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『異世界の記録:3人のパーティー』  作者: Hikaru Taka
第4章:シックスティーン

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第46話:決闘

「はっ! あっ! やっ!」

タカの額から汗が滴り落ち、服が肌に不快に張り付いていた。太陽は容赦なく照りつけていたが、彼は気にも留めなかった――アーサーに勝たなければならないのだ。彼に実際に一撃を食らわせるまで、今ほど近づいたことはなかった!

木がぶつかり合う音が空気に響き渡るが、一撃一撃が難なくかわされたり、弾き返されたりしていた。どういうわけか、彼はアーサーを防御に追い込んでいた。まさか、あのアーサーを!そう思うと、タカの顔に笑みが浮かんだ。筋肉は火照っていたが、彼はそれを無視して攻撃を続けた。一撃、また一撃、そしてまた一撃。

その時、アーサーが動いた。彼の剣が大きな弧を描いて振り下ろされた――遅すぎる。タカにはそれがはっきりと見えた。隙だ!

叫び声を上げながら、タカは剣を振り下ろし、ドスンという衝撃を感じた。

空気が凍りついた。息を切らしながら、タカはアーサーを見上げた。アーサーは頬に手を当てていた。彼の顔には奇妙な表情が浮かんでいた。驚きと……誇りが混ざり合ったような。

手が離れると、タカは自分の一撃でできた激しい打撲痕を目にした。

「待って、そんなつもりじゃなかったのに――」

「アーサー、ごめん、大丈夫か?」タカは心配そうに目を大きく見開き、木製の武器は地面に置き去りにされていた。しかし、アーサーは少しも動揺している様子はなく――むしろ、微笑んでいた。 彼を見下ろして、満面の笑みを浮かべていた。謝罪の言葉は、言い終わる前に途切れてしまった。アーサーは、顔面を殴られたことに対して怒っていないのか……?

「よくやった、タカ」

初めてのことだった。彼は遠回しな言い方をしなかった。いつもの冷静さのかけらもなかった。

「僕……でも、そんなつもりじゃなかったのに――」

しかし、その言葉を言い終える前に、アーサーは片膝をつき、彼を力強く抱きしめた。

「君を誇りに思う」と彼は言った。

タカの両腕は、ぎこちなく体の脇に垂れ下がっていた。アーサーは彼を誇りに思っているかもしれないが、タカ自身はどう感じればいいのかまだわからなかった。尊敬する人物から称賛されているというのに、誇りというよりは……悲しさを感じていた。物悲しさ。まるで、今まで一度も手にしたことのないものを、今になってようやく手に入れたような気分だった。

デインが今まで一度も抱きしめてくれなかったわけじゃないし、あるいは……

『またやってしまった。静かにしろ、お前。お前の気持ちはわかってる。俺はお前なんだ。ただ、その称賛を受け入れればいいんだ、いいか?』

アーサーは彼を放すと、肩を掴んだ。その瞳を見つめていると、タカはまるでデインを見ているような気がした。彼とアーサーの瞳には、似たような「守ってあげたい」という雰囲気が漂っていた。二人とも、親のような温かさを共有していた。言葉ではうまく説明できなかった。

「見事な一撃だ。」

「……ありがとう」

とはいえ、彼は依然としてこの一連の出来事に対して疑念を抱いていた。

『今なら、あの巨大なネズミたちに一人で立ち向かえるだろうか? それでもまだ怖がるだろうか? その点に関しては、あまり成長した気がしない。武器の扱いは少し上手くなったかもしれないし、攻撃をいくつかかわせるようになったかもしれないが……それでも、あのネズミたちには怖がるだろうと思う』

アーサーはきっぱりと頷きながら立ち上がった。「よし」と彼は宣言した。「タカ、君とベリルでまたスパーリングをしてみないか? ルールは前と同じだ。ベリル、魔法は使っちゃダメだぞ」

当然のことながら、ベリルは「魔法禁止」という条件に異議を唱えた。正直なところ、タカには彼が怒る口実を探しているだけのように思えた。その証拠に、彼がその後見せた癇癪は、これまでで最も説得力に欠け、中途半端なものだった。

二人は約五十歩ほど離れて立っていた。この対決のルールは決まっていた。先に打たれた方が負けだ。タカは木製の短剣を手に取った――幸いにも、アーサーを説得してそれを使わせてもらえるようにしていたのだ。ついに!

