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新世界に魔法を  作者: みかんグミ
第一章『王都編』
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第27話 想定外の連続

「同じ過ちを、繰り返させはしないから____!」


 レオンには、あの時の私と同じ気持ちをさせてはいけない。そう、本能で直感する。全力で魔法弾を放ち私から放たれた紫色のそれは、翼を広げ宙を浮いているレオンを撃ち落とさんと高スピードで彼女の元へ飛ぶ。

 しかし______。


「流石にこんな単調攻撃じゃ当たらない、か」

「____まぁ、初手の攻撃としては良いんじゃないかな〜。とはいえ、私たちのような相手となると少し愚策かもしれないけどね」


 彼女の元へ放たれた魔法弾は、見事命中、ということにはならず、軽々と避けてぶつける相手を見失ったそれは彼女の奥の突き抜けた廊下にぶつかり煙をあげていた。

 やはり、そんな簡単には行かないか。元々人間だったとはいえ、相手は堕天使。もう、あの頃のレオンと同じ認識では駄目なのだ。そうしていたら、私は一方的な攻撃に為す術なくやられる。


「________ッ。」


 気を引き締める。これは、私がやらなくてはならないこと。全ては私の責任であると思うから。


「____へぇ?」


 私の決意、そして覚悟と共に、本気でレオンに立ち向かう準備を早々に進める。とはいえ、そんなに準備に時間がかかる訳では無い。

 私がその時にやらなければならないのは、ただ1つの杖を出現させるだけ。


「魔法で出した、か。それ、壊しちゃっ方が良いかな?」

「まぁね。___でも、壊させないから」


 それを合図に、レオンは身構え、そして私は杖を構える。茶色の、細くて長さは腕の半分位の長さの小さな杖。しかし、これで魔法を発動させるだけで、素手で発動させるより何倍もの威力を発する。

 とりあえずこれで、準備完了。後は、これを使ってふるうだけ。


暗黒(フラッシ・ダークンズ)閃光(・ア・ライト)!!』


 杖を振って、この前超級モンスターを一撃で葬ったあの技を繰り出す。私の属性、暗光で使える専用魔法。とはいえ、これもまだまだ中級魔法に限りなく近くはあるが初級魔法。ただ、これを極めていたため威力は中級魔法程度はある。

 それをこの杖で何倍にもした威力でだ。かすり傷ひとつ位ついて欲しいのだが。


「______ッッ」


 私から放たれた魔法は、辺りの視界を暗くして、音速に近い無数の光線が敵を襲う、ただそれだけの魔法。しかしその光線は追尾型であり、結構効くことが多いため、使い勝手がよくよく使う。

 そしてこの魔法は、できるだけ表面積が大きい相手ほどその効果を発揮する。例えば、以前使った超級モンスターは、人より数倍以上の図体があった。それはつまり、人間より何倍もその表面積が大きいというわけだから、あれを倒すにはとても有効な手であった。

 そしてそれは、人間の姿と似ているレオンもそれはれいがいではない。確かに容姿は人間と同じで、とてもあのモンスターと同じ程とはいえない。

 ____しかし、彼女には翼がある。半分辺りまでを黒く染めた、彼女の体ほどはある大きな翼が二翼も。

 そして私が狙っているのは、その翼である。


(翼に上手くダメージが入れば、空を飛ぶのは困難になる。そうすれば、少しは戦況が良くなるんだけど·····。)


 白銀色の光線が真っ黒の空間の中を高速で突き抜け標的を貫かんとする。発動者以外一定の範囲内(真っ黒な空間)にいる者はそれにより視界が奪われる。だから、超スピードで迫る光閃にも気づかずやられるというものなのだが____。


「なに、あれ」


 レオンの視界は恐らくない。その証拠に、彼女は今全く動いていない。棒立ちだ。

 ·····しかし、彼女の翼は違う。翼はさっきと変わらず広げたまま。最初はそれは攻撃に気づいた時に飛んで避けるためと思っていて、むしろ広げていてくれてこちらとしては有難いと思っていたのだが、違った。

 あの二翼の翼は、"避ける”為にあったのだ。レオンの元へ迫る光線は、胴や翼にあたる前に彼女の翼によって全て弾かれている。

 翼だし柔らかいのではと勝手に思っていたのだが、そういう訳では無いのか。いやそもそも、単なる知識不足の可能性もあるが。

 でも_______。


「どちらにせよ、大岩を粉砕出来るほどの威力を持つ魔法でも、本体が動くほどのものでもないということか___。」


 このままでは、私は為す術なくやられる。やはり、真っ向勝負とはいかないか。

 とはいえ、今更そんなことを思ったってもう遅い。今やるべきことは、現状の打開策を考えること。その打開策は___。


(本意ではないけど、あの子たちを待つしか)


