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新世界に魔法を  作者: みかんグミ
第一章『王都編』
17/37

第15話 フレアの過去〜last〜

 今回はグロ表現がございますので、苦手な方はご注意ください。


 えげつなく遅くなってえげつなく文章が長くなりました……。これでラストにしたので、全部入れようと思った結果ですね(泣)

 最初は3000文字程度で終わるかなとともってたんですが、結果10000文字超えました。なんで3000で終わると思ったんだろう。

 今話もよろしくおねがいします!

 私は今、一人で森の中を歩いている。ヒーラは外せない仕事があると言って一緒に来なかった。

 魔王城から森の入口まではめんどくさいので飛んできたのだが、森の上を飛ぶと葉で生い茂って木の下がよく見えず、レオンの家(仮)を見逃してしまう可能性があった。

 そのため、そこからは歩きで向かう事にした。

 正直、めんどくさい。だが、見逃すと探すのに手間取って余計時間がか借りそうな気がするので、仕方なく、である。


「お、あれかな」


 少し先に、オンボロの大きめの小屋が姿を表していた。多分あそこで、痩せこけたレオンがいるだろう。

 そんなレオンのために、おにぎりを持ってきたのだ。

 まぁほんとはもっと良いものを持っていくはずだったのだが、残念なことに隠れて作れるものがこれくらいだった。

 まぁ少し形は歪だが食べれるし問題はない。


「おーい」


 ようやく小屋の前に辿り着き、レオンを呼び出す。


「____。」


 返事がない。もしかして飢えて死んでしまったのだろうか??それはまずいと、許可を取らずに勝手に家に上がり込んでいった。

 すると、少し自分の耳が反応する。ん?なにか聞こえるような……?


「____________。」


 耳を澄ましてさっきの音をもう一度聞こうとした。


「は……い」

「!」


 あ、やっぱりなんか聞こえる。誰の声だろう?凄いカラカラとした声だ。

 でもこの小屋に、誰かいるとしたらレオンくらいなのだが……それとは声が違うというか……。


「レオン?なの?」


 一応確認しようと思って、呼びかけてみて、また耳を凝らす。中々聞こえない。

 そう思っていると_____。


「は…い!」

「わ」


 結構遠くから聞こえると思っていたのだが、私の右横からほとんどはっきりと聞こえた。いつの間にこんな近くに来ていたんだろう……。


「あの声、レオンだったんだ。昨日ぶりだね」

「そりゃそうだよ……。というか、ほんと助けて欲しいんだけど……。」

「うん。お腹空いてるんだよね?だからあんな変な声出てたんだ」


 自分一人であの謎の声について解決していると、


「そうなんだよ……!もう2日間食べてないよ、何も」


 と涙目になりながらそう訴えてきた。でも、私はそのレオンの言葉に違和感を感じた。


「え?2日も?召喚される前に何か食べなかったの?」

「色々あって食べれなかったんですぅ……。本当に後悔してるよ……。」


 まぁそういうことらしい。まぁなにはともあれ、レオンに食事を与えないと……。

 私はスカートのポケットから入れておいたおにぎりを取り出してレオンに手渡した。


「はい、これ。もってきたよ」

「お、おぉ、ありがとう!!って、おにぎり……?」

「嫌だった?それしか用意できなくて」

「いや、そういうことじゃなくて……。なんか、日本昔話みたいな……なんていうか……。」

「……?」


 ちょっとレオンは何を言ってるのかわかんないが、とりあえずおにぎりを美味しそうに食べてるし大丈夫だろう。

 これでレオンが餓死することはない、はず。


「ねぇ」

「………………はい?」


 私の呼びかけに、レオンはおにぎりをもぐもぐとかんで飲み込んでから、それに応えた。


「レオンの住んでた世界について、もっと教えて」

「私の住んでた世界?」

「うん。ほら、詳しく知ったら世界を渡る方法についてなにかヒントにかるかもだし」


 まぁ本音はただただ気になるだけなのだが。まぁ、本当にヒントになるかもしれないし、聞くのが無駄というわけではないだろう。


「いいけど……結構、時間かかりますよ?」

「大丈夫。今日一日は、時間あいてる」


 レオンはにやっと笑ってそう言ったが、私は今日は仕事をヒーラに渡したので時間はたっぷりある。

 まぁ、ヒーラが今日私が帰ってきたら覚悟しときなさいよとかなんたら言ってたが、大丈夫だろう。


「うーん、それならいいけど……一体、何から話せばいいのやら……。」

「なんでもいいよ」

「ふふ、じゃぁ……あれからお教えしましょう……!」


 レオンはにやにや笑って、「いいですか……?」と言う。

 こちらの準備は万端だ。


「あれはですね……。」

「うん」


 さて、今日はどんな興味深い話が聞けるだろうか。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 それから、何日か日が過ぎた頃。レオンも私も、その間よく会って喋っていた。

