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新世界に魔法を  作者: みかんグミ
第一章『王都編』
19/37

第17話仲間集め

「えじゃあ、ここの世界が、フレアが初めて来た場所、ってことなの?」

「いえ、えっと……」


 リベリカがそう尋ねるが、私は何個目の世界だったかと頭のなかで数え……。


「12、ですかね」

「12!?」


 リベリカが顔を青ざめてそう叫ぶ。

 そう、確か12だ。あとから知ったのは、私が生活していた世界と比べ敷地範囲が狭い世界もあるということ、そして世界は星の数ほど存在しているということだ。正直人間よりかは長生きできるとはいえど、生きている間に全てまわれるか、そしてその間にレオンを見つけ出すことができるか、かなり悩んだものである。

 そのため、数えるのも面倒くさくなり、やめた。だから頭の中で思い出しながら数える必要があったのだが……。

 ここに来る前の世界では、移動するときになにか見た目がやばいモンスター(?)に襲われたので、しかもそれがかなり強かったこともあってボロボロ&意識朦朧の状態で逃げるようにこの世界に来たのだ。

 ひたすら疲れていたので、周りが森など気にせず意識が遠のくままに従おうとしたのだが。

 まさか、この世界の一番偉い王族に拾われるのは予想外過ぎた。だが、なんだかんだ願う形ではなかったもののレオンとの再会を果たしたし、当たりではあったのかもしれないが。

 だから、それらのことを王室にいるリベリカたちに話した。ハイラは息を呑み、リベリカは沈黙を通し、カーシックは何かを思案する表情を見せ、サラは不安と恐怖が混じる感情をその瞳に宿していた。

 だが、王室に流れた冷たく、そして重たい空気による硬い沈黙は長く続くことはなく、それを破ったのはカーシックだった。


「……とりあえず、蓄電所の確認に行こう。探知をかけたが、敵の反応は無かった」

「となると、すでに遠くに?」

「おそらく、な。とはいえ、警戒は強めたほうが良い」


 元々堕天使がいた場所に向かうとなると、やはりみな躊躇が表れ、また少し沈黙が訪れる。

 しかし、この中でたった一人だけその躊躇を追い払った人物がいた。


「私、見に行きます」


 たった一人____ハイラだけは、すぐに躊躇を払いのけ、右手を挙げる。そこには、強い決意と覚悟を瞳に宿していた。


「私、行きたいです。堕天使の方が来る前から、私は確認に行こうと思っていましたし」


 最初は少し気圧された者達も、ハイラの言葉を聞いて段々と活気が湧いてきていた。


「_____そうね。……そうよ。姉である私が、ハイラに遅れを取っちゃいけないわ。私も行くわよ!」

「そう、ですね。私も魔法は結構扱えます、堕天使だとしても戦ってお力になってみせます!あれをそのまま放っておくわけにはいきません!!」


 次々に湧いて出た活気が溢れていく。どんどんその活気は膨張していくが、それを止めたのはカーシックだった。


「みんな、とりあえず落ち着いてくれ。警戒を強めるとはいえ、あまりに大勢で出向いてはまだ何も知らない国民の不安を募らせてしまう」

「……なら、どうするの?」

「それは_______」


 カーシックが考えたことを話し始めようとした瞬間、それは叶わず途中王室中に鳴り響いた爆音で遮られた。


「な、何事ですか!?」


 カーシックの話を聞こうとしていた者全員が、カーシックを含め一斉に振り返る。またの敵襲かとすぐ戦闘態勢に入るが、そこに立っていた人物を見るなりみな肩の力が抜けた。

 なぜならそこにいたのは_____。


「はあぁっ、はぁっ……はっ……。ハイラ様、リベリカ様、そして国王陛下!!!つい先程巨大な魔力がここにぶつかったのですがご無事でございますか!?」

「___ッ、シュベリー!」


 そう、そこで扉を勢いよく(とても)開け、息を切らしてそう叫んだのはシュベリーであった。

 メイド服や髪の毛も少々乱れ、かなり急いでこちらに向かってきたことが分かる。

 そこには、濃い緑の目に、鋭い何かが薄く写っていた。


(シュベリーって確か、ハイラと一緒にいたメイドさん……?)


