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最強博物学者の優雅な秘境調査 〜絶滅種のモフモフ幼女を助けたら、懐かれすぎて新米助手になりました〜  作者: 月影


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第8章・第4話:理を刻む博物学と、黄金に輝く豊穣の未来

数百体の塩の結晶戦士が、四方八方から刃を突き立てて殺到する絶対絶命の瞬間。

私は手にした万年筆の先から、不可視の膨大な魔力を同心円状に展開した。



「――『万象融和エレメンタル・ディゾルブ』」



ドゴォォォォォンッ!!!



衝撃波が地下神殿の大気を揺るがす。

私たちを目がけて放たれた数百の刃は、私の周囲数メートルの空間に触れた瞬間、その塩の結合構造を完璧に分解され、ただのサクサクとした「ただの食用塩の粉」となって、床へと真っ白にポロポロと落ちていった。



「な……、なぁっ!? 我が結社最高峰の不死の軍勢が、一瞬でただの塩のしおのやまになっただと!?」



仮面の奥で、マクシミリアンが驚愕に声を震わせる。



「さて、お次は君たちのそのおもちゃ(・・・・)の番だね。シルヴァ、シロ。あの地脈反転炉の中央、赤黒く光っている『エネルギーの結び目』が見えるかい?」



「うん! みえる! シルヴァ、あそこの一番わるいいろをしてるところ、絶対に逃がさないの!」



「ガウッ!」



「素晴らしい。あそこが、大地のマナを逆流させている数式の交差点だ。シロが周囲の空間を限界まで冷却して結合を固定し、シルヴァが、君のこれまでの成長のすべてを込めて、あそこに『咆哮』をぶつけるんだ」



「うんっ! シルヴァ、せんせいと、お山(大地)のために、ぜんりょくで頑張るの!」「ガウゥン!」



二人の連携は、もはや言葉を必要としなかった。

シロが三本の尻尾を扇のように大きく広げると、地下神殿全体が一瞬にして絶対零度の氷の世界へと変貌し、暴走する反転炉の表面をパキパキと凍りつかせてその動きを強制固定した。



動きの止まったエネルギーの結び目を見据え、シルヴァが深く息を吸い込み、天狼族としての真の『咆哮』を放った。



――きゅぅぅぅぅぅぅんッッ!!!!!!!



それは、一見するとただの可愛い子犬の鳴き声のようでありながら、地下空間のすべての物質を分子レベルで震わせる、極限まで調律された『超高周波の共鳴波』。

その狙いは寸分の狂いもなく、反転炉の中心核へとピンポイントで直撃した――。



――パリィィィィィンッ!!!



「ギ、ギャァァァッ!? 反転炉の防護結界が、ただのガキの鳴き声で粉砕されただと!?」



「これで終わりだよ。世界のロジックを歪めた罪、その身で購いなさい。――『理の帰還エレメンタル・リブート』」



私は一歩前に踏み出すと、手に持った万年筆の先を、露出した中央の核へと真っ直ぐに突き立てた。



カチリ。

万年筆の先から放たれたのは、破壊の力ではない。逆流していた大地のエネルギーを、元の『正しい豊穣の流動経路』へと導く、絶対的な博物学のロジック。


その瞬間、反転炉に溜まっていた赤黒い負の魔力は、一瞬にして元の、目も眩むほどに美しい『黄金の輝き』へと反転した。

エネルギーは爆発を起こすことなく、逆に神殿の壁を伝って大地の隅々へと逆流し――。



――ドガガガガガァァァァンッッ!!!



「ぎゃぁぁぁぁぁーーーっっっ!!!???」



結社の反転装置は完全にショートして大爆発を起こし、粉々の黒鉄のゴミとなって霧散した。最高指導者のマクシミリアンは、仮面が割れて真っ黒に焦げた姿で白目を剥いてひっくり返っていた。



それと同時に、縛られていた豊穣のマナが完全に解放され、地下神殿からは、見たこともないほどに温かな黄金の光柱が天へと真っ直ぐに立ち上った。

大地の塩化現象は嘘のように消え去り、地上では、枯れかけていた麦たちが一瞬にして青々と、いや、黄金色のみずみずしい姿へと蘇っていく。



「お山が、ありがとうって笑ってるよ。せんせい」



シルヴァがふさふさの灰色の尻尾をプロペラのように嬉しそうに回しながら、私の手をぎゅっと握りしめた。



「ああ。これでこの平原の生態系も、本来の豊かな姿を取り戻したさ。結社『無窮の混沌』も、これにて完全解体だね」



事件の翌日。

大陸を揺るがした最大の大飢饉の危機は未然に防がれ、開拓農民たちは大喜びで街へと戻ってきた。

ふもとの本陣では、今回の国家規模の危機を救ったお礼として、国王陛下、そして農民ギルド連合から最高級の特産品が総出で贈られていた。



「アルス先生、そして優秀な助手の方々! これは我が平原が誇る、今年最初の最高級『黄金大麦の完熟地ビール(※シルヴァには最高級の特製果実ジュース)』と、王室御用達の『巨猪ビッグ・ボアの特大ロースト骨付き肉』です!」



「わあぁぁ……っ!!! お肉! すっごくおっきくて、マンガみたいなおにくだよ、せんせい!」



シルヴァは特大の骨付き肉を両手で大事そうに抱えると、「んみゃい! もぐもぐ!」と、口の周りをタレと油だらけにしながら大喜びでハグハグとかじりついていた。その隣では、シロも一緒になって、お裾分けされた肉を三本の尻尾を激しく振りながら嬉しそうにハグハグと咀嚼している。



「さて、シルヴァ、シロ。お腹はいっぱいになったかい? 私たちの今回の長旅の任務も、これにて一件落着だ。そろそろ、王都の我が家(研究所)へ帰ろうか」



「うんっ! せんせい、シルヴァ、もうお腹ぽんぽこりんで一歩も動けないのぉ。でも、次のお出かけも、せんせいと一緒ならどこまでも行くよ!」



世界最強の博物学者と、食いしん坊で世界一頼もしくなった新米助手。そしてもふもふの仲間たち。

世界のあらゆる『理』を解き明かす彼らの素晴らしいフィールドワークは、これからも、笑顔と美味しいご飯と共に、どこまでも続いていく――。

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