 傍から見たらその様子は、中学生くらいの二人の仲良しな友達に見えただろう。

 そんな、暖かい関係になっていた。


 そんなある日。


「ね、レオン」

「ん?どうしたの?」

「明日の夜、会える?」

「え、夜?危険じゃない?」


 レオンと私はこれまで何回か会ったことはあるが、それはいつも昼だ。

 夜は星空が綺麗な時間帯だが、同時に魔獣が活性化する時間帯でもある。

 特に満月の日は、外気に混じっている魔力がいつもより濃く濃厚になるため、魔獣たちはいつもより数段強くなる。そうなると、もっと魔獣たちは活性化するのだ。

 この満月で力が増す現象は、魔力を主な生命源とする魔族や魔法使い、ウルフなども例外ではないのだが。

 この現象や魔獣のことを、前レオンに教えたことがあり知っているため、心配しているのだろうが。


「大丈夫だよ。明日は満月じゃないし」

「でも……。」

「それに、明日は天の川が見えるらしいしね」

「え、天の川……!?今そんな時期かあ……。でも、そんなに暑くないね?」


 そう。明日は、ヒーラ情報だが天の川と言うやつが見えるらしい。特に星を気にしたことはないので知らなかったし見たこともないのだが……。(見てるかもしれないが覚えていない)


「ここは比較的原始魔力が多いから、涼しいんだよ」

「へ?原始魔力?」


 レオンが首を傾げる。どうやら原始魔力について知らないらしい。


「原始魔力っていうのは、魔力の種類の一つで、基本的にこの魔力を使うと氷、炎が使える魔力のことだよ」

「ほぉ……。じゃぁ名前的に、1から創り出すって感じ?」

「そう。でも風とか大地系は他の魔力じゃないと駄目」

「ふーん……。」


 複雑な顔をしてうーんとうなっているレオンを横目に見ながら森の辺りを見渡す。この辺りは原始魔力の密度が濃い。そして、この辺りには水も多いので、それで原始魔力が冷やされ大気が涼しくなる。

 逆に水などがなく原始魔力が密集していると暑くなるので、暑いところは基本そういうところである。


「それで、明日の夜会える?」


 そうして私は逸れかけた話を戻す。とりあえずいま重要なのはそれなのだ。


「うーん……。そうだね、うん。大丈夫だよ!」 

 

 少しレオンは顎に手を当てて考える素振りをしたが、了承してくれた。とりあえずこれで大丈夫だ。


「そっか」

「いやぁ、星見るの楽しみだね〜」

「ん、そうだね」


 そうやって私はそう返す。

 星は、私も少なからず興味があるのだ。

 そのあと話を変えてもう少し話したあと、別れを告げて各々の場所に戻る。


「また明日ね!」

「うん」


 いつもの言葉をレオンが笑顔ツサでいって、私は感情がないから笑顔で言うことはできないけど、いつも通り、返事を返す。

 それが日常で、いつも通りだった。



◇◆◇◆◇◆◇◆



「いーい?しっかりやってくるのよ。レオンと話すのはなんでもいいけどさ」

「うん。ね、ヒーラ」

「?なに?」

「ヒーラも、レオンと話したら?多少の息抜きにはなると思うけど……。」


 今はレオンと別れたその翌日の夕方だ。赤く、まだ太陽の光が潰えていない夕日が、ゆっくりと沈んでいる。あともう少し経てば、星も見えてくるだろう。

 それでレオンのもとへ出発する準備を整えて、ヒーラに忙しそうだからそう提案したのだが……。


「はぁ?確かに息抜きはしたいけど、こういうふうにしたのはフレアでしょうが!!あんたいっつもレオンとーとか言って仕事サボって!!その仕事も全部片付けてあげてる私を感謝してほしいくらいだわ!!」


 ヒーラはそう私に顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。よくわからないが、とりあえずこの空気はやばい気がする。

