第七十四話『成長の証明』
「足は止めた。……裕哉、やれるな?」
「質問に見せかけた断定だよな、それは……!」
氷が魔獣の足を縛り付け、仕事は終わったといわんばかりに早希が飛びのく。それと入れ替わるようにして前に出た裕哉は、水で形作られた透明な剣を空中に装填した。
「……吹っ飛べ‼」
指令と同時、剣は魔獣の体を過剰なまでに刺し貫く。あふれんばかりに立ち上った水煙がすべて見えなくなったあと、魔獣の姿はどこにも見えなくなっていた。
「ほー、見事なものですね……現相棒の私が入り込む余地ゼロでしたよ」
「お前は入り込む気が無かっただけだろ。最初から観察に徹してたみたいだし」
「あ、バレてました?」
てへ、と舌を出す真央にため息を返しつつ、裕哉は早希の方に向き直る。裕哉を見つめるその表情は、帰る場所を見つけた時のような穏やかさを纏っていた。
「腕前は鈍っていないようだな。いつもより過剰に攻撃を加えていた分、加減を忘れかけているのは少し頂けないが」
「省エネしようって考えなきゃ程連戦するわけでもないだろうしな。というか、お前は俺の攻撃ペースから何からすべて覚えてんのかよ」
「当然だろう。相棒のことなら把握しにかかるのが務めというものだ、違うか?」
「現相棒がさぼりにさぼりまくったことに関してはおとがめなしなんですかね……」
早希の姿勢にもため息をつきつつ、裕哉はどこかそのやり取りに懐かしさを覚える。まさかもう一度味わうことになるとは思っていなかった、懐かしい日常の姿があった。
「ま、私からしたら入り込む隙間が無かったっていうほうが正確なんですよねー……。あれよあれよという間に戦闘が進んで、あっという間に決着がついちゃったみたいな気がして」
「事実お前といる時よりも討伐スピードは速いさ。むやみに仕込みを作らず、先制攻撃ですべてを殲滅しにかかるのが私たちのやり方だったからな。どちらが優れているかという話になると、それはまた難しい問題にはなって来るのだが」
「安全なことに越したことは無い、でいいだろ。そこに優劣はねえよ」
「ごもっとも、ですね。……まあ、だからと言って加減が無かったことに対する言い訳にならないような気はないでもないですけど……」
真央の視線は裕哉を怪しむようにこちらを射抜いている。このモードに入ったときの真央の言及から逃れることが出来ないのは、これまでの経験則からも明らかだった。
「繊細な魔術が売りのお前にしては雑っぽい攻撃だったことは私からしても事実だな。それがどんな意味を持つのか、私には中々見当もつかないが――」
「……分かった、ちょっとばかし事情を説明するから、お前たちの間だけの秘密にしといてくれよ?」
当然、梓の事情をすべて話すつもりはない。アレは裕哉にとっても知られたくない記憶であり、知られることに何のメリットもないものだ。だからこそ、裕哉は言葉を選びに選んで――
「……誰かを守れるくらいに強くなったって、どうやったら証明できるんだろうな?」
――そんな言葉を、紡ぎだした。
裕哉の問いは何をもたらすのか、楽しみにしていただけると幸いです。まだしばらく裕哉にも梓にも苦しい状況が続きますが、その先に開ける道を期待していただければと思います!もし気に入っていただけたらブックマーク登録、高評価などぜひしていってください!ツイッターのフォローも是非お願いします!
――では、また次回お目にかかりましょう!




