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新世界に魔法を  作者: みかんグミ
第一章『王都編』
30/37

番外編②フレアとヒーラの冒険譚〜まずは最上王国ネスタルチア〜中編

こんな夜中投稿ですが、1000pv記念の番外編②です!本編は次話からいよいよクライマックス辺りですが、ここであえて番外編いれます←

さて、こんな時間帯バラバラ&不定期投稿な小説でも読んでくれる方がいるのだなーと、本当に感謝してます、ありがとうございます!

時間はかかると思いますが完結目指して頑張りますのでこれからもどうぞお付き合いいただけると嬉しいです!

「さてさて·····?」


 私___ヒーラは上から覗き見ると、そこには私の記憶通りの___箱が存在していた。


「よしよーし。これを使えば、資金は大丈夫ね」


 紫色に薄ら輝くその箱は、まぁ簡単に言ってしまえば魔物を捕まえるマジックアイテムだ。

 当時、これを使ってあの憎きクイックラビットを狩るため·····ではなく優しく捕まえるために使ったものだ。まぁ、あの時は使い方がいまいちよく分かっておらず絶望的に下手だったので、全くこのアイテムの特性を生かせず結果1匹も捕らえることが出来ずに終わってしまったのだが·····。


「でも今なら、大丈夫」


 私はあれから10年以上の月日が経ち、身も心も成長した。そしてそれは、自分自身の実力も同じく言えることである。

 沢山技を覚えて、技術を磨いて、こうして幹部NO.6の地位まで昇りつめることができた。とはいえ魔族重鎮の中では1番位の低い地位だが、私の最終目標は魔族の中でも最精鋭が集い、幾万といる同族の中でたった4人しか所属できない魔王直属の配下の1人に入ること。そのためには、今よりももっと実力を上げないといけない。それは、戦闘能力だけではなく指揮能力、判断力、学力など、様々な力を上げるということである。

 生まれつきの才覚には自信があった。丁度十数年前のあの頃は、自惚れまくっていたが。____でも、私が調査部隊に入った頃から、私の隣にはいつも私以上の女の子がいたから。

 私なんかより、何倍も、何千倍も、何万倍も才能がある子。まぁ、当然だ。なんせ、私たち魔族を束ねる魔王の娘なのだから。

 でもあの子は驚くべきことに全く自分の秘められた可能性に気づいていなかった。だから幼き頃の私は、今なら追いつけると思って何年も修行してきた訳なのだが。


「___うん、起動に問題は無いわね」


 試しに少しだけそのアイテムに魔力を与えて試運転をしてみたが、それに異常は見られなかった。

 ___これならいける。そう確信した私は、あの憎きクイックラビットに·····否、クイックラビットではなく、その超上位互換である激レアモンスター、ヴァランノペウスコニーを捕らえることを固く決意する。


「ヴァランノペウスコニー·····クイックラビットの何倍も生息数が少なく、捕まえるだけでなく、それを視界に捉えることすら不可能だとされる速さを持つ、出会っただけで超激レアのラビットモンスター。今となってはクイックラビットは見つけることが出来れば捕まえるのは容易だけど、ヴァロンノペウスコニーとなると私も捕まえられるかどうか·····。でも、やるしかないんだから」


 きっと、それらを売れば大金がざくざく稼げるだろう。多分、宝貨5枚も夢じゃない。とはいえ、それはヴァロンノペウスコニーを複数匹捕まえて、の話であるが。


「でも、やるって決めたんだから。レオン捜索の足がかりとするためにも、やってやるわよ!!!」


 私はそう意気込んで、すっくと立ち上がる。私とあのラビットとの、戦闘開始だ。これは、れっきとした闘いだ。多分。

 全ては、宝貨5枚分のため。今これで集められないと、他に集める手段がない。

 だから、私はこれに全てをかけなければならない。これは、賭け事でもある。


「さて、じゃぁ向かうはネスタルチア近くの大森林、エヴァエル大森林ね」


 そう呟いて、私は颯爽と歩き出す。もう日も落ちて、あたりは薄暗闇だ。でも、それは今私にとってとても都合がいい。狙うは夜の、真っ暗闇の中。私は暗視効果を魔法で付与して、目的地に向かっていった。