 でも思い返してみると、そういえばそうだった。いけない、完全に頭から抜けていた。こういうときは__。


「__うん。ヒーラ、ありがとう」

「へ?き、今日はやけに素直ね……?」

「別に。やってもらってたから、ありがとう、って言っただけだよ」


 もしかして間違っていただろうか。やはり、言葉選びというのは難しい。

 そう思っていると、ヒーラは顔を再び赤くしていた。あれ、また怒ってしまっただろうか。


「べ、別に、まぁ、うん。そうよ、それで、いいのよ……。うん」


 色々な感情がごちゃまぜになってるような気がするが、まぁいい。とりあえず大丈夫そうだし、私は森に向かおうと思う。


「じゃぁ、行ってくる」

「え、えぇ。仕事は任せて頂戴!!」

「?あ、うん……?」


 なんかヒーラがよくんからないことを笑顔で言っていたが、あまり気にせずに森まで空を飛ぶ。

 勿論、フレアが飛んでいくのを見つめながら、 


「本当に言わなくても……。そういうのは、慣れてないのよ………。」


 _____なんて言っていたことは、フレアの耳に届くはずもなく。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 段々と森が見えてきた。少しづつ高度を下げていき、森の入口で地面に降り立った。ここから少し歩けば、すぐレオンの家(仮)につく。

 森の地面から鬱蒼と生え、道にまで伸びているくさを避けながら、もう慣れた道のりを突き進んでいった。

 そして、少し道が開いたところに出ると、外見がボロボロの家が私の視界に入った。そのあたりを見回しながら、ドアノブをつかみ、


「おーい、レオン、ついたよ」


 と挨拶をした。


「_____」


 返事がない。まさか、あまり遅い時間ではないが、なにかして疲れて寝てしまったのだろうか?

 挨拶はしたので、そのまま家の中に入り、部屋をみまわした。だが、すぐ違和感に気づく。


「電気がついていない……?」


 寝てるときもレオンは夜の真っ暗な空間が嫌いらしく、私があげた、太陽光を集めることで光らすことが可能なライトストーンを部屋において明るくしてると聞いたのだが……。


「ライトストーンも、ない……。」


 一応部屋を回ってみたが、レオンはいなかった。ライトストーンがないということは、この暗闇の中、ライトストーンを持って森の中に入っていったのだろうか?


「そうだとしたら、危険、かも」


 そう思ってドアを開けて外に出て、うっそうとした森の中を散策し始めた。

 

 およそ、二十分が経った頃。


「やっぱり、この暗闇の中だと見つけにくいな……。」

 

 未だ、見つかっていなかった。もし本当にレオンが森の中にいて何かをしている、または道に迷っていた場合、見つけれたとしても数時間後になりそうだ。

 太陽の光を浴びていないせいで月の光だけで微かに照らされた濃緑の草をかき分けながら、また捜索を開始する。まぁ多分、なんとかなるだろう。


「______!」


 またしばらく探していると、足元に何かがあたった感覚がして、それと同時にトン、に近い音がなる。

 何にぶつかったのだろうと思って足元を見ると__。


「_______!?」


 突然私の体は硬直状態に陥る。なぜなら私の足がぶつかった“ひと”は______。



 ______レオン、森山玲緒だったからだった。


 「、なんで、レオンが死んでいる……の?」


 私の足元でレオンが頭から血を流して草むらに倒れている。____なぜ、こんな状況に____。

 私は急速に思考を巡らせる。レオンはなぜここで死んでいるのか。だが、急速に思考を巡らせる必要もなく、その答えはすぐに解き明かされる。


「ヒーラが雑魚って言ってた、あの、魔獣……。」


 まさか、レオンはその魔獣にやられてしまったのか。確かにレオンは戦う力は特にないが、ここまでの傷は___。


「そうだ、確認しないと」


 私はハッとしてレオンを抱き起こす。そして、傷の具合を詳しく確認した。

 ___まだきっと、助けられると。まだ、死ぬような傷ではないはずだと、レオンの死を否定する根拠を自分自信に提示するための証拠を探すように。


「頭から腰にかけて、酷い裂傷……。」


 見てみたところ、とてもそこらへんの魔獣が負わせられるようなものではなかった。

 それに、かなり裂かれた部分が広い。おそらく、図体もかなり大きい魔獣だろう。

 この一連の調査を経て、おそらく上位種の魔獣だろうと判決を下す。

  次は____。


「この傷なら、止血と半分程度治すくらい、なら」


 私は治癒魔法に関してさほど適正がないので、完全治癒はできながいが、見たところ血も赤黒くなりきっていない部分もあるし、もしかしたら目を覚ますかもしれない。そうしたら、急いで魔王城に連れ帰って治癒に特化した魔族に頼んで残りの傷を治すべきだ。

