第47話:[ベリル] 誕生日
誰も彼の誕生日だなんて覚えていなかった。誰も彼に一言も声をかけてくれなかった。16歳になったのに、もらったプレゼントといえば、顔面を殴られることだった。
タカに怖がらされたのは、彼のせいではなかった。タカがあれほど速かったのも、彼のせいではなかった。殴られたくなかったのも、彼のせいではなかった。
歩きながら、彼は青あざができつつある頬に手を当てた。その場所に鋭い痛みが走った。痛かった。今まで殴られたことなどなかった。彼の家族は様々な面があったが、身体的に傷つけたことは一度もなかった……家から離れていても、こんな望まぬ目に遭わされるのは、彼を明らかに不愉快にさせた。そのことを考えるだけでも。
ベリルの思いは兄弟たち――特に長兄のヴィツムニールへと向かった。自分がいないせいで、両親が彼にもっと気を配ってくれていることを願った……
「ああ……もし治癒魔法が使えたら……」
それは本当にあり得ない話だった。ヴィツムニールは半死半生のほど働き詰め、マナ枯渇を患って髪が白くなるほどだったのに、それでも両親は彼を気にかけようとしなかったのだ。
彼はふと空を見上げた。空は曇り、くすんだ灰色に覆われていた。風も強まってきており、先ほどまでの な暑さからはありがたい変化だった。彼は長く溜め込んでいた息を吐き出した。自分がどこへ向かっているのか、彼にはわからなかった。思考もまた、どこへ向かっているのかわからなかった。
馴染みのある声が、彼を呆然とした状態から引き戻した。
「えっと、ベリル? ベリル?」
タカだ。彼は即座に判断し、少年が通り過ぎるまさにその瞬間、路地裏に身を隠した。彼には気づかれていない……
ベリルは自分自身に顔をしかめた。なぜ彼を避けているんだ? なぜただ……いや、それはできない。理由は明らかだ。物事を整理する時間ができるまでは、タカとアーサーを完全に避けていたほうがましだろう。
そうすれば、準備が整った時に、彼は再びグループに溶け込むことができ、説明をする必要もなく、そのまま……そう、そうすればすべてが元通りになり、彼らに何も話す必要もなくなる。完璧だ。
タカの声が聞こえなくなると、彼は隠れ場所からこっそりと抜け出し、軽快な足取りで道を歩き続けた。やがて、彼は図書館の前にたどり着いた。
ドアを押し開けると、彼は本が醸し出すほこりっぽい温もりと安らぎに身を委ねた。目を閉じれば、まるで実家の書斎にいるかのように錯覚するほどだった。何よりも、あの場所が恋しかった。
「あの……いらっしゃいませ!何かお探しのものはありますか――」
特に、彼は紅茶が飲みたかった。だが、図書館でお茶が出るわけもなく、あるかどうか尋ねるほど愚かではなかった。たとえあったとしても、彼にくれるはずがない。それなのに、なぜ彼はカウンターへと歩み寄り――
「お茶はありますか?」
司書は驚いてまばたきをした。
「お茶? えっと……はい、奥に少しあると思います……」
ベリルは金貨一枚を机の上に押し付けた。司書は不安そうに耳を垂らし、金貨と、期待に満ちた表情でそこに立つハーフエルフとを、視線を泳がせて見比べた。
「あ、えっと……いいですよ」彼女はようやくそう呟き、ぎこちない笑みを浮かべながらコインを彼の方へ押し返した。「それ、お持ちください。えっと……お茶は無料ですから」
「そうか」とベリルは答えると、近くの椅子に腰を下ろした。「ありがとう」
彼女が奥へと小走りに去ったとき、彼は突然、喉が締め付けられるような感覚に襲われた。その塊を飲み込もうとしたが、それでも涙は止まらず、熱く、容赦なく溢れ出た。
少女が戻ってきた時も、彼はまだ泣いていた。彼女が彼を慰めようとマグカップを彼の手に押し当てた時も、そして彼女がようやく受付の後ろに引き下がった後も、涙は止まらなかった。
彼は幸せになりたかった。温もりを求めていた。一人になりたかった。司書以外にここにいるのが自分だけだったのは、神々に感謝すべきことだった。
ベリルは無理やり飲み干した。液体は火傷しそうなほど熱かったが、その痛みのおかげで、自分の感情以外の何かに意識を向けざるを得なかった。マグカップを空にした頃には、ただただ疲れ果てていた。疲れた時、読書ほど良いものはないだろう。
彼は立ち上がり、図書館の奥へと向かった。そこにはたいてい興味深い本が並んでいる。さらに、本棚に囲まれた特に居心地の良い席があり、プライバシーが保てるため、彼はそこを好んでいた。彼は特に魔法に関する本を探していた。ほどなくして、彼の腕には少なくとも十冊は積まれた本の山ができていた。
現時点では、火や土系の呪文でなければ、彼はほとんどの基本的な呪文を唱えることができた。それらの呪文は常に彼にとって難題であり、彼が「マナミサイル」をこれほど好んでいた理由の一つでもあった。ほとんどの「アスペクトを持たない」、あるいは単に「力」の呪文と同様に、それはコストが安く、自在に操れ、効果的だった。同じカテゴリーに属するもう一つの呪文、「シールド」も同様だった。さて、もしその唱え方を思い出せさえすればいいのだが。
確かに、他の魔術師たちは土の壁を築き上げたり、敵に火の玉をぶつけたりできるかもしれないが……席に着くと、彼はかつて気に入っていた教授の言葉を思い出した。あの教授の名前は、何だったっけ……? ああ――ギデオン・オーンスタインだ。
真に偉大な魔術師は、決闘に勝つために高コストの呪文を乱用する必要などない。シンプルでタイミングの良い『マナミサイル』一本で事足りるのだ。つまり、戦闘における有効性を決めるのは、どの呪文を操れるかではなく、その呪文をどう使うかだ。分かるか?
ベリルは、この点についてところどころで彼と意見が合わなかった。一部の魔術師は、とてつもない偉業を成し遂げることができるため、彼らと対峙する際には、単に「手持ちの呪文を賢く使う」だけでは何の意味も持たないのだ。ヴィツムニルはそのような存在だった。
とはいえ、オーンスタイン教授は優れた教師だった。実際、ベリルが懐かしく思い出すのは彼だけであり、間違いなく、今日に至るまでその教えが頭の中に響き続けているのも彼だけだった。
ベリルは残りの一日を読書と日課の策定に費やした。夕暮れ時に訓練に適した場所を探すために少し散歩をした後、中級クラスの宿屋に部屋を借り、ドラゴンスモーや図書館、そしてアールバークスのある街の一角には近づかないよう心に留めた。
ベリルは、タカとアーサーがこの一帯から遠くには離れないだろうと、当然の推測を立てていた。彼はまさにその目的で資料を調べたのだ――これで当分はここに戻ってくる必要がなくなり、彼らと出くわす心配もなくなった。常に警戒を怠れないことによるストレスとも、もう向き合わなくて済むのだ。
かなりの労力を要したが、その作戦は功を奏した。彼は二人とも一度も遭遇しなかった。