 確か、私とハイラが王都を散策していたときにこっちに全力疾走してきたのがおそらく同一人物である。

 どこかで見たかと思ったら、その人だった。


「シュベリー……。大丈夫だ。こちらの被害はない」


カーシックは少し驚きながらも、そう返す。するとシュベリーら腰まで伸ばしたピンクのストレートヘアーを揺らすのをやめ、深呼吸して周りを見渡す。


「そ、そうですか……。無事、ですね……よかった……」

「ほら、厨房台までかなり距離あったんだからゆっくり休む!」

「で、ですがリベリカ王女、こんなことが起こった後では休憩など___!」

「はい、休む!!」

「えぇ!?」


リベリカとシュベリーは長い付き合いなのか、親密な態度で話している。どうにも、シュベリーのリベリカに対する忠誠心はかなり高いようだ。

だがシュベリーの高い忠誠心は、リベリカだけではなく_____。


「良かった、シュベリー、貴方も無事なのね」

「!!ハイラ王女!!ご無事でなによりです……!」


2人は互いの無事を確かめ安堵し、笑っていた。シュベリーの忠誠心はハイラにも向いているらしい。

まぁ、メイドなのだから当然といえば当然なのかもしれないが。


「シュベリー」

「……っ、はい!国王陛下」


そこへ、話の区切りをつけるようにカーシックがメイドの名を呼ぶ。


「お前には話しておく。とりあえず、さっきの出来事についてだ」

「___、はい」


そうしてカーシックは簡潔にさっきまでの出来事を、私の過去を除いて話し、シュベリーの目には理解の色を宿した。

カーシックは、私に気というものを使ってくれたのだろうか。


「そんなことが……。__ですが、堕天使、ですか」


シュベリーは顔を僅かに暗くする。みんな、堕天使という言葉を聞くと辛そうな顔をする。


「国王様。堕天使って、どれくらい強いんですか?」


私はカーシックにそう問う。カーシックは「そうだな……。」と少し考える素振りを見せたあと、


「堕天使は、この世界に存在するとされる全種族の中で、個々の力の順位でトップ5に入るくらいには強い、な。その中で、人間は中の下だから、力量差は明白だ。なんたって種族は全部で20種族あるからな」

「それは、この世界を統べる国、ベルカルの国王でも難しいのですか?」

「__分からんな。とはいえ、俺達みたいな貴族は秘宝武器があるから、絶対に勝てないというわけではない。とはいえ苦戦するのは確実だろう。俺達人間がこうやって国を築いて暮らすことが出来ているのは、上位種族が殆どいないからだな。特に、堕天使以上の種族は伝説レベルだし、まず会うことも無いくらいだ」

「そんなに……。」


あの時初めて会った時に感じた、計り知れないほどの力の威圧に、一瞬怯んだくらいだと言うのに。

それでも、堕天使はそれ相手に苦戦させることが出来るくらいの力を持っているのだろうか。しかも個々で。

あんなに、普通の人間で、これといった力もなく、本当だったら普通に安定した生活をして行けるはずだった子に。

でももう、あの世界に異世界召喚してしまった時点で、ダメだったのかもしれないが。

そう思い1度息を大きく吐いてから、これからどうしたものかと思考を巡らせる。

とはいえ、圧倒的な堕天使の___レオンの存在が、私の脳内を巡る思考の数々を潰していく。


(結局、何も残らないか……。)