 もう人間を嫌う者がいるなんて言っている場合じゃない。魔族に治癒系にしっかり適正を持った者は少ないので魔王城には3人ほどしかいないが、目星はつけている。

 そう算段をたて、急いで治癒魔法を発動しようといていたときだった。


「ふれ、あ」

「!?レオン……!」


 生きていた。死んでいなかった。その事実に、何かわからない感覚が胸を支配する。息苦しい。だが、そんなよくわからないものは無視し、目の前に集中する。


「レオン、傷の半分くらいなら直せるから__」

「や、めて」

「え」


 今、何といったのか。やめてなど、想像もしていなかった。なぜ_______。

 だが、その答えは意外とすぐ返ってきた。


「ここに、長くいたら……。また、あの魔獣、がくるかも、しれ、ない」

「________」

「私、フレアまで死んじゃう、の、やだなぁ……。」


 傷による痛みを堪えた苦痛の混じった表情で、でも、それでも頬を歪めてフレアに笑いかける。そして同時に、そんな中でも確かな熱を持った雫がレオンの頬を伝った。

 また、胸があつくなる。息苦しくなる。なんなんだろう。邪魔だ。この胸を支配するうずめきは一体なんなんだ。

 でも、考えるのもまたやめて、レオンに声をかける。


「きっと、私なら倒せるよ」

「はは、本当、かな……?」


 段々と体に力が抜けていっているのか、レオンの体を支えている左腕の部分の力が増していく。それを感じるたびに、苦しくなった。


「そうだ」

「?」


 レオンは力を振り絞り、ポケットに手を入れる。血濡れた手に握られていたのは、白い細い花びらと緑の茎の色のコントラストが綺麗な花だった。


「これは……?」

「これは、ユーフォルビアの、白雪姫。私、花、好きで……。折角探して多分同じ、なの見つけられたのに、あいつがあらわ、れて……。し、くじ、った、なぁ………………_______」

「_____、レオン?」


 その言葉を最後に、レオンを支えるために使っていた力が一瞬で増す。レオン自身の力が消えて、ぐったりしていた。

 すっきりしたような、顔の整った綺麗な寝顔をしていた。だが、これは寝顔ではなく、魂の抜けた、抜け殻と化したもので……。


「_________は」


 息が猛烈に苦しくなる。なぜ夜に会おうなどと言ったのだろう。なぜ、なぜ_________。


 こうしてみると、わからないことばかりだ。私一人では、何もわからない。レオンがいなくなってしまえば、もう誰か私に何かを教えてくれる人は、いなくて____。

 いや、と私はその考えを否定する。誰もいないわけではない。ヒーラがいる。レオンとの関係だって、ただなにかを教えてくれるだけのものではなくて_____。

 でも今は、何故かそれにすがってしまう。また教えてほしいと、そう願ってしまう。今までの知識欲とはどこか違う……。でもそれが具体的にどんなものなのかは、私にはわからない。考えても考えても……。


「ねえ、レオン、教えてよ」


 私はそう、くぐもった声でつぶやく。


「こんなふうに思ったことはなかったよ。考えたこともなかった。これって、どういうことなの?」


 今はひたすら、あなたにこの気持ちを伝えたくて。


「この息苦しさも、初めて。胸を支配する何かも、初めて」


 息継ぎも忘れて、伝えていく。レオンの魂に、直接届くように。


「レオンと会ってから、初めての連続で、それは嫌な感じがしなかったけど……。でも、これは、辛いよ」


「経験、したくないよ」


 そこで息継ぎをしていなかった反動がきて、コホ、コホと咳をする。だがそんなことは気にしない。それより、胸の方が、ずっと苦しいのだ。痛い。締め付けられる。

 レオン、私は。


「どうすれば、よかったんだろう」


 沢山考えて、考えて。でも最終的には、それらが絡み合って余計わからなくなってしまう。結局、わからないだらけで__。


「_____ッ!?」


 そこで、ドン、ドンと地響きを遠くから感じるほどの足音がした。

 まさか_________。


「_____魔獣」


 最初に拾った音はかなり遠くだったが、今はもうすぐ近くまで接近している。そして後ろを振り向くと、木の3、4倍ある大きさの魔獣がそこに立っていた。


「ウオアアァァァァァァァッッ_______!!」

「________!!」


 夜空に広がる星々の光が照らしていただけの静かだった森が、魔獣の体の奥底から響き渡るような咆哮がその静かさを殺気で塗りつぶしていった。その奥底から響く咆哮は、それによって作り出された巨大な声の波が私の体を呑み込み私の体を震えさせた。

