第23話 優秀な魔法使い
ハイラとヨネが部屋から出ていったあと、気づけば私はベッドの上に横たわっていた。いつの間にか、寝ていたらしい。道理でその後からの記憶が無いわけだ。
「_________。」
なんと底抜けなと自分を戒めながら、むくりと体をおこして地面に足をつき、そのままぴょんとベッドから降りた。
時間を見ようと窓を見ると、まだ太陽が昇り始めるときで、見た感じ早朝のようだった。
これから一体どうしたものかと頭を悩ませる。ハイラの言う通りにするならば、私はどっちにつくかを考えなければならない。もうどっちにしろ、どっちにもつかずこの国から出るという選択肢はないのだ。レオンがいる今、ここから離れるというのは愚策すぎる。
だから私は、レオンとハイラ達が動き出すその短い期間の間に、どちらかにつく、という理由を見つけださなければならない。
そのためには、ここでじっとしているだけでは何も見つけることが出来ない。だから自分で理由を、そう決意するためのものを見つけ出すために動かないといけないわけなのだが……。
さてはて、どうしようか。そう考えていると、トントンとドアを叩く音がして視線をそっちに飛ばした。
「フレア様。いらっしゃいますか?」
ドアの向こうから聞こえてきた声は、シュベリーだった。こんな早朝からもう仕事を始めているのだろうか?
「いる、けど……。こんな朝早くにどうしたの?」
「朝食を持ってきたのですよ、お客様」
「_______?」
お客様?確かに私は今まで、超級モンスターに襲われているリベリカを救い出し、その礼のようなものでこの城に滞在していたわけで、客という扱いにはなるのだが……。だが、シュベリーにそんな呼び方をされたことは無い。少しの違和感を覚えて、話の続きを促す。
だがシュベリーが次にとった行動は話しかけることではなく、「失礼します」と前置きしてから扉を開けることだった。
「はい、どうぞ。食べ終わったら扉の横にある穴に入れてくださいね。魔法で転送され片付けることができますから」
「う、うん……。でも、なんで……。」
シュベリーは淡々と食事の説明をする。私はそれに追いつけず、なんで、と言ってしまった。この数時間、なんでを何回言ったのだろう。
すると、その問いにシュベリーは食事を傍のテーブルに置くために少ししゃがみ気味だった体を起こし、丁寧に説明してくれた。
「貴方のことは、ハイラ様から簡単にですが聞きました。私は正直反対派でしたが、ハイラ様の意見はご最もでしたし。ということで、これから少しの間は貴方をお客人として扱うこととなったのですよ。一応、滞在中の城の出入りは自由ですよ」
ハイラはあの後、皆に私にあった出来事を所々抜粋しつつ重要な部分だけ伝えてくれたらしい。最初はどよめきが走ったようだが、後々皆理解してくれて、私は客人という扱いになったようだった。それについては有難いが、今はそれよりも、納得できない部分がある。
「城の出入りは自由って……。」
「きっとあの時ハイラ様も仰られたでしょう?あなたは今、これからどうしていくのか、いえ、どうして行きたいのかを決めなければならない。それなのに城の中に居るだけでは決めにくいでしょう」
「_____________。」
いくら私がもしレオン側についたとき、ハイラが責任をとると言ったとしても、みんな、お人好し過ぎるのではなかろうか。なんで会って間もない私のためにそこまで出来るのだろうか。
…………否。違うか、と考え直す。私も、1年も話していないレオンとまた再会するために、世界を渡り歩いている。だが、これはお人好しという訳では無い。全く意味が違う。
ハイラ達は、完全な気遣いなのだ。それは、私とはまた違うもの。
なぜここまでしてくれるかは分からない。でも、お礼は言わないといけないと思う。
「…………ありがとう」
だから、お礼を言った。気持ちではシュベリーだけでなく、ハイラ達にもお礼を言うように。
シュベリーは特に何も返答をしなかったが、お礼をしてから部屋を出る。その時に一瞬見えた表情は、ほんの少しだけ微笑んでいた気がした。
◇◆◇◆◇◆◇
「みんな集まったか?」
時は朝食を終え、太陽もすっかり上がった頃。カーシックを含むフレアを除いた計10人は、再び談話室Eに集まっていた。
ヨネが何か進展があったとの話で、2回目の会議をしようということになったのだ。