最終的には思いついた全ての考えがそれによって潰され、どうすればいいのかよく分からなくなってしまった。


「では、とりあえず、だが」


そうしているうちに、カーシックはまた口を開き、シュベリーの登場によって少し逸れた話題を本題に戻した。


「少し話が逸れたが……、まず、ハイラとリベリカ、蓄電所に確認に行ってもらう。いいな?」

「!!了解です、お父様!」

「勿論よ!」


そのカーシックの指示に、娘の2人は元気よく応答する。だが__。


「国王陛下、よろしいのですか?敵の反応が見つからなかったとはいえ、今考えられる1番の危険な場所に、王女2人だけで出向くというのは___。」


そうサラが問いかける。確かに、王女たちを蓄電所に向かわせるのはかなり危険だが___。


「あぁ、その通りだ。だが、ハイラとリベリカは王国の中でもトップクラスの実力なのと、一応保険もかけてある。」

「え、でもリベリカあの魔獣に殺されそうに……。」

「う、うるさいわね!!アイツは色々と相性が悪すぎたのよ!!」

「___へー」

「何よ!!!!」


正直ハイラはともかくリベリカが王国トップクラスなのはあまり信じ難い話ではあるが、周りの反応を見る限り嘘ではないようだ。


「ですが、保険というのは?」

「これだ。__ハイラ、リベリカ、それぞれ1つづつ持て」

「……これは?」

「手首に巻け。敵対反応、または強い力を持つやつに反応する。そしたら、こっちにもそれが届くから、すぐ分かるようになっている」

「……なるほど」


それは、真っ白なバンドだった。傍から見るとただのバンドにしか見えないが、ちゃんとした性能が付いているらしい。


「蓄電所までも、そこまで距離がない……そう、ですね。これなら」

「なら、まずそれは2人に任せる。とはいえ、警戒を緩めないのと、もしなにか戦闘事が起こったら、無理しないこと。……いいな」


そういって、カーシックの表情が少し緩む。眉は、ほんの少しだけ八の字に近くなっていた。


「えぇ……気をつけて、頑張ります!」

「ん、ありがと」


2人それぞれ別の、でも行き着く先は同じの反応をして、カーシックはそれに満足したように頷く。そして今度は、私とサラの方に視線を向けた。


「あとは、2人だな。お前たちは、別の仕事を任せてもいいか?」


私とサラは目を見合わせる。私たちは、何をすれば良いのだろうか。


「勿論です。……では、私たちは何を?」


そうサラは言って、私とサラはカーシックの方に視線を向けた。


「2人は、人員を集めに行って貰いたい」

「人員?」

「流石に、俺達だけで何とかするのは困難だ。国民のこともあるが__まずは、戦える、そうだな、冒険者を集めて欲しい。」

「___了解しました」


私とサラは頷き、了解の意を示す。戦力は、多くて損は無い。サラもそう考えたようで、準備を始めていた。

そして最後に、カーシックはシュベリーに視線を向けた。


「国王陛下!!私は、何を……!」

「お前は城にいろ。流石にこの場で主戦力になるような者たちを何人も城から出す訳には行かない。シュベリー、お前はこの城の守備を、ほかの騎士たちも集めて頼む。いいな?」

「___はっ、必ずこのベルカル城をお守り致します」

「あぁ。よろしくな」


そこまで話が進んで、シュベリーは1歩下がる。とりあえず、これで全ての役職わけが終わった。


「ではこれにて解散。1時間後、各自仕事が終わったらこの王室に再び集まるように」


カーシックはそう言って、体を翻し、少し早足で王室を出ていく。

さて、私は1時間後以内に人員集めをしなければならない。ハイラとリベリカはよし!と気合を入れながら、王室を出ていった。2人のまだ幼さが残る背中には、その年齢には見合わない程隙がなかった。

シュベリーは気づいたらいなくなっていた。すぐ、仕事に入ったのだろう。

私とサラは視線を合わせる。私達も仕事をしなければ。


「では……えっと、すみません、お名前お伺いしても?」

「フレア、です」

「ありがとうございます。私も改めて、サラです。ではフレアさん、私達も急ぎましょう」

「そうですね」


そう軽い会話をして、私達は急ぎ足で王室を出ていく。

そういえば、冒険者と会うのは、なんだかんだ久しぶりな気がするな、と思いながら。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇




①蓄電所組


「よし、ついたわね」

「特に異常は見られませんね……。」


ハイラとリベリカはぐるりと蓄電所全体を見回す。停電するくらいなのだから、何処か傷ついかている部分があると2人とも思っていたのだが、見たところいつも通りで変なところは見当たらなかった。