 たったこの咆哮だけでわかる。これは、やばい。


「倒せるかな」


 倒せる倒せないの話ではない。倒さなければならないのだ。

 それに、こいつを倒せば、もしかしたらこの体の異常も治るのではないかと、ふと、そんな気がして___。

 

 なぜそう思うのかも分からない。こう思う理由なんてない。でも、何もわからない状態な今、誰にも聞けない今、自分で決めなければならない。

 だから、私はこう判断を下す。


 ___________この魔獣を、倒すと。


「いくよ、魔獣」


 _____これが、魔獣とフレアによる、戦いの始まりの合図だった。


「___________はぁッ!」


 私は魔獣の元まで一瞬で距離を詰めたあと、私が日頃攻撃用に使っている白銀の釘のような形をした短剣___ダガーで傷を入れようとする。狙いは足だ。


「________ッッ」


 なんとか入れられたが、硬い。鉄に刃を入れている気分だ。だが、ただこれだけで終わらせるつもりはない。魔法を使う。


「!?」


 魔獣もその異変に気づいたようだが、もう遅い。私の使うダガーは、魔力を上乗せして魔法と刃による攻撃の2つの攻撃を同時にすることができるもだ。そして、私は魔法系統に対して適正が強く(らしく)、魔力量も他と比べ圧倒的に多いのだ。なので、この武器は私にとても合ったものと言える。

 自分が一度にできるものの最大の魔力量を出してそれをダガーに上乗せする。

 すると、たちまち魔力が上乗せされたダガーが光だしまだ浅かった傷を抉っていく。


「___________あァッ___!」


 その勢いに任せて己の力を振り絞ってダガーを上に引き裂いた。ザグッと言う音を立てて、右足全体が裂かれる。


「、よし」


 一泊置いてから、裂かれた足から血飛沫が舞った。


「ヴヴヴオオルアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」


 魔獣のこの耳をつんざくような絶叫を聞きながら、あまり叫ばせる余裕も持たせず次の攻撃体勢に移る。あと数撃まともに入れば、恐らく倒すことができるだろう。

 だが、やはり、そう簡単に事が進むはずもなく。


「ヴヴヴロァァァ!!」

「!!」


 魔獣は悲鳴の次は咆哮を上げた。それ一つ空気が変わり、より殺伐とした空気になった。__大気が、震えている。

 ……くる。


「あがっ……!」


 右足が裂かれたとは思えないほどの勢いで魔獣は私の左肩あたりから右腹のあたりまでを抉っりそしてえぐった勢いで私は森の木までふっ飛ばされた。

 やられた。大量の血が傷口から流れ出る。痛い。たった一撃だけど、その一撃がとても重くて、ただそれだけで動きが鈍る。私は手で傷を覆いながら、魔獣に目を向けた。

 魔獣は追撃の姿勢だ。とっさに構える。だが……。


「…………………………!?」


 急に魔獣は姿を消した。どこにいる??上か?そう思って顔を夜空の方に向けた。だが、


「___。」


 やはり、いない。どこに______。


「___________________かは」


 声が出なかった。その代わりに喉からでるのは血。ごぼごぼと、口から血が溢れ出る。

 一体、何が起こって______


「______ぁ」


 貫通していた。魔獣は前にも上にもおらず、目に追えない速さで後ろに回り込み、自分の腕をフレアの背中に突き刺したのだ。それは見事に貫通しており、おびただしい量の血がどくどくと溢れ出ていた。


