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第六十七話「黄泉ネット開発計画66 規則」

第六十七話「黄泉ネット開発計画66 規則」


--------------


梶原殿の件が落ち着いてから、私は考えた。


仕組みを変えた。


だが、仕組みだけでは足りない。


黄泉ネットをどう使うか。


誰が何を担うか。


それを、言葉にして残す必要があった。


「田中殿。」


「はい。」


「黄泉ネットの運用について、

 改めて決まりを作りたい。」


「規則ですか。」


「そうだ。

 梶原殿のことがあって、分かった。

 仕組みだけでなく、決まりが必要だ。」


「誰と決めますか。」


私はしばらく考えた。


「田中殿、堀田殿、久世殿。

 この三人と私で、合議する。」


「四人ですね。」


「そうだ。

 技術を知る者、仕組みを作った者、記録を担う者、取りまとめ役。

 この四人がいれば、偏りなく決められる。」


-------------


四人が集まった。


田中殿が通信の観点から。


堀田殿がからくり箱の仕組みの観点から。


久世殿が運用の記録の観点から。


私が取りまとめ役として。


「まず、班を分けたい。」


私は言った。


「今は、問題が起きた時に誰に頼めばいいか分かりにくい。

 担当を決めれば、問題が起きた時に動きやすくなる。」


田中殿が言った。


「三つに分けるのが良いと思います。」


「三つか。」


「はい。

 一つ目は、ネットワーク通信班。

 線の保守と、情報が届いているかの確認を担当します。」


「二つ目は。」


「からくり箱修理班。

 からくり箱の点検と修理を担当します。」


「三つ目は。」


「サーバー管理班。

 サーバーの管理と、情報の整合性確認を担当します。」


久世殿が記録帳に書き留めながら言った。


「それぞれ、何人くらいが必要ですか。」


「ネットワーク通信班は、田中殿と後藤殿に加えて二、三名。

 からくり箱修理班は、久兵衛殿を中心に職人たちで。

 サーバー管理班は、阿部殿と久世殿を中心に。」

堀田殿が言った。


「堀田殿はどこを担当するのか。


「私はどこにでも入れます。」


私は、堀田殿の今までの行動を思い出しながら、

「堀田殿にいは、一つの班に集中するより、

 全体を見渡せる位置にいてほしい。」


堀田殿は静かに頷いた。

「分かりました。

 必要な時に、必要な班を支援します。」


--------------


「次に、権限について決めたい。」


私は続けた。


「誰が何をできるか、はっきりさせる。」


田中殿が言った。


「サーバーの情報を変更できるのは、サーバー管理班の管理者だけにします。

 ケルクホフス殿の理論通り、鍵を持つ者を限定します。」


「管理者は何人だ。」


「三人にします。

 一人が問題を起こしても、残り二人で気づける。」


「先ほど決めた通りだな。」


「はい。」


久世殿が言った。


「変更の記録は、全員が見られるようにします。

 誰が何を変えたか、いつでも確認できる。」


「梶原殿の件の再発防止だな。」


「はい。」


堀田殿が言った。


「問題が起きた時の連絡先も、決めておきましょう。

 どの班に何が起きたら、誰に連絡するか。」


「それは、久世殿がまとめてくれるか。」


「はい。」


久世殿は静かに頷いた。


--------------


「最後に、一番大事なことを言う。」


私は三人を見た。


「一人に負担をかけすぎない。

 皆が前向きに協力できる仕組みにしたい。」


田中殿が言った。


「どういうことですか。」


「梶原殿が不正をしたのは、

 自分の役割がなくなることへの恐れからだった。

 仕組みや権限だけでなく、

 一人一人が自分の役割を持てるようにすることが大事だ。」


堀田殿が静かに言った。


「役職は奪えても、役割は奪えない、ということですね。」


「そうだ。」


私は静かに言った。


「黄泉ネットに関わる者が、

 それぞれ自分の役割を持てるよう、

 仕組みを作る。

 それが、この規則の目的だ。」


久世殿が記録帳に書き留めた。


「書き留めました。」


「ありがとう。」


「これが、黄泉ネットの法になりますね。」


「そうだな。」


田中殿が静かに言った。


「忠清さまが、生前作ろうとしていたものと、

 同じではないですか。」


「どういうことだ。」


「一人に権力が集まらないよう、

 皆が協力できる仕組み。

 合議制も、そういうものだったんじゃないですか。」


私はしばらく黙っていた。


「……そうかもしれぬ。」


「生前できなかったことが、ここでできましたね。」


私は静かに頷いた。


「そうだな。」


--------------


四人の合議で決まったことを、

全員に伝えた。


各班の担当が決まった。


権限の範囲が決まった。


問題が起きた時の連絡先が決まった。


久世殿が、それを一枚の文書にまとめた。


「黄泉ネット運用要綱」


という名前をつけた。


田中殿が笑った。


「要綱、ですか。」


「堅い名前だな。」


「堅い方が、長く使われます。」


久世殿は静かに言った。


「気軽に変えられないものにしたいので。」


「そうだな。」


私は頷いた。


「長く使われるものを、作ってくれ。」


「はい。」



--------------


私は書き留めた。


運用法制定。四人の合議——田中殿・堀田殿・久世殿・私。


ネットワーク通信班・からくり箱修理班・さあばあ管理班に分ける。


「一人に負担をかけすぎない。皆が前向きに協力できる仕組みにしたい。」


「黄泉ネット運用要綱」完成。


私は筆を置いた。


生前、合議制を作ろうとした。


一人に権力が集まらないよう。

皆が協力できるよう。


だが、うまくいかなかった部分もあった。


黄泉の国で、似たものができた。


形は違う。


だが、目指していたことは同じだった。


役職は奪えても、役割は奪えない。


皆が役割を持てる仕組みが、黄泉ネットの法になった。


黄泉国情報網計画。


法が、できた。


次は、この法を守りながら、前へ進む番である。


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