表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/86

第六十四話『最悪な天秤の上で』

 裕哉もろとも魔術で撃ち抜いて魔獣を撃破するか、それともこのまま怖気づいて何もできずに立ち尽くすか。梓の目の前に転がっているのはそんな選択肢しかなく、現実的に考えるなら答えは一つしかない。


 逃げるだなんて選択肢は論外だ。今ここで背を向けて逃げ切れるわけでもなし、そんなことをすれば梓は一生裕哉と顔を合わせられなくなる。……ここで仮に裕哉が生き延びたとしても、一生。


「……大丈夫。あたしは強い。……強いんだ」


「そうだよ、梓は強い。……こんな僕のことを、ずっと守ろうとして一緒にいてくれるんだから」


 梓の呟きに共鳴するようにして、裕哉も梓の選択を指示する。それに背中を押されるようにして、梓は魔力を集中させた。


 魔術というのはイメージが大切だ。自分の練り上げた魔力が何を狙い、何を打ち抜くのか。その結果を明確に想像して――


「……っ」


 想像、して――


「……………いやあああああっ‼」


 そこにあったのは、黒焦げになった二つの亡骸だ。死ねばすぐに消えてなくなる魔獣の方は良いとしても、裕哉のそれは消えてなくならない。……梓の想像の中からも、消えてなくなってくれない。


 梓の魔術は、残酷な結果を巻き起こす。そのイメージは明確で、一度こびりついたそれは呪いのように梓の集中を乱してくる。只立ち尽くした末に起こる最悪の結末よりはマシだと、頭では理解しているはずなのに。


「……体が、動かないよお……っ」


 幼い天才魔術師に、その決断は重かった。その両肩に誰かの命を乗せるには、彼女の精神はまだ幼過ぎたのだ。……しかしとどまることを知らぬ自信だけは順調に発達していった結果。招かれたのがこのザマである。笑えない冗談でも笑えないと言って笑えるだけ上等に思えるくらいには最悪な、冗談のような現実がそこにあった。


「梓……っ」


 裕哉は、その決断に思い悩む姿を見守る事しかできない。自らのその命を危険にさらされながらも、裕哉にそれへの懸念は微塵もなかった。只目の前の少女が生きること、そのためにこの魔獣を撃滅する必要がある事、それだけを裕哉は必要だとしていた。


「……でも、それだけじゃ足りないのか。僕が、生きないと」


 裕哉が生き延びる確証が無ければ、梓は動けない。……大事にされているのだと、裕哉はこの時初めて自覚した。只あこがれのままに後ろをついて歩く自分のことを想ってもらえていたのだと、裕哉はこの時初めて知った。


「……なら、やるべきことは」


 まだ、裕哉は強くない。目の前にいる少女を、裕哉は一度も打ち負かせていない。だからまだ、梓を守ることはできない。できない、けれど。


「これ、くらいなら……!」


 必死に魔力を集中し、水の膜を裕哉は自分の周りに作り上げる。耐衝撃に関しては使い物にならないが、電気に対してならばある程度の抵抗にはなる。


「梓、僕は大丈夫だ!絶対に、絶対に生きて梓と一緒にいる!」


 その切り札を携えて、裕哉はもう一度梓に向かって叫ぶ。その防護膜を見た瞬間、こびりついていた最悪の映像が少しだけ晴れた。少しだけ、希望が見えた。


「……紫電よ‼」


 その希望に縋るようにして、梓は魔力を練り上げる。大きな刀のような、しかし弾丸のようなその攻撃の危険性に、勝利を確信していた魔獣は気づくのが遅れる。その一瞬があれば、その攻撃が魔獣へと放たれるには十分で――


「……お願いッ‼」


「……がああああッ⁉」


 次の瞬間、雑木林に二つの苦鳴が響き渡った。

次回、二人にとっての決定的な変化が訪れていくことになると思います。事件を経て二人がどんな決意を固めたのか、その過去を見届けていただけると幸いです!もし気に入っていただけたらブックマーク登録、高評価などぜひしていってください!ツイッターのフォローも是非お願いします!

――では、また次回お目にかかりましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