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第六十一話「黄泉ネット開発計画60 学び直し」

第六十一話「黄泉ネット開発計画60 学び直し」


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板からくりのことが、作業場に広まった。


高柳殿が毎日、板からくりを眺めていた。


触れると反応する。


指を動かすと、画面が変わる。


だが、仕組みが分からなかった。


「田中殿。」


高柳殿が言った。


「はい。」


「この板からくりを、詳しく知っている者は

 黄泉の国にいますか。」


「仮判定所に、持ち込んだ魂がいるはずです。

 最近こちらに来た方ですので、

 詳しいかもしれません。」


「会えますか。」


「旭殿に頼めば、引き合わせてもらえると思います。」


高柳殿は私を見た。


「忠清さま。仮判定所に行っても良いですか。」


「よかろう。」


私は頷いた。


「私も行こう。」


仮判定所に向かった。


私、田中殿、高柳殿とおおえす班の2人だった。


旭殿が出迎えてくれた。


「忠清さま。珍しいですね。あっはっは。」


「板からくりを知っている者に会いたい。」


「はい。ちょうど良い方がいます。」


旭殿が案内してくれた。


待合の間に、若い魂が何人かいた。


二十代ほどの、若い者たちだった。


旭殿が声をかけた。


「この方々が、板からくりについて聞きたいそうです。

 教えていただけますか。」


若い魂たちが、顔を見合わせた。


そして、少し驚いた顔をした。


「私たちが、教えるんですか。」


「はい。あっはっは。」


若い魂の一人が、板からくりを取り出した。


田中殿とおおえす班の2人が前のめりになった。


「これは、まず、どのように使うのですか。


若い魂が少し考えてから言った。


「画面が暗い場合、触れば、起動します。」

 そして、あらかじめ決めておいた番号をいれると、中身がみられるようになります。

 この中には、小さいソフトウェアが入っているので、それを選んでしたいことをします。」


田中殿は

「携帯電話は知っています、それから、どれくらい賢くなりましたか。」



若い魂は少し笑った。

「携帯電話からの進化ですか、

 携帯電話といいう名前ではなく、

 スマートフォンという名前で呼ばれています。

 携帯電話より、

 はるかに速く、はるかに多くのことができます。」


若い魂は、普段の使い方をやって見せた。


私はその様子を眺めながら、田中殿に小声で言った。


「下界の者に教わるとは、これも合議の一形態だな。」


「どういうことですか。」


「知っている者が教える。

 知らない者が学ぶ。

 それは、合議と同じだ。

 誰が上で誰が下ということではなく、

 知恵を持ち寄ることが大事だ。」


田中殿は静かに頷いた。


「確かに。知っている者が教える、という意味では同じですね。」


「生前も、若い者から学ぶことがあった。

 古い者が全てを知っているわけではない。」


「忠清さまが若い者から学んでいたとは、意外ですね。」


「三百年以上生きていれば、

 知らぬことの方が多いと分かる。」



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高柳殿が若い魂に、次々と質問していた。


「この画面は、どうやって作るのですか。」


「この操作は、何をしているのですか。」


「この部品は、何のためにあるのですか。」


高柳殿は画面の構造や部品についても聞いたが、

この若者はそこまでは分からないといった。

だが、知っている限りのことを答えてくれた。


「高柳殿は、熱心だな。」


私は田中殿に言った。


「はい。」


「生前の仕事への、情熱が戻ってきたのかもしれない。」


「そうですね。

 「もう一度、学び直す必要がある」と言っていましたから。

 高柳さんにとって、板からくりは新しい挑戦なんだと思います。」


高柳氏は板からくりを隅々まで観察し始めた。



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板からくりを数個持ち帰り、一部を作業場に持ち込んだ。


田中殿とおおえす班と高柳殿が板からくりを各々持ちながら、静かに議論を始めた。


「どれくらい違うと思いますか。」


「相当、違うと思います。

 まず、触ることで作業ができる。入力方法が全く違う。

 触ることを入力に変えるという感覚も分かりません。」


「画面の進化は間違いないでしょう。」


「分解して中身を見てみるしかないですね。」


「半導体も相当進化してそうですね。」


田中殿が言った。


「明日から、本格的に調べましょう。」


高柳殿が頷いた。


「はい。まだ分からないことだらけです。」



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私は書き留めた。


仮判定所にて、若い魂から板からくりの仕組みを学ぶ。


高柳殿、熱心に質問。


高柳殿が若い魂に教わった。


生前、一人で研究室にいた高柳殿が、

今日は大勢に囲まれて、教わっていた。


「下界の者に教わるとは、これも合議の一形態だ。

 知恵を持ち寄ることが大事だ。」


黄泉の国は、そういう場所だ。


黄泉国情報網計画。


学び直しが、始まった。


次は、その学びを形にする番である。


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