◇◆◇◆◇◆◇




「えぇっと·····?」


 無事目的地に着くことが出来た私は、普通だったらすぐ先も見えない森の中を躊躇なく入っていく。

 暗視効果はずっとついているから、周りからはそう見えても、私には晴れの日の昼位の見渡しの良さである。

 そのまま私は静かに靴音を立てながら歩いていき、かなり森の奥深くまで進んだ。冷たい風が私の頬を撫で、周りは静寂に満たされているため緊張感を覚えさせる。


「______。」


 私も出来るだけ音を立てず、相手の出方を伺う。___正直、1匹目はもう既に検討がついているのだ。森の中腹部辺りからずっと自分の周り数百メートルに探知をかけており、一番反応の強い場所に向かっていた。


(ここか)


 ついに、ヒーラは歩き続けていた足を止める。思わず彼女はにやけるように頬をほんの少しだけ歪めた。____それは、勝利するという絶対的なまでの確信がこの少女の心を支配したからだ。


「___________ッ」


 足に力を込める。ザッと、足が土の地面を擦る音がなり、それを合図に狩りは始まる。

 私はすぐさま、自分の指にハマっている指輪を生命反応のある方に向け、敵の存在に気づいて驚いたモンスターは、即座に尋常ではないほどのスピードをつけて飛びさろうとする。

 しかし_____、


「無駄よ!」


 その叫びが森に木霊する時には私はもうモンスターの前に先回りしており、それと同時に突き出した指輪はたちまち光だした。


「________ッッ!?」


 モンスターは声にならない叫びをあげ、しかし必死に抵抗しようと、向きを変えて瞬足で飛び去っていく_____ことは叶わなかった。


「___ふ」


 思わず私は笑みをこぼす。モンスターは逃げざる前に、指輪の光にあえなく呑まれそのまま姿を消した。

 そして、沈黙が訪れる。___ついに、成し遂げた。10年以上前、私が1匹も捕まえられずに惨敗したクイックラビットの超上位互換、ヴァロンノペウスコニーに。

 無事狩りは成功し、モンスターが入っていった指輪を見つめる。


「これ、指輪に変形できるのよね·····。というか、こうして使うのが本来の使い方らしいけど」


 そう。このマジックアイテムは、元々は箱の形だが指輪に変形できるのだ。そもそも、人の頭ほどはある大きな箱を持ちながら超高速のヴァロンノペウスコニーやクイックラビットを捕まえようとする時点で愚策すぎた。まぁ力は発揮はできるのだが、重さも中々のものを持ちながらにすれば勿論スピードが落ちてしまう。

 昔はそれがわかっていなかった。というより、このアイテムの使い方を多分大丈夫だろうという謎の自信により誰にも聞かなかったことがあの任務失敗の根本的な原因といえる。

 だから、哀れにも重々しいそれを持ちながら作業をする羽目になったのだ。単なる知識不足。幼かったとはいえ自業自得と言える。


「まぁそれはともかく·····。良し、この調子で2匹目いきましょうか」


 おそらく、ここからが大変だ。1匹目を捕らえて感じは掴めた、しかし2匹目は今回のように行くかどうか分からない。とはいえやるしかないのだが、森の異常は意外と速く広範囲に伝わるようで、時間をかけすぎるとモンスター達は警戒を最大レベルまで引き上げ捕えられる確率が非常に下がる。

