第54話:洞窟
「ここでいい」と、アーサーは馬車に近づくと御者に声をかけた。御者はうなずき、馬車の速度を落として止まった。
「君たち三人は、外で気をつけてね」と、彼らが荷台から飛び降りるのを、肩越しにちらりと見ながら、御者は言った。タカは彼に手を振り、アーサーはうなずき、ベリルは何も言わなかった。
御者は手綱をパチンと鳴らし、馬は安定した小走りを始めた。アーサーは、御者が安全な距離まで離れるのを待ってから、一緒にいる二人に話しかけた。
「よし。洞窟を探しに行こう」
ほどなくして、彼らはそれを見つけた。道路から約100フィート離れた場所、岩だらけの丘の斜面に埋もれていたのだ。 内部には光がほとんど届かず、中を覗き込んでもタカの目には暗闇しか映らなかった。頂上から突き出たギザギザの崖や、入り口を不十分に隠している苔むした地衣類を除けば、それは他の洞窟と何ら変わりなかった。このような閉ざされた空間では、南流の技に頼ることはできない。剣を使い、アーサーに教わったことをすべて駆使しなければならない。
「あの……これって本当に大丈夫かな?」手のひらはひどく汗ばんでいた。ズボンで拭こうとしたが、あまり効果がないようだった。
「いや」とベリルは呟いた。
「仕事を引き受けたんだ」アーサーは冷徹な口調で答えた。「だから、やらなきゃならない。装備を確認しろ」
タカは言われた通りにした。剣と短剣は所定の位置に収まっていた。一つは前、もう一つは後ろ。左腰には剣、弓は体に不快なほどに斜めにかけられ、矢筒は腰に……ポーチも持っていた。つまり、ポーション、水袋、食糧、光源……要するに、必要なものはすべて揃っていた。
タカはアーサーにうなずいた。「準備は万端だ」
「ベリル?」
ベリルは虚空をじっと見つめていた。正確に言えば、目の前の深淵を、刃のような眼差しで睨みつけていた。
「ベリル!」
「何だ?」彼はアーサーを睨みつけながら、きっぱりと返した。「大声で叫ぶな。耳が痛い。必要なものは全部持ってる。まあ、それは驚くことじゃないだろう。だって俺は――」
「わかった。ライトを唱えて、中に入ろう。」
「ちょっと、その――」
「やれ。」
ベリルは深く眉をひそめたが、それ以上反論はしなかった。彼は指をパチンと鳴らし、そして……
「……『光を生み出せ』」
アーサーは二人をじっと見渡した。いつものことだが、彼の表情を読み取るのは難しかった。
「準備はいいか?」
タカは視線をそらし、闇の中を見つめた。
「俺……準備はできてる」と、彼はようやく呟いた。自分の腕をぎゅっと握りしめ、もう一度言った。「準備はできてる」
「そうか」ベリルはため息をついた。「まあ、そうだろうな……」
タカもベリルも、うつむいたままだった。二人の姿勢はこわばっていた。それでも、アーサーはうなずいた。
「よし。行こう。」
その決意に満ちた言葉とともに、アーサーは洞窟の暗く不確かな奥へと姿を消した。




