第七十三話『歩んできた道』
「……それにしても、魔獣予測ってやつはすげえよな。侵攻位置を特定して、そこを封鎖することで住人の安全を守れるんだから」
「それを作り出したのが魔術黎明期の人類だって言うんだから驚きですよね……なんて言っても、まだまだ現役で技術者をしてる人がその世代にいるくらいですから懐かしむのもなんか違う気はしますけど」
「まだ数十年前のことだからな。その時点でくみ上げられていた技術理論が今でも通用するというのは流石に恐れざるを得ないが」
手にした資料に改めて目を通しながら、三人は魔獣出現区域に指定されている雑木林をゆっくりと歩き回る。何の因果か、その景色はあの時の雑木林と酷似しているように思えた。
「というか、その基盤を作ったやつに霧島の父ちゃんもいるだろうが。この資料もその一環で作られたものだろ?」
「まあ、そんなところだ。父上の技術によって観測されたデータを統計して、父上が私に投げかけて来た。……あの人からすれば、これもまたいい修練の機会だとでも思っているのだろう」
「異変レベルとしてはかなり高めですけど、それでも静観を貫けるっていうのはホントに底知れないですね……。お会いしたことないから断言はできませんけど、私の得意分野でも勝つのは難しそうです」
「そもそも対面したくねえってのが本音だけどな。霧島をしてそこまで言わしめる人に勝てるなんて思うほど思い上がっちゃいねえよ」
そもそも霧島早希という人間はそもそもが傑物だ。それを生み育て、今でも前線で研究を続ける人間。おそらく魔術に最も真摯でいる人間に、裕哉が敵うとは思えなかった。
「それは困るな。この学園トップクラスとして、父上には対面してもらわないと都合が悪いのだが」
「なんかこう良い理由付けて先延ばしにしといてくれ……少なくとも今の俺じゃお前の期待通りにはいかねえよ」
傑物の前に立つのであれば、迷いを排さなければならない。今の裕哉には、捨てきれない者も決められないこともいかんせん多すぎる。ある種の現実逃避と言えるこの状況ですら、その状況が消えてなくなってくれるわけではなかった。
「そうか。お前が生徒会を出てから何をしてきたのかも、何をしたいのかも私には分からないが――」
裕哉の弱気に、早希はじっと目を瞑りながらゆっくりと言葉を紡ぐ。それにつられるように足を止めて、くるりと振り返って裕哉の瞳を見つめると――
「……お前がこれまでに歩んできた道は、多分間違ってなんかいない。多くの人の視線にさらされてきた私がそれを保証するよ」
お前の目を見ればわかる、と早希は穏やかな表情で告げる。……その言葉は、ちょうど今の裕哉の琴線を揺らすには十分すぎた。
「……俺の道が、間違ってないって?」
「ああ。間違った道を進んできた奴に負けるほど、私の選んだ道も覚悟もやわではないさ」
「……なら、俺はどうして――」
思わず口を突いた疑問は、バチバチという不穏な音にかき消される。それは生徒会長としての生活の中でいやでも耳になじんでしまった、空間が裂ける音、侵略者の音だ。
「……話は後だ。まずはあの邪魔者を消し飛ばす」
それを聞きつけるや否や、三人の雰囲気が一気に切り替わる。……久々の対魔獣戦闘に、裕哉の背筋が微かに粟立っていた。
もう少し複雑な心境が続きますが、裕哉の苦悩を見守っていただけると幸いです!じっくりしっかり描いていくつもりですので、どうか楽しんでいただければと!もし気に入っていただけたらブックマーク登録、高評価などぜひしていってください!ツイッターのフォローも是非お願いします!
――では、また次回お目にかかりましょう!