ヨネはもう先に席に座っていて、最後に座ったのはマゾベルだった。カーシックがそれを確認すると、フレアの今は誰も座っていない席に視線を少しの間向けるが、すぐ戻した。
「フレアの件はハイラから聞いたから特に何も言わないが……。では、会議を始める。ヨネ、進展とはなんだ?」
「……はい、国王陛下」
この会議を開いた要因となったのはヨネ。進展があったのかと、みんな少し気分が明るくなり、ヨネの発言に耳を傾ける。
すると、ヨネは少し緊張しているのか弱々しい声で返事をして、席から立ち上がって、話し始めた。
「進展の件、なのですが……。敵のアジトを、見つける手がかり、を掴み、ました」
「____なんだと?」
敵のアジト発見に繋がる手がかりを掴んだと聞いて、談話室にどよめきが走る。やったなと嬉しそうに喜ぶ者と、どうやって、とその方法が気になる者たちで反応は2択に別れていた。
ラギーは方法が気になる側のようで、ヨネにその方法を聞いた。
「でも……。どうやってっすか?何か、ヨネの魔法でっすかね?」
と聞くと、ヨネは首を振った。それにラギーは首を傾げるが、
「違う。昨夜、レオンの魔力を、取った。それだけ。でも、これを上手く活用、すれば、敵がどこにいるか、分かる、かも」
最後の方は期待と希望が混じって少しだけ力強い声音になる。それにラギーはなるほど、と納得したように頷いた。だが、サラは違う反応を示した。いや、普通はその反応が正しいのだ。
「相手の魔力を取ったんですか……!?それ、物凄い高等技術なのに……どうやって……。」
サラは顔を青ざめて、ヨネを見つめている。ヨネは特に反応を見せず、普通にしている。つまり、これはヨネにとっては当たり前にできる技術だと言うこと。ハイラやリベリカ達にも、感嘆の声が上がった。
「まぁ、ヨネは魔法使いの中でもとても優秀な子だからね〜」
「そんなこと、ない、よ。もっと凄い人、いっぱい、いる」
そうヨネを褒めるアメリアの言葉に、ヨネは謙遜する。アメリアは「もっと自分に自信持った方がいいわよ?」とヨネに語りかけるが、ヨネは首を振った。どうも、ヨネの中の自己評価は低いようだ。
「まぁでも、よくやった。後は、その魔力を使ってどうするかだな」
カーシックはズレそうな話を元の軌道に戻して話を進める。それに反応したのは、マゾベルだった。
「ならば、わたくしが。特定してみせますよ」
「____大丈夫なのか?」
「昨日も言ったはずです。出し惜しみをしていれば、大事な機会を逃してしまいます」
マゾベルは自信満々にそう宣言し、カーシックはなにかの意味を含んだ様子でマゾベルを心配する。しかし、マゾベルは固い決意を含んでそうカーシックに説得した。
それに押し負けた様子で、カーシックは
「分かった。じゃあ、頼むぞ」
とマゾベルに魔力の件について頼む。するとマゾベルはゆっくりと微笑みながら頷いた。
「ヨネさん、その魔力、貸してくださるかしら?」
「国王陛下が頼まれた、のなら……。どうぞ。でも、どうやって」
ヨネはマゾベルに具現化したレオンの闇色の魔力を渡す。しかし、マゾベルがどうやって場所を特定するのかはみんなの疑問となっていた。
「能力ですよ。____私は霧に関する能力を持っています。私の持つ能力を応用すれば、場所の特定も可能です」
そうマゾベルは自信ありげに答える。そう言えば昨日の自己紹介の時、自分と同じ能力持ちだと言っていたなと思い出し、席に座る。
それを合図に、カーシックは話を切りかえた。
「__。では、その件についてはマゾベルに頼むとして……。これから俺たちは、敵のアジトが分かった前提で、その先どうするかについて話していこうと思う」
それにみんなは頷く。そしてそれから、その後の話し合いは長きに渡った____。
ちなみに私フレアはと言うと、なんとなく街に出ていた。昨日一部で停電していたというのもあり、街の人達は警戒しているのか人通りは少ない。だが、私にとってはその方が良く、ふらふらと街を眺めていた。未だ、どっちにしようか全く検討はつかない。
だが、長すぎず、でも焦りすぎず、私は私の答えを見つけなければならないなと、そう思いながら特に行先もなく、ひたすら街を歩いていいった。
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