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最強博物学者の優雅な秘境調査 〜絶滅種のモフモフ幼女を助けたら、懐かれすぎて新米助手になりました〜  作者: 月影


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第7章・第2話 :天空の絶品霧見フォンデュと、峡谷の異変

ミスト・ワイバーンたちの襲撃を退けた私たちは、鉄橋の中央にある頑丈な見張り台のスペースを借りて、臨時の調理場を設営していた。

周囲は未だに深い白霧に包まれているが、私の『環境防御結界』が風と湿気をも遮断しているため、見張り台の中は驚くほど快適で暖かだった。



「うにゅぅ……。お腹、もうグーグーさんを通り越して、ペコペコさんだよ、せんせい」



シルヴァが待ちきれない様子で、テーブルの上をふさふさの尻尾でバンバンと叩いている。

その隣では、シロも行儀よくお座りをしながら、私の手元をじっと見つめていた。



「はは、お待たせ。今回は、王宮での事件の解決祝いで国王陛下からいただいた、あの極上生ハムの最後の一塊と――前章の荒野で見つけた万年岩塩、そしてザルツブルグのドワーフたちから買い付けておいた『熟成濃厚山羊チーズ』を使った料理だよ」



私が魔導コンロの火力を調整すると、特製の耐熱粘土鍋の中で、細かく刻んだ山羊チーズが、極上の白ワインと共にトロトロと溶け始めた。

そこへ、乾燥させた世界樹の水草の粉末をほんの少し加えることで、チーズ独特の臭みが完璧に消え去り、代わりに信じられないほど上品で重厚なコクが引き出される。



――コトコト、じゅわぁぁ……。



鍋から立ち上ったのは、濃厚なチーズの塩気と、白ワインの華やかな果実香、そして温められた生ハムのジューシーな脂の香りが完璧に融合した――五感を極限まで狂わせる、暴力的なまでに美味な香りだった。



「ふあぁぁ……っ!!! せんせい、これ、お鍋の中でチーズさんが金色きんいろの海になってるよ……っ! すっごくいい匂いで、シルヴァのお口の中がヨダレさんでいっぱいなの!」



「ガウッ! ガウガウッ!」



シロも興奮を抑えきれないように、三本の尻尾をプロペラのように激しく回転させている。



「よし、完成だ。我が研究所特製――『天空の白霧チーズフォンデュ』だよ」



(――『鑑定眼』)



====================

【名称:天空の白霧チーズフォンデュ】

====================



「さあ、お肉と、あらかじめカリカリに焼いておいた世界樹小麦のパンを、このチーズにたっぷりと潜らせて召し上がれ」



「いっただっきまーす!!」



シルヴァは待ち切れないとばかりに、長めのフォークで厚切りの生ハムを突き刺すと、トロトロと糸を引く金色のチーズの海へと大胆にダイブさせた。

これでもかとチーズを絡め、お口を大きく開けてガブリと頬張る。



「っ……!?!?!? んみゃあぁぁぁぁぁいっ……!!!!! せんせい、これ、反則はんそくだよぉ……っ!」



あまりの美味しさに、シルヴァの丸い獣耳が小刻みにピコピコと震え出し、感動のあまりその場でお尻をフリフリと揺らし始めた。



「お肉を噛んだ瞬間にね、旨味のお汁がジュワッて出てくるの! そこに、すっごく濃い濃厚なチーズさんがトローッて絡みついて、お口の中が天国てんごくになっちゃった! パンさんもカリカリで、チーズを吸ってすっごく美味しいよぉ!」



シルヴァは完全に夢中になり、口の周りを黄色いチーズだらけにしながら、ハグハグ、もぐもぐと猛烈な勢いで食べ進めていく。

山羊チーズの濃厚なコクが、熟成された生ハムの塩気と完璧に調和し、噛むたびに幸福感が全身の細胞へと染み渡っていくのだ。

隣では、シロも小さくカットされたチーズ塗れの肉をハグハグと咀嚼し、あまりの美味さに「ガウゥン……」と満足げな吐息を漏らしながら目を細めていた。



「ふふ、これだけ喜んでもらえると、調理した甲斐があるというものさ」



私は自身の分のパンを優雅にチーズに浸し、濃厚な味わいを楽しみながら、温かい紅茶で喉を潤した。

しかし、そんな至福の時間は、唐突な「大地の悲鳴」によって破られることになる。



――ズズズズズズズズ……ッ!!!



突然、鉄橋全体が激しく揺れ動いた。ドワーフの技術で造られた頑強な橋が、悲鳴を上げるように軋んでいる。

驚いたシルヴァがパンを咥えたまま耳をピンと立て、シロが奈落の底に向けて険しい唸り声を上げた。



「うにゅぅ!? せんせい、またお山が怒ってるの? でも、前のお山(霊山)のときよりも、もっとドロドロした『変な魔力』が下から上がってきてるよ!」



「……なるほどね。ワイバーンたちが物資を襲っていたのは、泥棒が目的ではない。彼らは、彼らの巣がある峡谷の底で急激に拡大している『異界の汚染』から、自分たちの卵を守るために、必死に熱源と魔力を集めていたんだね」



私は眼鏡の奥の瞳を冷酷に光らせ、霧の彼方――峡谷の最深部を見据えた。

秘密結社の残党たちが仕掛けた「負の遺産」が、この大峡谷の底で、いまだに蠢いているのだ。

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