 だから、スピード勝負。物思いに耽りすぎるのは良くない。


「____よし」


 ということで、もうモチベは充分だと思って気持ちを切り替え、再び、今度は1キロ範囲で探知をかける。

 多くの反応がある中、慎重にあのウサギの反応を探し出していく。


「_____。」


 ここより東にそれらしき反応を見つけた。大体の目星をつけた私は、1回目の時のように歩いて近づくことはせず、ほとんど無音で颯爽と走り出した。

 これでも魔王幹部のNO.6。絶対的な存在である魔王を除き、魔族の中で6番目に強い魔族がこの私。

 ______その実力の端くれを、見せてやる。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「___それで?昨晩中ずっと居なかったみたいだけど、一体どこにいたの?」

「それは、ね、うん·····。」

「______?」


 なんか、確実にヒーラの様子がおかしいのだが。ふと気づいたら紫の変な指輪を付けているし、凄く疲れているように見えるし、何があったのか気になることが多すぎて何から聞けばいいか迷ったほどだった。


「_______まさか」


 そこで、ハッと頭の中を昨日ヒーラが言っていた報酬の目星についての話を思い出す。もしかしなくても、それとなにか関係があるのではないだろうか。

 そう確信した私は、再び質問を彼女にした。


「ヒーラ、昨夜何してたのか知らないけど、まさか報酬の件で?」

「!」


 その質問に、ヒーラはぴくっと一瞬身体を震わせる。図星のようだ。私も、その件については気になっていた。

 一体彼女はどうやって宝貨5枚分を賄うのか。私には検討すらつかなかったが、その方法を聞けるチャンスだ。


「じゃあ、それで宝貨5枚分を賄える、そういうこと?」


 ヒーラは少し黙っていたが、その後こくと頷いて口を開けた。


「多分、ね。どっちみち、道具屋辺りに値段を聞かないと」

「___いくらで売りさばけるか?」

「そ」


 そこでふぅとヒーラはため息をついて、私のもとを離れようとする。


「道具屋に行くの?」

「えぇ」

「___なら、私も行く」


 特にやることも無いのだ。とりあえずま今は、ヒーラについていくことにする。それにヒーラはこれといった反応は示さず、靴音を立てながらその道具屋に向かっていった。


「___すいませーん」


 私たちがいた場所からここの道具屋はさして距離は離れておらず、案外すぐに着いた。早速店員を呼び、品定めをと思っていたのだが____。


「あの·····すいませーん?」

「_____あん?んだよ、てめぇ」


 ヒーラはすこし気まづそうに再び声をかける。


 凄く、ガラの悪いおじさんが居た。緑色の帽子を被り、チリチリとして茶髪で白のTシャツと薄茶のズボンに薄濃緑の工具用エプロンを身にまとっている人だった。

 目つきは三白眼。今にも罵声をあびせて飛びかかってきそうな雰囲気を漂わせている。

 見たところ店主のようだが、あまり見ない風格を漂わす店主だ。まぁ別に、今回の目的が達成できれば特に困ることもないので良いのだが。


「あのー、これらの鑑定をして頂きたいのですが」

「あぁ?うっせぇな、一昨日来やがれ」

「なんだと??」


 店主の暴論にヒーラはそいつに掴みかかりそうになるが、私がそれを引き止める。ヒーラが怒りに任せてもしこの人を殴りでもしたら店主が死んでしまう。


「ヒーラ、怒りを抑えて。今はそれの鑑定が必要なんでしょ」

「そうだけど·····。店主の癖してガラ悪すぎでしょこいつ·····。」


 ヒーラは私にしか聞こえないような声量で店主の愚痴を零す。まぁガラが悪いのは肯定するが、今そうやって感情的になっている場合ではないのだ。


「ああでも、私感情ないんだった」

「何1人で呟いて何1人で納得してんのよ·····。」


 隣から呆れ混じりの言葉が私の耳に届くが、それを軽く流す。まあ多分、それで正解だ。


「いやほんと、てめぇら二人揃って何ボソボソと·····。そんなことするのが好きならとっとと帰りな」


 その場面に嫌気がさした(いや元々嫌気はさしていたのかもしれないが)店主はそう私たちに言い放って席を離れようとした。それをヒーラは慌てて止める。


