番外編③フレアとヒーラの冒険譚〜まずは最上王国ネスタルチア〜 中編②
気づいたら2ヶ月経ってました、いやはや本当に時の流れってはやいですね……。(((本当にごめんなさい
今回は1500pv記念で大遅刻ですが番外編③です。思ったより話が凄く長くなってる。でもフレアのヒーラのお話書いてて凄く楽しいです。
さて、前置きが長くなりましたがここまで読んでくれただけでも感謝です。では、上位魔族2人による、たった一人の人間を探しに行くちょっとした冒険譚のひと間をお楽しみください!
「はぁ、ほんと最近は厄介事ばかりね.......。」
.......確かに。レオンと出会ってから、ずっとそんな感じがする。私は胸の中で静かに頷いた。
多種多様な種族が存在するとされるこの世界で、魔族である私___フレアと、同じ魔族であり一応魔王幹部でもあるヒーラは、再びの問題に頭を抱えそうになっていた。
まぁ、私は感情がないので頭を抱えるも何も無いから、それはヒーラだけだろうが。そう思って隣をふと見ると、見事に想像通り彼女は頭を軽く抱えていた。
私たちは、旅をしている。今はまだ始めたばかりで、現在いる国はネスタルチアという大国で、何気に今回の旅で始めてきた場所なのだが。
だが、これは観光のために来ているのではない。私たちがこうやって、故郷である魔王城から己の役割も放棄してここに来た理由はただ一つ。ある日突然消えた人間の少女___レオンを探すために。だからこうやって、今旅を続けている。
そんなこんなで、この国についた私たちは、早速レオンを探すため行動を開始し、ヒーラが運良く(?)見つけたよろづ屋店に色々あって捜索を手伝ってもらうことになり、やっとこの国での最初の目的を達成する大きな一歩を____と思ったのだが。
「お父さん!!お父さんは無事なの!?」
「お、落ち着け!俺だってあの人の安否はまだ.......でも、信じるしかないだろ.......。」
「これがどうやって落ち着けるっていうの!?」
隣でヒーラがはぁぁぁと大きすぎるため息を着いている真正面には、2人の男女が言い争いをしていた。女の方がロアさんで、男の方がムギルさんだ。ロアさんはよろづ屋の店員で、私たちは丁度報酬の件も解決したということで次の段階へと歩を進めようとしていた。
そんな時に、ムギルさんが現れてそれどころではない問題が発生したことを伝えられ、ロアさんはパニック状態に陥っている。それが今の現状だ。
とりあえず、こんなことが起こってしまった以上、私たちが放っておく訳にもいかない。
ムギルさんが現れてからずっと私たち2人は蚊帳の外状態だが、ずっとこのままにしていてもしょうがないので、声をかけることにした。
「あの、ノアさん、あとムギルさん、お父さんの件手伝いましょうか」
「!!あっ、すいません、テンパっちゃって2人を.......。」
「いや、それについては気にしなくていいわ、それで?あなたのお父さんに何が問題が起こったようね?」
「.......、はい.......。」
ヒーラがそう問い返すと、ノアさんは俯いてぼそぼそと答えた。
「はい.......。私のお父さんが、攫われたようで」
「ということは、誘拐されたってこと?」
「そう、です______。」
ノアさんがそこまで言うと再び俯き、地面を眺め始めた。誘拐なんてこの世界じゃよくある話ではあるが、彼女にとっては一大事だ。とはいえ、彼女の父が攫われた理由はなんなのだろう……と、ふとそんな疑問が頭の中に浮かんだ時、少年の声が響いた。