「始め!」

アーサーの合図で、タカは全身の力を込めて地面を蹴り、長く速い歩幅でハーフエルフに向かって猛然と駆け出した。

『一撃先取。できる、絶対にできる! 集中しろ! 距離を詰めるだけ、そうすれば……!』

ほんの数秒で、タカは三十歩を駆け抜けた。ベリルの顔が見えた――青ざめ、極度の恐怖に満ちていた。四十歩。彼は短剣を構えた。

悲鳴を上げて、ベリルは防御のために両手を突き上げた。剣は投げ捨てられ、手のひらは外側を向いていた。「エウアアッ!」 貴族の口から出るはずのないその声は、意味不明な支離滅裂な言葉と混ざり合っていた。まさか彼は――?!

ベリルの掌から火花が散ったとき、タカが反応する時間はほんの一瞬しかなかった。空気がほんの一瞬ひび割れるような音がしたかと思うと、次々と呪文が空気を切り裂き、彼に向かって矢継ぎ早に飛んできた。

罵声を上げながら、タカは激しく左へ身をかわした。その急な動きで勢いが途切れ、慌てたせいで足首を捻り、痛みを伴いながら地面に倒れ込んだ。とはいえ、あの呪文――おそらくは何かしらの呪文だったのだろう――に直撃されるよりは、はるかに痛みは少なかった。

飛来した魔術弾は彼の頭上を飛び越え、一つずつ近くの木に激突した。チク、チク、チク。それぞれがきらめく破片へと砕け散り、やがて無へと消え去っていった。

「うっ……」

ある事実が彼の頭の中で鮮明になるのに、そう時間はかからなかった。意図的かどうかはともかく、ベリルは反則を働いたのだ。さらに悪いことに、彼は……タカは喉を鳴らした。その考えを最後まで口にするつもりはなかった。

「た……」そこにベリルがいた。まるで「勝った」かのように得意げに彼を見下ろし、ニヤリと笑っている。まるで何も悪いことをしていないかのように、何気なく髪を整えながら。タカは、その表情に覆い隠される前に、ほんのわずかな後悔や気遣いの色を確かに見たような気がした。

「まあな」と彼は嘲るように言った。ベリルがそれ以上何かを言う暇もなく、ぼやけた動きと、肉がぶつかるような鈍い音が響き、彼は激しく地面に叩きつけられた。彼は痛みに叫び声を上げ、顔を押さえた。

一体何が……?

アーサーだ。アーサーが貴族とタカの間に立ち塞がっていた。表情は見えなかったが、タカは彼が怒っていることを肌で感じ、その姿勢からもそれが伝わってきた。

「お前……俺を殴ったな!」ベリルは叫んだ。「お前――」

「彼を殺しかねなかった」アーサーは腕を組んで唸った。

「私……その呪文は――」

「違う。私が背を向けている間に殴ろうとした時。あの女性の植物をほぼ枯らしそうになった時。そして今度はこれだ。ベリル、あと何回自制心を失うつもりだ? 次は、誰かを殺してしまうかもしれない。それが君の望みなのか?」

タカは身じろぎした。張り詰めた空気が息苦しかった。彼はこんな状況が大嫌いだった。アーサーの声はますます高まり、その逆上した怒りは、さっきの笑顔とは恐ろしいほどかけ離れていた。

「俺……違う! 俺――」

「魔法を使うなと言ったのに、お前はそれでも使った。魔法はおもちゃじゃない。これは冗談じゃない。もし訓練試合で、俺がお前に剣を向けたらどうするつもりだ?」

「分かってる、俺――」

「もういい」とアーサーは言った。「『分かってる』なんてクソみたいな言い訳はもういい。お前は変わらなきゃいけない。これは許されない。お前は誰より優れているわけでも、ルールを超越しているわけでもない。特別なんかじゃない。お前はタカや他の連中と何ら変わらないんだ。 貴族だって? だから何だ? 一度くらいは、大人らしく振る舞え。冒険者になりたいのか? そんなこと、長くは続かないぞ。この振る舞いで、お前は死ぬことになる。足手まといだ。だから、もういい。これ以上は許さない、ベリル」

タカは目を閉じ、深く息を吸った。アーサーが怒る姿を見たのは数えるほどしかなかったが、これほどまでに激昂しているのを見たことはなかった。彼は怖くなった。その言葉は辛辣で刺々しかったが、真実だった。ベリルは年齢の割に極めて未熟だった。特権意識が強く、わがままで、他にも数え切れないほどの欠点があったが、彼らにも良い思い出がいくつかあったはずだ、そうだろう?