 正直あの人たちに助けを求めるのはなんとも言えない気持ちになるが、その理由は分からないし___いや、なんとなくは分かる。ただ、言葉にしたくないと言うだけ。

 でも、あの人たちには本当に助かったから。なぜあそこまで優しいのか、私にはまだまだ理解が出来ない位には。


(いや、でも違う、か)


 そうだ。何、最終的には人に頼ろうとしている。しかも、たったの二手で、だ。

 まだ初手とも言える段階で、諦めようとするなんて、私にしては愚の骨頂。ヨネに、ハイラに、気づかせてくれた、固めさせてくれたその決意をこんな早々に壊すなど有り得ない。

 難しいことは分かっている。とはいえどんな選択を取ったとしても、どっちみち死ぬことは本能で理解している。

 なら、まだ死ぬ確率の低い方を。それは、戦うことだ。一見こっちの方が早死にする確率が高いように思えるが、例えばここから逃げるという選択をとるということは、それ即ち戦うことを諦めるということ。

 それは抗うことも辞めるということだ。逃げるのに必死になって精神が不安定の時に攻撃を仕掛けられれば簡単に命は狩られる。第一、逃げることはしたくない。

 だって、私の目的は彼女を正すことなのだから。


「んー、危なかったぁ」

「____全く効いてない」


 一連の私の攻撃は止み、悪かった視界は魔法の効果を切らして一気に晴れる。

 そしてその中から、無傷のレオンが微笑みながら出てきて、私の方を向いた。


「まぁでも、結構良い攻撃だったよ。私の知ってるフレアより、何倍も強くなってる」

「___そんなことないよ」

「いやいや。___じゃあ、次は私の番?」

「___ッ」


 そんな軽口を交わした後、彼女の突如とした膨大な殺気に本能が過去最大級の警鐘を鳴らす。これは当たったら死ぬ、と。

 ここまで体で『死』を感じたことは初めてだ。絶対に躱さなければならないと、すぐに体勢を防御体勢にする。


(どう来る·····。)


 絶対に攻撃を見切れるように、コンマ1秒たりともレオンから目を離さない。

 瞬きをする時間すら惜しい。だから、目を開いて全身の神経を鋭くして限界まで集中力を高めていた。

 しかし________。


「おーい、おいで〜」

「!?」


 レオンは攻撃する訳でも何でもなく、ただ彼女は呑気に上を向いて誰かを呼んでいた。


(何を_____)


 そこで私はハッと気づく。レオンがその誰かを呼んだ後、奥から重音が鳴り響いてきていた。

 これは____足音。しかも、大勢の。·····まさか、レオンの仲間か。まぁでもそうだ、堕天使の力を持っているとはいえ、単独で国破壊をするとは考えづらい。なぜなら、ここはこの世界最大規模の大国、ベルカルだ。最も、それほどまでの絶対的自信があるなら話は別だが。

 どうやら、最後まで私の相手をするつもりはないらしい。それをひとまずの幸運と呼べるか、否か。

 とはいえ____。


(国破壊すらもやってのけそうなのが、怖いけど·····。)


 実際本気でやればこの国の半分以上壊せてしまうのではないかと一瞬思えてしまうのが妙に現実味を帯びていて恐ろしいが。


「____、来た·····!」


 そうこうしているうちに、たくさんの足音を踏み鳴らしていた者たちが姿を現す。それは____。


「亜人·····?____ッ、人間まで___。」


 獣の耳が生えた獣人が殆どだった。ましてや、人間までもいる。みんな武器を手にしていて、そう簡単にはいきそうもなかった。何より数が多い。


「_____?」


 とりあえず、この人たちをどう攻略すべきか考えていると、ふと違和感に気づく。

 この者たちには、目に光がない。ひたすら澱んでいて、前が見えているのかすらも怪しく思えてくるほどに。ただ、それは直接的な関係ではない。

 それより、もっと重要視すべきなのは_____。


「生気が、ない?」


 そう。まさにそれだった。五体満足に、この地に立っているというのに、あの人たちには全くもって生気がない。

 あれはまるで、


「死んでいる、みたいな·····。」

「?死んでるよ?ただそれを、無理に動かしてるだけ。さっすがフレア、見ただけで見抜くなんて!外見はそう見えないって思ったんだけどね〜」


 ____死んでいる?今、そうレオンは言ったのだろうか。そんなの____。


「禁忌魔法に、触れる」

「いやいや、そんなこと気にしてたら面倒くさいじゃん?」


 本当に、まるっきり人格が変わってしまったのか。感情のない私はともかく、レオンは誰かの死について話していた時急に元気を無くしていたのに。


「まぁそんなことはどうでもいいからさ。とりあえず、また私と戦う時はその子たちを殺してからね?」

「______。」


 それを合図に、ゾンビ状態の亜人や人間たちは、獰猛な獣のように襲いかかってくる。


「やっぱり、ちょっとは迷っちゃうかな?」


 そう言いながら、遠くてニヤニヤしながら私を見つめるレオン。

 だがしかし、彼女が思っているような結末は訪れない。


「_______はッ」


 足を踏み込んで威力をつけ、高い天井目掛けて飛ぶ。獲物を見失ったゾンビたちは数秒後にやっと私を見つけるが、もう遅い。

 なぜなら______。


「もう終わり」


 ゾンビたちの頭上には、無数の魔法弾が炸裂していたからだ。ゾンビたちがそれに気づいた時にはもう遅い、為す術なく直撃し、ゾンビになったことにより普通の生態系には有り得ないほど変色した血を撒き散らしその命は今度こそ終わりを迎える。


