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最強博物学者の優雅な秘境調査 〜絶滅種のモフモフ幼女を助けたら、懐かれすぎて新米助手になりました〜  作者: 月影


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第8章・第3話 :地下の豊穣祭壇と、結社の最後の首謀者

リゾットでエネルギーを極限まで補給した私たちは、地割れの奥に形成された古代の階段を降り、地下数百メートルに位置する『古代の豊穣祭壇』へと足を踏み入れていた。



――ひんやり……。



そこは、数千年前の開拓時代に造られたとされる、広大な神殿のような空間だった。

本来であれば、壁一面に刻まれた緑の魔導紋様が、平原全体へ豊かなマナを供給するための心臓部なのだが……今の祭壇は、不気味に脈動する黒鉄の機械によって完全にジャックされていた。

祭壇の中央では、地脈のコアから、強引に純粋な生命力を吸い上げている巨大な逆流装置が鎮座し、その周囲の空気は、吸い上げられたエネルギーの過負荷によって赤黒く歪んでいる。



「ひどい……。お洋服のミドりの光が、みんな真っまっくろになって、お山(大地)が苦しくてハァハァしてるよ、せんせい」



シルヴァが私の外套の裾をぎゅっと握りしめながら、怒りに満ちた声を漏らした。

彼女の言う通り、大地から吸い上げられたエネルギーは負の魔力へと変換され、世界を破滅させるための燃料として消費されようとしていた。

シロもまた、三本の尻尾を低く下げ、床を侵食していく黒い結晶を睨みつけながら、低い唸り声を上げている。



「ふむ。この祭壇の力を利用して、大陸全体の地脈を完全に反転させ、すべての穀倉地帯を塩の砂漠に変えようというわけだね。これまでの金眼商会や王宮の裏切り者たちを裏で操っていた、秘密結社『無窮の混沌』の最後の計画が、これというわけだ」



私は眼鏡のブリッジを押し上げ、祭壇の構造を瞬時に解剖した。



(――『鑑定眼・深度三段階解放』)



====================

【名称:無窮の混沌・地脈反転炉】

【状態:過負荷。大陸全体の豊穣マナを限界まで圧縮しているため、構造的限界点に近い】

【弱点:中心核の防護数式。ただし、周囲の『負のエネルギー体』を完全に排除しなければ、外部からの干渉は一切不可能】

====================



「――ククク、ハハハハハ! ついにここまで来たか、王都の目障りな博物学者め!」



突如として、祭壇の奥の玉座から、漆黒の豪華な法衣を纏った一人の男が立ち上がった。その顔は白白とした仮面に覆われ、手には赤黒い光を放つ、巨大な『変異魔導杖』が握られていた。彼こそが、これまで数々の事件を裏で糸を引いていた結社の最高指導者、司教マクシミリアンだった。



「だが、もう遅い! この『地脈反転炉』の充填率はすでに九九%を超えた! お前たちが何と言おうと、この平原は、そしてこの大陸は、一瞬にして生命の住めぬ『白銀の塩の地獄』へと変わるのだ!」



狂気に満ちた司教の笑い声が、地下の神殿全体に響き渡る。



「それは困るね。大陸の食文化が破壊されてしまっては、博物学的にも、何より私の助手たちの健康管理(胃袋)的にも、非常に大きな損失だからね」



私は一切の隠密を解き、堂々と祭壇の正面へと歩み進めた。



「フン、強がりを! 者ども、その生意気な学者と獣のガキどもを、我が主の生贄に捧げよ!」



マクシミリアンが杖を振り下ろした瞬間、周囲の影から、これまでのものとは比較にならないほど巨大な、全身が黒い結晶でできた塩の戦士たち数百体が、一斉に私たちを包囲し、鋭い剣を構えて襲いかかってきた。


退路のない、地下空間での絶対絶命の包囲網。



「うにゅ……! せんせい……っ!」

「大丈夫だよ、シルヴァ。シロも、私の後ろに下がっておいで」



私はため息をひとつ、静かに吐き出すと、懐からいつも使っている『万年筆』を抜き放った。



「新米助手への、これが本当に最後の実戦講義だ。世界の『構造』を、その目にしっかりと焼き付けておくんだよ」



私の眼鏡の奥で、世界のすべての『理』が、鮮やかな光の線となって収束を始めた。

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