「__あ、でも、姉様!濃密な魔力が、まだ少しですが残っています!!」

「__っ、ほんとだ、微かだけど、残ってる……。__これは」

「雷魔法……ですね……。」


そこでリベリカは嘆息する。そして1度大きく空気を吸ってから、先を思いやられながら言った。


「高等魔法……。ほんと、これじゃ勝てる気がしなくなってくるわね」

「!!姉様、そんなことを言っては駄目ですよ!!きっと勝てますって!」

「まぁ、ここはポジティブに行かないとね」

「そうですよ!!」

「といっても……」


ハイラが自身の姉を励ました後リベリカはそう言って、もう一度辺りを見回した。

それに釣られて、ハイラもリベリカの視線の方向に目を向ける。


「……まぁ、とりあえずここはもう大丈夫そうね」

「はい、この辺りに、邪悪な気配は感じません」

「ん、じゃぁ軽く蓄電所の辺りを回って帰りましょうか!」

「そうですね!!」


そう2人は意見を合わせ、コツコツと靴音を鳴らしながら少し早歩き目で蓄電所を回った。


結果的に、全部を見て回ったが、やはり特にこれといった異常はなく、普通のままだった。


「よし、大丈夫ね」

「そうですね。__あ、そういえば」


王城への帰る途中、ハイラは脳裏に浮かんだ疑問を口にした。


「あの、雷魔法ってかなりの高等魔法ですよね?それを受けた蓄電所はただでは済まないはず……。となると、あのレオンという人が直したのでしょうか?」

「うーん、まぁ、あの魔法を直撃させて停電させたのなら、あの異変の主犯が直したんでしょうね。となると、本当に実力者ね。流石堕天使といったところか」


そう言いながら、リベリカはやれやれと首を振った。


「まぁとりあえず、あの堕天使を倒せれば……。」

「うーん……どうだかね」

「?堕天使を倒すだけでは、駄目なのですか?」


ハイラは拳を固めて目標を口にするが、それに対するリベリカの反応は曖昧だった。ハイラはそれに疑問を持ち、それを口にした。

それにリベリカは「えぇ、」と前置きし、


「あいつは言ってたでしょ。……1人じゃ、ないのよ」

「……あ」


そこでハイラははっとして目を少し見開く。

あの時、レオンは"私達”と言っていたのだ。つまり、自分たちの敵は1人ではなく、複数人いるということ。おそらく、それも少人数ではないだろうと。


「__いや、普通に考えれば、単独での行動はあまり考えにくいか。そもそも、敵が1人と仮定していたのがおかしかったわね」

「そう、ですね……。堕天使が現れたことによる驚きと、それの対策に気を取られすぎました……。」


ハイラは、堕天使の存在に気を取られて、当たり前の事にすぐ気づかなかった。

だがそれは、恐らくハイラだけのことではない。敵が攻めてきた際に混乱に陥っては本末転倒なため、そこもしっかり把握したいところではある。


「なら、大体敵がどのくらいいるのか把握したいわね」

「はい!小規模の少数精鋭派か、大規模な軍勢に近いものか、そのどちらかですね」

「そうね、それによって色々対策も変わるから」

「はい、近いうちに調べてみましょう」


そこで2人は今後の方針を決めて再び歩き出そうとするが、ハイラは前に進めようとした足を止める。


