワイヤー。」

ドワーフは口を開いたり閉じたりした。額には汗がにじみ出ていた。彼は手の甲で汗を拭うと、身を屈めてカウンターの下をしばらく探り、蓋のついたフラスコを取り出した。それを一口飲み、落ち着きを取り戻すと、六人に向かってうなずいた。

「俺……」彼は喉を鳴らし、険しい表情を浮かべた。「俺――」

言葉を絞り出そうとでもするかのように、彼は右側の開いた窓の外へ一瞥を投げた。

すると、ツイストワイアの瞳が丸くなり、顔が凍りついた。彼は何か――おそらく警告を――言おうと口を開いたが、言葉は出てこなかった。空気を切り裂くような笛のような音が響いた――誰もまばたきする暇もないうちに、ツイストワイアは前かがみになり、喉元を押さえつけ、窒息し、ゴボゴボと音を立てながら、血が石床に飛び散り、胸元を伝って泡を立てて流れ落ちた。彼の手は自分の喉元、そこから突き出ている矢を掴んでいた。

アーサーは、動くよう言われるまでもなく、即座に行動に移した。 瞬く間に彼は剣を抜き、叫び声を上げた。タカにはその言葉は聞こえなかったが、その様子は目に入った。アーサーの顔が、最も苦々しく、漆黒の怒りで歪んでいるのが見えた。彼は自分の手が震え、息が止まるのを感じた。視界がぐるぐると回り、膝ががくっと折れそうになった。何が起きているのかわからなかった。ただ、何の予兆もなく、あっという間に……平穏が打ち砕かれたのだ。

誰かの手が彼を壁に押し付けるのを感じた。エシルが彼に向かって怒鳴っているのが見えた。クルルがカウンターを飛び越え、ツイストワイヤーの命を救おうと奮闘する様子を彼は見守った。エイライアが矢を番え、クルルとツイストワイヤーの頭上を越えて窓の外へと放つのも目にした。ベリルが恐怖に満ちた顔で叫んだ。

ゴブリンだ。

ポーションが彼の手に押し付けられた。彼はそれをじっと見つめた。自分は怪我をしていない……それを飲む必要はない。ツイストワイヤーが死にかけている。ツイストワイヤー――

エシルは蓋を無理やり外し、それをタカの口に押し込んだ。「飲め!」と彼は命じた。

タカは無理やり液体を飲み込んだ。数秒で、頭の中の霧が晴れた。彼はまだ震えていた。だが、考えることも、聞くこともでき……

「動けるか!? タカ!」今度はエイライアが彼の前にひざまずいていた。「おい!」

「わ――」タカは体を起こすと、震える両手をぎゅっと握りしめた。「動ける……」

エイライアの表情が和らぎ、安心させるような微笑みを浮かべた。「よし。さあ、行こう」

だが……どこへ行くんだ? 彼らはまだ店の中にいた。クルルはカウンターの後ろでツイストワイヤーを治療していたが、タカには二人の姿は見えなかった。それの方が良かったのかもしれない。彼は喉を鳴らした。ベリルは見張りをし、クルルを守っていた。アーサーは入り口付近を行ったり来たりしており、エキルは彼を説得しようとしていた。

その間ずっと、自分は何をしていたのか? パニックに陥り、思考が停止し、動揺していた。それだけだ。足手まといになっている。胸の奥底から湧き上がる苛立ちが、涙が出そうになるほどだった。

嫌悪感は不安へと変わり、もしもの想像が頭をよぎった……。彼は背中に差した短剣の柄を、体が痛くなるほど強く握りしめた――恐怖を理屈で抑えようとも、アーサーがここにいること、皆がここにいることを理解していても……。それでもなお、誰かが――

「大丈夫だよ、タカ」とエイライアは鼻歌を歌いながら、優しく彼の肩に手を置いた。

だが、その優しい言葉では状況は良くなかった。彼はそれを信じたい、心からそう願っていたのだが、それでもなお……タカは唇の内側を噛みしめ、深く息を吸い込んだ。

息を……

……息を吐く。

自分は冒険者だったはずだ。そうなら、今この瞬間、行動を起こさなければならない。凍りついてはいられない。今こそ、自分自身に、そしてアーサーに、これまで積んできた訓練が無駄ではなかったことを証明するチャンスだ。自分にはこれができるのだと。

タカは短剣を抜き放った。その瞬間、クルルは血まみれのカウンターの後ろから立ち上がった。その姿は恐ろしいものだった。白い羽根は深紅に染まり、手も赤く染まっていた。アーサーが彼に疑問の眼差しを向けると、クルルは悲しげに首を横に振った。

「あれは……毒が仕込まれていた。俺……パニックになって、どうすることもできなくて――」

エシルは瞬く間に彼のそばに駆け寄った。遺体をちらりと見ただけで、彼の表情は暗雲立ち込めるように曇り、友人を抱きしめた。

「ごめん」とクルルは呟いた。「俺……俺が……そうすべきだったのに……」

エシルはただ彼をより強く抱きしめ、やがてようやく彼を離した。

「君が精一杯やったことは分かっている」と彼は言い、クルルの両手を自分の手に包み込み、『水の創造』を唱えて、その手が再び白くなるまで待った。「今日、まだ多くの人が死ぬかもしれない。だが、俺たちが介入すれば、そうはならないだろう?」

クルルは目を拭った。「う、うん。そうだ」彼はまるで自分自身を納得させるかのようにうなずき、腰からメイスを抜いた。「そう……行こう」

エシルはアーサーの方を向いた。

「待っていてくれてありがとう」

アーサーは何も言わなかった。厳しい表情で、蝶番が外れそうになるほどの勢いで扉を勢いよく開け放つと、剣を手に街路へと駆け出した。

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