表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/86

第六十五話『梓を裁くのは』

 ―—その後のことは、記憶がよみがえった今でもコマ送りの映画のようにぶつ切りでしか覚えていない。魔獣は消滅して、裕哉は重傷を負った。魔力を使い果たして作り上げた水の膜で致命傷こそは免れていたが、その意識は三日間の間戻らなかった。


 その責任が、誰にあるかといえば――


「ごめんなさい……ごめん、なさい……っ」


 この事件でただ一人外傷を負わなかった少女が、裕哉の横たわるベッドの前で泣きじゃくる。梓を守った英雄は今や弱々しく、命に別条がないだなどという医者の言葉も幼い彼女の心を上滑りしていった。


「梓ちゃん、そんなに泣かないで。うちの息子を守ってくれたのはあなた。……感謝こそすれ、責める理由もないわよ」


「だけど、あたしが居なければ裕哉はあんな場所に行くこともなかった! あたしが居なければ、裕哉はこんなけがを負わずに済んだの!」


 その場に居合わせた裕哉の母親が背中をさするも、その手を振り払うかのようにして梓は絶叫する。誰が梓を赦そうと、誰が梓の功績をたたえようと、梓は自分自身を責め続ける。誰が裁かなくても、梓がその罪を裁くのだ。……梓以外に、この罪を背負うべき存在などありはしないのだから。


「あたしが居なければ、裕哉は今も笑って過ごせてるはずなんだ! あたしなんて、死んじゃえば……」


「梓ちゃん、それはダメ! ……それだけは、言っちゃだめよ」


 感情を爆発させる梓に、裕哉の母親も感情をあらわにする。しかしそれも一瞬のことで、直ぐに梓の肩に優しく手を置いた。


「……裕哉はね、ずっと梓ちゃんの背中を追いかけてここまで走って来てたの。そんなあなたが進むのを止めちゃったら、きっと裕哉も傷つくわ。……お願い。あの子のためにも、自分自身を否定するようなことはしないでちょうだい」


「……じゃあ、あたしはどうすればいいの? 『ごめんね』ってして、また裕哉と仲良くすればいいの?」


「ええ、もちろん。これからも、裕哉のことをよろしくね」


 梓の問いに帰ってきた答えは単純明快で、それ故に救いとなりうるものだった。その手を掴めれば、梓の傷はまだ小さくて済んだかもしれない。


――だが、幼い少女の傷は誰よりも深かった。その心に負った傷は、ぬるま湯では決して癒せないくらいに、絶望的なくらいに、深かった。


「……そんな事、あたしにはできないよ……」


「……えっ」


「なんでみんなあたしのことを赦すの! とんでもないことをしたって、よくも裕哉を傷つけたなって、怒ってくれた方がまだ楽だったのに!」


 あふれ出した感情はもう止まらない。これは梓の心の傷が引き起こした大出血であり、今もなお梓の心はその傷を掻き毟り続けている。もっと血が出ろ、もっと傷つけと、自分自身にそう命じているかのように。


「あたしは、あたしを赦せない! 裕哉を傷つけたあたしは悪者だ! それなのに、まだ裕哉と一緒にいろだなんて、居てもいいだなんて……」



――そんなの、今のあたしには許されないよ‼



 その叫びが、梓の全てだった。裕哉を傷つけた精神性もこの魔力も、梓には憎くて憎くて仕方がなかった。だから、梓は心にできた傷を広げ続けて、深め続けて――


「……あ」


「梓ちゃんっ⁉」


 糸が切れた人形のように、梓は突如その場から崩れ落ちる。場所が病院という事もあってすぐさま医者が呼ばれ、処置が施されることになった。


――その後、梓が目覚めたのは二週間後。裕哉の約五倍もの時間を要し、目覚めた天才的な少女は――


「……あたし、なんでこんなところで寝ているの?」


――事件に関わる全ての記憶と才能を、彼方へと置き去りにしていた。

このような経緯を経て、梓の現状は今へと繋がっていきます。すべてを思い出した梓が何を思うのか、見届けていただければ幸いです!もし気に入っていただけたらブックマーク登録、高評価などぜひしていってください!ツイッターのフォローも是非お願いします!

――では、また次回お目にかかりましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