第40話:トレーニング
食事を終えると、彼らはアーサーの後をついてレルンの外へ出て、森の中へと入っていった。
彼らはエニャの薬草園を通り過ぎ、さらに奥へと進んだ。そこから、土の道をたどって木々の間を約30分ほど歩いた。やがて道は途切れ、視界が開けると、森に囲まれた広くて平らな空き地が現れた。
「うわあ……」タカは思わず声を漏らした。
そこは広々としていて、訓練にはうってつけで、人里離れた場所だった。誰にも邪魔されることはなく、おそらく好きなだけここを使えるだろう。彼はふと疑問に思った――ここは多くの人が利用している訓練場なのだろうか、それともアーサーがたまたま見つけた地理的な奇跡なのだろうか?
「アーサー、どうやってこの場所を見つけたんだ?」
アーサーはさりげなくバッグを肩から下ろし、ドスンと地面に置いた。「あちこち聞いて回ったんだ」
「で、ここって、公式のトレーニングスペースとか、そういうものなの?」
「以前はそうだったらしい。でも、今はあまり使われていないみたいだ」
「なんで?」
「場所が遠すぎるってさ。それに、現代の冒険者たちは訓練の重要性を理解していないとか、そんな話も聞いてたよ。」
タカはベリルの方をちらりと見た。
『それ、彼らしいな』
「……なんで僕を見てるの?」
「えっと、君を見るのはダメなの?」
「違う! いや、そう? い、違う! 黙って!」
タカは、ベリルが自分自身を混乱させているのか、それとも自分が彼を混乱させているのか分からなかったが、今や自分自身が混乱していた。彼は首を振って、その考えを振り払った。
『まあ、いいや。』
……アーサーの視線を感じたので、振り返ってみると……案の定、アーサーは腕を組んで、厳しい表情を浮かべながら、自分とベリールをじっと見つめていた。
やばいことになったのか……? しかし、その心配を払拭するかのように、アーサーはうなずいた。もしかして、ただ物思いにふけっていただけなのだろうか?
「よし」と彼は言った。「始めよう。座れ。」
「えっ?」とベリルは叫んだ。「地面に座るなんて嫌だ!汚いし、断る!まさか……本気なの?!」
「座れ」
「いや、私……地面には座らないわ、アーサー、私――」
「座れ。」
ベリルの口は呆然としたまま、開いたり閉じたりしていたが、言葉は出てこなかった。彼は一瞬ためらい、反抗的な眼差しをアーサーに向け続けた。
数分後、ベリルは折れて、嫌そうな表情を浮かべながら、ぎこちなく腰を下ろした。「冷たい!」彼はまるで四歳児のように、ぐずぐずと文句を言った。
タカはそれを気にしていなかった。足元の土がひんやりとしていて、それが気に入っていた。とはいえ、それに風が加わると、体の熱をすべて奪われていくような気がした。まだ早い時間だから、きっとそのうち暖かくなるはずだ……
「ブルッ……!」タカはマントとマフラーを体にきつく巻きつけた。上着の袖が片方しかないのも、おそらく状況をかえって悪化させていた――右腕の方が確かにずいぶん暖かい。彼はぼんやりと、左手にはめた長い手袋をいじった。あまり暖かくはなかった。
『ああ……持っていてよかったけど……まあ、ないよりはマシだけど――』
「第一に。戦闘は遊びではない。生き残るために戦うのだ。必要なことは何でもしろ。喉、股間、頭、腹、あるいは目を狙え。相手も同じ場所を狙ってくることを覚悟しろ。常にそれらの部位をガードしておけ。そうしなければ、死ぬことになる。」
「第二に。緊急時を除き、決して武器を投げてはならない。落とすのも禁物だ。一度手から離れてしまえば、取り戻せる保証はない。」
武器を落とすという話に、タカは少なからず落胆した……
「第三に。相手の体ではなく、相手の刃を見ろ。」
「第四。武器は自分の延長でなければならない。自分の動きに合わせて刀を振るうのだ――刀に振り回されてはならない。」
「第五。怪物には決して慈悲を見せてはならない。」
……
ベリルは立ち上がっていた。
「ベリル。座りなさい。」
