第27話:エニャ・アストレガ
皆さん、またお会いしましたね。今日の章も楽しんでいただけたら幸いです。長々と話すつもりはありませんので、どうぞお楽しみください。
依頼主のエニャ・アストレガは、町の少し外れにある薬局の唯一の経営者だった――実のところ、それは彼らが最初のクエスト中に偶然見つけた、まさにその店そのものだった。
道順に従って郊外を抜け、森へと入っていくと、家々を通り過ぎるうちに、タカは自分たちがどこへ向かっているのかをはっきりと悟った。本意であれそうでなかれ、彼はその場所の不可解なほど奇妙な造りを記憶に刻み込んでいたのだ。
レルンにある他のどの建物とも異なり、ある意味では露店の方がふさわしいかもしれないが、その建物には、いわゆる正面の壁がなかった。ドアも窓もなかった。正面近くの地面からは二本の木製の柱が突き出ており、それらは屋根の前端部分を支える梁の役割を果たしているようだった。屋根はパティオの上にわずかに張り出していた。 さらに、家自体は地面から約3フィートの高さにあり、中に入るにはよじ登らなければならなかった。家の底を支える格子が見えるということになるのだから、実に奇妙な構造だった……
床に座り、縁から足をぶら下げている年配の女性が、湯気の立つ、香りの強いお茶をすすっていた。彼女たちはその女性に気づくと、彼女は微笑んだ。
「あら、エニャの『退屈で陰鬱な店』へようこそ、お嬢さんたち。退屈で陰鬱なものは、このお店では売らないわよ。何かお手伝いできることは?」
タカは一緒に来た他の二人を不安げにちらりと見たが、やがてアーサーが口を開いた。
「ネズミの件で来ました。」
エニャの顔がぱっと明るくなり、彼女はよろめきながら立ち上がった。
「あら! それ、すっかり忘れてたわ。それに、忘れてたことまで忘れてたんだけど、今思い出したわ。さあ、中へ、お入りなさい!」
三人は彼女に従って建物の中へ入り、階段を上がって中へ足を踏み入れた。部屋は中くらいの広さで、一見無造作に物が散らばっていた。奇妙な植物やハーブが、 なロープや様々な素材の道具で天井からぶら下がっていた。テーブルの上では猫たちがのんびりとくつろいでおり、部屋の奥、奥の壁の中央には、ほこりまみれで、どうやら使われていないような大きなカウンターが置かれていた。
その壁沿いには、大小さまざまな形の陳列ケースが数多く並んでいたが、それらは不揃いで、率直に言って苛立たしいほど雑な方法で壁に釘付けにされていた。中には、小瓶や瓶がごちゃごちゃと無造作に詰め込まれているようだった。さらに、店全体が生姜とターメリックの匂いに包まれていた。いや、待て。あれは彼女のお茶の匂いだった。
「えっと……ここ、ひどく散らかってるわ。一体どうやって商売してるの? そりゃあ、ここにネズミがいるのも無理はないわ。家の半分くらいがなくなってるじゃない。壁もドアもないのに、どうやって外から侵入を防ぐの? これって、すごく危険じゃない?」
……もしかしたら、ネズミの駆除をする代わりに、この場所を片付けるべきだったのかもしれない。
タカは、エニャが部屋のとりわけ散らかった隅へと歩み寄り、大きなテーブルを押し始めたのを、戸惑いを隠せない様子で見つめていた。
「どけ、このクソ……!」彼女は、相手が抵抗し、足が床をガサガサと擦る音を立てながら動くのを見て、そう唸った。そして……「……よし、これでいいわ。」
そこには、床に埋め込まれた小さなハッチがあり、彼女は無表情にそこを指さした。
しばらくの間、三人は黙って立ち尽くしていた。アーサーはタカやベリルよりも早く、自分たちに何が求められているかを理解し、しっかりと取っ手を掴むと、難なく上へ引き上げた。ギシッと音を立ててハッチが開くと、重苦しいほこりの雲が外へ噴き出し、まるで湿った地下室の中から逃げ出すかのように空間を満たした。
地下室の汚れた空気を肺いっぱいに吸い込んだタカは、顔をしかめて咳き込み、スカーフで口と鼻を覆った。
「な、何だこりゃ?!」
ひどい臭いだった。「何年も掃除されていない」ような、あの最悪の臭いだった。
