第6章・第1話 :世界の果ての巨石遺構と、不穏な呼び声
王宮の大事件を解決してから数ヶ月。
私たちの次なる目的地は、大陸の最南端、人間の居住区が途切れる境界に位置する『世界の果ての巨石遺構・ストーンヘンジ』だった。
――ヒュゥゥゥゥゥ……。
遮るもののない荒野に、寂寥とした風が吹き抜ける。
地平線の先、夕闇に染まる空を背にして立ち並ぶのは、高さ十メートルを優に超える巨大な黒い石柱群だ。
それらはただの石ではなく、数千年前の古代文明が残したとされる、超高密度の魔導回路が刻まれた遺構であった。
「うにゅぅ……。せんせい、ここ、すっごくおっきな石がいっぱい立ってるよ。なんだか、お山の中に迷い込んじゃったみたい」
私の隣で、シルヴァが周囲を見上げながら耳をパタパタと動かしていた。
彼女の隣では、シロが三本の尻尾をピンと立てて、地面の匂いをおそるおそる嗅いでいる。
「ここは『大地のヘソ』とも呼ばれる場所でね。世界樹や霊山の竜脈とも異なる、地球そのものの底流マナが湧き出す交差点なんだ。だからこそ、昔の人はここに巨大な装置を建てて、星の力を観測しようとしたのさ」
私は足を止め、眼鏡のブリッジを指先でクイと押し上げながら、足元の黒い石柱の根元に視線を向けた。
(――『鑑定眼』)
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【名称:古代の黒曜石柱】
【品質:未知】
【状態:微弱な活性化。数千年前に停止したはずの星位同期回路が、何者かの手によって強制的に再起動されつつある】
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「ふむ。ただの観光地調査のつもりだったけれど、どうやら今回は、少しだけタイミングが悪かった(・・・・・・・・・)らしいね」
「えっ……? せんせい、どういうこと?」
シルヴァが不思議そうに首を傾げた、その瞬間だった。
――オオオオオオオオオ……。
突如として、大地が不気味な地鳴りを立てて震え始めた。
立ち並ぶ巨大な石柱群の表面に刻まれた古代の紋様が、禍々しい『深紅の光』を放ち、天に向かって強烈な魔力の光条を突き上げる。
「ガウ、グルルル……ッ!」
シロが鋭い牙を剥き出しにし、遺構の中央に向けて激しい警戒の声を上げた。
「うにゅっ!? せんせい、あそこの石の真ん中……すっごく黒くて、ドロドロしたものが湧き出てきてるよ!」
「なるほど。どうやら、先の王宮の事件で捕らえたエレノアの背後にいた『本星』が、こちらで最後の仕掛けを起動させたようだね」
私が冷静に状況を分析する中、石柱群の中央の空間がベきべきと音を立てて割れ、そこから真っ黒な「異界の門」が開き始めていた――。




