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最強博物学者の優雅な秘境調査 〜絶滅種のモフモフ幼女を助けたら、懐かれすぎて新米助手になりました〜  作者: 月影


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第3章・第3話 タイトル:狂える湖の主と、冷酷なる密猟者

激しい地鳴りが響き渡る湖畔へと辿り着いた私たちは、言葉を失うほどの破壊の光景を目にしていた。



――ザザァァァァァンッ!!



エメラルドグリーンに美しく輝いていた湖水は、いまや禍々しい漆黒の魔力に染まり、荒れ狂う大海原のように激しく波打っている。

その中心から姿を現したのは、身の丈数十メートルに及ぶ、巨大な一本の『触手』――いや、それが何十本も絡み合い、蠢いている。


それこそが、レミリア湖の絶対的な守護神にして、世界樹の根を守る主――『リヴァイアス・クラーケン』の巨体だった。


しかし、その巨大な単眼は真っ赤に血走り、全身から苦悶の悲鳴のような魔導波を周囲に撒き散らしている。



「あわわわ……! 大きいの! せんせい、あのタコさん、すっごく頭が痛い痛いって泣いてるよ!?」



シルヴァが耳を伏せ、その圧倒的な質量に怯えながらも、主の「感情」を正確に読み取って叫んだ。



「ああ、普通の暴走じゃないね。外因性の精神汚染だ。……リィエル、あそこを見てごらん」



私が指差した先――荒れ狂う湖の対岸の岩場に、数隻の不気味な鉄製の魔導潜水艇が停泊していた。

そこから湖の底に向けて、何本もの太い「黒い鎖」が伸びており、そこから主を縛り付けるようにして、紫色の邪悪な雷光がパチパチと放たれている。



「あれは……人間の魔導具!? まさか、あいつらが主を……!?」



リィエルが弓を握りしめ、怒りで歯噛みする。



「その通り。あれは王都の裏社会で流通している違法魔導具『精神狂化のマインド・アンカー』だ。……目的は、リヴァイアス・クラーケンの脳内にある、数百年の魔力が凝縮された結晶――『水神の魔核』の密猟だね」



私は眼鏡の奥の瞳を冷酷に細め、潜水艇の甲板の上に立つ、仕立ての良いローブを着た男の姿を捉えた。



「ヒャーハハハ! 引け、もっと引け! さすがは世界樹の主だ、これほどの電撃を与えてもまだ耐えやがる! だがそれも時間の問題だ。核さえ摘出すれば、このタコの死体はエルフどもにくれてやるさ!」



男の胸元には、見覚えのある紋章が刻まれていた。

――金の縁取りに、不気味な目のマーク。



「また君たちか。ザルツブルグで壊滅させたはずの悪徳商業ギルド『ゴールドデン・アイ(金眼商会)』……。どうやら王都の本部が、本格的にこの世界樹の利権を狙って動き出していたらしいね」



「な……なんですって!? あの悪名高い金眼商会が……!」



リィエルが愕然とする中、密猟者たちの放ったさらなる高圧の電流が、主の巨体を貫いた。



――グァァァァァァオォォォォンッ!!!



クラーケンは断末魔のような咆哮を上げ、その巨大な触手を、八つ当たりするようにエルフの里の防壁へと叩きつけようと振り上げた。

数万トンの質量が直撃すれば、里は一瞬で崩壊し、多くのエルフたちの命が失われる。



「待てぇーーいッ!」



リィエルが必死に魔導弓を引き絞り、触手に向けて矢を放つが、狂暴化した主の強固な魔力障壁の前に、矢はパキンと弾き返されてしまう。



「ダメだ……! 私の矢じゃ、触手の一本すら止められない……っ! みんな、逃げてぇーー!!」



諦めと絶望が里を包み込もうとした、その瞬間。



「新米助手、そしてエルフの狩人さん。博物学の基本を思い出してごらん」



私は、迫り来る巨大な触手を目の前にしながら、一歩も引かずに円歩を踏み出した。



「どんなに強大な生物であっても、その肉体は『ことわり』によって構成されている。骨格、筋肉、魔力の流動経路――すべてを見切れば、恐れるに足りない」



私は懐から、いつも使っている万年筆を一本、静かに取り出した。



「せんせい……!?」

「アルス先生、何を……!? 早く逃げて――!」



「シルヴァ、リィエル。よく見ておくんだよ。これが、世界の構造を知る者の『戦い方』だ」



私は眼鏡の位置を指先でトントンと叩き、眼鏡の奥に隠された、真の魔力回路を全開にした。

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