第28話 救いの手、そして再び降りかかる災難
「·····何が、起こって______。」
気づけば私の周りは___この空間は、膨大なる光に包まれていた。
朦朧とする意識の中、今の状況を確認しようと意識を落とさぬように努めながらその光の爆発の発生源を探す。
「_______ぁ」
____周りが、見える。さっきまで、ゾンビたちに囲まれて、そのまま私は死ぬと思っていたのに。
もう、私の周りにゾンビはいない。武器をこちらに向けていた姿はなく、遠くへ吹き飛びボロボロの状態だった。そいつらの殆どの体は肉片だけであり、もしあそこから再生できたとしても再び動き出せるまでかなりの時間を要するだろう。
あいつらが動き出せない以上、もう気にする必要はない。あれのお陰で見渡しの良くなった場所を見て、再びあの光の発生源を探す。
が__________、
「·····ぐ·····ッ」
恐らく扉の近くにあの魔法の発動者入ると思うのだが·····。先程のゾンビによる傷があまりにも重い。
刺傷が自分の体の至る所にあって、全然体が動かない。というか、動かそうとすると運動神経が働かなくなるほどの激痛が体を走る。
動かしたい気持ちは山々だ。現に、ひたすら命令を聞かない体を動かそうと懸命に動かそうとはしている。___なぜ動かない。大事な時に限って、なんで今_____。
そう自己暗示しても、この体は言うことを聞いてくれない。だが、諦める理由にはならない。
「____が、·····。」
なんとか、首だけ動かすことができた。そして、ゆっくりだが私も入ってきた大きな扉の方へ目を向ける。
「____!!」
「遅くなったわね。さぁ、戦闘開始よ!!」
そう甲高く叫んだ、1人の少女がいた。己の艶やかな肩まで伸ばした金髪を揺らめかし、眉を吊り上げて、しかし笑う少女。
その名は_______。
「りべ、りか·····。」
今、来たのか。こんな、私が早々にボロボロになっていて、命が途絶えようとした、その時に。
そんな時に、救いに来てくれたのか。
(いや·····。)
どちらかというと、本命はあの黒幕と思しき2人の討伐。しかし、私にとっては大きな救いとなったのは事実だ。
でも、本当に___あの本で見た様な·····。
「ヒーローみたいな、登場のタイミング、だよ」
本当に、本で見たヒーローのように。困っている人を救う、勇者。私の世界にもいた。まぁ、その人たちにとっては、私みたいな魔族はどちらかと言うと闇側で、敵だったけど。
「!!フレア!!___ッ、サラ!!」
「っ、はい!!」
リベリカは、いち早く私の存在に気づいて魔法使いのサラを呼ぶ。そういえば、サラは確か水属性。その水属性は、治癒魔法にも適していたはずだ。
私の属性の暗光は、治癒魔法は光の部分で出来なくはない。しかし、習得が中々出来なくて困っていた分野ではあった。でも、それでも特に困りはしなかったのだが。
サラはリベリカの後ろから出てきて、駆け足で私の元へ走っていく。すぐに私の元へついて、彼女は私の無数の傷口に手をかざし、そこから暖色の淡い色を発した。
「あったかぃ·····。」
「そのまま、じっとしていてくださいね。出来るだけ早く治しますから」
サラは一生懸命私の傷を治そうとしてくれていて、それにとても感謝したが、下手にこの子の魔力を消費させる訳には行かない。
____治療が3分の1程度まで済めば、後は私で何とかできる。
「·····!?これは·····?」
サラは目を見開いて驚愕する。なぜなら、突然私の体___厳密に言えば私の傷口から、黒色の闇が蠢き始めたからだ。
彼女は急な出来事に困惑するが、彼女の治療により戻ってきた体力でゆっくりとだが起き上がる。それにサラは慌てて私を寝かせようとするが、それを拒否した。
「待って、貴方はまだ傷が·····というか、その闇は·····?」
「これは、私のような魔族の·····特に、上位魔族にしか得られない、治療能力」
「治療能力·····?」
「そう。体力がある限り、その体力をエネルギーとして今のような治療がされるの。さっきは体力が一瞬で奪われて出来なかったけど、貴方のおかげで出来た。ありがとう。」
「え、あ·····はい·····?」
そう。この、上位魔族だけが得られる特別な力。自分が傷を負った時、自身の体力エネルギーを使ってその傷を修復できる。
この段階まで行ってしまえば、すぐこの傷たちは塞がる。私はとりあえず塞がるのを待って、修復が完了したらあとは戦いに再び参戦するのみ。
「·····それより、今の状況は」
「___っ、今は、リベリカとハイラの2人があの仮面女と堕天使に対峙しているところです」
その言葉を聞いて急いで2人の方へ視線を向けると、その通り対峙していた。