「とりあえず、探さないと!流石にどこに誘拐されたかは分からないが……。」
「?ノアさんのお父さんが誘拐されたのは分かっているのに、場所は分からないの?」
「___、実は、その事実が判明したのは、魔法によってなんです」
「____魔法?」
私がそう聞き返すと、ムギルさんはこくりと静かに頷く。魔法によってノアさんのお父さんが誘拐されたことが分かるとは、どういうことなんだろうか。生憎魔法に関しては必要だと思ったものを習得しようとかその程度で、魔法知識に欠ける私にとってどうやるのか検討もつかなかった。
しかし、隣の魔族はどうやら私とは正反対だったらしい、隣の私を見てなんとなく私の心情を理解したのか、簡単に説明をしてくれた。
「おそらくだけど……脳内伝達によるものじゃないかしら?まぁあれを使う場合は、対象のイメージがしっかり出来ないと出来ないものだけど」
そこまで聞いて、あぁ、と納得する。テレパシーは、ちょうど聞き覚えがあった。確かにあれなら、遠距離からでも何かを伝えることが出来る。
ヒーラの話からそういうことかと理解したのだが、当のムギルさんは首を横に振った。
「いや、違います……僕も魔法知識は多少心得ていますが、あれは、恐らく……。」
そこまで言うと、何かがひっかかったように言い留まった。この場にいる少年を除いた3人は首を傾げるが……口を開けては閉じてを繰り返していた。それを見ていて、どうやら耐えきれなくなったノアさんは少し顔を赤くして言い放った。
「___っ、何?何の魔法が使われたの!?」
「!!え、えっと……、」
「ノアさん、落ち着いて」
「でも!早くしないと、お父さんがどんな目にあってしまうか……!!!」
声を荒らげるノアさんにヒーラが宥めるが、すかさずノアさんも反論する。しかしすぐに、歯を食いしばり顔を歪めて何も言わなくなった。
「貴方の気持ちも分からなくはないわ。でも、躊躇っている相手に圧で押しても逆効果よ」
「___っ……。」
そこまで言って、ノアさんはゆっくり引き下がる。私は彼女の心の内は理解しているとは言えないと思うが、恐らく悔しいというやつだろう。本で読んだ限り。私は生まれつき感情が欠落しているという影響で、ヒーラのようにわかることは出来ないが、推測は私でもできる。
ヒーラは後退したノアさんを確認すると、ムギルさんの方に視線を向けてその答えを待っていた。その一部始終を見ていたムギルさんは、1度深呼吸をしてから、覚悟を決めた様子で告げた。
「恐らくあれは、テレパシーではありません……その上位互換、脳内伝達・スペリアーによるものだと……思います」
「_____あぁ、なるほど」
その名を聞いて、ウンウンと納得する素振りを見せるヒーラ。しかし、ふと彼女の方を見ると雰囲気が少し異なったように感じられた。だいたいこういう雰囲気を出す時は……そこまで考えて、ふと思いつく。___焦っている?
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実は_____。
(え?テレパシー・スペリアー?そんなの、たかが中級魔法じゃない……。というかテレパシー自体、そもそもが低位魔法だし……。もともとのランクが低いから、それの中位なんて大したことないはずなんだけど……。一定の魔法知識があればそれはすぐ分かるはず……。ん?もしかして、いや、そんなことはないはずよね……?)