「あ、ちょっと待って!これ、結構凄いのよ!!」

「嫌だね。出直しな。今日は気分がわりぃんだ」


 私たちの話に全くと言っていいほど耳を貸さず、とんずらしようとする店主。それは、結構困る。

 何とかして止めようとするが、この感じだと何を言っても___。


「こうなったら、奥の手ね」

「?奥の手??」


 ヒーラはまだ考えがあるようで、ニヤッと笑う。そうして店主が部屋の奥に消えるかと思った時に、


「___宝貨5枚分の、価値があるものだとしても?」

「_____。」


 そこで、ピタッと店主の動きが止まる。あれ、でもこれって______。


「ただ金で釣っただけじゃ」

「うっさいわね!なんだかんだそれが一番効くのよ!!」


 そう2人は囁く。まぁ実際これであの店主の動きは止められたわけだし、万々歳と言えよう。

 しばらくだった後、店主はこちらを振り向いて、問いかける。


「そりゃあ一体、どういう事だ?嘘じゃねぇだろうな?」


 その問いかけにヒーラは再び頬をゆがめて、


「さぁ。だって、実際にはどれくらいの価値があるかを見るために、ここに来たんですからね」

 

 そう言って悪戯っぽく笑う。店主は数秒黙った後、はぁとため息をついて、元の位置に戻った。


「___見せてみろや」


 どうやら、店主の引き止めには成功したらしい。ヒーラはパァァァァっと表情を明るくして、


「そうこなくっちゃ!」


 と叫んだ。とりあえず、これで大丈夫だろう。あとは、ヒーラの用意した何かがどれほどのものか、だ。

 ヒーラは早速自分の指に嵌めていた指輪を取り外し、それに力を込めた。何をしているのかと彼女へ視線を移したが_____、


「!!」


 私と店主は驚愕に呑まれた。なぜなら、途端にヒーラの指輪が妖しく光だし、そこから3匹のラビットモンスターが姿を現したからだ。


「モンスター?」

「____っ、これは·····。」


 私と店主は、それぞれの反応を見せる。そしてそれを、ヒーラは勝ち誇ったような笑みで話し出した。


「ふふ、どーう?これは、紛うことなきヴァロンノペウスコニーよ!!」

「マジかよ·····。こいつは·····。」


 満面の笑みであるヒーラの目の前で、店主は手を小刻みに震わせながら、動かないそのモンスターを実際に手に取り、確認する。

 そしてそれが本物であることを確認すると、ゆっくりと受付机の上に置いた。

 店主さっきの態度とは真逆で、彼の顔は真っ青で血の気が引いていた。そして、ブツブツと独り言を呟いていた。


「ガチじゃねぇか、なんでこんなガキが·····。」

「聞こえてるわよ、私をガキ扱いしないで!」

「それにしても、こいつらどこで捕まえたんだ?」

「後で覚えときなさいよ·····。」


 ヒーラは自分の憤慨に全く相手されなかったことに不満とさらなる怒りを覚えるが、ここは我慢と己にいい聞かせて脱線しかけた会話の路線を元に戻した。


「おほん。で、そのウサギをどこで捕まえたか、だっけ?あいつらを捕まえたのは、エヴァエル大森林よ」


 そこで店主は眉を顰めるが、少し考える素振りを見せたあと納得したように頷いて、


「__あぁ、エヴァエル大森林。確かに、本当にごく稀だが、クイックラビット、そんで更に確率は低いがヴァロンノペウスコニーも出るという話は聞いたことがあるな」

「そう。だから、それに賭けたのよ」

「____もしそれで、いなかったらどうするつもりだったんだ?てめぇ」

「相変わらずの口の悪さね·····ま、いなかったらその時はその時、って思ってたからね」

「はぁ??·····めちゃくちゃだな、おめぇ」


 ヒーラは妙に自信ありげにニヤニヤしてその先の店主の言葉に反応は示さず、店主はずっと顔を顰めたままだった。

 確かに、ヴァロンノペウスコニーはとてもレアなモンスターであることは、私も知っている。そして、それが出現する確率は限りなく低いものであることも。でもそれなら、ヒーラはもし獲物を見つけられなかった場合、どうするつもりだったのだろうか。まぁもし、そかに何かあてがあるのだとしたら、きっとそれに頼っていたのだろうが。