「どうしたの?」


リベリカはハイラのいる後ろを振り向き、ハイラの瞳の奥を覗き込むように彼女を見つめた。

ハイラはしばらく下の地面を見ていたが、リベリカの視線に合わせ口を開いた。


「___あの、敵のことなんですが……。」

「うん?」

「____堕天使がいるということは、その人を主犯とした仲間が少数……または大勢いるということ、ですよね」

「……えぇ、そうね」

「…………私、皆さんのお役に立てるでしょうか。さっきまでは大丈夫だったはずなのに、急に怖くなってしまって……。」

「___________。」


それは、この世界で1番である王族の次女としての不安ではなく、まだ幼い13歳の不安であり、恐れであった。

ハイラは戦闘訓練などは受けており、昔からベルカルの王族は代々戦闘に秀でた才能を持っているため、一般聖騎士では相手にならないほど強い。

だが、実戦経験は浅い。幼いという理由もあるが、そもそも実際に戦闘する場面が少なく平和であったため、戦うことがほとんど無かった。

だからこそ、実際戦うとなった時、きちんと行動できるか、堕天使相手に勝てるかといった不安が拭えきれずにいるのだ。

リベリカは数秒沈黙を保った後、口を開いた。


「それは、私も同じよ。私だって、そう思ってる」

「え……」

「何あっけらかんとしてるのよ。私だってまだ15歳。あなたと2つしか違わないのよ」

「…………。」


そこでハイラは沈黙する。そして、少しだけ驚いていた。


自分の姉も、同じ悩みを、不安を持っていたのだと。


己の中で、ハイラはリベリカにとって完璧に近い存在であった。

だが、言われてみれば姉と自分は2つしか年が違わない。まだお互い10代後半にも言っていない子供2人が、同じ悩みを抱えていないはずがないのだ。

逆に、逃げ出そうという思惑が立たないだけ物凄く立派であり、すごいことだと言えるだろう。

だがそれに気づいたところで、やはり悩みは自分の胸の奥でモヤモヤしてしまう。ハイラは何とか自分を律しようとするが、無駄だった。

どうしようかと頭を抱えそうになったときに、リベリカの声がかかった。


「まぁ、そうね。だから、あれよ」

「_____?」


リベリカは何かを伝えようとそれを言葉にしようとするが、中々言葉に変換することが出来ずあたふたする。

しかし、そのリベリカから紡がれる言葉をハイラは必ず聞かなければと本能で理解して、姿勢を正した。

それを見届けたリベリカは数秒目を瞑り、リベリカも姿勢を正した。


「私がいたら、貴方もいる。貴方がいれば、私もいるわ。お父様だって、フレアもいるし、守ってくれるシュベリーだっている。皆で力を合わせれば、きっとなんとかなる」

「________。」

「役にだって立てるわよ。きっとこの戦い、多分私たちの想像以上に大きいものになると思う。ベルカルは、必ず巻き込まれる。だから、これから起きることはみんなで協力していかなきゃならない。そしたら、誰かは必ず何かをやらなきゃならなくなるし、みんなでやれば役にだって立てる。それができる力もハイラにはある。この人生、無駄に生きてきた訳では無いでしょう?」

