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最強博物学者の優雅な秘境調査 〜絶滅種のモフモフ幼女を助けたら、懐かれすぎて新米助手になりました〜  作者: 月影


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第5章・第3話 :消えた禁書と、王宮に蠢く黒い霧

王宮執政官セドリックに導かれ、私とシルヴァ、そしてシロは、堅牢な城壁に囲まれた『王立大禁書庫』の最深部へと足を踏み入れていた。



――ひんやり……。



地下数百メートルに位置するその空間は、数千年に及ぶ歴史の埃と、何重にも張り巡らされた封印結界の残骸による、重苦しい空気が満ちていた。

周囲の壁には、強固な防魔の呪文が刻まれた鉄の格子が何十重にも設置されているが、その中央にある『最古の台座』だけが、無残に真っ二つに叩き割られていた。



「ひゃぅ……。せんせい、ここ、すっごく冷たくて、なんだか『どろどろした、わるい魔女まじょ』のにおいがするよ」



シルヴァが私の外套の裾をぎゅっと握りしめ、周囲を警戒するように小さな鼻をヒクつかせた。

シロもまた、三本の尻尾を低く下げ、低い唸り声を上げて床を睨みつけている。



「シルヴァの嗅覚は相変わらず鋭いね。セドリックさん、現場の警備兵たちはどうしたのかね?」



「それが……。誰一人として傷を負っていないのですが、全員が『記憶を完全に消去された状態』で倒れておりました。結界の魔導具も作動した形跡がなく、ただ禁書だけが消え去っていたのです。憲兵団はお手上げで、これはもう悪魔の仕業ではないかと……」



セドリックが青い顔でガタガタと震える。



「悪魔、ね。博物学者として言わせてもらえば、この世に理由のない怪奇現象など存在しないよ。すべては『構造』と『理』の連続さ。……少し観察させてもらおう」



私は割れた台座の前に立ち、眼鏡の位置を直した。



(――『鑑定眼・深度解放』)



====================

【名称:初代国王の封印台座(破壊跡)】

【状態:魔力結合の完全解除】

【痕跡:表面に微量の化学式 C10H14N2(未知の幻惑薬)の成分、および『時空属性』の魔力残滓を検出。犯人は扉を通っておらず、空間を一時的に『折り畳んで』侵入した形跡あり】

====================



「ふむ、なるほど。これは泥棒の手口ではないね。王宮の結界の『数式』を内側から完璧に書き換えることができる、極めて身内の犯行――それも、国家最高位の魔導師の仕業だ」



「な……、なんですって!? 身内の犯行……!?」



セドリックが驚愕して声を上げる。



「――フフフ。さすがは王宮が誇る稀代の博物学者。ただのインテリと侮っていたが、まさか台座の魔力残滓だけでそこまで見抜くとはな」



突如として、暗い書庫の天井付近から、冷ややかな、しかし妖艶な女の声が響き渡った。

空間がぐにゃりと歪み、そこから、不気味な漆黒のローブを纏い、紫色の怪しい光を放つ魔導杖を握った美女がぬっと姿を現した。


その手には、禍々しい鎖で縛られた、拍動する心臓のように不気味に蠢く一冊の古文書――『原初の黙示録』が握られていた。



「お前は……王宮魔導師団の副団長、エレノア……!? なぜあなたがそんなことを!」



セドリックが絶叫する。



「なぜ? 決まっているでしょう。この退屈な大国を、原初の混沌へと還すためよ。金眼商会の愚か者どもを踏み台にし、ザルツブルグの鉄と世界樹の魔核を集めさせたのも、すべてはこの禁書の封印を解くためのエネルギーに過ぎないわ!」



エレノアと呼ばれた女魔術師は狂気的な笑みを浮かべ、手にした禁書を天へと掲げた。



「さあ、目覚めなさい、古代の災厄よ! この王宮ごと、すべてを暗黒の底へと飲み込みなさい!」



禁書の鎖が弾け飛び、書庫の地下全体を、かつてないほどの巨大な『闇の嵐』が吹き荒れ始めた――。

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