第60話:朝
タカは鍋をかき混ぜる音で目を覚ました。眠気をこらえて目をこすり、音のする方向をちらりと見ると、そこには……アーサーが朝食を作っていた。確かにいい匂いがした。
「おはよう、タカ。」
「おはよう……」
食事をしながら、タカはアーサーの目の下にできたひどいくまに思わず目を奪われた。昨夜は少しも眠れなかったのだろうか?と尋ねると、アーサーはただ「いや」と答えた。
「あの……大丈夫?」
「ああ。眠らないことには慣れているから。」
『慣れている……か。』タカは心の中でため息をついた。クルルとエイライアがその件についてあれこれ言いふらしていたため、彼に口を挟む隙はなかった。残念ながら、二人が懸命に努力したにもかかわらず、彼らでさえその男からまともな返答を引き出すことはできなかった。
出発する前に、クルルはアーサーの「大丈夫だ」という主張や「その呪文は不要だ」という言葉を無視し、彼にその回復の呪文をかけた。
「アーサー、君も睡眠が必要だってことを忘れないでね」と、クルルは呪文を唱えながら注意した。「君はエルフじゃないんだから!それに、タカとベリルには最高の状態の君が必要なんだ。君は彼らのリーダーだろ?だから!ちゃんと眠るように!いい?」そう言って、彼は手をパチッと叩いた。「ほら、終わった!でも本当に――今夜はちゃんと眠るんだぞ!」
アーサーはただうなずいた。それでクルルは満足したようで、荷造りを始めようと跳ねるように立ち去った。
不思議な感じだった。彼らと出会ったばかりなのに、クルルやその仲間たちとは、まるで昔から知っているような気がした。ヒーラーがそばにいてくれるのは心強い。
「クルルは本当に頼りになるな……」
……その時、アーサーはエイライアが荷造りをしていないことに気づいた。彼は代わりに小さな石を拾い上げ、じっくりと観察してから、また地面に落とすを繰り返していた。石が地面に当たるたびに、彼は大声で笑っていた。
「彼は、すごくちょっとしたことで楽しめちゃうタイプなんだろうな……?」
タカは、エイライアールの前で余計なことを考えてしまったという致命的なミスを犯していた。あるいは、単にタイミングが重なっただけなのかもしれない。エイライアールが突然彼に向かって飛びかかり、顔を近づけて、全く関係のない、ほとんど理解不能な質問を唐突に投げかけてきたその瞬間が、彼にそう思わせたのだ。
「おい! ねえ、タカ、君たちは何ランクなんだ? 俺たちはDランクなんだぜ!」
「え、えっと……」タカはまばたきをした。パーソナルスペースを侵害されたこの状況に、どう対応すればいいのか分からなかった。「俺たちは……Eランクだ」
まあ、その質問自体は十分に理解できたのだが、彼の表情には何かがおかしかった……
「いいね!」エイライアは再び笑い、現れた時と同じくらい素早く跳ねるように走り去った。タカは呆気にとられて座り込んだ。
『え……? 本当に?』
彼らが記録的な速さで戻ってきたのは、偶然出会った行商人のおかげだった。どうやら彼はレルンを離れたばかりだったらしいが、わずかな小銭を渡すことで、引き返して彼らをそのまま連れ戻してくれるよう説得できたのだ。
「ほんの少しの小銭でも、大いに役立つんだ!」エイライアは笑った。しかし、誰も彼と一緒に笑わなかった。彼が金の価値を全く理解していないことが、痛々しいほど明らかだったからだ。




