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最強博物学者の優雅な秘境調査 〜絶滅種のモフモフ幼女を助けたら、懐かれすぎて新米助手になりました〜  作者: 月影


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第7章・第4話:絆が紡ぐ解体式と、霧晴れし天空の未来

巨大型結晶ゴーレム『キメラ・クリスタル』が、卵を踏み潰さんとその巨大な足を振り下ろす絶対絶命の瞬間。

私は手にした万年筆の先から、計算され尽くした不可視の魔力場を、ゴーレムの全身へと放射した。



「――『構造透過レイヤード・シースルー』。シルヴァ、シロ、あの化け物の右膝みぎひざの裏、三番目の結晶の継ぎ目を見てごらん。あそこに、魔力の流れが一時的に滞っている『淀み』があるね?」



「うんっ! みえる! シルヴァ、あそこの色の薄いところ、絶対に逃がさないの!」



「ガウッ!」



二人の返事は同時だった。

まず動いたのはシロだ。三本の尻尾を扇のように広げ、洞窟の地面に向けて最高密度の冷気息ブレスを放つ。その冷気はゴーレムの足元を狙い撃ちし、右膝の結晶の継ぎ目を急激に冷却した。

熱膨張のことわりにより、急激に冷やされた結晶の表面に、ピキピキと微細なヒビが入る。



「今だよ、シルヴァ! 君の咆哮の『振動』を、そのヒビの奥へと響かせるんだ!」



「いっけぇぇぇぇぇーーーっっっ!!! きゅぅぅぅぅぅぅんッッ!!!!!」



シルヴァの可愛い喉から放たれたのは、精霊パンの魔力と彼女の成長によって、極限まで指向性を高められた天狼族の『超高周波咆哮』。

その狙いは寸分の狂いもなく、シロが凍らせてヒビを入れた右膝の継ぎ目へとピンポイントで直撃した。



――バリィィィィィィンッッ!!!



「グ、ガ、ガガガガッッ……!?」



特定の周波数による共鳴破壊を起こしたゴーレムの右脚は、まるでガラス細工のように一瞬で粉々に砕け散り、その巨体は卵の手前で激しく地面へと転倒した。



「すごーい! シロちゃん、やったよ! 本当に足がポンって壊れちゃった!」



「ガウ、ガウッ!」



二人が嬉しそうにハイタッチ(前足タッチ)を交わす。だが、まだ終わりではない。転倒したゴーレムの胸の奥で、暴走する『魔力反転抽出炉』が、周囲のエネルギーを吸い上げて大爆発を起こそうと、赤黒い光を激しく明滅させ始めたのだ。



「往生際が悪いね。異界の数式など、我が国の博物学規定には存在しないよ。元の静かな塵に帰りなさい」



私は一歩前に踏み出し、万年筆の先を、明滅する抽出炉の核に向けて真っ直ぐに突き立てた。



「――『万理帰一エレメンタル・ゼロ』」



カチリ。

私の万年筆から放たれたのは、破壊の力ではない。異界の歪んだ魔力結合を、この世界の『最も安定した無害な原子構造』へと強制的に再翻訳する、絶対的な博物学のロジック。


その瞬間、臨界点を迎えていた赤黒い光は、嘘のようにスッと掻き消え――。

次の瞬間、十メートルを超える結晶ゴーレムも、暴走していた抽出炉も、すべてが光の粉となってシュワシュワと空気中に溶け去っていった。


抽出炉の消滅と共に、洞窟を覆っていた紫黒色の汚染霧は一瞬で霧散し、縛られていた大地のマナが解放された。

その温かなマナの光が、洞窟の奥にあるワイバーンの卵たちを優しく包み込んでいく。



――ピキ、ピキッ。



「うにゅ……? せんせい、見て! 卵さんが、お顔を出したよ!」



シルヴァが目を輝かせて叫ぶ。

結晶の呪縛から解き放たれた卵の殻が次々と割れ、中から、手のひらサイズの可愛いミスト・ワイバーンの赤ちゃんたちが、ピギャア、ピギャアと元気に鳴き声を上げながら産まれてきたのだ。

正気を取り戻した親のワイバーンたちが、私たちの周りにそっと降り立ち、感謝を示すように、その大きな頭を私やシルヴァに向けてペコリと下げた。



「ふふ、無事に産まれてよかったね。これでこの峡谷の生態系も、本来の健やかな姿に戻るはずさ」



事件の翌日。

大峡谷の汚染が完全に浄化され、安全が確認されたことで、東西を結ぶ鉄橋の物流は無事に再開された。

ふもとのドワーフの駅長室では、今回の国家規模の危機を救ったお礼として、東西の商業ギルド連合から最高級の特産品が山のように贈られていた。



「アルス先生、そして助手のシルヴァ殿、シロ殿! これは我が街が誇る、最高級の『熟成燻製肉』と『黄金の魔導バター』です! 好きなだけ持っていってください!」



「わあぁぁ……っ!!! お肉! それに、すっごくキラキラしたバターさんだよ、せんせい!」



シルヴァは特大の燻製肉の塊に、贅沢に黄金バターをたっぷりと塗ると、「んみゃい! もぐもぐ!」と、口の周りをギトギトの油だらけにしながら大喜びでハグハグとかじりついていた。シロもその隣で、お裾分けされたバター付き肉を、三本の尻尾を激しく振りながら嬉しそうにハグハグと咀嚼している。



「さて、シルヴァ、シロ。お腹はいっぱいになったかい? この大鉄橋の調査も、これにて一件落着だ。そろそろ、私たちの我が家へ帰ろうか」



「うんっ! せんせい、シルヴァ、もうお腹ぽんぽこりんで動けないのぉ。でも、次のお出かけも、すっごく楽しみだよ!」



世界最強の博物学者と、食いしん坊で最高に頼もしくなった新米助手。そして新しく加わったもふもふの仲間のフィールドワークは、これからも世界のあらゆる『理』を解き明かすために、どこまでも、笑顔と共に続いていく――。

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