「……………ッ!」

「なら、大丈夫よ。安心なさい」

「__!!では、姉様も大丈夫ですよ。私より2年多く人生を歩んでいるのですから、私よりそういう力があります」

「ふふ、そうね。妹には負けているつもりはないわ」


ふふ、と2人は静かに笑い合う。その時は、レオンが現れてから数少ない心安らぐ時間で、お互い心から笑った瞬間だった。

お互いの悩みと不安が晴れて心の中が少しだけスッキリした2人は、威勢よく歩き出す。


「______やっぱり、姉様には敵いませんね」


そう誰にも聞こえないほどの小さな声で零したハイラの声は、ハイラより少し前隣にいるリベリカにも届くはずがなく。




◇◆◇◆◆◇◆◇




②戦力確保組


「ここですね」

「ここが、冒険者ギルド……。」


私とサラは王城を出発し、冒険者ギルドの前に立っていた。ここは様々な階級の冒険者が集まる場所である。

とりあえずここで、私達は手がかりを探す予定になっていた。


「久しぶりだな、ほんと」

「来るの久しぶりなんですか?」

「……、はい。色々あって」


今日を除き最後に会った冒険者に会ったのは、まだ自分の世界の探索に出かけていた時のことである。それは数年前だから、年単位で見てないこととなるのだ。


「……そうですか。まぁ何はともあれ、入りましょう」


だがそれについてサラは特に私に聞くことも無く、そう一言言って、木製の扉の取っ手に手をかけた。

ギィィという小さい扉の開く音と同時に、おそらくそれにつけられたであろう鈴のチリンチリンという音がした。


「ここが……。」


私はそう息をこぼす。扉が開かれた後、男性の声(少し女性の声も入っているが)と、少し強めの酒の匂いが私の耳と鼻をかすめた。

サラはお酒の匂いがあまり好きでは無いのか、鼻をつまんで眉間に皺を寄せている。

中は木製の四人席テーブルが空間の半分近くを埋めつくしていて、そこに大勢の冒険者たちが座って酒を飲んでおり、そのテーブルの正面側には「受付」と書かれた看板が立てかけられたカウンターがあった。そのカウンターの中には1つ結びの元気そうな女の子が座っていて、そこに集まる人達の対応を笑顔で行っていた。

この人たちの中に、戦力となってくれる人達が見つかるといいのだが……。

そんなことを思いながら、私とサラは動き出し、どうやって集めるかという疑問を口にした。


「どうやって探しましょうか」

「うーん、そうですね……。まず、受付の方に相談して、冒険者の方たちを一旦集めましょうか」

「それで、事情を話して協力を要請するってことですか?」

「はい!とりあえず受付カウンターまで向かいましょう!」

「了解です」


私達はそう意見をまとめ、受付カウンターまで急ぎ足で向かった。特に冒険者ギルドの中は広くなかったためすぐにつき、サラは受付が空いた隙を狙ってそこに座っていた若い女性の方に話しかけた。


「すいません、あの、ちょっといいですか?」

「?はい、どう言ったご要件でしょうか?」


緑髪をサイドテールで結んだ若い女性の姿をした受付カウンターの人は、接客に慣れた明るい笑顔でそう問うてきた。

そこで私は、要件をサラの隣にでて説明した。


「冒険者を1度ひとつの場所に集めていただきたいんです」

「え?何故でしょうか?」


女性は不思議そうに首を傾げるが、なにか理由があるのだと少し険しい顔をする。


「何か戦力が必要なことが起こったのですか?」

「そうです。……でも、こちらには何も異常は感じないんですか?」

「異常?特に、以前と何ら変わらないように思いますが……。」


女性は更に不思議そうな顔をして私とサラを見つめる。

冒険者ギルド……つまり、ここを含めた城下町の辺りは異常を感じていない人がほとんどということだ。

わたしはそれに疑問を持つ。世界を統治する国ベルカルにいる冒険者なのだから、小さい国にいる冒険者などと比べ強い者達が多い気はするのだが……。もしそうなら蓄電所を完全停電させる程の魔法かなんかしらを使ったはずなのだから、冒険者たちが気づかないはずが無いのだが……。

