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第五十七話『踏み出す覚悟を』

 裕哉は接近戦があまり好きではない。運動神経はあまり自身があるわけじゃないし、そもそも近接戦闘というのは才能の世界だ。そこに踏み込んだ時、裕哉が最強であれるという確証はどこにもなかった。


「だけど、教える側がそんなこと言ってちゃ世話ないよな――‼」


 体全体に水の鎧をまとわせながら、裕哉は四人に向けてさらに加速する。篤也にしかけた時よりもより深い近接戦闘目指して、戦いはさらに加速を続けていた。


「いきなり仕掛けてくるなんて、これも松原君らしくない……‼」


「だけどそうされるのが一番まずいのは事実だ、迎え撃つぞ!」


 まるで激流そのものになったかのようなスピードで襲い掛かる裕哉に、四人も即座に応戦の構えを取る。あらゆる攻撃を予測しせんとする防戦の構えに、裕哉は――


「……そうやって視野を広げれば広げるほど、単調な択って見えなくなってくるものだよな」


 さらにもう一段階加速し、大きな水の槍となって敵陣へと突っ込んでいった。


 いくら防戦の構えを取っているからとはいえ、裕哉の全力を叩きこんでくるかのような一撃は防ぎきれるものではない。飛び散る水すらも刃と変じさせての猛攻は、対策ごと貫いて四人に深手を負わせるには十分すぎた。


「んだよ、この火力……っ」


「水の魔術は柔軟性に長けるが火力には乏しい……それが通説のはずではないのですか!」


「それはまあ、間違ってはないんだけどさ。できないわけじゃないし、やってこないって決めつけるのは早計で危険だぜ?」


 突っ込んだ反動で後退しつつ、先に展開した水の剣を携える裕哉は獰猛に笑う。後先考えない突貫ですらないこの一撃を防ぎきる一手は、四人に残されていなかった。


「……これが、お前の実力だってか。最強様は伊達じゃねえな」


「霧島でもこれくらいは鼻歌唄いながらやって来るよ。……お前たちは、これからこんな奴らを超えるべく戦わなきゃいけねえんだ」


 長い道のりだろ?と裕哉は獰猛に笑って見せる。増え続ける剣は、裕哉の余力がまだ残されていることを暗に示しているかのようだ。


 その姿は四人にとっての壁そのもの、立ちはだかる障壁以外の何物でもない。絶対に越えられない壁を目の前にする経験は、四人にとって初めてのものだ。


「……なるほどな。これが今後、俺たちがたどり着かなきゃいけないところってわけだ」


「そうなるな。……心が折れたか?」


 皮肉気な笑みを浮かべながら、裕哉は戦闘前の問いをもう一度問いかける。戦いの前に持ち出した問いへの答えを、現実を見た上でももう一度吠えられるかどうか。……その答えを、裕哉は疑っていなかった。


「……ええ。この程度の壁で、今更私たちが止まれると思ってた?」


「僕は昨日、覚悟を示したばかりですから。……いかにあなたが強くても、いずれは僕の影が喰らってみせます」


「折れる心で前に進めるかっての。……俺たちは、最初から無茶な戦いに身を投じてんだぜ?」


 その期待通り、三人が次々とその意志を表明する。それとは少し遅れたが、梓もしっかり前を向き、激流を纏った裕哉を見つめて、しっかりと――


「……あたしも、もう折れたりしない。……皆と一緒に、前に進むよ」


「……ありがとうな。……その言葉があれば、俺ももう遠慮しなくて済む」


 大きく頷いた梓の意志表明を聞き届けると、裕哉は安堵の笑みを浮かべてとどめの一撃を差し向けた。

これで双方覚悟完了、ここからは全員が遠慮なしで目標に向かっていくことになります!ここから加速する彼らの逆襲劇、是非楽しみにしていただけるとうれしいです!もし気に入っていただけたらブックマーク登録、高評価などぜひしていってください!ツイッターのフォローも是非お願いします!

――では、また次回お目にかかりましょう!

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