 ________________はずだった。


「あぁ、そういやフレアには感情が無いんだったね。·····でも、そんな魔法弾で攻撃しても意味ないよ」

「____嘘」


 確かに、あいつらは1度私の魔法により吹っ飛んだ。しかし、ゾンビたちの傷口から煙がまきあげていて、そこからたちまち傷が塞がっていっていた。

 ものの数十秒で、ゾンビたちは元の状態に戻る。これでは____。


「一気に葬ることは、出来ないか」

「___そいつらは普通のゾンビじゃない。とっくに生死の境界なんて無くなってるから、今更死を、なんて無理なんだよ」


 淡々と語るレオン。ならばどうするか。とりあえず、倒すことより奴らの動きを封じることに専念した方がいいか。

 そう思っていた時だった。


「___あら、侵入者かしら?私達も、敵らしくなったものね」

「え」


 絶句した。だって、全く気配を感じなかった。気づいたら、レオンの背後にいた。

 レオンは元から気づいていたのか、それとも私と同じで気づかなかったけど特に驚くほどのことではなかったのか、女性の声を聞くと彼女の隣へ移動したその女性へ視線を向けて笑いかけていた。

 そして_______。


「これは、ミア様。予定よりお早い到着ですね」

「あら、ダメかしら?もうそろそろ、本当の戦いの幕開けかと思ってワクワクしてしまったのよ」

「そうでしたか。恐らく、あの侵入者はあいつらによって殺されますよ」

「そうなの?前、貴方はあの子を自分で葬りたいって言ってたじゃない。いいの?」

「まぁ別に。私は今回の任務を無事達成出来れば良いので」

「ふーん」


 ___あの人たちは、何を言っているんだ?ひたすら理解が追いつかなくて、唖然とする。

 あの女は誰だ?紫を貴重とした、仮面舞踏会にでも行くのかと聞きたくなるようなドレスに、実際に白の仮面をつけている。そして、小さな髪飾りに近いハットに、左目を隠して三つ編みに結んだエメラルドグリーンの髪。どう見てもただものでは無い。

 それに、それのれっきとした証拠に___。


「レオンが、あのミアって人に敬語を使っている·····!?」


 ということは、恐らく、というか確実にミアはレオンより立場が上。そして恐らく·····。


(レオンより、ミアの方が強い可能性がある·····?)


 まさか、あの時あの王城でレオンが言っていた、黒幕宣言は実は嘘で、真の黒幕はあの人だったのか。

 ____私は、その部下であるレオンにすら足元にも及ばないほどだと言うのに。

 これは、本当に不味いことになった。だがまずは、あのゾンビ共を倒さなければ。

 そう思って、そいつらに意識を向けた時だった。 


「______ぁ」


 あの二人に気を取られすぎていた。もうとっくに自分の体は地面に足をつけている。それは自覚していた。しかし___。

 もうゾンビたちは私目掛けて突進しており、ゾンビたちが手にしていた武器の刃が私の目の前に映っていた。

 避けきれない。それを本能で直感する。


「____ぐ、あああああ____ッッ!!」


 だが、何も抵抗しない訳には行かない。必死に避けようとあらゆる手段を講じる。しかし、それがいくらか通用しても数の暴力によってその殆どがねじ伏せられる。


「がは」


 気づいたら、数本の短剣や槍が私に突き刺さっていた。最早悲鳴をあげることもできない。

 それほどの激痛が、私の体全体を駆け巡った。ぐさりぐさりと、鈍い音を立てて私の体に刃が刺さっていく。

 あぁこれは不味い、死んでしまう。死ぬ訳には、行かないのに。だがもう遅い。油断していた。戦場では、ほんの油断が命取りになる。分かっていたことだった。しかし、少しの間、あいつらから意識を離してしまっていた。

 その見返りが、これだ。だけど、死ぬ訳には行かない。ただその一心で、少しでもと抵抗する。しかしそれは、結果的に自分から傷を余計開いてしまうことにかならず、絶え間ない痛みに意識が飛びそうになっていた。


 その時だった。


「_______」


 なんの声もあげられない。しかし、私の視界に、一瞬光がきらめいた気がした。しかし、もうなんだ、と思える気力はない。

 しかし、それほどまでに疲弊していた私でも、目を見開くほどの衝撃がこの空間に起こった。


「はぁッ!!!」


 だって、その澄んだ声音が鳴り響いたあと、扉の方から光の大爆発がこの空間中を包んだのだから。

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