「ネズミはあそこにいるのか?」地下室の悪臭の雲など意に介さず、アーサーは老婆に目を向けたが、彼女はただ鼻で笑っただけだった。
「お前がぶらぶら立ち尽くして質問ばかりしているために金を払っているわけじゃない、小僧! そうよ、ネズミはあそこにいるわ! 3週間前もいたんだから、どうして移動するっていうの?! 3週間も誰もその仕事を引き受けなかったのよ! 3週間! 週間! 週間! あんたは――」
彼女の言葉を無視して、アーサーはタカの肩にそっと手を置き、階段の下を覗き込んだ。タカも彼の視線を追った――暗すぎて クモの巣以外にはほとんど何も見えなかったが、手入れが行き届いていないことは一目でわかった。この場所では、それがちょっとした常態のようだった。
「あの、あそこには明かりなんてないの?」タカは声を上げたが、その声は緊張で震えていた。
「一つ、部屋の中央にある。見ればわかるさ。さあ、急げ! 降りて行け! 若造め……」
『ふむ、そうか、部屋の中央か。なんて親切なんだ』
アーサーは立ち上がり、うなずいた。タカは彼の後を追った。階段を下りようとしているのだと思ったからだ。
「ベリル、あそこに『ライト』を放ってくれ」と彼は言った。
そのハーフエルフは目を転がし、「ああ、わかったよ!」とぶつぶつ呟いた。数秒間、集中するために間を置くと、劇的な仕草で「光の創造」を唱えた。またため息をつくと、彼は人混みを押しのけて進み、開いたハッチの前で立ち止まった。指を伸ばし、光る球体を暗闇へと突き出した。ついに、ベリルは一歩下がり、胸を張って首をかしげた。
「へっ!ほら」彼は確かに大いに満足げだった。「さあ、『ありがとう』って言え!」
すぐに感謝の言葉は返ってこなかった。その代わりに、アーサーはエニャの方をちらりと見た。
「何匹いるんだ?」
「冗談でしょ! こいつらはゴブリンなんかじゃない、ネズミだぞ、この小僧! そのクソクエストをやる気がないなら、さっさとここから出て行け――」
『「小僧」って何の意味? なんで彼女はそれを何度も言うんだ?』
ゴブリンという言葉を聞いただけで、アーサーの表情は険しくなった。その表情だけで、老婆の怒鳴り声は途絶えた。耳をつんざくような沈黙が流れた。タカは、アーサーが階段の先を睨みつけ、それから目を閉じるのを見つめていた。さっきまで剣の柄に軽く添えていた手が、今や柄をぎゅっと握りしめ、指関節が白くなるほどだった。数秒が過ぎ、そして……
「……それなら、俺が殺してやる。」彼は独り言を言っているようだった。タカには、それが何らかの思考以外の何物でもないとしか思えなかったが、エニャはその不気味な言葉に気に入ったようで、顔を喜びで輝かせながら叫んだ。「そう、お願いします! どうかネズミたちを殺してください。準備ができ次第、いつでもいいから、本当に!」
タカは正直、少し気にかかった。「殺す」という言葉が、もし自分とベリルのことを指しているとしたら? 彼はその仮定を振り払った。いや、それは極めて馬鹿げた考えだし、明らかに彼の意図するところではない。おそらくネズミのことだろう。いや、間違いなくネズミのことを指しているに違いない。
不気味なほど穏やかな口調で、アーサーは老婆に向き直り、こう答えた。「私の質問に答えていただいた後、始めましょう」
今回は、特に言うことはあまりないかな。確かに、状況はますます盛り上がってきてるよね?それに、エニャはちょっと変だ……うーん?なんでこんな風に話してるんだろう?まあ、ただ会話を盛り上げて、話題を作ろうとしてるだけなんだけど。そういうことについてコメントすると、なんだかすごく「公式」な感じがするんだよね……えっ?変だからやめて?わかった……
ごめんね。
冗談はさておき、また次回、みんな。
3日間の待ち時間……またゼロから始まる!
9月18日より、連載スケジュールが「3日おきに19:30」から「毎日19:30」に変更となります。このスケジュールにより、皆様にこの世界をより深く楽しんでいただき、より多くの方々に本作に注目していただければ幸いです。ありがとうございます!(n_n)
(追伸:もしその日付がすでに過ぎている場合は、このメッセージは無視して構いません。)