フレアの推測通りヒーラは今かなり焦っていた。___いや、というより困惑していた。まさか魔王城内での魔法水準とここの国の魔法水準は大きく違うのだろうか?それならば、話はこちらに合わせないといけない。少なくとも、今私たちの種族が、さらに言えば地位がこの人たちにバレる訳にはいかないのだ。
確かに魔族は魔法的才能に恵まれたものが多いというのは耳にしたことがある。だが、ここはこの人間界で1番の大都市。それなのにテレパシーが高位魔法のような扱いをされるのは、彼女にとって少々気にかかるものだった。というかそもそも、そんな話だって聞いたことないし。
(まあでも、今はあっちに合わせるしかないわね。)
とはいえずっとうだうだしている訳にも行かないので、まずは合わせて話を進めることにした。
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「テレパシー・スペリアーね……。確かに、あれなら可能かもね。まぁでも___大丈夫じゃないかしら。」
「え___スペリアーと、呪文詩がつくものですよ?あれは中位魔法に属するもの。ということは、僕では、恐らく太刀打ちできません___。」
ヒーラの言葉に驚いた後、そう言って再びうなだれるムギルさん。中位魔法か___。私にとっては属性によって問題ないとも言えるし逆に少し危険だとも思うくらいだ。下位魔法程度なら、特に問題などないのだが。
「___あの、確かにその魔法なら、対象物のイメージが強固でなくても、相手の魔力を覚えていればそこから発動するだけで済む、というものですよね。でも、それってつまり___。」
そこでノアさんの言葉は途切れる。そこまでみんな思考が追いついてから、私がその続きを口にした。
「_____、うん、今まで最低でもムギルさんと会ったことがある人___になるね」
そこで少しの沈黙が訪れる。今まで、過去に1度でも会ったりしてしまえば、そこから魔力を感知することが出来る。それが出来れば、もうあとは魔法を遠距離発動するだけで簡単なのだ。
「あ、でもただ魔力を覚えると言うだけなら、すれ違うとかでもできるんじゃないでしょうか?」
「んー、どうでしょうね……。すれ違うだけだと、ちょっと難しいかも。魔力感知が上手い人なら出来るかもしれないけどね」
「まぁでも、可能性の1つとしてはなくはない、か__。」
そこまで話が進んで、また皆考え込む。でも、もしノアさんの言う通りただ一瞬すれ違うだけで魔力徴収が出来るなら、そこそこ魔力の扱いが上手くないとできないのは事実。あまり油断してかかると、面倒くさいことににあってしまうかもしれない。
まぁでも、私はともかくヒーラがいるし、大抵の事はなんとかなるとは思うが。
「…………とりあえず、敵のアジトを探しましょうか」
「____といっても、敵のアジトなんてどうやって探すんですか?僕が見たことある相手かもしれないとはいえ、敵の見た目も何もかも皆目見当もつきませんし……。」
しばらく沈黙が続いていたのだが、それをヒーラは打ち破り、これまで何度か停滞した話を再び動かした。しかし、ムギルさんは軽く下を俯いて完全に弱気になっていた。
とはいえ、私も流石に殆どなんの情報も分からない相手の居場所を特定することは至難の業だ。というかそもそも、敵の居場所も分からないなんて、相手の目的も理解できない。だが、それについてはヒーラも同じ疑問を持っていたようだった。
「ねぇ、ムギルと言ったかしら?あなたが受けたテレパシーは、ノアさんのお父さんが攫われたって伝えられただけなの?」
「はい、そうです__。どういうことが説明するよう迫ったら、すぐ切られました。でもまぁ、僕はテレパシー・スペリアーなんて高等魔法使えないので、それすら伝わっていたのかすら怪しいですが」
そこまで言うと、ムギルさんは嘆息する。ということは、やはり自分の居場所はあくまで伝える気は無いということなのか。___居場所を伝えないという所まではまだ理解できるが、要求を伝えすして、誘拐になんの意味があるのだろうか。少なくとも、珍しいケースだなと思う。
「うーん…………謎ね。相手は何を望んでこんなことをしているのやら」
「じゃあ、どうする、ヒーラ?正直現状だと、この広い大都市で場所を特定するのは難しいよ。それに、そんなに分かりやすく嗅ぎ回ってたら___。」
「そうね。気づかれて、ノアさんのお父さんが大変な目に合うかもしれないし、本当に見つかりにくいところに逃げていってしまうかもしれないし」
「慎重に、とはいえ迅速にことを進めないと、ですね」
私とヒーラ、ムギルさんの3人は、何かいい方法が無いかと案をさぐっていた。ノアさんはほんの少し距離の空いた場所で、空を見上げた。そんな彼女の目には絶望もあるが、希望__否、それによく似た、燃え盛る感情の炎がたぎっている。
「__はぁ、困ったわね」
そんな中で、角の生えた魔族の少女はもう何度目か分からないため息を再びつくのだった。