ハーフエルフはニヤリと笑った。「いや、立ったままにするよ、ありがとう!」
空き地に一瞬の静寂が訪れた。突風が吹き抜け、木々や草をざわめかせた。その風は身も凍るような冷気を運び、タカのマントとベリルのローブを翻し、衣服を突き抜け、骨の髄まで凍りつかせた。
「あっ!」タカは叫び、マントの端を払って体に巻き直した。「寒、寒い!」
「袖が片方しかないじゃないか」とアーサーが指摘した。
「そ、それで?!」
「新しい上着を買ったらどうだ?」
「いやだ!」
「そうだ、タカ、君は――!」
アーサーは彼の方を振り返ることさえせず、「ベリル、やめろ」と言った。タカを囲んで攻めようとする彼の企みを即座に断ち切った。
『新しいシャツなんて買わないよ。これでも大丈夫。気に入ってるし。僕にとって特別なものなんだ。』
15歳の誕生日にデインが特注してくれたプレゼントだという事実はさておき、このシャツは彼にとってあまりにも大切で、特別すぎて、新しいものと交換するなんてできなかった。袖が片方ないのは破損のせいではなく、デザイン上の選択だったのだ! カッコよかった。それに、丈夫で着心地が良く、通気性の良い素材で作られていて、幸運を祈ってデインの古い冒険用トップスの繊維まで縫い込まれていたのだ!
そう。
そう!
それは、はるかに、はるかに特別なものであった――その一点だけは、彼が決して譲るつもりはなかった。彼は、可能な限り、頑なにそれを着続けるつもりだった。永遠に、さえ。永遠に着続けたいと思っていた。なぜなら、それを着ていると、まるでデインがまだ自分のそばにいて、ある意味で自分を見守ってくれているような気がしたからだ。そう思うと、安心感が湧き、少し緊張も和らぎ、そして……
「また、まるで彼が死んだかのように考えてしまっている! 彼は死んでなんかいない! でも、そうだな、タカ、わかるよ。わかるし、そして――」
「タカ」アーサーの声が、彼の思考を遮った。
「えっと、は、はい?」
「せめて新しいシャツを買ったほうがいいよ。それ、――」
「いや、絶対に譲らない! その点だけは譲らない。このシャツ、気に入ってるんだから、いい? なんでそんなこと気にするのよ!?」
「だって、いつかは冬になるから。すごく寒くなるし、君にそんなことになってほしくないから――」
「うっ!アーサー、見てよ!そんなに寒くないし、君がくれたマントも着てるんだし、わかるでしょ?私……大丈夫だから、子供扱いしないでよ、私はもう子供じゃないんだから!」
二人は睨み合った。どちらも特に譲りたくなかったが、誰かが折れなければならない。
アーサーはため息をつき、ここ数秒間に張り詰めていた沈黙を破った。
「わかったよ」と、彼はゆっくりと折れた。これにベリルは激しく動揺し、顔に怒りを露わにして叫び始めた。
「おい、冗談だろう! 似合わない服のことなら簡単に譲るくせに、僕がただ立ち上がるだけのことには譲らないってのか?!」
「でも、結局は譲ったじゃないか、ベリル。そうだろう? 今、君は立っているじゃないか」
「い、いや! お前! 何だよ! まあ、そうだけど、俺は……うぐっ! ふん!」彼は腕を組んで反抗的に顔を背け、素早く座り込んだ。地面に触れたかと思うやいなや、彼は再び跳ね起き、不機嫌そうに眉をひそめた。
『立ち上がりたいってことを、つい忘れかけてたのかな?』
2回目のレッスンが終わりに近づく頃には、タカの頭は情報でいっぱいになっていた。レッスンの途中でふと気が散ってしまったところ、年齢の話が出てきて……どうやらアーサーは28歳らしい。当然のことながら、タカはこれに衝撃を受けた。いわば、その事実をなかなか受け入れられなかったのだ。
二十八歳……初めて会ったとき、アーサーはもっと年上に見えた。今はもっと実年齢に見えたので、タカが彼の言葉を信じなかったわけではない。ただ、最初はタカが彼を四十代、あるいは五十代だと思っていただけのことだった。
二十八歳!
