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最強博物学者の優雅な秘境調査 〜絶滅種のモフモフ幼女を助けたら、懐かれすぎて新米助手になりました〜  作者: 月影


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第4章・第4話:新米助手の成長と、理を刻む博物学

数百発の魔導弾と、鋭利な刃が四方八方から迫る絶対絶命の瞬間。

私は手にした万年筆の先から、不可視の膨大な魔力を同心円状に展開した。



「――『共鳴拒絶オシレーション・シールド』」



ドゴォォォォォンッ!!!



衝撃波が大気を揺るがす。

私たちを目がけて放たれた数百の発魔導弾は、私の周囲数メートルの空間に触れた瞬間、その運動エネルギーを完璧に相殺され、ただの歪んだ鉄の塊となって、床へとしなやかにポロポロと落ちていった。



「な……、なぁっ!? 最大火力の魔導銃が、一発も通じないだと!?」



私兵たちが驚愕に顔を引きつらせる。



「さて、お次は君たちのそのおもちゃ(・・・・)だね。シルヴァ、あの魔導銃の銃身の根元、少し赤く光っている場所が見えるかい?」



「うん! みえる! ちっちゃい魔力のお星さまがいる!」



「素晴らしい。あそこが安全弁の交差点だ。シルヴァ、エルフの里でもらったパンの力を借りて、あそこにほんの少しだけ、君の『咆哮』をぶつけてごらん」



「うんっ! シルヴァ、がんばる!」



シルヴァは小さく息を吸い込むと、精霊パンの魔力で強化されたその可愛い喉から、天狼族としての真の『咆哮』を放った。



――きゅぅぅぅぅぅぅぅんッッ!!!



それは、一見するとただの可愛い子犬の鳴き声のようだった。

だが、特定の周波数へと完璧に調律されたその音波は、数百人の私兵たちが持つ魔導銃の安全弁へとピンポイントで直撃し――。



――パキンッ! パパパパパパンッ!!!



「ギャァァァッ!? お、俺の銃が、暴発した!?」

「手があぁぁ! 武器がぜんぶ粉々になっちまった!?」



一瞬にして、数百人の武器がすべて自壊し、私兵たちは戦闘不能となって地面に転がった。



「すごーい! せんせい、シルヴァ、足ポンってしなくても武器を壊せちゃった!」



「大合格だよ、シルヴァ。世界の構造を知れば、小さな声ひとつでも、強大な軍隊を無力化できる。これが博物学の真髄さ」



私は微笑みながら、バルコニーでガタガタと震えているギルバート総帥を見上げた。



「ひ、ひぃぃぃっ!? 化け物め! だが、もう遅い! 竜脈破壊砲の充填は完了した! この山ごと、お前たちを塵にしてやるわぁ!」



ギルバートが発射レバーを乱暴に引き下ろす。

要塞の中央にある巨大な砲口が、まばゆい漆黒の光を放ち、大陸を滅ぼすほどのエネルギーが解き放たれようとした。



「愚かだね。竜脈の力を、その程度の鉄の筒で制御できると思っているなんて」



私は一歩前へ踏み出すと、手に持った万年筆の先を、要塞の床を走る最大の魔力回線へと真っ直ぐに突き立てた。



「――『理の帰還エレメンタル・リブート』」



カチリ。

万年筆の先から放たれたのは、破壊の力ではない。竜脈のエネルギーを元の『正しい流動経路』へと導く、純粋な博物学のロジック。


その瞬間、破壊砲に溜まっていた漆黒の魔力は、一瞬にして元の、美しい純白の輝きへと反転した。

エネルギーは砲口から放たれることなく、逆に要塞の魔導炉を逆流し――。



――ドガガガガガァァァァンッッ!!!



「ぎゃぁぁぁぁぁーーーっっっ!!!???」



要塞のすべての魔導具がショートし、大爆発を起こす。

金眼商会の本拠地だった黒鉄の要塞は、見るも無残に瓦解し、ただの燃え殻となって雪山へと沈んでいった。総帥ギルバートは、真っ黒に焦げた姿で白目を剥いてひっくり返っていた。



それと同時に、縛られていた竜脈が解放され、山頂のクレーターからは、見たこともないほどに美しい、七色の魔力の光柱が天へと真っ直ぐに立ち上った。



「ガウ、ガウゥン……!」



シロが嬉しそうに私の足元に寄り添い、そのもふもふの頭をすり寄せてくる。

山を覆っていた猛吹雪は嘘のように止み、雲の隙間から、温かな陽光が白銀の世界を優しく照らし始めた。



「お山が、ありがとうって笑ってるよ。せんせい」



シルヴァがふさふさの尻尾をプロペラのように回しながら、私の手をぎゅっと握りしめた。



「ああ。これでこの山の生態系も、本来の姿を取り戻すはずだよ」



事件の翌日。

金眼商会の壊滅の報を受け、王都の憲兵団が総出で山頂へと駆けつけ、ギルバート一味を全員捕縛していった。


ふもとのキャンプ地では、今回の危機を救われたお礼として、国家憲兵団から最高級の特産品が贈られていた。



「アルス先生、そして助手のシルヴァ殿! これは国王陛下からの、心からの感謝のしるしです!」



手渡されたのは、王室御用達の最高級『白銀の博物学特製マント』。そして、シルヴァには――。



「わあぁぁ……っ! お肉! すっごく大きなお肉の燻製くんせいがいっぱい!」



ザルツブルグの巨猪の肉を、王都の技術でさらに極上の生ハムへと仕上げた、超特大の肉の塊だった。

シルヴァは生ハムの塊を両手で大事そうに抱えると、「んみゃい! もぐもぐ!」と、口の周りを油だらけにしながら大喜びでハグハグとかじりついていた。


その隣では、シロも一緒になって、お裾分けされた肉を嬉しそうにハグハグと咀嚼している。



「さて、シルヴァ。お腹はいっぱいになったかい? 私たちの調査令状の任務も、これでひと段落だ。そろそろ、王都の我が家(研究所)へ帰ろうか」



「うんっ! せんせい、シルヴァ、もうお腹ぽんぽこりんだよ! シロも、一緒にお家にいく?」



シロは「ガウッ!」と元気に返事をして、シルヴァの隣で嬉しそうに尻尾を振った。



世界最強の博物学者と、食いしん坊で少し頼もしくなった新米助手。そして新しく加わったもふもふの仲間の旅路は、これからも世界の『理』を解き明かすために、どこまでも続いていく――。

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