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第五十四話『本領発揮』

「……アイツの詠唱、そういえば初めて聞いたな」


 暁人がぽつりとつぶやいた言葉に、残りの三人も目を見開いて裕哉を見つめる。大量の水を携えて笑うその姿は、創作の中にしかいないような『魔王』そのものの様に見えた。


「……放てッ‼」


 そんな感慨ごと吹き飛ばさんと、水の弾丸が四人に向かって差し向けられる。渦を巻くことでより貫通力が高まっているそれに対して皆が引き下がろうとする中、篤也は一人それを迎え撃つようにして立った。


「……どれだけ練り上げようと、それが魔力であることには変わり有りませんッ‼」


 影の顎を形作り、眼前に飛来する水の弾丸を食らわせるかのようにそれを誘導する。何もかもを貫く水はすべてを飲みこみ膨れ上がる影の中へと飛び込み、その勢いを失ったかのように思われたが――


「……く、ううううっ⁉」


「瀬名君の魔術でも、素直に止まらないっていうの……⁉」


 篤也の顔に浮かぶ汗は、魔術行使に伴う負担だけではない。影の中でもなお暴れ狂う水の弾丸が、その術者へと多大な負担をかけていた。


 だが、その抵抗にもいずれは終わりが来る。荒ぶる獣を沈めるかのようにうごめいた影が水の捕食を終え、その莫大な魔力を自分のものとして取り込んだ、その瞬間のことだった。


「……切り払え」


 水色の太刀筋が影を割るようにして走り、魔力充填を終えたばかりの影の顎があっけなくその形を失う。魔術の性質をすら凌駕するその実力に、篤也は目を見開くしかなかった。


「反動とかリスクはあるけど、お前が一番防御がうまい。……なら、最初に潰すのが筋ってもんだよな?」


「っ……‼」


 魔力切れによる崩壊でないため影の再展開は不可能ではないが、それがいったい何を生むと言うのか。一瞬の破壊劇は、今までの篤也の想像をはるかに超える神業だった。それを前にして、これ以上何を――


「……そんな簡単に、やらせるかよッ‼」


 半ば敗北を覚悟していた篤也の前に、圧倒的な熱量を宿した暁人が割って入る。影を切り裂いた一撃からつなげるようにして流れるように放たれた水刃の一撃は、四人の中で随一の爆発力を持つ暁人の炎剣によって対消滅することで防がれた。


「出し惜しみはなしってことか。いい判断だぞ、暁人」


「お前相手に出し惜しみなんてしてる暇ねえだろうが。……だから、もう一つ喰らっとけ‼」


 裕哉が新しく水の武具を生成する、その一瞬。そこを縫うように放たれた炎の弾丸が、凄まじい速度で裕哉の顔面を直撃せんと迫り――


「いい一手だな。……だけど、力任せすぎるのも考え物だぜ?」


 その弾丸を横から打ち抜くようにして現れた水流が弾丸を押し流し、直撃するはずだった全力の一撃は最低限の力で受け流される。燃費が悪い暁人のことを思うと、その一手が失敗することは四人にとってあまりにも大きな痛手だった。


「ほんと、敵に回すと厄介でしかねえな……‼」


「ま、一応この学園の最強としてみんなの前に立ってた身だからな。……いくら一対四だろうと、完璧に勝たねえといけないんだよ」


 渾身の一撃を受け流しても、裕哉の表情が崩れることは無い。圧倒的に開いた実力差を知りながらも、裕哉の戦意は尽きることなく燃え盛っている。……まるでそうすることが自らの使命であると、そう叫んでいるかのように。


「……水よ、付き従え」


 冷静に響いた声に伴って、短剣をかたどった水が裕哉の背後に何本も装填される。直撃すれば重傷は免れない自由な刃が、後退する四人の姿をしっかりと捉えていた。

篤也と暁人の攻撃を受け流して見せた裕哉、それに対して四人はどこまでくらいついて行くのか!どうか楽しみにしていただければと思います!もし気に入っていただけたらブックマーク登録、高評価などぜひしていってください!ツイッターのフォローも是非お願いします!

――では、また次回お目にかかりましょう!

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