タカは、アーサーが分厚い革のバッグの中を漁る様子を見守っていた。やがて、彼はいくつかの木製の武器を取り出した。
「それ、一体何なんだ?」ベリルが尋ねた。
「練習だ。キャッチ」とアーサーは答えた。
「練習?」ベリルは信じられないという様子で繰り返した。「どうしてそう思うんだ……うっ!」
木製の剣が胸の真ん中に縦に直撃し、彼は慌てて手を伸ばし、落ちる直前にかろうじてそれを掴んだ。打撲傷が残るほど強くは当たっていなかったが、不意を突かれた。
「あれは何のためだ?」
「ちゃんと集中しろ。警告しただろう」アーサーは彼を叱りつけると、タカの方へと注意を向けた。
「タカ、これだ」アーサーは木製の短剣を二本、彼の方へ投げた。タカは一歩前に踏み出し、空中で器用にそれらを掴み取った。自分が何をしたのか気づくと、彼の顔には思わず大きな笑みが広がった。
「おぉ、いいキャッチだ!」
一方、ベリルは足を踏み鳴らし、アーサーに憎々しい視線を向けた。「俺には警告してなかったじゃないか!」
「言ったよ。『ベリル、キャッチ』って。君が聞いてなかっただけだ」
「まあ、私は――!」
「手に持ってみて、重さを確かめて、大丈夫か確認して。」
タカはそうしてみた。手に持った感じは少し違和感があったが、それ以外は……本物の短剣より軽かった。
『だって……これ、木でできてるんだから、当然だろ、タカ……』
「で、一体なぜ本物の武器を使えないんだ?」ベリルの問いかけは、むしろ不満のように聞こえた。
「訓練中だからだ。お前たち二人とも、本物の剣でスパーリングをするほどの経験はない。」
「じゃあ、なんで買ってきたの? 使えないなら何の意味が――」
「準備ができた時のためだ。モンスターと戦う時のために。」
ベリルは答えなかった。その代わりに、怒りを抑えきれずにその場に立ち尽くしていた。
アーサーはしばらく無言で彼を見つめた後、きっと彼をさらに怒らせるに違いない言葉を口にした。「それにベリル、魔法はダメだ」
「ま、魔法はダメだって?!」
その激昂にも動じることなく、アーサーは淡々とこう言い放った。「これは剣の訓練だ。魔法の訓練じゃない。」
子供っぽいハーフエルフがさらに金切り声を上げようとする前に、タカが口を挟んで話題を変えた。
「そうか、休みの日に店でやっていたのは、これだったんだな、アーサー!」
「準備してたんだ、そうさ」
「店に入るのを見かけた時、『あれ、変だな』って思ったけど、こういうことなんじゃないかって予感はあったよ。トレーニングだって言ったけど、どんなトレーニングをするの? スパーリング? 僕がベリルと戦うの?」
「おいおい!」ベリルは鼻で笑い、目を白黒させながら手を振った。「それがどうなるかは、みんなわかってるだろ――」
「そうだ」とアーサーは彼の言葉を遮って答えた。「彼らとスパーリングをするんだ。ただ、君とベリルは互いではなく、僕と対戦することになる。」
「ああ、わかったよ」とタカは、気ままに短剣をくるくると回しながら言った。「つまり、チームワークのレッスンみたいなものか?」
「ある意味ね。君とベリルは僕と戦うんだ。一撃でも当てられたら、その日の残りの時間は休ませてやるよ」
「ふん。俺たちは一発当ててやるよ」とベリルは、自己陶酔的な笑みを浮かべて宣言した。「もし二発当てたらどうなるんだ?」
もし、自分より背の高い相手を軽蔑するような目つきができる人間がいるとすれば、まさに彼がそうしていた。
「二発当てたら?」アーサーは繰り返した。「その日の残りの時間は休みだ」
「そ、そ、それ! それって、一発当てた場合と全く同じじゃないか!」ベリルは口ごもりながら金切り声を上げた。その声は、タカに死にゆく……何かを思い出させた。リスかな?
