第55話:死なない
ピリッ……ピリッ……ピリッ……
洞窟の奥深くから、水があることを示す音が聞こえてきた。その音は壁に沿って入り口まで響いてきた。
タカは身震いした。中に入ってまだ数フィートも進んでいないのに、すでに体からすべての温もりが抜け去ったような気がしていた。彼はマントに身を包み、足を止めずに歩き続けた。一歩、また一歩……彼は自分の足元をじっと見つめた。ここは寒い。ここは狭苦しい。さらに悪いことに、ベリルの魔法がなければ、ここは真っ暗闇だったに違いない。
ほどなくして、彼は震えだし、胸が締め付けられるような感覚に襲われた。息をするのも苦しかった。この場所全体が、どこかおかしい。客観的に見て邪悪だ。不気味で、まるで紫色の破滅の闇が洞窟全体を覆い、ここに入る者すべてに絶望を授けているかのようだった。
まあ、最後の部分は彼の想像だったのかもしれないが、それでも……
「あ、アーサー」
返事はない。二人は歩き続けた。彼は呟いてしまったのだろうか? タカは言葉もなくベリルの方を見やり、彼の魔法が放つ青白い光に照らされた顔をじっと見つめた。なぜそうしたのか、自分でもよくわからなかった――おそらく、わずかな安らぎの兆しを探そうとしたのだろう。あるいは、いつも自信に満ち溢れているベリルが、自分よりずっと平気なのかどうかを確認したかったのかもしれない。
そうではなかった。ベリルの口元は下向きに歪み、目は細められ、眉間にしわが寄っていた。タカは、彼が洞窟の壁をしばらくじっと見回す様子、それから天井、床、そして背後へと視線を移していく様子をじっと見つめていた……彼もまた、何も話そうとはしなかった。
どうやらタカは見つめすぎていたらしい。ベリルがようやく彼に気づいた途端、「何だ?」と鋭く言い放ったのだ。彼らしくないことに、声は震えていたが、頬は怒りで赤く染まることはなかった。
「な、何でもない」とタカはどもった。「気にしないで」
『なんで「いいや」なんて言ってしまったんだ?!』 そんなこと、全く意味が通らない。今や自分は馬鹿みたいだと感じた。
ベリルはそれに対して何も言わなかった。タカは――奇妙なことに――彼を振り返りたかったものの、あえてそうすることはできなかった。
しばらくの間、静寂が流れた。タカの耳には、自分の血が轟く音が響いていた。その音に混じって、一つの考えが浮かんだ。
『ベリルも怖がっているんだ』
自分だけが恐怖を感じているわけではないと知ると、少し気が楽になったが、今何とか振り絞った勇気は、ゴブリンと遭遇した瞬間――いや、それより早く――消え失せてしまうだろうと彼は確信していた。
彼らは広くて何もない部屋に入った。そこを通り抜け、曲がり角を回り、さらに先へと進んだ。さらに奥へ。さらに深く。さらに暗く。
緊張のあまり、タカは内側の唇を強く噛みすぎてしまった。鋭い痛みが彼を現実に引き戻し、わずかな血がにじみ出た。
「痛っ……」
「大丈夫か?」
「う、うん、ただ唇を噛んじゃっただけさ」
ここに入ってからしばらく経っていたが、これまで聞こえてきたのは、時折聞こえるコウモリの鳴き声、水の滴る音、そして自分たちの足音だけだった。ゴブリンたちはどこにいるのか? 彼らは罠に歩み込んでいるのだろうか? 彼はアーサーに声をかけようとした――まさにそうしようとしたその時、アーサーは彼とベリルの不安に気づいたようだった。
「タカ。ベリル。何があっても、俺が守ってやる。俺の後ろにいてくれ。」
まるで二人の考えを読み取り、安心させようとしたかのようだった。温かく、優しく、親のような……まるで、子供に「大丈夫だ」と安心させる父親のようだった。
すると、彼は突然立ち止まった。声は低く、顔には厳しい決意が浮かんでいた。
「たとえ命を落とすことになっても。お前たちを守る。」
「わ――」タカは言葉を詰まらせた。「死なないでほしい、アーサー!」
それに対し、アーサーが口にしたのは、ただ厳粛な「死なない」という言葉だけだった。
二人は歩き続けた。




