第56話:吐き気
やがて、右へ曲がる分かれ道にたどり着いた。目の前の壁には、視界の外のどこからか投げかけられた影が踊っていた。タカは短剣の柄を、できる限り強く握りしめた。いつ抜刀してもいいように、常に身構えていなければならなかった。
「短剣だ、タカ」
え? ああ。アーサーがそう言う理由は分かった――狭い場所では、より小さな武器の方が適しているからだ。以前、アーサーも似たようなことを言っていたはずだ。熟練者でない限り、狭い場所では……と。タカは短剣を鞘から抜き放った。
「は、はい……」
二人が近づいてくると、アーサーは指を唇に当て、壁に耳を押し当ててひざまずいた。
……
静かで気まずいひとときが過ぎた。
「人がいます」と、アーサーはようやく歯を食いしばるように言った。「それに怪物も。もみ合いの音が聞こえます。助けが必要かもしれません」
決断の瞬間、アーサーは立ち上がり、剣を抜きながら、一緒にいた二人を手招きして前へ進んだ。「行こう」
タカは短剣をしっかりと握りしめた。自分に何を言い聞かせても、手の震えは止まらなかった。額を拭うと、手は汗で濡れてぬめっていた。
『肌が冷たく感じるし、またあの奇妙な吐き気がしてきそうだ……』
震える息を深く吸い込み、タカは角を曲がった……そして、たちまち身動きがなくなった。
血だ。立ち上る死の悪臭が鼻孔を突いて、彼は吐き気を催した。
ベリルは彼が立ち止まったことに気づき、安全な距離からじっと見つめていた――おそらく、自分の鼻も同じような目に遭わせたくないのだろう。洞窟のこの一帯には、数十体のゴブリン族の死体が散乱していた。アーサーは身構えながら、そのうちの1体を調べようと身をかがめた。
「ふむ……」
彼は立ち上がった。「この傷跡は、モンスターの仕業には見えないな。これと、さっき聞いた物音からして、他の冒険者たちがここにいるに違いない……」アーサーは通路の先をじっと見つめた。
「……誰かがすでに引き受けていた仕事を、俺たちが引き受けてしまったんだ」と彼は結論づけた。「騙されたんだ」
「あのドワーフ、怪しいと思ってたんだ!」ベリルが叫んだ。
アーサーは何も言わず、歩調を速めて廊下を力強く歩き出した。タカはスカーフを鼻まで引き上げ、死んだゴブリンたちを見ないように必死になりながら後を追った。ベリルは最後尾を歩いていた――彼はタカの真似をして、ローブの襟を口と鼻に当てていた。
争いの音を辿って進むと、やがて洞窟の最奥と思われる広々とした空間にたどり着いた。その中では、三人の人影が走り回っており……そのうちの一人がゴブリンの頭上にメイス振り下ろす瞬間を、タカはちらりと目にした。彼は顔をしかめ、本能的に目を背けた。
「俺が行く。お前たちは壁際にいてくれ!」
そう言うと、アーサーは三人の見知らぬ者たちに叫びながら、戦いの渦へと突進していった。タカとベリルは言われた通りに壁沿いに身を潜め、戦いがようやく終わるまでその場に留まった。