「まけ、ない」


 消え入りそうな、そんなつぶやき。でも、それはフレアを渦巻くもの___激情が、その言葉に力をもたせる。


「___ッッ!?」


 ___私は、自分の中を渦巻く何かが以前よりまた一段と……否、何段も強くなったのを感じて、いよいよ気にせずにはいられなくなってきた。現在進行系で強くなっていく。


 負けたくない。負ける訳には行かない。ただひたすら、そのときだけ、そんな言葉がフレア心の中を支配して。


 私の体を突き刺す腕を掴む。それに、魔獣はかなり驚いたようだった。


「こんなの」


 こんなの、引き抜いてやる。体を無理に動かして腕を引き抜いた。それのおかげでまだ少し止血できていた部分もあったが、それを無理に引き抜かれたことで、それすらも体外にでていく。意識が遠のきそうになる。でも、こんなところまできて終わらせるわけには行かないのだ。

 体を渦巻くものが、決心が、この時最高潮に達した。それは___強大な、力となる。


「____________ラァッッッ!!!」


 そう叫んだあと、大きな魔法陣が展開される。その魔法陣は、簡単に数メートルある魔獣を包み込んだ。


「_____!?」


 魔獣は動揺している。このまま_____。


 その巨大魔法陣は、わずか十数秒で完成する。詠唱の必要のないそれは、そのまま、魔法の発動へと至り____。

 光が、炸裂した。目も眩む、一瞬周りが何も見えなくなるほどの光の炸裂が、森を包んだ。

 

「あがッ」


 その光が大きな爆発を起こし、その威力で、フレア自身も吹き飛ばされた。だが、すぐ近くにあった木に勢いよくぶつかりそこでとどまった。

 だが、まにうけた爆裂は、魔獣を、覆い、そして空中に吹き飛ばした。焼け焦げて、真っ茶色というより、黒に近い勢いで皮膚が焼けていた。完全に白目をむき、フレアの前に落ちて息絶えた。


「た、おせた、?」


 やっと、やっとだ。思ったより、かなり重症をおってしまった。まだ出血は続いている。すると、


「ごぼッ……。」


 魔獣の腕がフレアに貫通したとき以上の吐血が彼女を支配した。おそらくなにかの反動だ。そしてその反動の原因は……………………


「さっき、の、魔法……。」


 あの光の炸裂魔法だ。しかも、かなり上級の。あれは、かなり違和感があった。

 なぜならば、あの魔法は私の知らない魔法だったからだ。

 自分の中に渦めき続け、そして戦いのうちに膨張していったそれが最高潮に達したと感じたときに、あの魔法は発動した。普通、魔法を発動させる際は詠唱が必要なのだが、あれは詠唱などせずとも勝手に魔法陣が展開され、そして発動した。あんな4、5メートルあった魔獣を軽々と吹き飛ばし丸焦げにさせてしまうくらいの威力だ。

 その炸裂によって周りの森は、半径25メートルくらいの円の内が焼け焦げたり、吹き飛んだりしてシューシューと煙をあげていた。

 威力が高く、そして範囲も広い__そんな魔法が、詠唱の必要もせず発動できるなど、普通ありえないことなのだ。


(あの魔法はなんだったんだろう……。)


 すごく不思議に思うが、とりあえず後回しにするしかない。

 あれこれ傷つき血を流した頭で思考しているうちに、段々と体が動かせるようになってきたので、少しづつ体を木によたれかからせながら起こす。魔獣はなんとか倒せたのだ。今はとりあえず、レオンのもとへ_____。


「レ、オン」


 返事はない。当然だ。もう、死んだのだ。人間の核__魂が完全にレオンの体から抜けてしまって、亡骸と化してしまっていた。こうなってしまうと、もうどうすることもできない。私に、レオンの魂を呼び戻すことができる高等技術など持っていない。それに___。


「レオンはそれを、望んでいない、気がする」


 なぜか、ふと、そう思ったのだ。


「さ、て」


 レオンの死を受け入れるという道しか、今の私に渡れる道はない。ならば_______。


「その道を、渡って、前に進むよ」


 そう宣言する。このとき、感情がなくてよかったと思う。まぁでも、魔獣との戦いのときは、なんか変な感じが頭を支配していた気がするが。でもきっと、感情があったら、こんなに簡単に行かなかった気がすると、そう思う。

 でも___________。


 いつも、レオンはどこか変な雰囲気があった。暗い?辛い?悲しい?私にはわからないが、多分、あまり良くないもの。でも私が聴いてもしょうがないと、そう思って特に気にしもなかった。そしてその対応も、レオンは嫌がっている感じはしていなかった。むしろ、だ。


 今までを振り返る。地球とか、ゲームとか、学校、とか……。色々教えてもらったし、その分この世界のことを教えてあげた。ずっと話が潰えることはなく、時間切れになるその時まで、ずっと話していた。そしてそれは気づけば日課になっていたけど____。


