第5章・第1話 :王都の我が家と、新顔のもふもふ
数々の秘境を巡る大調査旅行を終え、私たち一行はついに懐かしき我が家――王都の片隅に佇む『アルス博物学研究所』へと帰還した。
――パチパチ、パチパチ……。
暖炉の中で薪が心地よい音を立てて爆ぜ、部屋全体を温かな光で包み込んでいる。
壁一面に設えられた木製の棚には、世界各地で採集された稀少な鉱石の標本や、古めかしい羊皮紙の魔導書がズラリと並んでいた。
長旅の疲れを癒やすには、やはり自分の研究所が一番落ち着く。
「ふあぁぁ……。やっぱり、せんせいのお家はすっごくホッとするの。クッションもふかふかさんだし、旅のにおい(・・・・)が染み付いてるよ」
我が家に足を踏み入れた瞬間、シルヴァが大きなソファへとダイブした。
灰色の獣耳をだらんと寝かせ、長旅の緊張から解放されたように、ふさふさの尻尾をゆったりと左右に揺らしている。
「ガウ、ウゥン」
そのシルヴァのすぐ隣、ソファの足元にちょこんと座り込んだのは、前章で仲間になったフロスト・テイルの『シロ』だ。
王都の温かい環境に少し戸惑っているようだが、シルヴァが頭を撫でてあげると、嬉しそうに三本の尻尾をパタパタと振って寛ぎ始めた。
「二人とも、お疲れ様。旅の荷解きは私がやっておくから、少し休んでおいで。……おや、シロ。君、王都の空気に少しだけ肌が乾燥しているね」
私は眼鏡のブリッジを指先でクイと押し上げながら、シロの純白の毛並みに視線を向けた。
(――『鑑定眼』)
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【名称:シロ(フロスト・テイル)】
【状態:健康(微細な乾燥あり)】
【特徴:霊山の絶対零度環境から急激に温暖な王都へ移動したため、皮膚表面の氷殻障壁が一時的に融解。水分バランスの調整が必要】
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「よし、シロには後で地脈の冷水を一杯あげよう。……さて、長旅の後はお腹が空くのが自然の理だね。シルヴァ、そろそろおやつの時間にしようか」
「わあぁぁ……っ! おやつ! せんせい、今日のおやつはなぁに!?」
おやつの単語を聞いた瞬間、シルヴァの耳がピンと直立し、ソファから飛び起きた。
旅先では現地の名物を豪快に食べてきたが、私の手料理(研究の一環)も彼女は大好物なのだ。
「今回は、エルフの里でもらった世界樹の最高級小麦粉がまだ残っていてね。それと、王都の市場で仕入れた、今が旬の『白蜜苺』を使った特製の焼き菓子を作ろうと思うんだ」
「しろみつ……いちご! お名前だけで、もうすっごく甘くて美味しそうだよ!」
シルヴァの期待に満ちた視線を背中に受けながら、私はキッチンへと向かい、手際よく調理を開始した。