 あいにく私はそのもう1つ何か頼れるものも分からないからなんとも言えないが。


「ま、それはいいでしょ。後もうひとつ、ヴァロンノペウスコニーだけじゃなく、この指輪も鑑定お願いするわ」

「___それは、マジックアイテム、だな?」

「そう」


 そこから店主はその指輪の形をしたマジックアイテムもじっくりと眺めた後、ヴァロンノペウスコニーから鑑定を行って言った。


「始めるぞ。___デテクト」


 店主はそれに手をかざし、緑の淡い光に包まれた。___探知魔法か。探知魔法は2つあって、低級魔法はサーチ、上位魔法はデテクトとなる。サーチはともかく、デテクトはそういう道を極めないと中々習得が難しい魔法だ。


「·····傷が内にも外にも全匹ないな。そんでやっぱりヴァロンノペウスコニー·····。かなり高く売れるぞ」

「大体いくら?」

「そうだな·····。宝貨3枚分と言ったところか」


 ___宝貨3枚分。あと2枚分あれば、報酬の件は解決しそうだ。あとは_____。


「後は、この指輪だな。___デテクト」


 再び店主の手から緑色の光が発光し、指輪を包んだ。というかこの指輪からあのウサギが出てきた訳だが、一体あれはなんなんだろうか。


「____これ、なんだ?」

「え?」

「だからこれは、なんだ?マジックアイテム、としか表示されないんだが」

「·····どういう、事·····?」


 __何も表示されないとは、どういうことだろうか。デテクトを使っても、何も表示されないというのはかなり変である。

 だからこそ、ものすごい違和感を覚えるのだが·····。


「これ、どこで手に入れたものだ?」


 店主はそう問い質し、ヒーラはうーんと唸る。そこで何かハッと思い出したように顔を上げ、納得したようにして叫んだ。


「あ、これはジュリ·····、先輩に貰ったものだから、もしかしたら____。」


 私たちが上位魔族と知られるとちょっと不味いことになるので魔王直属の配下であり管理部隊隊長であるジュリアの名を出す訳には行かないのだ。ヒーラは危うく言いそうになったので私が注意喚起で鋭い視線をぶつける。

 そしてそれに気づいたヒーラはすぐに言い直し、その先を言おうとするが、それは店主が口に出した。


「多分そいつがこのアイテムの製作者で、名付けをしていない·····か。っち、めんどくせぇな」


 店主はそう言って舌打ちをする。まぁ確かに、その可能性がいちばん高い。それにジュリアは、生成系の能力を持っていたと思うから、これを作ることも可能だろう。

 そして、なにかアイテムを作った時、名付け、つまりアイテムの名称を付けることでデテクトを使った時に表示されるようになるのだ。まぁ、登録に近いのかもしれないが。

 だから、アイテムを作る時職人たちは出来上がったあと名付けをするのが鉄則なのだが、どうやらジュリアはそれをしなかったらしい。まぁ、個人製作者の間では、よくあることではあることなのだが·····。


「鑑定には、何も分からないんじゃ困りものだね·····。」


 これじゃあ鑑定も何も無い。どうしたものかと、頭を抱えて悩むところだったのだが___。


「このアイテムの所有権、調べられる方法ってある?」


 そう急にヒーラは呟き、それに反応したのは店主だった。


「__あぁ、まぁ調べることは出来るが·····あぁ、所有権がおめぇに移ってたら、おめぇが名付けをするってことか?このアイテムに」

「理解が早くて助かるわ。ま、そういうこと」


 ヒーラはそこでニヤッと笑う。いや、というか殆どずっと、この道具屋に来てからニヤけたままである。

 それを聞いた店主は、少しだけ考える素振りを見せてから、


「___デテクト・オーナーシップ」


 そうして、店主は魔法を唱える。さて、製作者であるジュリアに所有権があるのか、それともジュリアがヒーラにアイテムを渡した際に、所有権をヒーラに移したのか。

 答えは実は、ヒーラにとっては分かりきったことであった。


「ふむ、ヒーラ、だな。おめぇ、名前は?」

「ヒーラよ。___だから、所有権は私ね」


 このアイテムの所有権は、ヒーラであった。恐らく、ジュリアはヒーラにこれを渡す際、所有権をヒーラに移したのだろう。まぁつまり、これの名付けは彼女が出来るということ。それならば、すぐやってしまった方がいい。

