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第六十二話「黄泉ネット開発計画61 解析」

第六十二話「黄泉ネット開発計画61 解析」


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翌日から、板からくりの解析が始まった。


田中殿、おおえす班、高柳殿が作業台を囲んだ。


板からくりが数台、並べられていた。


「分解してみます。」


田中殿が言った。


阿部殿が道具を取り出した。


稲葉殿が板からくりを固定した。


高柳殿が、その様子を真剣な目で見ていた。


慎重に、一つずつ部品を外していく。


「……小さい。」


阿部殿が言った。


「何が小さいのだ。」


「半導体です。

 からくり箱一号機に使った半導体と比べると、

 桁違いに小さい。」


「桁違い、とはどれくらいだ。」


「からくり箱の半導体を手のひらとすれば、

 板からくりの半導体は爪の先くらいです。」


私はしばらく黙っていた。


「それほどか。」


「はい。しかも、処理する速さが格段に上がっています。」


「つまり、からくり箱より遥かに賢いということか。」


「そういうことです。」


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解析が続いた。


チューリング殿も呼ばれた。


後藤殿が橋渡しに入る。


チューリング殿が設計の観点から意見を出した。


「チューリング殿は何と仰せか。」


後藤殿が訳す。

「基本的な考え方は同じだ、と。

 ただ、密度が全く違う。

 同じ広さの中に、何十倍もの仕組みが詰まっている、と。」


「密度が上がったということか。」


「はい。技術が進めば、同じ大きさにより多くの仕組みが入る。

 それが、この十年ほどで急速に進んだようです、と。」


田中殿が言った。

「私が死んでから十年ほどで、

 ここまで変わっていたんですね。」


「そうだな。」


「忠清さまは、どう思いますか。」


私はしばらく考えてから言った。


「……少し、怖いな。」


田中殿が静かに聞いた。


「何が怖いですか。」


「技術が速く進むと、追いつけなくなる気がする。

 生前も、時代の変わり目に、

 ついていけなかった者たちがいた。

 黄泉ネットを作り上げても、

 また新しいものが来たら、また一から始めなければならぬ。」


田中殿はしばらく黙っていた。


やがて静かに言った。


「道具は変わります。」


「そうだな。」


「でも、目的は変わらない。」


私は田中殿を見た。


「どういうことだ。」


「忠清さまがずっと目指してきたことは何ですか。」


「……情報を、届けることだ。

 必要な者に、必要な情報が届くようにすること。」


「それは、板からくりになっても変わりません。

 道具が変わるだけで、届けたいという目的は同じです。」


私はしばらく黙っていた。


「……そうだな。」


「怖くなくなりましたか。」


「……少しはな。」


田中殿は笑った。


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堀田殿が設計図を広げた。


「2014年版からくり箱の計画を始めます。」


「どう変わるのだ。」


「板からくりの技術を取り入れます。

 半導体を新しいものに替えます。

 処理速度が上がります。

 画面も改良できます。」


「久兵衛の仕事が増えるな。」


「はい。」


堀田殿は続けた。

「ただし、今あるからくり箱を全部作り直す必要はありません。

 新しく作るものから、新しい仕様にします。」


「今あるものは、そのまま使えるのか。」


「はい。ただ、新しい版と混在することになります。」


「二種類が混在する。」


「はい。それは後で整理します。」


私は頷いた。


「分かった。進めてくれ。」


「はい。」


堀田殿は設計図を広げたまま言った。

「TRINチームにとって、これは二度目の開発です。

 一度目より、速く進むと思います。」


「経験が積み重なっているからか。」


「はい。」


「無駄な経験は、ないのだな。」


堀田殿は静かに微笑んだ。


「はい。」


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高柳殿が板からくりの画面を、じっと眺めていた。


「高柳殿。」


私は声をかけた。


「はい。」


「何を考えているのだ。」


「液晶の仕組みを考えています。」


「まだ分からないのか。」


「まだ分かりません。

 ですが、少しずつ見えてきた部分もあります。」


「どんな部分だ。」


「電子銃も磁力も使わず、

 電気で光の状態を変えて映像を作る、ということは分かりました。

 詳しい仕組みはまだですが。」


「少しずつ分かれば、いずれ全部分かる。」


「はい。」


高柳殿は静かに言った。


「これを理解した時、

 もっと良いモニターが作れると思っています。」


「黄泉の国の「もにた」を、板からくりの画面に近づけるということか。」


「はい。目指すところは同じです。

 美しく、くっきりと映すこと。

 道具が変わっても、目的は変わりません。」


私は思わず笑った。


「今の言葉、田中殿が言っていたことと同じだな。」


高柳殿は少し驚いた顔をした。


「そうですか。」


「道具は変わる。でも目的は変わらない。」


高柳殿は静かに頷いた。


「……同じことを考えていたのですね。」


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私は書き留めた。


板からくりの解析開始。


半導体の密度、からくり箱一号機の何十倍。

処理速度も格段に上がっている。


新からくり箱計画、始動。


田中殿「道具は変わる。でも目的は変わらない。」


高柳殿「これを理解した時、もっと良いもにたが作れる。」


私は筆を置いた。


道具は変わる。


だが、目的は変わらない。


情報を届けること。


誰かと誰かを繋ぐこと。


それは、からくり箱でも、板からくりでも、変わらない。


技術が速く進んでも、怖くない。


目的が変わらなければ、

道具がどう変わっても、追いかけられる。


黄泉国情報網計画。


解析が、進んだ。


次は、新しい道具で、同じ目的を追う番である。



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