タカは彼について思い出せる良いことを記憶の中を探したが、何も見つからなかった。結局のところ、出会ったその瞬間から、ベリルはただの嫌な奴でしかなかったのだ。

無礼で、恩知らずで、自己中心的で、無責任で、未熟。それらの言葉こそが、彼を完璧に言い表していた。

全体として、アーサーの主張は非常に理にかなっていた。ベリルはこれまで何度も、規則や他人をまったく無視する態度を見せてきた。魔法以外のことに関しては仕事への意欲がほとんどなく、今回、その不注意のせいで誰かが殺されそうになったのだ。アーサーがこの振る舞いに我慢の限界に達したのも無理はないと言えた。むしろ、もっと早く限界に達していなかったのが不思議なくらいだった。

だが、ベリルはただパニックになっただけだろう? だから、彼のせいじゃない……タカは首を横に振った。一体なぜ、彼はあのような奴の言い訳をしているんだ? そして、なぜ彼は……なぜ、まだこれほどまでに必死になって彼と友達であり続けたいと願っているんだ?

「お前は子供じゃない。大人らしく振る舞え。」

息が詰まり、震えるような呼吸と肩の震え――必死に泣き声を抑えようとしているが、惨めに失敗している誰かの音だった。

アーサーは息を吐き出し、肩の力を抜いた。姿勢が緩み、口調も和らいだ。「殴ってごめん。でも、言ったことは本気だ。このままじゃ続けられない。変わってくれ、さもないと……」彼は言葉を捜すように間を置いた。「さもないと、君は新しい仲間を探すべき時が来るかもしれない。」

「いやだ!」タカは叫んだ。その考えだけで胸が痛んだ。だが、なぜだ? あの痛ましいほどの切望。あの奇妙な灼熱感。なぜだ?

「君たち二人を守りたい。でも、もしかすると僕は……」アーサーは言葉を途切れさせた。

ベリルは泣き止んでいた。少なくとも、声に出して泣くのはやめていた。謝罪の後、アーサーを見上げた彼の顔は、鼻水と涙でぐしゃぐしゃだった。動く気配すら見せない。両脇で拳を固く握りしめ、その表情は「悲惨」という言葉でしか表現できないものだった。

そして……ベリルは、タカが彼から聞くことになるとは夢にも思わなかった言葉を口にした。

「ご……めんなさい」

その声は張り詰めていた。打ちひしがれたように。まるで……まるで諦めてしまったかのように。

「い、いいんだ、ベリル。その……本当に、僕は大丈夫だから、えっと……」

貴族は立ち上がった。足を引きずるように歩き去る間も、彼の視線は足元に釘付けのままであった。空き地の出口にたどり着くと、彼はまるで何か言いたそうに長い間振り返ったが、言葉は出てこなかった。アーサーが彼に声を掛けたが、ベリルはただ再びうつむき、彼らを置き去りにして小道へと姿を消した。

タカの視線は、呪文が直撃した木へと向かった。木の幹は三か所でひび割れていた。おそらく自分なら死にはしなかっただろうが、木にこれほどのダメージを与えるなら、自分の体に何が起こるかなど想像したくもなかった。

試合は終わったが、誰かが勝ったという実感はなかった。


タカはその日の残りの時間を自由に過ごすことになった。最初はベリールを探そうとしたが、その捜索は実を結ばなかった。彼はどこにも 見当たらなかった。酒場にも、図書館にも、アールバークスにも……その後、少し落ち込んだ気分になったので、以前見つけた川辺へ行って座った。今回は石を投げたりはしなかった。ただ、せせらぎが流れるのを見つめていた。

今までじっくり考える余裕はなかったが、アーサーは彼に殴られるのを許してくれたのだ、そうではないか? あの隙はわざと作ったものだった――そうでなければ意味が通らない。あまりにも明白だった……そうではないはずがない。

まあ、どうやって、なぜそうだったかはともかく、彼はアーサーに一撃を食らわせたのだ。だから、少なくとも少しは誇りに思ってもいいはずだ、そうだろう?

そういえば、今日はベリルの誕生日じゃなかったっけ? とはいえ、あの出来事を考えると、それについてどう感じればいいのか、正直わからなかった。まず、彼を追いかけて行かなかったことを後悔していた。そして、忘れていた自分を馬鹿だと感じていた。

「アーサーと一緒に、彼へのプレゼントを探さなきゃな……」

また彼に会えることを願った。理由はわからなかったけれど、すべてが元通りになることを願った。

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