だが、冒険者ギルドの中に入った時、多くの冒険者は夕方なこともあるのか酒を楽しんでいた。


「________。」


やはり、様々な違和感がある。それとも、自分が考えている可能性が全部外れていて、だから誰も気づいていないのだろうか。それとも、気づく気づかないの話では無いのか。


「実は____。」


サラは、黙りこくる私を意に介さず女性にこれまで起こった話を聞かせた。


「そんなことが……。確かに、それなら戦力は必要ですね」


サラが今の状況を説明したあと、女性は深く考える動作をして何か思案していた。

数十秒経った後、女性は少し眉をひそめながらこちらを向き、


「ご期待に添えるか、分かりませんが……。」


と言った。


「?」


私とサラは向かい合いお互い少し首を傾げるが、特に気にすることはせず、冒険者達を1箇所に集めた。



「__何だ?危険な魔獣でも現れたのか?」

「緊急クエストとか?」

「でも、俺たち酒飲んじまったぜ?」

「結構、いやかなり嫌な予感がする……。」


受付の女性が声をかけて冒険者をカウンターとテーブルの間の空間に集めたあと、彼等は口々に1部は顔をほんのり赤らめながら能天気に話し合っていた。

……まぁ、凄く蒼白な顔をした女の子もいたが。


「っこ、コホン。えー、お集まりありがとうございます。今回は協力してもらいたい事柄があって呼ばせていただきました」

「あん?協力したい事柄だと?」


サラが簡単に要件を説明すると、1人の柄の悪そうな薄髭を生やした大人の冒険者がそう言った。かなりこの男、酔っている。

サラは小さい声でうげ、と声を漏らすが、私はそれを気にせず今の状況を冒険者達に説明した。すると、多くの冒険者達は顔に汗を滴らせた。


「おいおい、それって結構ヤバい事態に陥っているんじゃ……。」

「しかも、堕天使だって……?そんなの……。」


絶対無理だ、なんて言葉は口にしなかった。1人の冒険者としての、プライド的なものだろう。

だが、想像はしていたが、皆"堕天使”という単語を聞いた途端弱気になった冒険者が沢山いた。

見た感じ、弱そうな冒険者は余りいなく、おそらくこの世界で実力者と呼べる人達がほとんどだった。そんな人たちでも怯むくらいなのだから、やはり堕天使の存在は、この世界にとって大きすぎるのだろう、悪い意味で。


「予想していた事態ではありますが、マズイですね……。」


サラは頬に汗を滴らせ、険しい顔をしていた。このままじゃ、戦力になってくれる人達がいないかもしれないという不安から来るものだろう。

堕天使の存在を隠せば集まったのかもしれないが、隠したところで後々明かされること。そこで戦意喪失されても困るのだ。

だから明かしたのたが……。このままでは不味いことは私でも分かっていた。だがこのまま集まらなければ、カーシックに頼まれたことを完遂できない。それに、戦力があれだけだとどうしても限界が来てしまうので、できるだけ多く欲しいのた。


「……というかそもそも、堕天使なんて、あんな伝説上の存在、本当に……いるのかよ」

「っ、そうだ、俺たちはそんなこと初めて知った。そうだよ、本当にいるなら俺たちだって流石に気づくはずだ」

「確かにそうですが……。力のある存在程、力……気配を隠すのが得意と言われています。それなら私だって、実際存在を目にするまで堕天使だとは気づきませんでした」

「んな……。」


冒険者達は再び動揺の表情を見せる。

____これでは人員集めは難しいかと、そう思われた時だった。


「___良いっすよ。俺達が協力するっす」

「っマジかよ!?堕天使だぞ!?」

「堕天使だろうと、関係ねえ」

「___っ、協力してくれるんですか」

「勿論だ。___俺達、オルドルがその協力要請を受諾しよう」


二人の男が立ち上がり、冒険者ギルドの広場でそう高々と宣言した。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




そのギルドは、男二人、女性二人の異性バランスのあったギルドだった。

オルドルというのは、その人達のギルド名らしい。


「本当に、ありがとうございます……。」

「いんや。お力になれると嬉しいんっすけどね」

「いえいえ。__見たところ、あの中で上位を誇りそうなくらいには強いみたいですし」

「あらら。バレちゃったっすか?」

「なんとなくではありますが」


そう言って、サラは少し安堵した表情を見せ、そして男の冒険者はチャラく笑った。

今は王城への向かう道のりで、オルドルの人達4人と、私とサラ合わせた6人で王城まで歩いていた。


「でも、思ったより集まりませんでしたね。私的にはもう少し集まって欲しかったですが……。」

「んー、それは難しいんじゃないかなー。そりゃ、堕天使がいる、って言われちゃったらね〜……。」

「まぁ、予想していたことではありますけど……。」


私は思ったより集まらなかったことに不満を覚えるが、オルドルの女性冒険者に正論を叩きつけられる。

まぁたしかに、少しでも集まっただけ幸運か。

私はそう考え方を変え、王城へ目を見やる。


「とりあえず、国王に報告しないと」

「そろそろ、王女の方々も着いている頃でしょうか?」

「そうかも、ですね」


私が上を見れば、夕焼けに空は染まっていて、奥の方はもう真っ暗だった。

こっちの世界に世界渡り(よわたり)してからわずか数日足らずで本当に大変なことに巻き込まれたなと、そんなことを思いつつ、レオンが堕天使になった理由をひたすら考えながら、私は夕焼け空を見つめていた。

ここまで読んでいただきありがとうございました!!次話もよろしくお願い致します!

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