 その考えは彼女も同様で、早速そのアイテムに手をかざした。


「じゃあ手早く行くわよ!!そうね·····名前は·····。」

「名前って、何か決めてるの?」

「いや、まだ·····でも、そうね·····。うん、これよ!」


 _____ゾワッ。そこで、嫌な予感が私の背中を駆け抜ける。急になんでだろう。______。

 そこで私は思い出す。そうだ、ヒーラは_____。


「待って、ヒーr」

「貴方は、"ウサモン・捕まえ・ラレール”よ!!」

「_______。」


 あぁ、遅かった。もう手遅れだ。私が止める前にもう名付けをしてしまった。ヒーラのかざした手から桃色の光が淡く発光し、それに呼応するようにマジックアイテムも光った。

 それらの光はすぐに消え、アイテムの名付けは終了する。こうすると、もうやり直すことはできない。

 まぁ、もうこうなってはしょうがないだろう。どうせ、ヒーラを見た感じ売るんだろうし。

 それにしても_________。


「相変わらずのネーミングセンスだね、ヒーラ」

「だな、ああはなりたくねぇな」

「ん!?嘘、結構自信あったのに。何が変だったっていうの·····?」

「もうそんなこと言ってる時点でダメなのを自覚しろよ·····。」


 そう言って呆れる店主。私も半ば呆れている。いや、と言うより私はもう気にするのを辞めたの方が近いかも。

 まぁネーミングセンスはともかく、とにかくこれで詳細が分かるようになった。なら、もう見てしまった方が良いだろう。


「まぁ取り敢えずこれでもう細かいことはわかるようになったから、店主、見てください」

「おうよ」

「うぅ、解せないわ·····。」


 ヒーラはなんだかブツブツ呟いていたが、2人は特に気にせず鑑定を進めた。すると____、


「デテクト。___ふむ、ウサギモンスターを捕らえる専用の魔法道具(マジックアイテム)·····か。普通なら数種類しか捕らえられねぇもんは大して役に立たねぇから価値は低いが·····。ヴァロンノペウスコニーも捕らえられるとなると話は違うな。___これを作ったおめぇの先輩とやら、かなりの凄腕だな」

「__まぁ、生成系の達人だからね、あの人は」


 ウサギモンスターを捕まえるためだけに使う、マジックアイテム。確かに生成難易度は高いが、なぜそれをあのジュリアが____。


「それで、これは大体どれくらいになる?」

「ふむ、俺の見立てで、だが___少なくとも、宝貨2枚分はあるんじゃねぇのか」


 宝貨1枚分。つまり、先程のヴァロンノペウスコニーで得られるかもしれない宝貨3枚分と合わせれば____、


「宝貨、5枚分·····。」


 私がそう呟いたあと、ヒーラはより一層口角を上げて、達成感に見舞われていた。


「よっし、ギリギリ足りたわね!!フレア、これで多分報酬の件もう大丈夫よ!」

「___うん、そうだね」


 とりあえず、これで取り敢えず道具屋での用件は済んだ。後は、この後よろづ屋に寄って、そしてここで鑑定してもらったものを使って捜索を頼めばひとまずやることは完了だ。

 後は、成り行き任せである。


「っは、用が済んだならとっとと帰んな。邪魔だ」

「本当に、最初から最後まで全くもって態度が変わんないわね·····。」

「はん。どうだっていいだろ、そんなもん」

「あーはいはい。鑑定ありがとう、それじゃ失礼するわね」

「ありがとう」


 私とヒーラはお礼を言って、道具屋を去ろうとする。店主は特に何も言わず、そのまま私たちを見送っていた。


ちなみに。


(にしても、あれの所有権が私だったのって、多分あれジュリア様の失敗作だったからよね·····あの任務の後、それ大して役に立たないから好きに使っていいって言われたやつだしな·····。だからどうせ後々これもう使わないから売っちゃえと思ったけど·····。)