「調子に乗るな、ベリル。さっき言ったことをもう忘れたのか?その傲慢さを改めろ。さもないと、命を落とすことになるぞ」
「お前――! なんでだ! お前! お前は自分がすべてを知っていると思い込み、そんな口調で俺に話しかけ、俺のことを勝手に決めつけて、それが俺を限りなく怒らせるんだ! 見せてやる!」
ベリルは独断で突進し、貴族の身分には似つかわしくないほどの猛烈な勢いでアーサーに襲いかかった。
「魔法は使うな」とアーサーは彼に言い放った。
先制攻撃を仕掛けたベリルは、剣を激しく下へ振り下ろし、勢いを保とうと必死になりながら前へ突進した。彼は攻撃を上に曲げ、次に左へ、下へ、そして右へと振った。彼の攻撃パターンがどうあるべきか、全く分かっていないことが痛々しいほど明らかだった。
彼の剣の一振りはどれも遅く、ぎこちなかった。まるで全身が剣に引きずられているかのように、攻撃するたびにバランスを崩しているようだった。まともな構えなどなく、木刀を両手でぎこちなく握りしめ、足も不揃いに開いていた。
「足さばきが頼りないな」とアーサーは諭すように言い、カチッという音と共に重いオーバーハンドの攻撃をかわした。タカは立ち上がり、不安げに視線をきょろきょろと走らせた。彼は で握った木製の短剣に目を落とし、それから再び目の前で繰り広げられる戦いに視線を戻した。どうしても、どうやったら割って入って手助けできるか、思い浮かばなかった。
『まあ、ただ見ているしかないか。そうすれば、次はベリルが独りよがりに突っ込んでくることもなくなるかもしれない。神々よ。アーサーがクエストから引き上げてくれてよかったな。もしベリルがああやって独りよがりに突っ込んで来て、もし俺たちが本当に危険な相手と戦っていたら? いや……考えただけでゾッとするよ。ごめんだ』
ベリルは顔をしかめたが、攻撃を続けた。その攻撃は荒々しく、訓練不足で、的を定めておらず、無茶苦茶だった。どれもアーサーには届かず、すべて届かないか、あるいは受け流された。
「ねえ、貴族の剣術の対決って、もっと優雅なものだと思っていたんだけど。これはすごく……えーと、優雅じゃないね。」
「剣に体を動かされているんだ。その逆じゃない!」
木製の剣が交差するたびに、空気が絶え間ないカチッ、バシッという音で満たされ、言葉と言葉の間のわずかな沈黙を切り裂いた。
そして……静寂が訪れた。
「それって一体どういう意味なんだ!?」ベリルは息を切らし、息を整えようとしていた。前かがみになって息を切らし、両手を膝につけ、剣は役に立たないまま地面に転がっている。この即興の決闘は、決着がついたようだった。
「剣は、お前の体の自然な延長でなければならない。手の動きで剣の重さを導け。剣に身を任せてはならない。お前の斬り方は重く、無思慮だ。一振りに、もっと意識を込めろ。もしこれが本物の剣を使った本物の戦いだったら、お前は死んでいただろう。」
アーサーは剣を高く掲げ……そして、ベリルの頭頂部に無害に剣先を当てた。その感触に、ベリルは身をすくめた。木製の剣先越しに、彼は黙ってアーサーを睨み上げ、青い瞳には怒りがきらめいていた。
「君にはまだ長い道のりがある。」アーサーは木刀を脇に下ろした。「諦めるな。戦いの序盤はよくやっていた。だが、感情に支配されて油断してしまった。過去に訓練を受けていたことはわかる。何かを再現しようとしていたのだ。だが、途中で諦めてしまった。」
「どうでもいいさ!」ベリルは自分の手を見つめながら、ぶつぶつと呟いた。
「大丈夫か?」
「大丈夫だ!」
「……そうか。」アーサーはベリルに背を向け、今まさにこちらへ歩いてくるタカに向かって声をかけた。ベリルは剣を手に、よちよちと立ち上がろうとしていた。
「タカ。ベリルの準備ができたら、もう一戦やろう。君は――」
タカの目が丸くなった。まさか。ベリルがまさか……!