不安が残る。私でもあそこまでの力の差をレオンだけで痛感させられたのに。なのに、それより強いかもしれないあのミアとかいう女がこの場所に追加されて。
あのハイラやリベリカが強いのは分かっているが、大丈夫だろうか。
____しかし、その心配は一瞬だけだが無に帰すこととなる。
「____うわ·····。」
「あわわ、あそこまでは想像してなかった、です·····。」
私とサラはあんぐりと口を開ける。なんだ、あれと呟く間すら与えてくれない。
___それほどまでに、ひたすら彼女たちの姿を目で追うのに必死だった。
「はぁぁああ_____ッッッ!!」
「うおりゃぁあッ!!!!」
そんな叫びを上げて、リベリカは恐らく魔法を手に浮かばせていて、ハイラはレオンに威嚇する時にも使った大槍をもって、とんでもない速さでレオンたちに距離をつめる。
なんだ、あれ。あれで2人とも年下とか恐ろしい。ハイラなんて可愛らしい気の入れ方をしているが攻撃は凄まじい。あんなのでほんの少しでも気を緩めたら終わりだ。気づいた頃にはきっと首が飛んでる。
あの二人なら行けるのではないか、そう思ったくらいだ。
しかし、レオンたちもそう簡単にはやられない。
「あら、勇ましいのね」
ミアがそう呟いたあと、一瞬にして姿が消える。少しだけ見えたのは、鈍った残像だけ。
直前にして当たらなかったと自覚した2人は、急いで攻撃をやめて体を翻し威力を消す。そしてすぐに、敵の場所を探りながら構えた。
「____っ、上!!」
気づくと2人は空にいて____否、1人足らなかった。空に浮かんでいたのは、レオンのみだった。ミアの姿は、いつの間にか消えている。
「、どういうこと·····?それに____。」
そう。____空。レオンが浮かんでいたのは、天井ではなく雲り空の元だった。
「うそ·····場所が?」
場所が変わっていた。さっきまで、大きな建物の中にいたはずなのに。何が起きたと、必死に場の状況を理解しようと頭をフル回転させる。もしや、レオンかミアの2人のどちらかがそういう技を施したのだろうか。
周りを見渡すと、ずっと草原が広がっていた。戦うには絶好の場所と言えるかもしれない。しかしそれは、敵側からしても同じこと。
レオンは建物の中で飛んでいたこともありが多少不便があったかもしれないが、外となればそれも解消されるだろう。あとデメリットがあるとすれば、障害物が少し少なすぎるといったことか。
まぁどちらにせよ、こちら側もあちら側もそれぞれメリットとデメリットが等しくあることは事実。
ならば、それをどう活かし尽くせるかが鍵となる。
「___あ、冒険者の人たちもやっぱりいたんだね·····。」
「·····とりあえず、すぐ徴収できた人たちを集めました」
「あれ····てことは、カーシックやマゾベルは·····?」
「あぁ、あの二人は国民の避難を。この国の重鎮の方ですからそう簡単に線上にはでられませんし、私たちが足止めするよう努めるとはいえ、戦闘被害や万が一のことを考えるとやはり」
「そっか·····。」
まあそうするのは良策と言えよう。これで国民にまで被害を出してしまえば、また別の問題が生じてしまう。遠慮なく戦えるようにするためにも、住民の避難は必須だ。
「__________。」
もう、皆はこの状況を理解し始める。私たちは自分を含め、全部でここに9人いる。
そして、こちらにとって敵側の人物はたった1人。数で押せば行けるだろうか。
____いや、と考え直す。レオンは相変わらず、ずっとニヤニヤして笑っている。まだ、勝利の確信がある様子だ。
(もしかしたら、またあのゾンビがいるのかも·····。)
そう考えたら厄介だ。いやまぁ、あのリベリカが放った魔法をまた放てば良いのかもしれないが。
「____。後ろに気おつけな」
「____?」
どう来るか出方を伺っていると、レオンは突如としてそう呟いた。
それを妙に感じて、それと同時に自分の背中にとんでもない悪寒が突き抜ける。
「________!?」
急いで後ろを振り向く、そこには、ひと足早く振り向いた冒険者チームオルドルの__ラギーが顔を青ざめていた。
「___ッ!!総員、戦闘準備!!」
ラギーは突如そう叫び、彼の体にかけていた弓を取り、矢を放つ準備を一瞬でこなす。
「·····くそ、甘かったか·····!」
そしてアメリアはそう言って歯軋りし、自分の武器であるダガーを手に持つ。
「嘘·····あれでダメだったって言うの·····?」
___そして、そう言って肩を震わすリベリカ。
「やっぱり、簡単には行かないか」
私は、嘆息する。やはり、あれではまだ駄目だったようで。
___私の視線の先には、ここから見れば離れた王国からとんでもない速さで向かってくる大勢のゾンビがいた。
しかも、私を襲ったあのゾンビたちより、何十倍にも数を増やして。