「その日課がなくなるのは、すごく早かったけど」


 流石に、これは予想外だったけど。でも、もう死んでしまったのなら。色々教えてくれたこと、それのお礼もかねて。


「レオンの言ってた墓参り、だっけ、来るよ」


 レオンの言ってた墓参り。この世界にそれに近い習慣はあるが、そういう名称ではなかった。でも、折角レオンが教えてくれたのだ。もし私が長生きして、でも寿命が来て死んでしまったら、墓参りでもしてね、と。人間と、魔族には寿命の差がある。人間が仮に100年生きたとして、上位魔族程になると大抵魔族の中でも上位の種族しかいないので、同時に寿命もあがっていて、その中に私も入っているため、1000年程度は生きられる。その代わり、そういう種族の繁殖力は極めて弱いが。

 レオンの言っていた通り、お墓というものを作ってみる。確か、石を使うんだったか。遺体を土の中に埋めて、大きめの石をその上に封のような形でおく。戦闘に使ったダガーを取り出して血をぬぐってから、それを使ってレオンと石に刻む。こんなもんだろう。後ろに下がってレオンの墓を見る。良い気はしなかった。


「________ッ」


 一区切りついて帰ろうとしたところで、直後に全身を痛みが巡った。いや、さっきまで痛みがなかったわけではない。でも、墓を作っている間、少しでも回復できるように回復魔法をかけながら作業していたのだ。私の使う回復魔法はこの世界で中級魔法に入るものだ。初級魔法の回復魔法もあるが、中級魔法なら中級程度の回復ができる。大体レオンがおった裂傷を、負ったあとすぐ治し始めればぎりぎり治しきれるくらいだ。だが、レオンの傷も私の傷も、結構時間が立っていたし、私はそれだけでなく貫かれている傷もある。正直、現状維持くらいにしかならないが、やらないよりは全然マシだった。

 その魔法のおかげで、多少痛みが和らぎ、墓づくりに集中して気を紛らわせていたのだが……。いざ終わって帰ろうとすると、すごく痛い。

 だが、どうにかして魔王城に帰らなければ……。


「あと、もうひと、踏ん、張り」


 そう自分に言い聞かせ、あるき出す。


「_________。」


 でも、もう一度レオンの方に振り返る。


「でも、やっぱり、さ」


 きちんと向き直ってから、もう一度お墓を見て。


「感情が私にもあれば、レオンのことも、もっと知れたのかな」


 結局、ちゃんとレオンのことが知れないまま、別れてしまった。でも、もう遅い。だから_____。


「私、こんなに感情を、情報としてじゃなくて、欲しくなったことは初めてだよ」


 そう、告げて。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 ザッ、ザッ、ザッ、と、静寂に戻った森に、再び音が木霊する。足音だった。金髪の美少女が、ヒールが少し入った靴で草と土を踏みしめながら、少女___というのには少し大人びているが、彼女は目的地へと着々と近づいていた。


「ふふ、ここですね」


 やがて、到着する。足を止め、周りを見渡す。大気を張り詰めていた殺気がなくなり安心して戻ってきた小動物たちは、次は誰だと、その人物を観察する。

 もし鳥などの動物たちが、彼女の姿を見たら驚きに目を丸くし、啞然としただろう。なぜなら___。


()()()()、天使なる時ですよ」


 彼女の背中には、真っ白で、薄い輝きを放つ羽……言い換えて、翼が生えていた。発色の良すぎる服を見に包み、後ろの真ん中部分だけが長く出たローブを身に纏っていた。背中の中部分まで伸びている艶やかな金髪は、サイドテールで左に結んでいる。そして、頭の少し上に、金色のリングが浮かんでいた。

 その姿は紛れもなく_______天使だった。


「随分予定より時間がかかってしまいましたが……。」


 そういって、くすくす笑う。が、その笑いはすぐ止み、いけないいけないと呟いたあと、両手を振り上げ___。


「さぁ、あなたは、生まれ変わるべきです」


 そう言って、巨大な魔法陣を発動した。その大きさは魔獣を倒したときに出したフレアの魔法陣の比ではない。この世界では実現できない程のレベルで高濃度に魔力を集め、練り、今まさに__奇跡を、起こそうとしていた。

 

