第六十四話「黄泉ネット開発計画63 修正」
第六十四話「黄泉ネット開発計画63 修正」
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からくり箱改の製造が始まってから、しばらくが経った。
久兵衛班が、新しい仕様のパーツを作り続けた。
ボルタ殿が電池の改良に取り組んだ。
ファラデー殿が新しい電力の流れ方を測定した。
おおえす班が、からくり箱改のおおえすを整えた。
そして。
からくり箱改の一号機が完成した。
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「できました。」
堀田殿が報告に来た。
「早いな。」
「二度目ですから。」
堀田殿は静かに笑った。
「一号機を作った時の経験が、全部活きました。」
「無駄な経験は、ないのだな。」
「はい。」
「試してみるか。」
「はい。」
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からくり箱改に電力を入れた。
画面が、すぐに映った。
「起動が速い。」
田中殿が言った。
「はい。処理速度が上がっています。
一号機と比べると、明らかに違います。」
「どれくらい違うのだ。」
「体感で、三倍から四倍くらい速いです。」
「三倍か。」
「はい。情報の送受信も速くなります。」
私はからくり箱改を眺めた。
見た目は一号機とほとんど変わらない。
だが、中身が違う。
「外見は同じなのに、中身が違う。」
「はい。」
田中殿は言った。
「人も、同じかもしれませんね。」
「どういうことだ。」
「外見は変わらなくても、
経験を積めば中身が変わる。
忠清さまも、こちらに来てからの約十年で、
中身が変わったと思います。」
「そうか。」
私はしばらく考えた。
「変わったか、私は。」
「はい。最初の頃より、田中殿の話をすぐに理解されるようになりました。」
「それだけか。」
「それだけじゃないですが、一番分かりやすいのはそこです。」
私は思わず笑った。
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次の問題が出てきた。
既存のからくり箱と、からくり箱改の共存だった。
作業場、仮判定所、閻魔庁に置かれている既存のからくり箱。
新しく配備されるからくり箱改。
二種類が混在することになる。
「問題は起きないか。」
私は田中殿に聞いた。
「基本的には問題ありません。
同じ網に繋がっているので、情報のやり取りはできます。」
「だが。」
「処理速度が違うので、
からくり箱改から大量の情報を送ると、
既存のからくり箱が処理しきれないことがあります。」
「詰まるということか。」
「そうです。」
「どう対処する。」
「送る量を調整します。
からくり箱改は、既存のからくり箱の速さに合わせて送ります。」
「速いものが、遅いものに合わせる、ということか。」
「はい。」
私はしばらく考えた。
「合議でも同じことがあった。
理解が速い者が、遅い者を置いていかないよう、
全員が同じ場所にいられるよう気を配った。」
田中殿は静かに頷いた。
「技術も、合議も、同じですね。」
「そうだな。」
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久世殿が修正作業の記録をまとめた。
「忠清さま。」
「なんだ。」
「既存のからくり箱の修正についてです。
すぐに全部替える必要はありませんが、
順番に替えていく計画を立てました。」
「どのくらいかかる。」
「一台ずつ替えていくので、
全部替え終わるまで二年ほどかかります。」
「二年か。」
「はい。急ぎません。
既存のものも、まだ使えますので。」
「使えるものを大事にする、か。」
「はい。」
久世殿は静かに言った。
「捨てるより、使い続ける方が良いものもあります。
ただし、新しいものに切り替える準備は、
並行して進めます。」
「バランスが大事ということだな。」
「はい。」
私は頷いた。
「久世殿。お主の仕事ぶりは、いつも丁寧だな。」
久世殿は少し驚いた顔をした。
「……ありがとうございます。」
「記録を取り続けてくれているおかげで、
どこまで来たか分かる。」
「それが、私の役割ですので。」
久世殿は静かに言った。
「記録が残れば、次に活かせます。
忠清さまの言葉も、記録に残しています。」
「またか。」
「はい。」
久世殿は少し笑った。
「忠清さまの言葉は、記録する価値があります。」
「大げさだ。」
田中殿が横から言った。
「久世さんの記録帳、かなり分厚くなってきましたよ。」
「……余計なことを言うな。」
作業場に笑いが起きた。
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私は書き留めた。
からくり箱改、完成。処理速度、一号機の三倍以上。
既存のからくり箱との共存——速いものが遅いものに合わせる。
久世殿、修正計画をまとめる。一年かけて順番に切り替え。
私は筆を置いた。
新しいものができた。
だが、古いものをすぐに捨てるのではなく、
並行して使いながら、少しずつ切り替える。
それが、長続きする仕組みの作り方だ。
一気に変えようとすると、どこかが壊れる。
少しずつ変えれば、全体が安定したまま進める。
政も、技術も、同じだった。
黄泉国情報網計画。
修正が、進んでいる。
次は、この仕組みを守る番である。




