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第五十二話『解き放って、進め』

――決意は固まった。子供らしくやっていいというのならば、それに乗っかってやるのもまた信頼の証というものだ。


「……ということで、俺は今から本気を出す。四人とも、どれだけ抗えるか試してもらってもいいか?」


「……えと、ずいぶん唐突な提案ね?」


 教師と言葉を交わしてから一日、いつも通りグラウンドに集まった六人。だが、その雰囲気は少しだけ普段と違っているようだった。


「悪いな、俺の方針が少し間違ってることに気が付いちまって。それを正すべく、とりあえず俺の全力全開を見てもらおうかなって思ってさ」


 篤也の戦いのときに自覚したように、裕哉は無意識のうちにリミッターを自分に課していた。それは皆の心が高すぎる壁に、あらわになった実力差に絶望しないようにと、裕哉が無意識に判断したからこその結果だ。言ってしまえば、裕哉なりの気遣いである。


 だが、それこそが間違っていた。壁が高いことなど、とっくのとうにわかり切っている話なのだ。裕哉を倒すよりも、学園のシステムを覆して駆け上がる方が遥かに難しい。裕哉の実力を目にしてもなお、折れない心構えでいてもらわなければ困ってしまう。


「全力全開って……もしかしてお前、ずっとセーブしてたってのかよ?」


「まあ、そんな感じだ。体にも負担がかかるし、俺の力を使いすぎると皆が正当に評価されなくなっちまう。それは、少し嫌だなって思ってさ」


「その考えは分かるし、ある程度納得もできるけど……じゃあ、どうしてそれを止めようってなったの?」


 裕哉の決断に、梓は首をかしげる。真実を伝えられない事への罪悪感が裕哉の胸を焼いたが、それをいちど黙殺して裕哉は笑顔を浮かべた。


「俺たちはなりふり構ってられる立場にないからだ。どんな手を使ってでも、まずはトップの奴らに俺たちのことを視界に入れてもらわなきゃ困る。可能性を証明するにしたって、それを確認して、採点してくれる奴らが居なくちゃ意味がねえんだよ」


「正論ですね。僕たちは、まず目に留まらなきゃいけない。見るべきものがあるって、上の人たちに思わせなきゃ何もかも始まらないんだ」


「そういうこと。……だから、俺の力も余すことなく使い倒してやる。その決意表明として、まずはお前たちに俺の全力を見て……そんでもって、ボコられてほしいなって」


「ボコっ……⁉」


「……それはまた、ずいぶんと舐められたものですね。いくら松原君だとはいえ、一対四ですよ?」


 獰猛な笑みを浮かべた裕哉の言葉に、男子二人が剣呑な表情を浮かべる。一触即発ともなりかねないような発言だったが、その反応に裕哉は満足そうにうなずいてみせた。


 反目できるのならば、そこにはまだ意志がある。裕哉の言葉を聞いて不快に思ったのならば、自分の力に対するある程度の信頼も、今のままでいることへの反骨心もそこにはしっかりとある。……根が湧くば、それを全霊を持って押し出してきてくれ。


「そう、一対四だ。だから今までの工夫とか小細工とか全部使って、俺を倒そうとしてみてくれ。……くれぐれも、折れんなよ?」


 そう言って片目を瞑ると、裕哉は軽く飛び退って四人と距離を取る。そして、意識を魔力にのみ集中すると――


「―—来い」


 その一言が大気を震わせた瞬間、グラウンドの空気が一瞬にして塗り替わった。

ということで、裕哉の全力がついにお目見えします!それに対して四人はどう反応するのか、そして裕哉の狙いは結実するのか!楽しみにしていただけると嬉しいです!もし気に入っていただけたらブックマーク登録、高評価などぜひしていってください!ツイッターのフォローも是非お願いします!

――では、また次回お目にかかりましょう!


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