「_____________。」


 この世界の生物には理解不能な言葉で詠唱していく。そして、発動する。

 すると_______________。


「よしよし、成功ですね」


 段々とそこにあった石がどかされ、土が盛り上がっていく。そしてその地面から表れ出たのは___。


「レオン様……。」


 レオンだった。地面から出てきた血だらけのその姿に、天使はまぁ、と声を上げる。


「こんな傷を負ってしまって……。ですが、天使になればそんなもの、関係ありません」


 ニヤっと笑って魔法を続行する。

 すると、たちまちレオンの体が光り始め、そして異変が起き始めた。やがて……。


「……ふふ、よかったです。成功ですよ、レオン様」


 熱い情熱と惚れ惚れとした表情で、顔をほんのりと紅に染める。強い愛情と、尊敬のこもった表情だ。

 なぜならば、


「こう思ってしまうのも仕方がありません……。だって、あの方は、大天使、レラージェ様なのだから……。」


 天使は熱いため息をつく。そして、仕上げをしていく。

 すると、レオンの体からも、背中から翼が生える。そして、金色のリングが浮かび、完全な天使と化していた。

 レオンが完全に天使になったところで、巨大な魔法陣は縮小し、消えた。

 すると、レオンは目をうっすらと開いた。


「ここは……。」

「あ!!レオン様!!目を覚まされましたね!」


 まだ状況が把握できていないレオンに、天使は端的に説明する。


「勝手にこうしてしまったことは申し訳ないと思っているのですが、レオン様。まだ、人生を終えてはなりません」

「______え?」

「私は六大天使の一人、ユリーサブ・リアと申します。以後お見知りおきを」

「え、あ、はい?」

「レオン様は、人間としての一生は終えました。ですが、これから天使としての人生が始まるのです」

「____天使?_____あ」


 困惑しているレオンは、ふと後ろを見たときに自分の体の異変に気づいた。


「_____翼!?」

「あと、頭上もご覧くださいませ」

「!?黄金リング!?」


 レオンは驚愕して尻もちをつく。そしてふと、さっきまで傷を負っていた場所に目を向けた。


「な、おってる……。」


 そこに、傷らしい傷など何一つなかった。血が出ていた痕跡すら、無くなっている。


「何が、起こって」

「……貴方様は、尊き天使になられたのですよ」

「天使、?」

「そうです。自分の姿を見て、納得がいくでしょう?」


 そこで一瞬の沈黙が流れる。が、すぐその静寂を破り口を開いたのは、レオンだった。 


「ふ、ふざけないでください……。私は、死んだんですよ?あの世とかならともかく、見た感じ、違いますよね?」

「えぇ。レオン様は、人間としては死にました。ですが、私の魔法により、天使へと()()したのです」

「転、生……。」


 レオンはすごく悲しげな表情をしていた。だが、もう遅いと思ったのか、俯いていた顔を上げて、


「じゃぁ、私はどうすればいいんですか?」


 と問うと、天使……ユリーサブは満面の笑みで、


「よくぞ聞いてくれました!……まぁ、とはいっても、きちんとは決めていないのですよ。とりあえず、我等の住む天界に行きましょう」

「天界?」

「そうです。神や、天使が基本的に多く住んでいます。少し遠いですけど、今の体なら大丈夫ですよ」


 そうユリーサブはレオンに笑いかける。了承もなく勝手に新たな人生を、前世の記憶を継続させて天使として新たに歩ませたことを、なんとも思っていないように。


「__________ッ」


 微かな怒りが脳にうずめく。だがしかし、これを断ったとして(断れるかは別として)自分はどうすればよいのだろうか。こんなところにずっといてもしょうがないのだ。

 だから__________。


「……………………………分かりました。天界、行きます。」

「まぁ!そう言ってもらえて光栄です。……では、行きましょうか。とりあえず、これからのことで今決まっていることは道中にお話いたします」

「分かり、ました」

「ふふ。では」


 そう言って、ユリーサブはレオンの方をちゃんと向き、両手を広げる。


「?」


 そして、ユリーサブはにっこり笑って、こう告げた。




「貴方様に、我等天使の祝福を」

 こんなに長く一度に書いて投稿したことは正直なかったので、もしあれぐらいの長さになれてる方だったらごめんなさい(汗)そしてここまで読んでくれて本当にありがとうございます!!そうじゃない方もありがとうございます!

 次話から回想シーンから戻っていよいよ王都の人たちが動き出します。近いうちに新キャラ続々登場予定。

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