「はぁ、次元が違うとはいえ同じ幹部なのに·····怖いわぁ」

「え、急にどうしたの」


 と呟くヒーラの心情は、最後の方しか分からなかった。




◇◆◇◆◇◆◇◆




「いやー、いい感じに収まって安心したわ〜」

「これで目標達成だね」

「そうねー、よし、じゃあよろづ屋に向かいましょうか」

「うん」


 ヒーラはもうすっかりにこやか笑顔で、朝のゲッソリ顔はどこか彼方にいってしまっていた。

 まだまだ時間帯は昼前。おそらく昼をすぎる前に、よろづ屋に捜索を頼めるだろう。

 早いことに越したことはないから、少しだけ早足でよろづ屋へ向かう。ここからあの店へは、ちょっと距離があるのだ。


 そして________。


「こんにちはー、ロアさんいますか?」


 甲高いドアの音を立てながら、ヒーラはここの店員と思しき人物の名を呼ぶ。

 そしてその数秒後、部屋の奥から返事の声が聞こえてきた。早速、捜索願いを______。

 ·····ちょっと待て。なんだ、この、この·····、


「壁·····。どうなってるの·····。」


 なんか色々な物が壁にごった返しているのだが。ガラクタが沢山貼られて(?)いる。気にしちゃいけない系だったか。


「あー·····。それはね·····。」


 ヒーラからその後簡単な説明を受け、一応納得した。というか、ちゃんと考えるのが面倒くさくなったので納得することにした。


「ま、まぁそれはそれとして、えっと、ロアさん、ですよね?捜索願いをしたいのですが·····。」


 私は話を切りかえて、あまり無駄話をすることはやめて本題に入る。だがその先、思いのほか話は早く進んだ。


「はい、前日そちらの方からお話は伺っております。__あのそれで、資金の件なのですが」


 ロアさんは聞きずらさそうに、とはいえ商売として聞かなくてはならないことを聞く。しかし、そのロアの心情とは裏腹に、ヒーラは晴れ晴れとした表情で、それを提示した。


「ヴァロンノペウスコニー3匹と、ウサモン・捕まえ・ラレール、道具屋の見立てだと宝貨5枚分!!どう!!?」

「!?ヴァロンノペウスコニー!?そんな激レアな·····。いやまってください、そのウサモン・捕まえ・ラレールってなんですか」


 ヒーラが名付けたアイテム名にツッコミを入れる彼女。まぁやっぱり、気になりますよね。ただその名前を名付けたヒーラは、全くその自覚がないようだ。

 ロアさんも特に聞くのを辞めたようで、話の進行に務めた。


「まぁ、そうですね、十分だと思います·····。では、捜索についてですが____。」

「ロア!!ロアはいるかぁ!!」

「!?はい、ロアはここに·····って、ムギル!?」

「___、ムギル?」


 バンッと勢いよくドアを開けた音が店中に鳴り響き、話を進めようとした所を、ここに訪れた訪問者がそれを遮る。見たところ、ロアさんと知り合いのようだが___。


「ロア!!___お前の父さんが、危ない!!」

「____え?」


 ロアさんの、お父さん?その人に、何かあったのだろうか。ただ事ではないことはすぐ分かる。問題は、具体的に何が起こったのか、だが____。


「お父さんに、何があったの」


 ロアさんは心配と驚きに震えた声で、ムギルさんに事の顛末を話すよう促す。ムギルさんは汗をかき、青ざめた顔でそう、叫んだ。


「お前の父さんが___攫われた!!!!」


 と。

 ______あぁ、何故、こういう時に限って問題事が次々に起こるのだろうか。

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