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第六十八話「黄泉ネット開発計画67 篁の助言」

第六十八話「黄泉ネット開発計画67 篁の助言」


----------------


黄泉ネットが動き続けてから、三年以上が経った。


黄泉の国の係同士は、情報を共有できるようになった。


だが、一つだけ、まだできていないことがあった。


下界との接続だった。


田中殿が広間でぶつぶつ言っていた時から、

ずっとそこにあった目標。


下界のインターネットを、黄泉の国から見ること。


「田中殿。」


ある日、私は言った。


「なんですか。」


「下界との接続について、本格的に考える時が来たと思う。」


田中殿は少し黙った。


「……はい。」


「どうすれば繋がる。」


「正直、分かりません。

 黄泉の国と下界の間に、壁があります。

 その壁を越える方法が、私には分かりません。」


私は少し考えこんだ。

下界との通信。。。

冥界とのやり取り。。。


「一人、心当たりがある。」


「どなたですか。」


「小野篁様だ。」



----------------



小野篁様に、使いを出した。


翌日、篁様が来られた。


最初にお会いしてから、十三年が経っていた。


「忠清殿。」


篁様は静かに言った。


「久しぶりでございます。」


「ずいぶんと、遠くまで来たな。」


「はい。篁様がいてくださったおかげでございます。」


篁様は静かに微笑まれた。


「最初に会った時、便利な仕組みは権力を集めると言った。

 覚えておるか。」


私は頷いた。


「覚えております。

 肝に銘じてまいりました。

 おかげで、文書改ざんがあった際も仕組みで解決できました。」


篁様は静かに頷かれた。


「覚えておったか。」


「はい。」


「では、今日は何を聞きたいのだ。」


「下界との接続です。

 黄泉の国から、下界の情報網に繋がる方法を、

 お教えいただけますか。」



篁様はしばらく黙っておられた。


「私が生前行っていた冥界との行き来は、

 特別な境界を通じていた。」


「境界、とは。」


「黄泉の国と下界の間には、

 薄い境界がある。

 その境界には、通れる場所がある。」


「通れる場所。」


「ただし、誰でも通れるわけではない。

 閻魔様の許可が必要だ。」


「それは、どのようにして。」


「私の子孫に、小野詠子という者がいる。

 今、下界で生きている。

 詠子は、境界の扱いを知っている。」


「ご子孫が、下界の側から助けてくださるということですか。」


「そうだ。

 こちらから繋ごうとするより、

 両側から近づく方が、繋がりやすい。」


田中殿が前に出た。


「具体的には、どうすれば良いですか。」


篁様が続けた。


「詠子に伝える方法は、私が持っている。

 詠子が境界の下界側に接続の仕組みを作る。

 こちらが黄泉ネットを境界まで延ばせば、繋がる。」


「黄泉ネットを境界まで延ばす、とはどういうことですか。」


「線を引けばよい。

 黄泉の国の端まで、線を引く。

 その先は、詠子が繋ぐ。」


田中殿は静かに頷いた。


「……できます。線を引くことは、久兵衛さんたちがいれば。」


「そうだな。」


私は篁様を見た。


「篁様。お願いがあります。」


「なんだ。」


「詠子殿に、伝えていただけますか。

 黄泉の国から繋ごうとしている者がいると。」


篁様はしばらく黙っておられた。


やがて静かに言われた。


「伝えよう。」


「ありがとうございます。」


「ただし、条件がある。」


「何でしょうか。」


「閻魔様の許可を取ること。

 下界との接続は、誰でも使えるようにしてはならない。

 許可した者だけが使える仕組みにすること。」


「承知しました。」


私は深く頭を下げた。


「その仕組みも、合わせて作ります。」



----------------


篁様との面会の帰り、田中殿が言った。

「篁様に、最初にお会いしたのはいつでしたか。」


「事業を始めた頃だ。

 田中殿が来てから、すぐだった。」


「あの頃から、ここまで来ましたね。」


「そうだな。」


「篁様が最初に警告してくれた言葉が、

 ずっと一緒にありましたね。」


「そうだな。」


私は静かに言った。


「篁様は、最初から全部見えていたのかもしれぬ。」


「どういうことですか。」


「警告も、下界との接続の方法も、

 最初から持っておられた。

 ただ、私たちが準備できるまで、待っていてくれたのかもしれない。」


田中殿はしばらく考えてから言った。


「……篁様は、取りまとめ役みたいですね。」


「そうかもしれぬ。」


私は静かに笑った。


「私より、遥かに長く取りまとめてこられた方だ。」



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私は書き留めた。


小野篁様、再会。


下界との接続方法——

境界を通じて両側から近づく。

子孫・小野詠子殿が下界側から連携。


篁様「覚えておったか。」

忠清「はい。肝に銘じてまいりました。」


条件——閻魔様の許可。許可した者だけが使える仕組みにすること。


私は筆を置いた。


篁様に最初にお会いしてから、十三年が経った。


あの時いただいた警告を、忘れずにいた。


その警告が、今日、別の言葉で戻ってきた。


許可した者だけが使える仕組みにすること。


情報を守ることと、情報を届けることは、

両立できる。


黄泉国情報網計画。


下界への扉が、見えてきた。


次は、その扉を開ける番である。



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