「アーサー!」
警告の最初の音節が完全に発せられる前に、アーサーは本能的にくるりと振り返り、振り下ろされようとしていた木製の剣を途中で止め、ベリルの手から引き剥がした。
その勢いは凄まじく、ベリルは地面に叩きつけられた。彼を見下ろして睨みつけるアーサーの顔には、タカがこれまで彼に見たことのない表情が浮かんでいた。怒りだ。
「二度とそんな真似をするな」
彼の反応は速かった。あまりにも速すぎて、タカには彼が動く様子がほとんど見えなかった。剣を掴み取った時の「バシッ」という音で、空気そのものが裂けたかのようだった……そして、これが彼らを指導している男だ。タカは背筋が凍るような感覚を覚えた。
アーサーはベリルの隣に剣を投げ捨てた。その声は荒く、低く響いた。しかし、ほんの数秒前に見せたような激怒の気配は微塵も感じられなかった。
「さあ、起きろ。」
ベリルは微動だにしなかった。その場に立ち尽くし、木刀を虚ろな眼差しで見つめていた。
「ベリル。起きろ。」
しぶしぶ、ゆっくりと、ベリルは剣を握りしめ、立ち上がった。彼の顔には、深く、揺るぎないしかめ面が浮かんでいた。下唇が震えていた。
アーサーの表情が和らいだ。
「ベリル。私は君を責めているわけではない。」
返事はない。ベリルはアーサーの目を見ることを拒んだ。
「どうして君は……?」タカは言葉を途切れさせ、恐怖と不安が入り混じった表情でベリルを見つめた。しかし、しばらくして、彼は考えをまとめ、言葉を続けた。「……木刀でよかった。そして、神様、アーサー。君の反射神経がこんなに鋭くてよかったよ。」
アーサーは彼に反応しなかった。
「ベリル、君がそんなことをしたってことは、まさに俺の言っていた通りだ。君には訓練が必要だ。もし俺を殺してしまっていたら、どうなっていたと思う?」
「木刀だったんだ」ベリルは地面を見つめながらつぶやいた。「木――」
「そう。だが、お前のやったことは許されない。その理由が分からないのか?」
「……」
タカは黙り込んだ。ここで言うべきことは何もない。何か言えば、事態をさらに悪化させるだけだと感じていた。そして、そもそも口を出してしまったこと自体を、はっと後悔した。
『俺が彼を囲み込もうとしているなんて思われないといいな』
「ベリル。この件はもう水に流そう。このことから学び、二度とそんな真似はするな。仲間とのスパーリングと、モンスターとの戦いは別物だ。もし相手がモンスターだったら、あれでも構わなかっただろう。だが、仲間に対してそんなことをしてはならない。わ――」
「わ、わかってる! わかってるよ!」彼は訓練用の剣の柄をぎゅっと握りしめながら反論した。
「それを分かっているなら――」
「もういい! もういい! さっさとやろうよ、さっさと……」
ベリルは深く息を吸い込んだ。その瞬間、一陣の風が空き地を駆け抜け、葉をざわつかせ、空中に舞い上がらせた。
『彼のいつもの感情爆発とは違って、町の真ん中じゃなくて、ここ人目につかない場所で起きてくれてよかった……』
ベリルが話を終えるのを期待して、アーサーはしばらく待った。しかし彼が何も言わないままだったため、アーサーは最後の質問で気まずい沈黙を破った。
「二人とも準備はいいか?」
ようやく、ベリルが再び口を開いた。どうやら、彼は多少なりとも落ち着きを取り戻したようだ。
「準備はできてる。」彼が口にしたのはそれだけだった。
タカはうなずいた。「ああ、俺もだ。」
「よし。じゃあ、君とベリルはあっちへ行って、始めよう。」




